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木漏れ日が僕らを呼んで


8月28日は、わたしにとって一生忘れられない日だ。
何をそんな大袈裟に。そう言って笑われるかもしれないが、ライブ後は「最高! 天才! 記憶ない!」がデフォルトのわたしが、五年前のたった十数分の出来事を今でも鮮明に覚えているのだから、やはりこの日は特別で異質だったのだ。


スターダストチャンネルで配信されているライブ映像を見るたびに蘇る。まるまると可愛らしいグループのロゴが、スタイリッシュなデザインにがらりと変わった瞬間。明らかにざわつく客席。決して100%が歓喜ではないだろうなとわかってしまう悲鳴。全然揃っていない疎なコール。まさにあの会場で浴びた加入の瞬間のリアルを、いまだに胸が苦しくなるほど全身が覚えている。



山中柔太朗くん、曽野舜太くん。
M!LKに入ってくれてありがとう。

初代BATTLE BOYSをゆるゆると応援していた当時のわたしは、てっきり研究生で新しいグループを結成しデビューするのが、このBATTLE BOYSプロジェクトにおける "ゴール" であると勝手に思い込んでいた。
まさか既存グループに加入とは予想外であったが、BATTLE BOYS 2nd STAGEの選抜メンバーに柔太朗くんの姿がなく、もしかしたらもう会えないのかもとかなり落ち込んでいたわたしにとって「M!LKのライブに行けば柔太朗くんにまた会える」というのは、たった一筋の希望の光であった。

彼の努力で勝ち取ったデビュー。
わたしは、嬉しくて嬉しくて堪らなかった。なんて誇らしい推しなのだろう。ねえねえ聞いて、わたしが推してる柔太朗くんって子がね、すっごい頑張って、デビューしたの。すごいことなの! すれ違う人全員に自慢したい気分になった。
新メンバーのお披露目があったEBiDAN THE LIVE 2018。連番していた友人は舜太くん推しだった。彼女もまた、わたしと同じように歓喜の涙を流していた。二人で抱き合って飛び跳ねて、おめでとうを言い合って、顔をぐちゃぐちゃにして子供みたいに泣き崩れた。
しかしこの空間では、わたしたちが異端だった。

既存グループへの新メンバー加入。それがどれだけスキルを持った子であろうと、どれだけ心優しい子であろうと、ネガティブな意見を持つファンが誰一人いないなんてことはあり得ない。そういうものなのだ。誰なら良かったとか、誰だったから嫌だとかではなく、誰が加入しても、それは同じように必ず発生する。自身を否定されているわけではないと頭ではわかっていても、きっと傷ついたことも沢山あっただろう。
元メンバー・山﨑悠稀くんがM!LKを卒業したのが、同年6月末。約二ヶ月ほど前だ。まだ傷が癒えていないみ!るきーずも少なくない頃だ。そのタイミングもあったのだろう、「代わりを入れてほしくなかった」といった旨の意見を何度かSNSで見かけた。噛みついてやろうかと思ったが、できなかった。だって、その気持ちも痛いほどわかるから。意地悪で言ってやろうという魂胆が透けて見えた発言であれば、躊躇なく反論していたかもしれない。しかしこの意見の主はきっとずっと、M!LKのことを応援していた。愛していた。だからこそ生まれた感情だというのがわかるから、辛かった。

けれどわたしは本当に、誰が何と言おうと本当に嬉しかった。
え、本当に加入するの? 期間限定とかじゃなくて? ずっと七人? なんでこのタイミングで? 客席から聞こえる話し声は雨雲のようにざわざわと大きく広がっていたが、この空気に飲み込まれている暇はなかった。少しでも彼らに届くようにと、わたしは馬鹿みたいにペンライトを振って、見よう見まねでコールをした。初披露の新曲だ。わかるはずがない。それでも何かを叫んでいた。
動揺に包まれた東京国際フォーラム ホールAの中で、あなたたちを祝福している人が、喜んでいる人が、ちゃんとここにいるよ。それだけを伝えたくて、ガラガラの声で「おめでとう」を何回も叫んだ。
いい大人が暴れ散らかして恥ずかしい。案の定翌日は声が出なかった。けれど、心のままに泣いて笑って、ああしてよかったなと思っている。
伝わっていたかなんてわからないし、わからないままでいい。まだ幼い、真っ直ぐに、少し揺れる瞳で前だけを見つめていた当時のあなたたちが、いつか少しでも救われてくれたら、わたしはそれだけで、泣けちゃうくらい幸せなんだよ。
M!LKを選んだ人生を誇り続けてくれて、ありがとう。



佐野勇斗くん、塩﨑太智くん、吉田仁人くん。
この日はどうしても柔太朗くんと舜太くんをフィーチャーしがちだが、お兄ちゃんたちにも伝えなければならないありがとうが沢山ある。
メンバーが抜けて、と思ったら増えて、現状に気持ちが追いつかない瞬間も多々あったはずだ。そこに既存曲のパート割・立ち位置の変更、もちろん新曲もある。グループ内での立ち回り方から何から何まで、今まで通りにはいかなくなった。長年の積み重ねがあるからこそ、もしかするとまっさらな状態の新メンバーよりも大変だったこともあるかもしれない。
それでもあなたたちがあたたかく迎え入れてくれたから、沢山の人に愛されるM!LKが今います。
M!LKを守ってくれて、ありがとう。

時に優しく時に厳しく、たっぷりの愛に溢れたお兄ちゃんたちにすくすく育てられ、加入してしばらくは敬語が抜けなかった、そんな初々しいやわしゅんが今では

言うようになりました。


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