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秋はつとめて、勤めて

 人間は不思議なもので、天気が変われば気分も変わる。めっきり冷え込んでくると気分も下降気味になる。
 秋初めの朝7時くらい。ついこの前まであんなに待ち望んていた早朝のひんやりとした空気も、少し鬱陶しく感じる。
「秋は夕暮れ」なんていうが、この時期は絶対に早朝だと思う。

「季節の移ろい」とやらは相変わらず目まぐるしく、感情が時間に置いていかれる。実際のところ仕事諸々の進み具合が壊滅的で、無事に修論を書けるのかさえ不安になってきているが、ひとまずは就活を進めなくてはならない。高校や学部時代の同期、先輩達の多くが社会人になった現実を最近ようやく受け入れ始め、自分自身のこの先を見つめようという意識が生まれた。この1年間での最大の変化はここにあると思う。



 ここ数ヶ月はアウトプットの機会が非常に多かった。数年振りに曲を書いてみたり、皆で短編映画を撮って映画祭に応募して賞を頂いたり、新しい言語に触れて自分にとって未知だった分野の勉強をしたり。そして何より、就活という枠組みの中で自分自身についての事物を文章化する機会が非常に多かった。ここ数ヶ月それ以外の文章をほとんど書けなかったのもこれが理由だと思う。

 私にとっての文章を書くという行為は、生物にとっての排泄という側面が強い。文章であれ音楽であれ、アウトプットの少ない状態が続くと、自分の中の混沌とした感情と思考を理路整然としたい欲求に駆られる。結局は自分自身に納得したいという事なんだと思う。昔の自分と現状とのギャップに何かしらの腑に落ちる説明が無ければ、おそらく私は正気でいられない。
 自分自身をごまかしごまかし(恐らく他人に対しても全てを誤魔化していると思う)、自身の黒い感情に蓋をし、見て見ぬふりをし、こうあっても良いのだと自分自身を鼓舞して。そうやってなんとか20数年間を生き抜いてきた。最近はもうなんだか、自分自身を誤魔化している自覚さえ消えかかっているように思う。昔はこんな自分が特殊なのだと思っていたが、人間みんなそんなもんだという事に気付くようになった。それからというもの、何だか今までの人生の全てが急に陳腐で馬鹿らしくなってしまった。


10代の頃から「大人になりたくない事」に気付く事が大人になった証拠だと思っていた。いつからだろうか、「大人にならなくちゃいけない」と思うようになったのは。


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