8.社会心理学2

31.上野らによる交友関係の4タイプ

友人との距離をとるかどうか、友人に同調するかどうかで友人関係を分類したもの。個別的交友(距離をとる、同調しない)、表面的交友(距離をとる、同調する)、密着的交友(距離をとる、同調しない)、独立的交友(距離をとらない、同調しない)であり、現在は表面的交友が増えてきていると考えられ、一緒に行動したがるだけなので「群れ志向」と呼ばれることもある

32.ふれあい恐怖

自分自身に対して否定的な見方をしたり、食事や雑談など気持ちの交流が生まれ、関係が深まりそうな場面になると不安や困難を感じる傾向。傷つけあうことを恐れ、他者とのかかわりから引いてしまう関係回避型の青年に見られる。

33.ルービンの恋愛研究

ルービンは友人などに対する好意likingと恋人に向ける恋愛感情loveを調べるために、それぞれ13項目からなる2つの尺度を作成した。一つは恋人に対する愛情を測定する「恋愛尺度」で、もう一つは、友人に対する好意感情を測定する「好意尺度」である。これにより、デート相手に対しては恋愛尺度、好意尺度の両方の得点が高く、友人に対しては好意尺度の得点だけ高いことがわかった。また、回答者が恋をしている度合や、結婚への可能性も恋愛尺度と相関があった。

34.恋愛の色彩理論

リーが恋愛のパターンを理論的に整理し、実証データに基づいて展開した理論。まとめられた類型は、基本となる3類型(ルダス・エロス・ストーゲイ)と2次混合型となる3類型(マニア・プラグマ・アガペ)、さらに3次の混合型となる諸類型に細分化されている。大きく分けて、遊びの愛ルダス、実利的な愛プラグマ、友愛的な愛ストーゲイ、愛他的な愛アガペ、美への愛エロス、狂気的な愛マニアの6つである。リーは円環の向かい側にある類型同士の組み合わせは相性が悪く、同じ類型同士は相性がよいとしている。様々な研究結果から、女性は男性に比べてプラグマ的な態度が強いという知見は一致しているが、文化差や年齢によって恋愛の有り方は異なると考えられている。

35.互恵性(返報性)の規範

人に何かをしてもらったお返しをすること。グルドナーによる。この規範は非常に単純で、強制力が強いため、人々はこの規範にそって行動することが多い。リーガンは、絵画の評価についての実験という名目で、実験参加者にサクラとともに絵画の評価をしてもらった。休憩時間にサクラが自分と参加者の飲み物を買って部屋に戻ってきた群と、何も買わずに戻ってきた群に分けた。そして、最後にサクラが実験参加者に自分が売っているクジを買うように求めたところ、実験群は統制群の2倍の枚数のクジを買った。この傾向は、サクラが実験参加者にとって好ましい人物である場合もそうでない場合も同じだった。

36.フォアの交換財円環図

親密な対人関係で交換されるもの=交換財を、愛情、貨幣、地位、情報、物、奉仕の6種類に分け、具体性と個別性の次元で表した図。個別性とはその交換財が誰からもたらされたものかによって価値が変わる程度。愛情は個別性が高く、貨幣は低い。地位や情報が具体性が低く、奉仕や物は具体性が高い。さらに、対人関係において、この図で近接しているもの同士の交換は適切、離れている者同士の交換は不適切であるとしている。

37.衡平理論

アダムスが提唱した、報酬分配の公正さに関する理論。報酬にあたるものを結果、報酬を得るために費やすものを投入と呼び、A、Bの二者に報酬を分配する際、それが公正であると認知されるためには、Aの結果/Aの投入=Bの結果/Bの投入という式が成り立つ必要があるとする。アダムスは、認知的不協和理論を援用し、不衡平状況におかれると人は不協和を感じ、何らかの方策による不協和の解消を試みると主張した。

38.相互依存性理論

シボーとケリーが提唱。報酬から費用を差し引いたものを成果と呼び、満足は、成果と①比較水準と②選択比較水準との対比によって決定されるとする理論である。比較水準とは、その人の経験によって形成されたもので、満足の程度を判断する際の原点にあたる。選択比較水準は選択可能な他の人との関係で期待できる成果の大きさである。相互作用している二者の行動の選択肢が明らかな場合には、利得行列を用いることによって、一方の行動が他方の行動をどのように規定するか予測可能であると考える。一方の行動によって他方の満足度が決定してしまう状態を「運命統制」、一方の行動によって他方の行動が統制される上体を「行動統制」と呼ぶ。

39.葛藤解決方略

ファルボとペプローにより提唱。直接-間接(相手に対して自分の願望や要求をどれだけ明確に表現するか)、双方向-一方向(相手の願望や要求に対してどれだけ配慮するか)の2次元によって、さまざまな方略を分類している。直接・双方向なのが説得、交換取引、妥協で、直接・一方向なのが依頼、哀願など、間接・双方向が暗示、印象操作などで、間接・一方向が批判、泣く、無視などである。大渕と北中はいずれの葛藤解決方略が有効かを実験的に検討し、直接-双方向方略が最も有効であること、また、間接より直接、一方向より双方向の解決方略が有効であることを示した。

40.社会的スキル(ソーシャルスキル)

アーガイルが提唱した、対人関係がうまくいくことを可能にするスキル。訓練によって向上させることが可能だと考える。具体的内容は、その人の基本属性や目的によってさまざまで、ゴールドスタインらにより、聴く、話すといった①初歩的なスキル、助けを求める、謝るといった②高度のスキル、自分の感情を知る、他人の怒りを処理するなどの③感情処理のスキル、他人を助ける、権利を主張するなどの④攻撃に関わるスキル、不平を言う、非難を処理するなどの⑤ストレスを処理するスキル、何をするのか決める、情報を集めるなどの⑥計画のスキルの6種類をリスト化している。

41.シャノン・ウィーバーのコミュニケーションモデル

情報通信の効率を高めるために考え出された通信モデルで、その後のコミュニケーション研究に影響を与えた。情報源がメッセージを送信器に送り込む。それが送信信号に変換され(=記号化)、チャネルを通り相手のところに受信信号として送られ(=解読化)、受信機によってメッセージが復元され、目的地に伝えられる。チャネルを通過する際に、さまざまな雑音源があってコミュニケーションがゆがめられるというモデルである。このモデルが対人コミュニケーションと異なる点は、情報の流れが一方向である点である。

42.対人コミュニケーションの機能

情報の伝達・受容という①情報機能、他者に影響を与え、自分の思う方向に動かす②統制機能、③自分の内的感情を表出することによって情緒的な満足を得るという③感情表出機能、人々の多数が共有している主観的な現実を形成する④社会的現実維持機能、既存の対人関係を維持したり、新しい人間関係をつくったりする⑤社会関係維持機能などがある。

43.表象

情報伝達のために行われる身振りのことで、動作と意味とが結びついているもの。文化によって同じ動作でも意味がまったく異なることがある。①「図解(例示)」会話の補助としての役割を担うもので、ものの形や大きさを説明するときに、手で示したりする動作。②「適応行為(身体操作)」頭をかく、腕を組む、爪をかむといった動作。かつて何らかの適応的な意義をもっていた動作が、習慣として確立したもの。③「姿勢」身体全体の形や各部分の位置関係を意味する言葉。感情状態を推測する「記号」としての解釈が可能であるという立場がある一方、エクマンとフリーセンは表情からは主に感情の種類が伝達され、姿勢などからだの手がかりは緊張-弛緩の軸を中心とする、情緒の強さの情報が伝達されるとしている。一方、社会的地位の手がかりが得られることもある。

44.対人距離の4分類

ホールは、人と人が相対したときの「離れ方」である対人距離を4つに分類している。0~45cmを密接距離、45~120cmを個体距離、120~360cmを社会距離、360以上を公衆距離という。個体距離に相当する円を描いたとき、その内側を特に「パーソナルスペース」という。

45.パーソナルスペース

他者の侵入から自分を防衛するための領域で、親しくない者に入られると身体に触れられたのと同様の不快感を感じる。その大きさは、周囲の状況や性格、育った文化によって異なる。侵入を受けた際は、身を引くことで、再び自分にとって適切な距離を確保しようとする。それに対して、「なわばり」は個人・個体の所有物とみなされる空間で、侵入を受けた場合は相手を攻撃して追い出

46.本能論

フロイトの理論。「生の本能;eros」とともに「死の本能;thanatos」の存在を想定し、攻撃行動は後者が外部に向けて発現したものと解釈する。死の本能に基づくエネルギーは外部の対象に向けて発散されないと自己破壊につながることになり、攻撃性を排除することは個人にとってむしろ有害であると考える。

47.ローレンツの攻撃論

生体は、外部から受ける刺激にかかわりなく、その内部に攻撃のエネルギー源を備えており、そのエネルギーが蓄積すると外からの適当な触発刺激によって攻撃行動が発現すると考えた理論。こうした攻撃本能には、動物が自分たちのなわばりを守り、食糧を確保するといったほかに、集団内の秩序を築き、最も力のある個体が集団を支配、統率することによって安全をはかるといった適応的な機能も想定されている。

48.フラストレーション-攻撃仮説

アメリカのダラードが提唱。目標の達成が妨害、遅延されたときに生じるフラストレーションが、攻撃行動の発生に介在する、またフラストレーションの存在は何らかの形で攻撃反応を導くという考え方。攻撃は、フラストレーションの直接の原因に向けられるが、それが困難な場合、攻撃対象が別の対象や自分自身等に置き換えられる。実際に攻撃がなされればフラストレーションによる心理的緊張が弱まり、攻撃衝動の低下である浄化作用が起こると考えられる。

49.攻撃のレディネス

フラストレーションが攻撃性を高めるとしても、それが常に攻撃行動として表面化するとは限らない。またフラストレーションがなくとも攻撃行動は発生しうることから、バーコヴィッツがフラストレーション-攻撃仮説を修正したモデルに用いた概念。フラストレーションは攻撃のレディネスを高めるが、それが行動に現れるには、その状況に攻撃を引き出す手がかりが必要だと考える。バーコヴィッツは実験で、そばにテニスラケットがあるときと、ピストルが置いてあるときでは、後者の方が攻撃行動が発現したことを示した。攻撃のレディネスは、他者からの攻撃や既存の攻撃習慣などによっても誘発され、また攻撃のレディネスが極めて高いと、手がかりがなくとも、攻撃行動が出現する可能性もある。

50.抑制解除

通常攻撃感情が生じたときに、「暴力をふるうのはよくない」といった規範や、「相手から報復されるかもしれない」といった洞察によって、攻撃行動の発現が抑制されるが、暴力場面に頻繁に接することで「暴力に訴えるのはおかしなことではない」といった認識がうまれ、そういった抑制がとれなくなること。

51.キティ・ジェノヴィーゼ事件

深夜のニューヨークで、キティ・ジェノヴィーゼという女性が暴漢に襲われた事件。女性の悲鳴を聞いて声をかけた暴漢は一度手を引いたが、再び女性を襲い、近隣の住民38人が目撃していたにもかかわらず、キティ・ジェノヴィーゼは絶命した。この事件をきっかけに、ラタネとダーリーは人が他の人を助けない状況に関する一連の実験を行った。

52.傍観者効果

援助が必要になった場合に居合わせた人の数が多くなるほど、援助行動は起こりにくく、起こっても遅くなるなど、援助行動が抑制される現象。ラタネとダーリーは、実験で女性の悲鳴や物音をきかせたときに、隣室にいる実験参加者がどのような行動をとるかでこれを実証した。傍観者効果が生じる理由として、援助するべきという責任感が居合わせた人数に応じて分割されてしまう①責任の分散、自分のとる援助行動が他者にどう思われるか気にしてしまう②評価懸念、他者が行動していないのはそれほど緊急事態でないと周りが考えているからだ、と考えてしまう③多次元的無知などが挙げられる。

53.印象形成理論

アッシュによる。印象形成とは、特定の他者に関する情報をもとにその人についての全体的印象を形成する過程である。アッシュは、ゲシュタルト心理学の立場から、ある刺激人物の全体的印象は、その人物に関する個々の情報の単なる寄せ集めではなく、情報相互間のダイナミズムによって決定されると考えた。また、その人物の全体印象に大きな影響を及ぼす特性を「中心特性」(あたたかい、冷たいなど)、あまり影響を及ぼさない「周辺特性」(ていねいな、無礼ななど)があると指摘した。さらに、その人に関する情報が与えられる順番によって、形成される印象が異なる現象を「情報の提示順序効果」を報告した。

54.アンダーソンの統合理論

ある人物に対して抱く全体印象は、その人物の全体的好ましさで表せると考え、人物に関して与えられる個々の情報の好ましさが全体的好ましさにどのように統合されるのかを、線形代数の関係式で示した理論。アンダーソンは、人物記述によく使う形容詞を555語収集し、あらかじめ各語の好ましさを測定し、好ましさ別に4つに分類した。そして、好ましさの異なる形容詞の組み合わせを作り、それに該当する性格を持った人物の好ましさを測定した。その結果、好ましさを足し合わせた「加算モデル」より各語の好ましさを平均化した「平均モデル」が全体的好ましさをよりよく予測すると主張した。

55.期待効果の実験

事前情報により知覚者が他者に対して期待効果を持ち、その結果他者の認知がゆがむ可能性があることを示した、ダーリーとグロスによる実験。小学4年生の女の子の行動をビデオで提示され、前半は女の子が裕福な家庭環境で育っている肯定的期待条件群か、貧しい家庭環境で育っている否定的期待条件群のどちらかが描写された。後半は両方とも先生から出題された問題を女の子が正解したり間違えたりして、学力の高低がわからないように描写された。実験参加者は子どもの学力が何年生レベルなのか評定するよう求められ、肯定的期待条件群の方が子どもの学力を高く評定し、より多くの問題に正答し、与えられた問題も難しかったと知覚していた。実験参加者は前半で与えられた期待の正しさを確証するように、後半の情報を選択的に解釈し直したと考えられる。

56.表象

自己・他者についてのある程度整理、構造化された情報の記憶。他者について記憶された情報を人物表象、自分自身について記憶された情報を自己表象、特定の集団などについて記憶された情報を集団表象という。また、ある種の機能を持った概念表象をスキーマという。ステレオタイプ、スクリプト、プロトタイプなどともいう。

57.社会的スキーマ

フィスクとテイラーのスキーマモデルにおいて、社会的事象や人間に関するスキーマ全般を指した言葉。特定の他者や人間一般に関する①人スキーマ、特定の集団や社会的役割についての②役割スキーマ、社会的事象の生起順序や手続きについての③出来事スキーマ、自分自身についての④自己スキーマの4つがある。②はステレオタイプ、③はスクリプトに対応する。

58.ステレオタイプ

あるカテゴリーに存在する固定概念、固有のイメージ。ウォルター・リップマンが使用して定着したと考えられる。リップマンによると、ステレオタイプは人々の間で世代を超えて共有される可能性がある。ステレオタイプに基づいて相手を判断することをステレオタイプ化という。

59.チェックリスト法

白人がアフリカ系アメリカ人に対してもっているステレオタイプを測定することを試みた方法。カッツとブレイリーにより行われた。白人回答者に対して、提示された84個の特性形容詞からターゲット集団に最もよく当てはまる5つを選択するよう求めるもの。このとき、回答者間で最も頻繁に選択される性格特性が、ターゲット集団に対するステレオタイプだと定義される。

60.外集団等質性効果

社会的なカテゴリーを認知する場合、カテゴリー間の差異を強調する傾向と同時に、外集団成員の特徴を均一に捉えようとする傾向で、ステレオタイプイメージ形成の1つの要因である。パークとロスバートによる実験では、男性的な性格と女性的な性格の両方が混在したリストを男女の実験参加者に呈示し、各特性がどれくらい女性集団に当てはまりやすいか推定させた。結果、男性の参加者の方が女性よりも、女性的な性格特性は女性集団のメンバーにあてはまりやすく、男性的な性格特性はあてはまりにくいと推定した。男性にとっての外集団である女性は、より女性らしく認知されたからである。

61.錯誤相関

ある集団の成員であることと特定の性格や行動傾向を持つことは無関係なはずなのに、あたかも相関関係があるかのように錯覚して認知すること。ハミルトンとギフォードは社会的に望ましい・望ましくない行動を2:1でもつ2つの集団を実験的に設定し、一方のX集団は大集団で行動数を26個、もう一方のY集団は小集団で行動数を12個に操作した。「X集団の○○さんは××な行動をした」といった情報を実験参加者に呈示し、両集団で望ましい/望ましくない行動がいくつずつあったかを推定させた。その結果、小集団では望ましくない行動を実際の数よりも多く見積もっていた。少数事例と少数派は目立ちやすく、過度に記憶されやすくなり、実際よりも多く感じられるという錯誤相関が起こったためと考えられる。

62.ステレオタイプの変容

ロスバートは人がステレオタイプに一致しない特徴に接触した時のステレオタイプの変容を、①帳簿モデルと②転向モデルの二つに分類した。①は、一致しない事例の蓄積によって、徐々にステレオタイプが変容するモデルである。②は、1つの極端な事例に接することで、ステレオタイプ全体が劇的に変容するモデル。また、ウェーバーとクロッカーは、ステレオタイプに合致しない事例を例外としてステレオタイプイメージに組み込む、サブタイピングを提唱している。

63.プライミング効果

先行した情報の処理が後続の処理に影響を与えてしまうこと。ヒギンズらの実験では、まず、単語を提示されたスライドの背景色を答え、流された単語を復唱するという知覚課題を10回行い、このうちの4つが性格特性語で、一方の群は「冒険心のある」などポジティブ語、もう一方は「むこうみずな」などネガティブ語を提示された。次の印象形成課題では、ドナルドについての曖昧な文章が提示された。その結果ドナルドの印象は、知覚課題の影響を受けていた。これは、ドナルドの印象を求められたときに活性化していた特性概念情報へのアクセスビリティが高まったためと考えられる。また、バージとピエトロモナコの実験により、閾下提示でも影響があることが示された。

64.同化効果

プライミング実験のように、先行事象と同方向で後続事象の効果が現れること。プライミング刺激に関連する自分の判断に気づいた場合、意識的にプライミングの影響を受けないよう自分の意識を統制するためと考えられる。

65.対比効果

先行事象とは逆方向で後続事象の効果が現れること。ヘイスティとクーマーの実験では、ある刺激人物について、その人物の性格特性を知らせたあとに、それに一致する行動文と一致しない行動文を15文提示した。そのあと行動文の記憶課題を実施したところ、一致しない行動文の方が再生されやすかった。

66.ステレオタイプ抑制

ステレオタイプのことを考えないように自分の意識を抑制すること。しかし、かえってステレオタイプ的な思考が喚起されてしまうリバウンド効果が起こりやすい。マクリーらは、スキンヘッドの男性人物を提示し、1日の生活を記述するよう参加者に求めた。このとき、スキンヘッドであることによる印象の影響を受けないように教示したステレオタイプ抑制群と、非抑制群に分けた。そしてもう一人のスキンヘッドの男性も提示し、同様に生活を記述してもらったが、このとき教示はしなかった。すると、2人目に関して抑制群は、非抑制群よりもステレオタイプ的な記述になっていた。

67.連鎖再生パラダイム

カシマが、ステレオタイプ一致・不一致情報の伝達過程を検証するのに用いた実験法。この実験では、ジェンダーステレオタイプに一致・不一致な情報を含む2人の人物の物語を実験参加者に呈示し、ディストラクション課題ののちに、その物語を思い出すよう求めた。次に、想起された物語の記述内容を別の実験参加者に呈示するということを5人に繰り返し、連鎖再生をおこなったところ、1人目では不一致情報が早期されやすかったが、伝達が進むにつれて一致情報が想起されやすくなっていた。

68.対応推論理論

ジョーンズとデイヴィスにより提唱。観察された他者の行為から、その人の属性を推論(=帰属)する過程を2段階に分けて考えた。最初は①意図の帰属で、行為者に結果がそうなるという知識があり、それを行う能力があるときに、意図があると判断される。そして②属性の帰属で、観察された行為がその人の意図によるものと判断されると、その行為はその人の属性によるものと推論されることになる。推論における行為と属性の結びつきが強いとき、その推論は対応が高いということになる。①非共通効果が少ないとき、②社会的望ましさが低いとき、③快楽的関連性が大きいとき、④個人性があるとき、より対応の高い理論となる。

69.ANOVAモデル(共変原理)

ケリーの帰属理論。一般の人があたかも分散分析をするように、原因と結果の共変関係から原因を導き出すとする。①実体についての弁別性、②時を通じての一貫性・様態を通じての一貫性、③合意性を確認し、合理的に分析することで原因を特定できるとしている。

・共変原理:ANOVAモデルにおいて、結果が存在するときには存在し、結果が存在しない時には存在しないような条件に原因が帰せられるというルール。

・因果スキーマ:経験によって獲得している因果関係についての知識。ケリーは因果スキーマを用いて帰属を行うとしている。

・複数十分原因スキーマ:因果スキーマの中でも、原因がいくつあってどれか1つがあれば結果が生じるようなもの。

・複数必要原因スキーマ:因果スキーマの中でも、どの原因もなければ結果が生じないようなもの。

・割引原理:ある結果が生じることに関するある原因の役割は、他にももっともらしい原因が存在する場合には割り引かれること。たとえば、テストの成績がよくても、その問題が簡単であったなら、その人の能力は割り引いて推測される。

・割増原理:ある結果が生じることに、抑制要因がある場合、それがない場合に比べて促進要因が割増されること。たとえば、テストの成績がよかったとき、病気を抱えていたならば、能力は割増しされて推測される。