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【名作迷作ザックザク㉘】遊星からの使者は再来せず...されど半世紀を経て最高画質で蘇る宇宙人との相克の物語は厳しく人類のモラルを問いかける 『「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
 幼少期のこの時期、祝日の"体育の日"("スポーツの日"への名称変更は2020年からだったか・・・しかし何の意味が有るのやら?)に小学校で催される地区の父兄の運動会にやたら乗り気だった父に請われて毎晩のように親子二人三脚の練習に付き合わされたことを思い出す、O次郎です。

ああいうのって、ぶっつけ本番で上手く行かずに盛大にコケるのを
見る側もやる側も楽しむのが醍醐味だと思うんですが・・・どうでしょう。
生徒側の運動会なら授業時間での練習もあるのでガチですが、大人の運動会はあくまでエンタメ。
いい歳した大人がいきなり全力で走ったりすると平日に差し障りがあるしね。(´・ω・`)

 今回は先週から劇場で復刻上映されている企画『「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映』です。
 僕は世代的にかなり後なのですが、幼少期には再放送を観られる機会にも恵まれず、大学生になってからDVDレンタルで初めて全話視聴しました。前評判は聞いていたもののあらためてそのドラマ性の高さに驚き、コアファンの言説の中で何かと引き合いに出されるのにも納得したものです。
 その後のウルトラシリーズ作品はリアルタイムで観た作品もあれば評判を聞きつけて後追いで観た作品もあり、スルーしている作品も相応にありぐらいの距離感でしたが、このほど熱心なファンの友人に誘われて十五年ぶりぐらいで再見しました。
 "4Kリマスターで5話をセレクション上映"という企画なのでドラマ性の高いエピソードよりも特撮の精緻さが冴えている作品が優先的にセレクトされていますが、それらの中で特撮面とドラマ面で個人的にあらためて気付かされたところを書いてみようと思います。僕にとってのウルトラシリーズの思い出についても触れてますので、とある世代にとっての印象の一例として読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・・・"ダウンタウン熱血行進曲"!!

懐かしき友人宅でのファミコンの思い出の一ページ。
基本的にCPUが高スペックなうえにほぼノーミスなのでまともにプレイしても勝てず、
結果として二人プレイで敵を一人ずつ袋叩きにしないと勝てなかった・・・。



Ⅰ. わたしにとってのウルトラシリーズ

 僕は昭和60年(1985)生まれなのですが、生まれて間もない時期はTVで全くウルトラマンにお目に掛かれませんでした。どうやら1980年放映の『ウルトラマン80』以降、放映キー局だったTBSとの関係が悪化したという背景があったようですが、そんな事情は幼児は露知らず、結果としてウルトラシリーズは本来観るべき幼少期には児童誌でしかお目に掛かれず、原体験としてどこか縁遠いヒーローとなってしまったのでした。

円谷プロダクション第6代目社長にして最後の創業家一族代表となった円谷英明氏による内幕本。祖父の円谷英二氏や父の円谷一氏の体制による金満ながら上質な職人気質な作品を生み出していた日々や、続く叔父の円谷皐氏の体制下での奇跡的な経営安定と反比例するような作品の低質化およびTBSとの確執やタイの企業とのウルトラマン訴訟、そして憐れな同族間主導権争い を経ての被買収による創業家一族の追い出し等々、特撮ファンはもとより同族経営企業の栄枯盛衰のルポとしても大変真に迫っており、おススメです。

 そんな中できちんとブラウン管で観られたマイファーストウルトラマンは、なんとオリジナルビデオ作品にしてオーストラリアで製作された異色作『ウルトラマンG』でした。裕福な家庭でもなかったので高額なVHSソフト(磁気テープは原価が高い…にしても30分作品でも普通に一万円近い値段相場でした)など買ってもらえる筈も無かったのですが、幸運なことに91~92年の年末年始にかけてNHKBS2で放映されたのを観ることができました。当時幼稚園生の冬休み期間で雪遊びが楽しみで毎日朝早くに目を覚ましていましたが、テレビ欄で放映予定を見つけた母が教えてくれ、興奮の下にブラウン管の前に正座して見入ったのを思い出します。

ウルトラマンG』(1990~1991)
環境問題を下敷きにした中々ハードなドラマが展開され、
特に敵ボスのゴーデスに一度グレートが敗北する展開は衝撃的でした。
たしかコレのパズルを買ってもらって一時期延々と遊んでたような。

 そして同時期に放映が始まったのがこれまた異端のアニメのウルトラ作品である『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』であり、こちらは調べてみると同じくNHKBS2で18:30-18:55の放映でしたが、たしかそれとカップリングする形で18:00~18:30の時間帯にウルトラマンタロウ』の再放送もスタートしており、TVシリーズの原体験としてはこれらの作品となりました。

※『ウルトラマンキッズ』に関してはこのOP主題歌を強烈に覚えています。なんと唄われていたのはドラちゃんソングでも有名な山野さと子さんでしたか。反面、ストーリーはよく覚えておらず、たぶん平凡なドタバタコメディーだったんでしょう。

ウルトラマンタロウ』(1973~1974)
基本的な内容がコミカルで怪獣デザインもそれに沿っており、
そのへんが全世代的評価には結びつかなかったようですが幼児にとってはまずまず楽しめました。
コミカル描写というのは一番時代性が出てしまうところなのでしょうが子どもの頭の柔軟さで
そこは問題無く受け入れていたようで。

 その後、少年期に入ると購読誌が『テレビマガジン』から『コミックボンボン』に移ったのですが、そこで長期連載されていたのがウルトラシリーズのキャラクターが忍者的世界観の中で一話完結のギャグを展開するこちらのシリーズです。ギャグそのものも面白かったですが、光線技や登場怪獣などの各作品の元ネタは主にここから学んだように思います。

※kindle版になっていないのが痒いところに手が届かないところですが、ボンボンコミックスにしては復刻盤が刊行されている時点でかなり厚遇されている方です。翻って本作のファンが多いという証左でもあるでしょう。

内容はこういう感じのドタバタギャグ。
同じくボンボンで『温泉ガッパドンバ』も連載された御童カズヒコ先生の
お下劣ナンセンスユーモアが横溢しており、よく円谷が許可したもので・・・。
因みに自分は、初代ウルトラマンがバレンタインチョコを貰えず悲しんでいたところを
周囲の面々が悪ノリして彼にチョコを内緒で届けて陰でせせら笑い、
それを知った彼がブチ切れるエピソードを特に覚えています。

 時を同じくして今度は出光興産とタイアップしたまたもや異色の劇場用作品の『ウルトラマンゼアス』が登場。劇場まで足を運ぶことはなく、結局作品そのものを観たのは大人になってからですが、CMは当時相当観たもので…。メインキャストにとんねるずさんが名を連ねていることもあって、少年期にはウルトラシリーズは完全にギャグのイメージが確立していました。

※この主題歌も当時かなり耳にしたもので。たしか、友人が8cmシングルを地元の祭りの射的の景品で手に入れており、一時期彼の家に遊びに行くと何度もステレオで聞きました。

 そんな中でいよいよ『ウルトラマン80』から実に16年後の1996年、満を持して復活したTVシリーズが『ウルトラマンティガ』でした。
 当時既に小学校5年生だったので一般的にはそろそろヒーローものからは卒業の時期ですが、ご存じのように本作はV6長野博さんが主演という野心作で、当時中学生だった4歳上の姉がご多分に漏れずジャニオタになっていた時期であり、姉につられる形で自分も観始めたのでした。

ウルトラマンティガ』(1996~1997)
時に怪獣を対峙するために兵装を強化する不毛を衝いた話等、ドラマ性の高い話も多く、
"平成のウルトラセブン"との評も納得の出来栄え。
そして本作といえばV6が歌うOPの「TAKE ME HIGHER」ですが、
なかなかビターな歌詞が今にして染みるED「Brave Love, TIGA」もなかなかどうして。

 その後は中学・高校と勉強や部活やらに忙しくしてめっきり新作を観なくなってしまったのですが、大学生になって時間に余裕が出来てから昭和のシリーズをチラホラ、大人になってから評判になった作品の話を聞きつけてパラパラと観ている具合です。

 『ウルトラセブン』に関しては第12話の欠番の話も有名ですが、今回のセレクション上映では当然ながらというか除外されました。

※第12話の件についてはこちらの真相追及ルポが非常に読み易く、きちんと自分の足で調べられていておススメです。同時期の円谷特撮作品『怪奇大作戦』の第24話の封印経緯調査についてのルポも載っています。

※ちなみに同著者のこちらの本では、上記のタイの企業とのウルトラマン訴訟について調べられています。裁判記録を時系列に沿って詳細に追っており、こちらもなかなか読み応えがありました。

 前置きが長くなりましたが、以下、今回の4Kセレクション上映の感想でございます。


Ⅱ. 4Kセレクション上映各話感想

・第7話 「宇宙囚人303」

"国際指名手配されている凶悪殺人犯が刑務所から逃亡、他国へ落ち延びて殺人を繰り返す"
という内容を宇宙スケールに置き換えた展開。
子ども向けな解り易さに配慮した展開の中ではこの画のアンヌを催眠術で操っているくだりは
直接的な催眠描写が無かったため、そこだけ些か不親切だったかも。
そしてやはりというかなんというか、序盤のガソリンスタンドでの
外国人タレントの吹き替えセリフ「コンニチワ!・・・ガソリンクダサイ!!」の
取って付けた様なカタコト感は放映から55年を経た劇場でもしっかり失笑が起きていました。
当時の子どもはこれを違和感無く受け入れていたのか・・・さて?

 冒頭から次々と人知れず暗殺を繰り返す等身大のキュラソ星人ですが、相手を殺す手元のアップや闇夜に光る目元など、後の初代『仮面ライダー』の序盤で見られるような怪奇色がかなり強くなっており、後半の民家に忍び込む場面やポインターの後部座席に忍び込んでいたシーンなど、なかなか一貫しています。その点、よくぼやけて観えないほうがむしろホラー効果は高く、解像度が上がったことで割を食った演出かもしれません。
 しかしながらウルトラホーク1号のβ号を乗っ取られたことによるα号とγ号に挟み込んだことによる空中ドッキングのシーンの特撮は臨場感が増し、すんでのところで失敗して散る火花の鮮やかさはまさに4Kならではの迫力を獲得しています。
 また、ガソリンが主たる食糧というキュラソ星人ゆえ、炎に包まれた彼に攻撃せず自滅を待つ、という展開も、怪獣プロレスを期待する視聴層に向けてなかなかに攻めた演出だと思いました。実際の国際指名手配犯であればこれ以上の被害を防いで尚且つ司法の裁きを受けさせるために一刻も早く能動的に無力化に移るのでしょうが…。

ダン「広い宇宙でも、もう君の逃げ場はないのだ。キュラソ星人。だが、
   それは自業自得というべきだ。宇宙でも、この地球でも、正義は
   一つなんだ」

という最後のダンのセリフは実に尤もで頼もしく聞こえますが、全会一致で悪と見做された者の末路が如何に悲惨なものかという証左でもあるように思えます。
 そして最後のナレーション、
 
ナレーション
「宇宙の通り魔事件は終わった。そして、その報酬としてキュラソ星と地球の間にすばらしい友情が生まれることだろう」

ということですが、結果として8人も犠牲になったことを盾にして地球側がキュラソ星との星間交友交渉を有利に進めようとする展開を想像すると、つとに政治の残酷さを思わずにはいられません。

・第26話 「超兵器R1号」

美しい花々が咲き乱れる山中での決闘・・・。
ほぼ主体的に攻撃してこないギエロン星獣を攻撃せざるを得ない矛盾。

 超有名な反核兵器エピソードにして名編。あの名ゼリフ、

ダ ン 「侵略者は超兵器に対抗して、もっと強烈な破壊兵器を作ります
     よ」
フルハシ「我々はそれよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか」
ダ ン 「………。それは…、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンです
     よ」

はラストに言っていたと記憶していたので、冒頭にそのやり取りが早くも出てきてビックリ。
 はじめから反核・反軍拡のエピソードとして観るといろいろと明確になるところがあり、母星をR1号で破壊されたことで地球にやって来たギエロン星獣は山岳地帯に舞い降りてきたものの自分からは何もせず、先に仕掛けたのは地球側のウルトラホークによる投下爆弾…。
 いったんは爆散するも夜半に再生し、母星爆散の際に蓄えた放射性のガスをあたりに撒き散らす。セブンのアイスラッガーが硬質な体に歯が立たず、最後は相手の片翼をもぎ取りつつ喉元を掻っ捌いて絶命させる…

今回の4K化で鮮血の迸る様子がより鮮やかに。
より残虐さというか、地球側のなりふり構わない悪質さが際立ちました・・・。

 自分たちが作った兵器に酔いしれてその兵器がもたらした害毒で自縄自縛に陥る・・・。
 今現在に到って当時の冷戦は別の形で戦争を呼んでおり、その世を生きる我々はまさに55年の歳月を経てなお、作中での回し車をカラカラと回し続けるシマリスであり、血を吐きながら悲しいマラソンを続けているのですね。

・第37話 「盗まれたウルトラ・アイ」

異邦人ゆえの孤独を侵略者の尖兵の少女とダンが共有した異色編。
実は怪獣が出て来ないのですが果たして4K化の恩恵は・・・。

 後番組である『怪奇大作戦』でもしばしば見られたように、物語の主要な舞台となるスナック「ノア」に象徴されるゴーゴークラブのけばけばしさが異様な雰囲気を醸し出す怪作。
 最初から忌むべき排除すべき星として潜入したがゆえに彼女にとっては地球に美しい面を見出せず、反対に偏見の無いダンにとっては人類の善悪双方を達観しているがゆえに共存の先輩として彼女を説得もし得た…。
 立場というものがいかに人間を雁字搦めにしているを強く感じさせられる一本だと思います。
 上述のスナックのシーンの中でも特にクライマックスでウルトラアイを取り返しに来たダンをウルトラアイまがいの眼鏡を着けた集団が取り囲むシーンは高画質化により、よりグロテスク且つ幻想的な浮世離れ感が発揮されて、どこか舞台劇めいた雰囲気も感じさせます。

相対して言葉を交わさずに視線とテレパシーだけで意思疎通する二人。
高度な文明を持つ異星人同士といえど結局武力装置を手にしているところが厭な現実…。

 思うに二人は出会うのが遅すぎたのでしょう。
 ダンと彼女に愛情とまではいわなくとも友情が生まれていればあるいは彼女も地球と同じぐらい母星も醜悪であることに気付けたかも。そんなことも感じさせる相互不理解の物語でした。


・第48話・49話 「史上最大の侵略(前後編)」

脈拍360、血圧400、熱が90度近くもある。」という冒頭のダンの不調を告げる
モノローグに初回視聴時同様クスッと笑ってしまった。
"メディカルチェックを受けると人間でないことがばれてしまう"ということらしく、
バイオリズムも人間に合わせるぐらい出来そうなもんだけど・・・。

 前後編ということもあって、本作のラスボスである双頭怪獣パンドンがメチャクチャ強かったんだと記憶しておりましたが、原因はそれよりもダンのこれまでの度重なる激闘による疲労の蓄積だったということでなんともかんとも。
 医務室を脱走した先で子どもの家と秘密基地に転がり込むところがちょっと視聴者に日和り過ぎというか、それであれば子どもゆえのセブンという存在の捉え方を示してそこから上手く禁じられた最後の変身へのモチベーションに繋げて欲しかったところ。
 4K画質化に関しては、ラストのパンドンとの再戦に到ってのウルトラホークと連携してのアイスラッガーでの決着も然ることながら、それ以上にアンヌとダンの最後の別れのシーンがよりラブロマンスとして映えたように思います。

このシーンのロケーションがそういえば殺風景な工事現場だったということには
些か幻滅しちゃったけど・・・
この影で向かい合うシーンの幻想感よあらためて!
地球人と異星人ではなく、ダンとアンヌという対等の一個人の魂の交歓が此処に。

 あらためて観るとダンの帰還を終生待ち続ける隊員たちの決意は高潔なものの、元々のモロボシダンの生死の扱いはどうなっているのかとか、ごーす星人に捉われているミニチュアのアマギ隊員の出来があんまりで高画質化でそれがより酷く見えてしまったとかありますが、番組終盤でスポンサーやスケジュールの重圧のピークの中できちんと物語を畳んでくれたことが何よりです。
 あらためて本作は、一年間を掛けて様々な異星人との出会いを経つつ、人類が外宇宙に進出するための技術ではなくモラルを問うた作品だったのかなと思います。


Ⅲ. おしまいに

 というわけで今回は復刻上映企画『「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映』について書きました。
 余談ながら上述の円谷英明氏による最後の円谷一族体制で製作されたウルトラマンである『ウルトラマンネクサス』もおススメしておきます。

ウルトラマンネクサス』(2004~2005)
1エピソードが数話連続する大河ドラマ形式で展開され、
ウルトラマンに変身するのが主人公ではなかったり、
怪獣に襲われた人々の記憶を消す任務に疑問を感じたり、
さらには主人公の恋人が実は物語開始前に既に…といった非常にハードな展開。
視聴率的には苦戦したようで1クール短縮されましたが日和らずに一貫した物語展開でした。
ちなみにリアルタイムでは大学進学の為の浪人時代だったので後年評判を聞いて観ました、とさ。

 幼少期にリアルタイムで体験した経験が薄いのでどうにも特撮作品の中では思い入れが今一つなのですが、他におススメのウルトラ作品ございましたらコメントいただければ恐悦至極にございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




※人呼んで"ウルトラリンチ"!!
そもそもが一対多数なのもあるが、まるでその筋の方々のような容赦無い痛めつけ方や・・・。(´;δ;`)

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