【最新作云々㉔】苦労人の名優がモラル無き誘拐犯に略取された時、脱出を賭けて人生最大の"演技"が始まる... 誘拐グループVS人質・警察の二転三転スペクタクル映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』が再アニメ化ということで、小分けの複数シーズンに跨るにしても頑張って人誅編までアニメ化してほしい、O次郎です。
今回は最新映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』についてです。
いくつもの主演男優賞受賞歴のある俳優ファン=ジョンミン氏が本人役で主演した誘拐もので、自分と同じく誘拐された少女を含めて脱出すべく犯人側と命懸けで駆け引きするアクションスリラーです。
2時間越えがザラで、どんでん返しが二度三度繰り返される韓国映画の中に在って本作はたったの90分尺ですが、警察も交えた追跡・逃走劇は幾重にも展開して飽きさせず、満足感は尺以上の大作でした。
韓国映画好きは勿論のこと、心理戦ものの秀作をお探しの方々、読んでいっていただければ之幸いでございます。なお、ネタバレ含みますのでその点ご注意をば。
それでは・・・・・・・・・・・・・"フタエノキワミ アァァアーーッ!!"
※何度観ても・・・・・・うん。
彼方の方々は違和感無く観ていたんだろうか。(´・ω・`)
Ⅰ. 作品概要だったり製作陣だったり
※日本語版Wikiページが存在しないため、翻訳等でご覧ください。
2015年の中国映画『誘拐捜査』のリメイクであり、あちらは警察と犯人側の攻防がメインでしたが、本作では人質側の描写がメインに。
とりたてて二枚目でもなく、"京畿道地域出身の赤ら顔の俳優"(ソウル特別市と仁川広域市を除いた北西部ということで、日本でいうと"首都近県の田舎"みたいなニュアンスでしょうか?)として苦労しながら一歩一歩地道に実績を積み重ねてきた、という自らの出自を設定に盛り込み、作中に反映させています。そのことによって中国版よりも犯人グループに捉われている状況の悲壮感・緊迫感がいや増し、自分だけではなく同じ境遇の女学生を優先的に救おうとする小市民的勇気が親しみやすいヒロイズムをも醸し出しています。
件のファン=ジョンミンさんですが、ヒーロー側にも悪役側にも転じるザ・バイプレーヤーぶりで、近々では哭声/コクソンでの禍物との強烈な暗闘を演じた祈祷師役や、工作 黒金星と呼ばれた男でのどこまでも国家に忠実なエージェントが印象的でした。
監督のピル=カムソンさんはなんと本作が監督デビュー作。
人質側、犯人側、警察側のそれぞれの思惑とドラマを短い尺に上手く重ね合わせつつ、それぞれが交錯しそうで絶妙に擦れ違いクライマックスに収斂するタイムリミットものとして非常に満足の良く出来でした。
次回監督作が非常に楽しみになる処女作にして代表作だと思います。
Ⅱ. 見どころ的なあれやこれや
まずもって作中でオミットされているのが誘拐グループ側の出自です。近々、巷間を騒がせている誘拐専門の犯罪者集団ですが、身代金が手に入ったとしても証拠隠滅のために人質を殺害するなど凶悪性が著しく、そこまで倫理を振り切らせた彼らの背景が気になるところではあります。
通常であれば貧しさゆえの踏みつけにされた幼少期であったり、高額な医療費が必要な家族事情だったりが描かれそうですが、本作ではそうした彼らの事情が一切語られることはありません。犯人側のリーダーが筋金入りの前科者であることは判りますが、特にカリスマ性やメンバーとの絆が有るわけではなく、ただただ道を踏み外した人々です。
変に感情移入させようとするのではなく彼らを理不尽な悪に留めたことで、結果として誘拐の謂れなき暴力の恐怖と不気味さが際立ち、さらには終盤に仲間割れの緊張も加わって物語全体が締まったのではないかと思います。
また、武道や銃器使用の心得が有るわけでもない主人公の奮闘ぶりが秀逸です。見張り役の下っ端子分を自らの過去出演映画の名ゼリフで手懐けたり、マネージャーや後輩からの電話にこっそりと自分の窮状を知らせるメッセージを忍ばせたり、果ては白目をむいて失禁を装ってまで犯人一同を欺いたり・・・。集団の暴力で捻じ伏せようとする彼らに"演技力"だけを武器に立ち向かう姿はなんともユニークです。
加えて自分よりも非力な女学生も囚われていることが逆に彼のモラルを奮い立たせ、隙を見て二人で逃げ出した際に自ら囮を買って出るくだりはヒロイックながらその絶望的な鬼ごっこにヒリヒリさせられます。
中国版では超絶的な閃きと組織力で優秀さを示していた警察サイドは本作ではよりリアリティーを与えられ、確保した犯人グループの一人から吐き出させた情報を頼りに地道に犯人に迫ります。
中盤で一度は敵リーダーに肉薄するも街中で爆薬を使用されて逃げられ、終盤では敵アジトを急襲するも間一髪で居所を移されてまたもや爆薬に餌食に・・・。こちらはこちらでヒーロー刑事が存在せず、いったんは逮捕した敵リーダーとの駆け引きがあったりと、無敵でないがゆえに応援したくなります。
最終的にファン=ジョンミンさん、敵リーダー、警察の三社入り乱れての乱戦からなんとか逮捕に至るわけですが、そこで余韻というかその後の影響等は描かれずにサラッと事件の解決とともに幕を閉じてしまったのが不満点といえば不満点かも。ジョンミンさんが誘拐のトラウマを追いつつもなんとか持ち直して…ぐらいのもんだったし。
敢えて言うなら、敵グループの崩壊していく過程はなかなか身につまされるものがありました。
カネだけで繋がり、ゆえにその分け前で不満が蓄積していったことで内部の不満が鬱積し、暴力支配という浅薄さゆえに裏切りが横行し、銃や爆弾といった暴力装置に頼り過ぎたことで暴発事故で命を落とす者も現れ、それがまたメンバーの激情を誘発する…。
それだけ短絡的な繋がりゆえに逆に警察の捜査を難航させたとも言えますが、冒頭でのあまりにも人でなしな凶悪ぶりからすると次第に自壊していく彼らの姿はなんとも憐れなものでした。
Ⅲ. おわりに
というわけで今回は最新の韓国映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』でした。
あらためて俯瞰すると純然たるスリラーであり、啓蒙的なメッセージはありませんが、実話ベースのストーリーなのでそうした付け足しは無しでよかったのかもしれません。
尺が短いこともありますが決して描写不足というほどでもなく、クライムもののカタルシスを味わうにはうってつけなのは間違いないと思います。
近々の実話原作ものでもし他におススメの作品がございましたらコメントいただければ恐悦至極にございます。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。
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