見出し画像

【最新作云々⑩】裏切りと殺戮が跋扈する地獄のソマリア内戦下に於いても南北朝鮮対立は揺るぎ無し!果たして祖国の地を踏めるのか・・・ 非武装の外交官家族たちが繰り広げる絶望的なワイルドスピード脱出劇『モガディシュ 脱出までの14日間』が描くマスゲーム戦闘の狂気

 結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。d( ̄  ̄)
 アニメ『夏目友人帳』の主題歌で一番好きなのは第三期のコレ、O次郎です。

同作の主題歌には珍しく疾走感が有るというか、OPらしいOP曲。
映像的にはこの次の第四期OPの幼い頃の夏目くんの体育座りににゃんこ先生が潜り込んでいくヤツが好きだった。
ていうか、直近の第6期の放送からもう丸5年も経っちゃってるのか・・・。


 今日も今日とて最新公開映画『モガディシュ 脱出までの14日間』についてのお話です。
 韓国映画といえば、マ=ドンソクさん出演の映画は大概劇場に足を運んでいるものの、昨年末公開のMARVEL映画『エターナルズ』以降はしばらく彼の出演作の公開が無いのでしばらくご無沙汰でした。
 がしかし、本作のテーマが"ソマリア内戦"ということで、高校生の頃に観てその"数の暴力"に震え上がったハリウッド映画『ブラックホーク・ダウン』を思い出し、あちらとはどう違う形であの地獄を切り取るのかと俄然興味が湧き、この週末に劇場で観てきた次第でございます。

ヘリが撃墜されたことでたった数人で敵軍の真っただ中に放り出される恐怖…。
ラストに援軍が到着して瞬時に戦況の逆転を示されて、余計に数の暴力の恐ろしさを感じました。
日本公開当時イラク戦争真っただ中で、「同じことの繰り返しか・・・」と思ったものです。

 結果的に、残酷描写に容赦の無い韓国映画だけあってなかなかに苛烈な地獄絵図でしたが、一方で北と南の(個人レベルでの)友情を描いたバディーものとしての面白さもふんだんに盛り込まれており、通り一辺倒ではないバランスの良い作りでした。
 美化されることのない過酷な現実を抉り取った戦争映画、いがみ合っていた二人が困難を前に絆を深めていくバディー映画、そして絶望的な状況の中から生還する脱出劇がお好きな方、どれか一つでも己の琴線に引っかかるエッセンスが有れば読んでいっていただければ之幸いでございます。例によってネタバレ含みますのでご容赦をば。
 それでは・・・・・・・・・・・・・・・"おい、夏目!ジャムのフタ開けてくれぇぇ~~いっ!"


アイキャッチだけでも即座に和んじゃう。
・・・疲れて帰ってきた夜のリフレッシュにいいよね。(=^・ω・^=)



Ⅰ. 作品概要

 国連加盟を目指して韓国、北朝鮮がそれぞれ多数の投票権を持つアフリカ諸国へのロビー活動に励んでいた1990年、その相手先の一国であるソマリアで燻っていた内戦の火の手が上がり、両国の外交官とその家族たちが政府軍VS反乱軍の巻き添えや処刑の恐怖におびえながら国外脱出を目指すパニックムービー
 監督は『ベルリンファイル』や『ベテラン』等のアクション映画で知られるリュ=スンワン監督で、本作でも過去作で展開したような静かで熾烈な諜報戦や圧倒的多勢に立ち向かうヒロイックな演出が見られる。
 国外脱出のため、協力することになる北と南の外交官たちだが、それぞれの本国政府との通信が途絶した極限状況においてもお互いがお互いを亡命させようとする権謀術数・疑心暗鬼の仲に在り、個人レベルにおいても政治抜きには両国の関係が存立し得ない厳然たる事実に眩暈がする思いであった。
 最終的に互いの協力によって脱出は成し遂げられるものの、第三国でそれぞれの政府筋に迎えられながら別々の航空機に乗り換える終幕は、エンターテイメントですら容易に突破出来ない現実の厳然たる断絶を感じさせ、一方でその宿命ゆえに個々人の友情がキラリと光る南北バディームービーにまた一つ傑作が生まれた感が有り、センシティブな両国関係だからこそ生まれるジャンル映画であることをあらためて感得させられた一本。

『コンフィデンシャル/共助』(2017)
北のエリート刑事と南のダメ刑事が国際犯罪グループを前に協力。
ダメ刑事を演じるユ=ヘジンさんのユーモアが炸裂。
『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)
韓国の工作員と北朝鮮の対外交渉役が互いの祖国のために暗闘し、
その戦いが終わった後に秘かにその健闘を称え合う。



Ⅱ. 見どころいろいろ

 序盤中盤にかけてはスパイ映画です。
 北と南の外交官たちが相手側の思惑を探り合い、その強引なやり口に煮え湯を飲まされ、その憤懣を糧にまた騙し合いに勤しむ。
 しかも相手方の政府要人が露骨に賄賂を要求してきたり、両国の対立関係をいいことにさらなる条件を突きつけてきたり、まるで反社会勢力との駆け引きのようでなんとも暗澹たる気持ちにさせられるものの、一方でロビー活動の熾烈さ、汚さの一端を知る機会にもなったと言えるでしょう。

ロビー活動先のソマリア/モガディシュでバチバチの両国大使と参事官。
冒頭、現地のアウトローまで利用した北朝鮮側の妨害により、
韓国側はソマリアへの手土産や切り札を奪われてしまう…。

 かくして兼ねてから緊張状態にあった政府軍と反乱軍との小競り合いが激化し、内戦状態に突入します。
 反乱軍による政府軍への攻撃が激化して武装しての殺害行為にエスカレートし、それに政府軍が応じる形で血で血を洗う戦闘状態が常態化していきますが、一番観ていてしんどかったのが子どもたちの描写です。

ほんの小学生ぐらいの子どもが報復のために銃を持って猛り狂います。
特に強烈だったのが、反乱軍の一員だった青年を政府軍の一人に嬲り殺された少年が報復として
泣いて慈悲を乞う相手を射殺し、哄笑する場面
です。

 「銃を持っている子どもほど怖いものは無い」という言説を目にしたことがありますが、歯止めが利かず、些細なことをきっかけに引き金を引くその姿は戦争の狂気そのものです。実銃を持ちながらモデルガンの如く振り回して相手が倒れ込む様を無邪気に笑う姿もゾッとしました。

そこで思い出すのが『シティ・オブ・ゴッド』。
こちらは生きるために銃を取るストリート・チルドレンですが、
身の丈に合わぬ強力な暴力装置に酔う姿の恐ろしさは同質。

 また、外国の賓客として好待遇が一転、政府転覆のための障壁として排除対象へと一瞬に立場が激変してしまう恐怖も実に端的に表現されています。
 非武装の要人とその家族、ということでものの見事に非戦闘員ばかりであり、しかも政治的に相容れない天敵同士が脱出のために協力を余儀なくされるということもあって、常にバリバリの緊張状態が画面いっぱいに展開されます。そんな中でもアクション映画としてのケレン身も発揮されており、実際にテコンドー使いである韓国側参事官役のチョ=インソン氏と北朝鮮側参事官役のク=ギョファン氏の肉弾戦ガチンコバトルは少ないながらも大きな見せ場の一つです。
 内戦のあおりを受けてまず北朝鮮側の領事館が陥落し、泣く泣くの思いで北朝鮮側大使が家族一同を引き連れつつ韓国側領事館に逃げ込みます。電気が不通で蝋燭を灯しての晩餐シーン、毒を盛られている可能性を恐れて口にしない北朝鮮側に対して韓国側のハン大使が口を付け、ようやく食事が始まるくだりは”こんな事態でまで・・・”と感じざるを得ませんが、それがゆえに両国の関係を端的に表している重要なシーンでした。

『クーデター』(2015)
東南アジアの某国へ支援事業で訪れた一家がクーデターに巻き込まれる…
ということで本作と状況が似ていて思い出しましたが、
逃げる最中に政治思想が絡んで来ないぶんだけこっちのほうがマシだったのか。
確か池袋のミニシアターで観ましたが、そういう小品こそ記憶に残ってるもので。

 絶望的な状況の中、指定された時間までにイタリアの大使館に逃げ込めば隣国への航空機に乗せてくれることになります。・・・正式な国交の無い北朝鮮国民は韓国への亡命を前提条件にして
 そこから白昼堂々のカーチェイスが始まりますが、完全非武装の逃げる主人公サイドに対して負う反政府軍側は車載の重機関銃等の完全武装、という絶望的且つ一方的な力の差で、それがゆえに超大作『ワイルドスピード』シリーズと比べてのそのスリルのほどは勝るとも劣りません!!

少しでも車の走行を厚くするために、大使館内のありったけの木の板や本を
テープで車内に貼り付ける即席の補強策!!
絶望的過ぎてクラクラするクライマックスです。

 クライマックスは『俺たちに明日はない』も比べ物にならないほどの銃弾を浴びせられつつ、遂に一人の犠牲者を出しつつ(それでも奇跡的な少なさですが…)、遂にイタリア大使館前までたどり着きます。
 ゴール目の前ながら、そこでのイタリア軍と反乱軍との睨み合いもギリギリまでヒリヒリを見せつけてくれます。

 で、ようやくのようやくのようやくで帰国の途に就くわけですが、北朝鮮国民の亡命の話はハン大使の機転でうまいこと有耶無耶にし、両国民はそれぞれの国への政府専用機に登場するべく、滑走路を歩きます
 イタリア機内での互いの健闘を称えたのもつかの間、すぐさま両国のイデオロギーの象徴である政府職員にガッチリガードされつつ、再び対立の現実に連れ戻されるわけです。
 わかりきった結末といえばそれまでですが、この作中時点でも40年、今現在にすれば70年余りの分断状態であるわけで、こうしたフィクションの中だけでもささやかな交流が描かれることは意義の有ることなのかなと思います。

他国の、それも内戦状態であってもイデオロギー相克は深く根を張る…。



Ⅲ. まとめ

 というわけで今回は、内戦の狂乱からの脱出を目指すアクション・スリラーに南北バディーものの味付けも加えられた韓国大作映画『モガディシュ 脱出までの14日間』について語りました。
 内戦が題材ということでかなりショッキングなバイオレンスシーンも有りますが、その狂乱の中で次第にバラバラだった主人公たちが一致団結していくパニックムービーの醍醐味もきちんと発揮されており、娯楽大作としても成立させているのはさすがだと思います。他国を舞台にしながらも自国ゆえの問題を上手く盛り込んでいるのも見事でした。
 最新公開映画の話が続いたので、サブスクでの配信作品やCS放送の旧作の話もまたぞろ書いていく所存でございます。もしおススメやリクエストなどございましたら是非ともコメントいただければ之幸いでございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




ちなみに、新宿で韓国映画といえば大概「シネマート新宿」で掛かってるイメージなんだけど、
本作は「新宿ピカデリー」でした。まぁ別に目と鼻の先の距離だし、どっちでもいいんだけども。


 






もしももしもよろしければサポートをどうぞよしなに。いただいたサポートは日々の映画感想文執筆のための鑑賞費に活用させていただきます。