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【配信を拝診⑥】三十余年前の原作こそがまさしく"オーパーツ"でした!! 迫力のナイフコンバットにシビれるが物語展開は原作そのまんまで...Netflix独占配信アニメシリーズ『スプリガン』をキミはどう観るか?

 結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。(・_・)
 水谷豊さん主演の刑事ドラマシリーズ『相棒』の5代目"相棒"が初代相棒で寺脇康文さん演じる亀山薫の再登板、というニュースを聞いて彼がバディの頃の1stシーズンの印象的なエピソードを思い出した、O次郎です。

『相棒』1stシーズン第5話『目撃者』(2002年11月6日放送)。
"ボウガンで小学校教諭を殺害した犯人が実はその教え子の小学生で、
亀山さんが彼に犯した罪の重さを諭すために収監中の幼馴染みで
元検事のサイコパス殺人鬼(演:
生瀬勝久さん)の下に連れて行った…”という衝撃的なエピソード。
相棒二人も若いが、犯人役の子役時代の染谷将太さんも若い…というか幼い!!

 ていうか、調べて驚いたのが寺脇さん今年で還暦なのか….。ともあれ、製作サイドの思惑にガッツリ嵌ってるのが些かシャクではありますが、今から放送が楽しみ楽しみ。
 
 そんなこんなで今回は、つい先日6/18よりネトフリで独占配信開始されたアニメシリーズ『スプリガン』のお話です。
 原作は80年代末~90年代半ばの『週刊少年サンデー』で連載されたSFバトルアクション漫画、ということで実に30年余り前の作品のアニメ化ということになりますが、連載終了直後に劇場版アニメも製作されており、そのへんの思い出も含めて個人的な感想を語ってみようと思います。
 原作からのファンの方も、90年代の劇場版アニメから入った方も(自分的にはココです)、それから今回のアニメ化で初めて触れる方も、本作品のいわば"中間世代のファン"の感想の一つとして読んでいただければ恐悦至極にございます。
 一応、原作終盤の展開についても軽く触れておりますので、ネタバレ避けたい方は先に読むなりしてからどうぞ。
 それでは・・・・・・・・・・・・・・・・・・”アナタこそ罹っていますよ。・・・「国防」という名の、流行り病に!!”

"犯罪係数オーバー300。執行モード。リーサルエリミネーター…"
「・・・・・・お覚悟なさい!!!」


Ⅰ. 作品概要

〇基本的に一話完結。 ※その後の展開に関して若干の伏線も有り。
〇主人公はティーンエイジャーで、主たる敵は壮年の大人。
〇物語途中で主人公のかつての上司や師匠が現れ、闘う運命に。そこから新たな戦い方を体得する。
〇ライバルと幾度も戦い、時には共闘する。
〇主人公が暗い過去を背負っており、それを克服することも作品テーマに。
〇主人公の属するサイドでの裏切者の存在や、組織そのものの腐敗が露呈し、一人間として考え戦うことを迫られる。

というような具合で、少年バトル漫画の黄金律をきっちり守った作りになっており、その時点で間口はかなり広いと言えます。
 本作でまず出色なのが、米英独の軍隊をはじめとしたミリタリー描写のリアルさや現実からの飛躍の程度のバランスであり、主人公が装備する防護パワードスーツ「A.M(アーマード・マッスル)スーツ」等もあくまでも現実の延長線上に映るデザインとギミックの秀逸さで、それがゆえに30年あまり経った現代でのアニメ化に際してもスマートフォンやタブレット端末、ドローン等の最新電子機器や登場人物の持つ銃器・装備品の一新のみで、時代のアップデートを果たしています。原作から数十年経って、原作のたかしげ宙先生の造形の深さが証明されたのではないでしょうか。
 また、『週刊少年サンデー』連載というのもミソで、作中に残酷描写も多々見られますが、それがハードなSF設定にきっちりマッチしています。これがもし『週刊少年ジャンプ』連載であれば必殺技が出てきたりサービスカットがふんだんに盛り込まれたり、あるいは高い人気を背景に連載が引き延ばされてキャラクターが際限なく増えたり…といった展開が目に浮かぶようですが、”単行本全11巻”ということからも分かるように程良い長さで完結を迎えており、キャラクターや物語展開もこねくり回し過ぎず、読者が飽きを覚える前にヒートアップさせて惜しまれつつ終幕を迎えています

皆川先生は影響を受けた漫画家として高橋留美子望月三起也大友克洋先生方を
挙げられているようですが、特に連載初期は永井豪先生っぽいタッチの気も。

 同じ皆川亮二先生による『ARMS』はサイボーグ、BC兵器、クローン、エスパーといったより画的な映えが優先され、『スプリガン』の倍近い連載期間の中でその描写がインフレしていった印象が有りますが、本作は少年漫画としての熱さとカタルシスを遵守しながら、それに絶妙なバランスでリアルなミリタリー描写を盛り込んだことが末永く支持されている由縁ではないでしょうか。

ちなみに、個人的に最初に”スプリガン”という単語を耳にしたのは
ロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』に出てくる戦艦名です。
『スプリガン』より先にスパロボシリーズに触れとったんや~。



Ⅱ. 個人的な『スプリガン』の思ひで

CLAMP先生の『X』の劇場版もそうでしたが、
この時期のアニメの劇場用作品は”世紀末”を強調しすぎ。
しかもなんとも身もフタもないキャッチコピーだなや。

 98年に公開された劇場版アニメで初めて作品の存在を知りました。95年の『MEMORIES』で監督としての才気を発揮された大友先生総監修という点がかなり強調されて宣伝されており、自分もその点から手を伸ばした記憶が有ります。東宝配給だったようですが、公開館が少なかったのか私の田舎では封切りが無く、中学生の頃にレンタルビデオで観ました…。
 内容としては原作序盤の”ノアの箱舟篇”をベースに、主人公の少年兵としての暗い過去も独自にアレンジして盛り込まれ、それに合わせて戦闘描写も独自の演出が施されていました

ファットマンとの戦闘で窮地に陥っていわゆる”バーサーカー”モードに入った優。
自分を掴むファットマンの腕をオリハルコンナイフで切断する描写が実に滑らかで
グロでスプラッターなシーンながら何度も巻き戻して観たのを覚えています。
直後、リトルボーイも的確に砲弾をヒットさせて難無く撃破。

 90分という、単体劇場用アニメ作品としてはやや短めの尺に『スプリガン』という作品の持つ世界観と制作スタジオの拘りオリジナル演出が上手くマッチして併存しており、あらためて原作に興味を持って漫画を全巻揃えた、という流れでした。
 原作も大層面白かったので友人に読ませたりして広め、高校は学区外への進学だったのですが、本作の話題をきっかけに新しい友人が出来たりしたのを思い出します。

”セル画最後期のアニメ映画”としても観る価値があるかと思います。

 ちなみに劇場予告編はこんな感じ。 ↓



Ⅲ. 個人的ヒャッハー!ないろいろ

 まずもって肉弾戦、それもナイフコンバットの迫力が素晴らしいと思いました。AMスーツとの併用によるトリッキーな動きがなかなかにCGで生きており、特にライバルの暁巌やかつての上官であるボーマンとの白兵戦は今シリーズの大きな見どころになっています。

常に光ってるわけじゃない。
この衝撃破、わりと多用してたけど原作ではそんな使ってなかったような?
既視感が有ると思ったら『GANTZ』のスーツかな。

 また、上述のように作中に登場する兵士たちの兵装や兵器が現代アップデートされており、フリークの人にとっては原作との相違点を確かめるのも楽しいのではないでしょうか。原作から逸脱することなく、各種ガジェットも更新されています。
 加えてキャストさん方についてですが、主要人物を演じる若手声優さんをベテラン勢が支える安定の布陣です。劇場版で主役の優と相棒のジャンを演じた森久保祥太郎さん子安武人さんも役を代えて出演されており、久作ファンへの配慮も忘れていません。

このへんのエフェクトの滑らかさはさすが金の掛かったCGという感じ。



Ⅲ. 個人的ムムムッ!ないろいろ

 今作は終始非常に丁寧、原作にリスペクトを示して造られています。
 つまり、あまりにも原作展開に忠実な造りなのです。
 戦闘演出にはCGに人と手間を掛けられるだけの意欲を感じるのですが、物語展開があまりにもそのまんまで、”原作をそのまま現代技術でハイクオリティーでアニメにした”という印象が極めて強い。
 今回、45分×6本という構成で、TVシリーズや劇場版のような尺の上での制約が小さいこともあってか、大胆な省略や改変が見られず、エピソードについても主要キャラクターの登場篇を無難にセレクトした、という感じがします。

ジャン・ジャックモンド参上!!
ライカンスロープも演出にそこまでハッタリが効いていなかったというか…。
染井芳乃。も逸脱無し。

 原作が上述の通り過不足の無い作品なので難しいところではありますが、ベタながらオリジナルキャラクターを出すとか、たかしげ・皆川両先生のご了承を得たうえでアニメなりの冒険が出来なかったものかと思います。個々のエピソードにオリジナルキャラクターやオリジナル展開を入れるのが難しいのであれば、次シーズンでの完全オリジナルエピソードに向けての伏線など、何かしらやりようが有ったように思います。

過去エピソードも挿入タイミングもほぼほぼそのまんま。
まんまちゃん。

 無難に作って無難に評価を得る、というローリスクローリターンの世相をひしひしと感じさせられます。
 いっそのこと、全エピソードをアニメ化するという前提であればそれもアリかと思いますが、見たところそうでもなし。であればやはり、”原作は原作、アニメはアニメ”という形で独自要素を追求する方が結果として原作作品へのリスペクトに繋がるのではないかと思いました。
 贔屓目は承知ながら、旧作である劇場版が再評価されるきっかけになればと思いますし、本シリーズがヒットして続篇を、ということになれば次こそは野心的な試みを期待したいところです。
 ・・・・・・とか言いつついざオリジナル展開を目の当たりにして「そのままのほうがよかった…」ってなっちゃうのかな。(´^`;)



Ⅳ. まとめ

 というわけで、今回は二度目のアニメ化の『スプリガン』でした。
 ”原作本が存在し、アニメ化は以前行われている”という同じ括りでいうと『銀河英雄伝説』が在りますが、再度のアニメ化に当たって”原作のエッセンスの中で特に何を訴えたいのか”という絞り込みが大事なのではないかと感じさせられました。

現在展開されている『銀河英雄伝説 Die Neue These』でキルヒアイス提督が死ぬ前の無双描写。
旧シリーズにはこうした演出は無し。

 ともあれ、原作本がこのほど再刊行の運びのようですし、本シリーズを機に『スプリガン』が再評価されればまずは意義のある事だと思います。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・・・・どうぞよしなに。




劇場版を製作したSTUDIO 4℃が後に生んだ『アリーテ姫』(2001)。
ヒットはしなかったけどその抒情的でゆったりとした物語運びは同監督の後の
この世界の片隅に』(2016)に通ずるものがあるかも。


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