見出し画像

【最新作云々83】元始、エロは実に明け透けであった... 若き日の究極の二択の後悔を胸に学究に身を捧げる偏屈学者が,己が見初めた気性の荒いミューズとスチャラカ弟子とあれやこれやのタコツボ映画『春画先生』

 結論から言おう!!・・・・・・・・・こんにちは。
 秋口になると、学生時代に朝の登校時間に催されてた赤い羽根共同募金の赤い羽根を思い出す、O次郎です。

生徒会役員数人で校門前や玄関先に並んで、募金箱と羽を持って待ち構えてるんですよね。
小銭を全く持ってない人は募金しないのを茶化されないように他の登校者が募金してる後ろを
サッと通り過ぎるのがお約束なら、先生にはニヤニヤ近寄って札単位で寄付して貰うのもお約束。
募金して受け取った赤い羽根は休み時間に消しゴムを小さく千切って羽に串刺しにして重りに
しつつ、ダーツにして遊んだりしたのもあるある思い出でしょうか。(・ρ・)ノ

 今回は最新の邦画『春画先生です。
 タイトルズバリで江戸時代に流行した"春画"がテーマであり、冒頭は至極学究的な滑り出しだったもののたちまち淫靡な雰囲気を醸し出し、それがそのままコメディーの様相を呈しながらも、最終的にはまた対岸の地平の倒錯に行きつく…という狐につままれたような感覚を遺して幕切れるなかなかにフワッとした捉えどころのない作品です。
 塩田監督というと『黄泉がえり』や『この胸いっぱいの愛を』あたりの純愛映画を思い浮かべますが、本作での描かれる愛の歪さと笑っていいのか迷うような素っ頓狂なナンセンスコメディー描写はどこか往年の森田芳光監督作品のそれを感じました。
 "楽しみ方は人それぞれ"というところがまさに春画的なのかも・・・ともあれ、鑑賞の参考までに読んでいっていただければ幸いです。なお、ラストまでネタバレを含みますのでどうぞ悪しからず。
 それでは・・・・・・・・・・・デストロイガンダム!!

劇場版のティザー映像に映り込んでたので今度こそはと
思ってたらやはりというかなんというかのHGガンプラ化。
これまでガンプラ無かったから既にハイコンプロのヤツを手に入れちゃってるんだけども…
MA形態とMS形態でそれぞれ飾るためにポチってみる??(¯人¯)


Ⅰ. 春画についての思い出・・・?

 それってどんな思い出よ・・・・・・。(_´Д`)
 とかなんとか言いつつ、一応、高校生の時の社会科は日本史専攻だったし、大学生の頃も近代専攻ではなかったものの史学方面ではあったので触れる機会は無きにしも非ずだったのですが、それより何より妙に覚えてるファーストコンタクトはなんと小学生時分で、当時好きだった時代劇ドラマの一本名奉行 遠山の金さん』での他愛無い一幕でした。
 ちなみに番組タイトルからも判る通り、僕は"金さん"といえば松方弘樹さん世代です。本編での軽妙洒脱で黄金律の守られた面白さは言わずもがな、作詞・作曲:吉幾三さんのEDテーマが朗々たる松方さんご自身の歌唱で延々の桜吹雪の中で流れる様は印象的で、未だに桜を見ると途端に聴きたくなる曲の一つで。。。

※やっぱコレだね! 幼少期だったこともあってすぐ影響されて例の「この紋所を忘れたとは、、、言わせねぇぜ!!」をちょくちょくマネしてて特にジジババにはウケるんだけど、入れ墨晒す挙動のやり過ぎで着てるトレーナーの首元の生地が緩んで母には小言を言われたわけで…。(¯x¯)

 脱線はほどほどにして、件の黄表紙絡みのシーンは町人に化けてる時の金さんと柳沢慎吾さん演じるスケベでお調子者の同心とのやりとり。

たしか、同心の柳沢さんが部下と一緒に旅館の2階の部屋で
一杯やりながら春画片手に二人でニヤニヤしてたところに
町人モードの金さんがヒョッコリやって来て、
あれ~?! いいんですかい?こんなところで油売ってて。
…おや、あ~イイ女ですね~♪♪
」みたいな感じで黄表紙を覗き込んで
ニヤニヤに加わる、というコメディーパートの一幕でした。
さすがに黄表紙そのものはハッキリとは映してなかったと思いますが、
小学校低学年にもいかがわしい本であることは伝わりましたね。(´ロ`)

 毎週観てたにも関わらずそんな枝葉のシーンを今の今まで覚えてたということは、コメディとしてわかり易かった以上に「H本って江戸時代でも有ったのか……」という少年なりの感慨が尾を引いたのかもしれません。
 ちなみに僕が幼少期を過ごした90年代前半は未だTV時代劇もそこそこ人気があって新作が週に何本も放送されてましたが、好きで観てたのは上記の『名奉行 遠山の金さん』に加えて『三匹が斬る!』に『銭形平次(北大路欣也さん版)』あたりで、逆に『必殺シリーズ』や『鬼平犯科帳(二代目中村吉右衛門さん版)』『暴れん坊将軍』あたりはあんまり刺さらなくて観てませんでした。察するに子どもにとっては笑いの成分が多い作品の方が取っつきやすかったんだと思います。

ちなみに『子連れ狼』はリアルタイムでないのは勿論のこと、
再放送も無かったと思うので『ダウンタウンのごっつええ感じ』のパロディーの方が先です。
後年、コンビニに置いてあるゴシップ本を立ち読みしてて
TVシリーズの初代大五郎役のあの方の事件や欠番エピソードを知って、
再放送でも触れたことが無かったことに合点がいった気がしたもので。Σ(・口・)

 その後で"春画"というワードが引っ掛かったことといえば、時代が一気に飛びますが週刊少年ジャンプで連載されてた磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜(2013~2017)でした。

作者の仲間りょう先生は最近まで次の『高校生家族』を連載されてたようですが、
聞くところによるとギャグ漫画は長期間書き続けてると
思考がブッ飛んでしまうことがあるとかなんとか。
どの作家さんも新作のプレッシャーは相当なものでしょうが、
それを考えると読み手の期待もほどほどに、ということでしょうか。

 たしか初見は漫画の方ではなく、映画館の幕間で流れたショートアニメの方だったと思います。ジャンプでギャグマンガというとうすた京介を真っ先に思い浮かべる世代なのですが、本作も童心に帰った気分で楽しめましたね。
 本作では読者の共感のし易さのためか、春画≒現代のエロ本、という感じで他人から隠れてこっそり楽しむものとして描かれていましたが、実際の春画ははてさて、、、
 

Ⅱ. 作品概要と見どころあれこれ

(あらすじ抜粋)
”春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していた。 退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。 やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で大きな波乱が巻き起こる。 それは弓子の“覚醒”のはじまりだった―。


 というわけで、ちょっと変わった主人公がその道のプロの変人の薫陶を受け、時としてその師匠をも凌駕する変人ぶりを発揮して道に邁進していく、という職人ドラマとしてはわりとよくあるプロットかもしれません。
 ただ、本作の塩田明彦監督は黒沢清監督の助監督からスタートされているだけあって要所に奇抜な演出や、使われる場面に奇妙な法則性がある劇伴、唐突で素っ頓狂なコメディー描写等、エキセントリックな場面が散見されるので人を選ぶ類の作品ではあると思います。
 実際、冒頭の弓子と芳賀が運命的に出会う喫茶店のシーンではぐにゃぐにゃと世界が歪むような地震が演出されており、その時点で"合う合わない"を感じたところです。


芳賀先生は代々の名士のようで、古風なお宅をお持ちのうえに
先代からの家政婦さんまで雇っており、弟子入りした弓子も
先生の身の回りの世話もすることに。
しかしまぁ、台所のシーンの度にかつお節を削るシーンがこれ見よがしに
アップで繰り返される
のはなんともかんとも。。。(´ロ`)

 春画について講義したり、パーティーに連れ出したりすることで徐々に先生の方からも弓子を意識するように。
 しかしながら亡き奥さんへ操を立てるあまりに一線を越えないどころか頑なにプラトニックに師弟関係を守り続ける姿は、まるで彼の方こそヒロインのようです。

 唐突ながら作家の岡田斗司夫さんがかの宮崎駿監督について「スタジオの若手のアニメーターの女の子をもの凄く寵愛するんだけど決して手は出さず、やがてその子の結婚が決まって一人失恋して寂しそうにする」みたいなエピソードを語られたのを聞いたことがありますが、本作を観てて"一人間としての誠意"という点に於いてそれを思い出しました。

 "気持ちがあるのに行動に移さないのは不誠実""後追いで生まれる愛もある"
みたいな言説も有りますが、それは作品世界でドラマを転がすための方便かと。

 そこで、愛し合いたいのに愛せないジレンマを解決するまではいかなくとも抑えてくれるのが先生の編集担当である辻村。
 自分を鼻持ちならない相手として警戒する弓子を酔いと雰囲気に任せてまぐわい、最中に己の頭に装着したスマホによる通話で先生に彼女の矯正を届けて忠義を果たします。しかも度々何回も…。
 あまりにもシュール過ぎる画ですが、演じる柄本佑さんの飄々として掴みどころのないキャラクターゆえにコメディーとしてちゃんと成立しているのがさすがというところです。

芳賀を尊敬しつつも私情は挟まず、踏み込み過ぎないゆえに相手の思索を喝破し、
あくまで芳賀の助手としての責務を淡々と果たしている姿からして実は作中唯一の常識人か?

 濃過ぎるキャラクター達の中で彼だけが唯一薄味であり、それがゆえに却って一番印象に残るかもしれません。

 そして安達祐実さん演ずる、芳賀の亡き妻の姉・一葉もなかなかのパンチの効いたクセ者ぶり。
 元々は芳賀の恋人は一葉であり、若き日の彼女との営み中のオルガスムの刹那に芳賀が己が脳裏に閃いた真理をすぐさま書き記すかそれとも行為を続けるかで迷い、咄嗟に学究を選んだ彼に愛想を尽かせて破局した、という経緯。
 芳賀への想いは潰えたわけではないものの大きく屈折しており、クライマックスでは芳賀の学究のために彼女へ己が身を捧げた弓子のみならず、それをデバ亀していた芳賀自身もSMで攻め立てます。

さすがは名女優さんだけあって攻め立てる様は観ているコッチもゾッとして…。
彼女の出世作といえばなにはなくとも『家なき子』ですが、たしかその数年後に
中華拳法を題材にした『聖龍伝説』ってのも有りましたよね。。。(¯∞¯)

 作品としての画の栄えもありましょうが、春画にその人生を捧げている芳賀をその対岸にあるSMで塗り潰して上書きしようとすることで釘付けにする、彼女なりの歪な愛情表現なのでしょうか。
 
 

そして、春画の原本を好事家の集まりで回覧するこの構図、、、
お嬢さん』 (2016年)での官能朗読のシーンを
思い出したりなんかしちゃったりして。


 結局、登場人物たちの関係性はほぼそのままにフワッと物語は幕を閉じるのでカタルシスらしいカタルシスは無いのですが、この入り口は有っても出口の無い感じがまさしく芸術というものなのかもしれません。
 

Ⅲ. おしまいに

 というわけで今回は最新の邦画『春画先生』について語りました。
 上述のように成長譚や恋愛もののような明確なゴールの有る物語ではないのでそういう意味での歯ごたえは微妙かもしれませんが、要所でクスッと来るシュールな笑いと各キャストさんの醸し出す変人ぶりはツボに入る人には秀逸に映る一本かと思います。
 ちなみに本作は試写会に当選したのでトークショーも拝見しましたが、登壇された塩田監督が本作の年齢制限規制との闘いや春画とSMの歴史や相関について淡々と赤裸々に語って下さいました。

実際問題、春画は歴史的にはみんなで和気藹々と笑って楽しむものだったようで。
それが時代の趨勢の中で性を秘す西洋的価値観に上書きされたのが果たして良かったのか否か。
そもそも良し悪しで語るものではないのか。

 個人的には柄本祐さんの飄々ぶりの真骨頂がアップデートされた作品として大いに推したいところであります。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・・・・・・どうぞよしなに。




コレだコレ!!(∂O∂;)
たしか、対戦相手の中にゲッター2みたいに地中に潜る敵が居て
その際の取って付けたようなCGに当時観ててさすがに唖然とした記憶…。


もしももしもよろしければサポートをどうぞよしなに。いただいたサポートは日々の映画感想文執筆のための鑑賞費に活用させていただきます。