【配信を拝診⑱】己の分を全うして去り行く虎...分断で人心を煽る敵の姦計はリアルながら,ホントに観たかったのは第二の人生へのエールなり 『TIGER & BUNNY2』第二クール(#13~25)について感想あれこれ
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
本日10月13日は50年前の1972年に『ウルトラマンA』第28話「さようなら夕子よ、月の妹よ」が放映された日と聞いてふふ~ん、なO次郎です。
今回は先週末にNetflixで独占配信開始となった『TIGER & BUNNY2』第二クール(#13~25)の話です。
安定的に人気を獲得した結果、10年以上も続く人気アニメシリーズですが、今クールで展開として一区切りが付いたようなのでその感想を書きつつ、テレビシリーズも劇場版もリアルタイムで追い駆けてきた身として過去作の思い入れも添えて語ってみる所存です。ネタバレ含みますのでその点予めご容赦下さいませませ。
それでは・・・・・・・・・・・・"ウルトラ式簡易ドライカレー"!!
Ⅰ. 個人的タイバニおもひでぽろぽろ
様々な特殊能力持った「NEXT」がヒーローとして平和を守っている近未来の街を舞台に、落ち目のベテランヒーロー・ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹と、ワケアリの生意気なヒーロー・バーナビー・ブルックスJr.のコンビが他のヒーローたちと共に活躍する姿を描いた「バディもの」のアニメ作品。各ヒーローのスーツに実在のスポンサー企業のエンブレムがあしらわれているのが大きな特徴。
TVシリーズだった一作目は前半(#1~13)が一話完結型の事件の中で各ヒーローの人となりにスポットを当てたオーソドックスな作りのエピソードなのに対し、後半(#14~25)は一連の巨大な事件と陰謀を描きつつ主役二人にフォーカスしたストーリーが展開されましたが、配信ドラマとなった第2シリーズでもほぼほぼ同じ構成です。
自分が年齢が近いからかもしれませんが、酸いも甘いも知ったピークの過ぎたおじさんの哀愁と矜持が特に強く胸に残る作品です。
で、盛りを過ぎたオジさんたちが何とか仕事に食らいついて頑張る姿を描き、配信ドラマに移行した第2シーズンの前半では来るべき世代の台頭と成長も描いていたため、あとはオジさんたちが完全燃焼して悔いを残さず、後進の躍進を邪魔しないように道を譲って、違う形で誇りを持って人の役に立てる第二の人生を模索する様を描いて欲しかったのです。
その点を中心に、第2シーズン後半が如何なるものであったか、というところを語りたいと思います。
※ちなみにコミカライズのシリーズもいくつかありますが、本編のエピソード間のこぼれ話や本編で端役のキャラクターにスポットを当てるミッシングリンク的なこのシリーズが考証がしっかりしており、特に面白く読めました。
Ⅱ. 第2シリーズ後半戦(#14-25)に関するあれこれ
後半戦は、前半戦でヒーローたちが闘ったウロボロスのNEXTであるフガン&ムガンの陰で暗躍していたシガニーが舵を取り、相手NEXTの能力を暴走させる能力を持ったグレゴリーを手駒に社会のNEXT - 非NEXTの分断を煽りつつ、さらにその裏でNEXTのカリスマであるアウロラを暗殺しようと画策します。相次ぐNEXTの暴走事件で信用を失ったヒーローたちが資格をはく奪されながらも、巨悪の姦計に気付いて処罰覚悟で野良ヒーローとして孤軍奮闘する筋立てです。
まずもってNEXT - 非NEXTの感情的対立と差別はこれまでのシリーズでも度々取り上げられていましたが、本クールではついに隔離政策にまで発展しており、現実社会の思想的・人種的対立を如実に反映しているようで空恐ろしいところです。
そしてヒーローたちの成長描写の中では特に白眉だったのは高校生から大学生となったカリーナでしょうか。
そして前半戦では登場しなかったルナティックですが、今回の後半戦ではユーりともどもこれまでで最大のフィーチャー。これまで管理官としてヒーローたちの成長と葛藤を見続けてきた末、己のトラウマと一方的な正義に向き合ってその矛盾にピリオドを打ちます。
対する敵NEXTのラスボスは収監中のL.L.オードゥン。
主人公二人と同じハンドレッドパワーで絶大な力を発揮しながらも、その一方で周囲の忠告を顧みない一方的な正義感で犯罪者へと転落してしまった人物であり、ルーキーヒーローのヒーイズトーマスの人間不信の鞘当てのキャラクターとなりつつ、"集合知の制御を受けない一個人に集約された正義と力が如何に危ういものか"というバディーヒーローものに特化したシーズン2全体のテーマに対する回答にもなっているのが作劇として上手いところです。
ウロボロスの命令を受けていたとはいえ、一連の事件の背景に有るのはシガニーの強い私怨で、養護施設で育った彼女は同じNEXT同志だった3人の少女と仲良しだったものの能力が強かった彼女のみが大成し、能力が開花しなかったがゆえに未来を悲観して自死を選んだもとい選ばされた社会に復讐するべく分断を画策したのでした。一見すると彼女のキャラクターの背景にあるのは優生思想批判ですが、引いては行き過ぎた生涯現役志向社会への抗議であるとも思います。
そんなこんなで大いに盛り上がりを演出して刮目させてくれた後半戦なのですが、虎徹=ワイルドタイガーの引退セレモニーとしては些か片手落ちだったような気がしてしまいます。
まずラストの主人公二人とオードゥンとの対決ですが、ダメージの蓄積したバーナビーのスーツが大破し、そこに虎徹がスーツを託してバーナビーがワイルドタイガーとなって最後の一撃を見舞う演出は掛け値無しに秀逸だったと思います(欲を言えばフィニッシュも蹴りではなく、グッドラックモードのパンチを継承して放って欲しかったところですが)。
しかしながらやはり、どんな形の演出を経るにせよ、一連のシリーズを観てきた身としては最後にワイルドタイガーが自らの力と意思で全力を出し切って能力を失う様を描いて欲しかったように思います。特にワイルドタイガーの能力発動時間が1分であり、相対するオードゥンの能力切れから回復までのインターバルが1分という設定でしたので、そこを上手く絡めて勝利して欲しかったところです。
まぁ、作中でグレゴリーの強制暴走能力を受けて呆気無くタイガーの能力消滅が現出したように、現実世界でもアスリートのようにきちんとした"引退試合"を設けられる仕事など稀有なのかもしれませんが…。
そしてそのうえで、エピローグなりで長年の仕事に後ろ髪惹かれつつも潔く自らで自らに戦力外通告を行い、肉体的には衰えつつもそれまでの人生経験を生かした第二の人生と新しい仕事で活躍ないしそれを模索している姿で締めくくって欲しかったところです。
今年半ばに日本公開されて今も驚異的なロングランヒットを続けている『トップガンマーヴェリック』は非常な迫力と興奮に満ちており、僕もスクリーンで観て大傑作だと思いましたが、あちらは一方で壮大な現役至上主義の物語であり、衰えを拒否するトレンドの顕れでもあると思います。
そのハリウッド大作を相手にするのはスケールオーバーかもしれませんが、上述のような形で本作が"個々人が老いと衰え、そして不出来を受け容れること、そして社会もそれを許容すること""個々人が最大公約数的な評価に因らない生き甲斐を模索すること、そして社会もそれを応援すること"によりフォーカスした回答を見せてくれていれば、今日の我が国の高齢社会の指標の一例に成り得たかもしれません。
Ⅲ. おしまいに
というわけで今回はNetflixで独占配信中の『TIGER & BUNNY2』第二クール(#13~25)について書きました。
最後はちょっと大風呂敷過ぎる結論になってしまいましたが、僕個人としてもアラフォーに差し掛かった自分自身を自覚しなきゃなと最近つとに思っていたがゆえの感想ということで…。
とはいいつつも一方でやっぱり、「どうせ国としては、生涯を掛けて年金を払い続けて働けなくなった直後に死んでほしいんでしょ?」とか皮肉の一つも呟きたくなる時もありますが。(´・ω・`)
とかなんとか外の天気のごとく湿っぽくなってきてしまったので今回はこのへんにて…。(*´艸`)
それでは・・・・・・どうぞよしなに。
もしももしもよろしければサポートをどうぞよしなに。いただいたサポートは日々の映画感想文執筆のための鑑賞費に活用させていただきます。