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【最新作云々⑭】アクション>ドラマに大幅に舵を切った一大叙事詩の激闘篇!!     "高潔な戦場"の描き方には意見が分かれるか?!『キングダム2 遥かなる大地へ』

 結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。(⦿_⦿)
 夏休み 通勤電車 人が減る
 学生の夏休みが始まったことを今朝がたに実感として悟った、O次郎です。

普段利用してるのが東西線なので込み具合の差が一目瞭然。
ただでさえ暑いのに「弱冷房車」にしか乗り込めなかった日にはもう・・・。

 今日は最新公開映画『キングダム2 遥かなる大地へ』についてです。
 先週末に劇場で観まして、その感想をつらつらいたします。結論から言うと前作よりも楽しめた勢です。
 前作と比べてドラマよりもアクションの方に大幅に舵を切った印象が有り、それを受けて思った良し悪しを主軸に感想をまとめようかと思います。
 ちなみに当方、原作漫画やアニメは未見の状態ですので、その層からの鑑賞感想の一本として読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレを含みますので予めご了承くださいませ。
 それでは・・・・・・・・・日本文化センターテレホンショッピング!!

※関西出身なのですが、幼少期を過ごした90年代、毎年の夏休みの平日はABCテレビ(テレ朝系地方ネット局)で朝9時半からの"子どもアニメ大会"というアニメの再放送枠を観ていましたが、その枠の中で必ずこの熊のアニメーションのCMが入っていました。ちなみにこの動画の最後の電話番号は東京のものですが、自分の記憶に有るのは"大阪06 584 2222"です。数十年経った今でも思い出させるリズムが地味に凄い…。



Ⅰ. 作品概要

 前作から三年余りということで、原作の膨大なストックからするとスローペースではありますが、コロナ禍の影響もあって撮影に一年半近くも掛かったということのようでまずは関わられたスタッフの方々全てに頭の下がる思いですね。
 原作の5巻から7巻の部分の蛇甘平原の戦いに絞って実写化したことで、中国の紀元前戦史としてのダイナミズムを保ちながらも一兵卒の主人公の活躍を主軸に魅せてくれるバランス感覚がまずもって見事だと思います。

合戦シーンもCGを駆使しつつその一部は国内で撮影したとかなんとか。
かといって多用し過ぎると広大な大地のスケール感がチープになりかねず、
そのあたりの整合性のバランスも素晴らしす。

 また、一作目である前作がどうしても主人公の出自と闘う理由の描写が主軸となっていたのに対し、本作では主人公が五人一組の"伍"を組んでのチーム戦となったことが強く反映され、そこに本格的に豪傑の両軍の将軍も加わり、結果としてかなり群像劇としての色合いが強くなりました。
 それゆえに観客が感情移入できるキャラクターの余地が大幅に広がり、それぞれを演じる俳優さんの魅力と個性も相俟って、原作同様かそれ以上各々の人間性に耽溺する楽しみ方が広がったように思います。
 その反面、各々のキャラクターをそれぞれに魅力的に描いているがゆえに生まれている弊害も有るように思えたのですが、それについては後述いたします。
 二時間余りの長尺ですが、中間に信と羌瘣とのドラマを挟んだことで前後の合戦シーンにもメリハリが付き、魏軍の装甲戦車隊や両将の一騎打ちといった緩急効いた見せ場の連続で駆け抜けてくれた一本でした。


Ⅱ. ゴイスー!!な点

・大挙した新キャラクターの現実世界への橋渡しをしたキャスティングの妙味

ビッグマウスの血気盛んな若者に、金のために仕方なく馳せ参じた兄弟、
要領と経験で地力の無さをカバーする中年に、別の目標を見据える紅一点。
まるで会社の窓際部署のようです。

 おそらく、観ている人個人個人の年齢や出自、社会的立場によって惹き込まれるキャラクターが異なってくるかと思われ、それゆえに感情移入するキャラクターを変えることでまた新たな面白さが出てくること請け合いです。
 個人的にはなんといっても『カメラを止めるな!』『絶メシロード』で知られる濱津隆之さん演じる中間管理職的な苦労人兵士の澤圭に入れ込んでしまいました。主人公の信のように怖いもの知らずで大志を抱き続けるほど若くはなく、かといって兵士以外の生き方も見出せず、せめてものそれまでの人生における知見で身を立てていく。功成り名遂げたわけではない中年の身にはこれ以上ないぐらいに身近で、尚且つ演じる浜津さんの人懐っこさも相俟ってとても好もしいキャラクターになっていると思いました。

ガンダムで喩えると、シャアの初期の副官のドレンみたいな感じ? ・・・違うか。(o´・ω・o)


・柔と剛を両方余すところなく見せてくれるアクションシーン(しかもグロさ控えめ)

お互いに斬っても斬っても緊張が続き、それがマヒしていく…。
これが相当割合の人たちの飯のタネだったというのだからなんとも。

 中国の歴史上の武将というと”豪傑”という表現が真っ先に浮かぶように、爆肉鋼体の武人が力で捻じ伏せるような攻防ばかり連想しがちですが、本作では瘦身の主人公の信に加えてキーマンの羌瘣も女性のため、流れるような流麗なアクションがその他の質実剛健なそれと高コントラストを為しており、結果としてそれぞれが映えています。

羌瘣がスーパーモードに突入するときの”とーんとんとんとん!!”という掛け声は
真面目なシーンなんだけどもついつい笑ってしまう。
・・・技名はズバリ、"日野の2トン"でしょうか?(ノ゚∀゚)

 加えて流血や人体断裂等のスプラッターシーンは極力抑えられており、そのあたりの描写が苦手な方でも問題なく視聴できるようになっているのは配慮の行き届いているところです。そう苦手でもない人でもこれだけの尺のアクションシーンで阿鼻叫喚の地獄絵図を見せられるとさすがにキツいものが有るので、あくまでエンタメ作品としてこれで正しいのではないでしょうか。
 他方、"剛"の面については年齢を重ねたベテランキャストの方々がその重厚な存在感とともに量より質なアクションを魅せてくれるので渋専な方々にもしっかり訴求!!

"SPEEDに対向して「濃イード」ってどうかしら? 濃いオジサンばっかりの四人なの!!"
ってネタをウリナリホワイティが25年前ぐらいに披露してたけど、まさにそんな感じ。

 特に一対多数の状況での信の流れるような高速アクションは『るろ剣』シリーズと同質のものを感じたのですが、アクション監督は件の谷垣健治さんではなく、下村勇二さんでした。

下村監督は作品そのものの監督も務めた『RE:BORN』がおススメ。
アクション俳優の坂口拓さんが演じる元傭兵の動きがかなり個性的。
観終わったら同じように肩をゴキゴキさせたくなること必至!



Ⅲ. ムムムッ!!な点

・命令を遵守して死力を尽くして戦う一兵卒と、勝利のために御身も捧げる将兵たちの”高潔な戦場”の徹底への違和感

その最たる者が渋川清彦さん演じる縛虎申。
"特攻好きのイカレた将軍"との下馬評ながら、終盤は自ら先頭に立って
敵軍将の宮元と刺し違えて部下の犠牲に応える働き。

 とにもかくにも上も下も礼節の整った武人ばかりで、"戦場の非情さ・狂気"というものとは全くの無縁に見えるのは些か問題あり、と見えました。
 そもそもの中国戦史の勇猛さのイメージに加えて、原作漫画もそれを踏襲しているのはあるかもしれませんが、「ここは俺に任せろ!」の死亡フラグ的なセリフと展開がそこかしこで繰り返されるのにはさすがに綺麗事すぎるなと思わざるを得ませんでした。
 それを以て作品トーンが統一されて観易いのは間違い無いですが、エクスペンダブルズな一兵卒を歯牙にもかけない将校や、我が身可愛さゆえに仲間を盾にする最前線の兵士等、戦争によって白日の下に曝される人間のエゴが戦争大作の中で大胆にオミットされているのはちと・・・と感じたのも事実です。

トヨエツさん演じる麃公についてもとどのつまり"勘"で兵を率いてるってのがまたなんとも…。
それにしても、『愛していると言ってくれ』の頃なんか誰もが認める美形だったのに
最近は怪演の名手のようなポジションにいらっしゃるのは一体誰が想像し得たか。
王騎将軍を演じる大沢たかおさん
前作では今作よりもかなり少ない出番ながらも容姿が変貌するほどの役作りで、
それをまた数年後の今作のためにボディビルドし直しってのが凄すぎる。

 また、主人公たち”伍”の五人がこの戦いを経て竹馬の友のような友情と信頼を互いに築いているのも、ある種危険な高揚感の共有のようにも感じてしまいました。 
聞くところによると原作でも感を重ねる毎に残酷描写は増えているようですが、青年誌連載である程度読者の許容度の有るあちらと違って幅広い観客層を獲得する命題の有る映画作品の本シリーズが今後どういう形で折り合いをつけていくか注目処です。


・次作への”引き”のための長々としたエピローグによる余韻の阻害

この二人のお別れで本編としては終わらせつつ、あとはエンドロールの最中に
ダイジェスト的に"引き"を見せるぐらいで良かったのでは?

 せっかく信と羌瘣の出会いと別れが中心になってるので、その二人の別れの余韻の中でEDテーマを聴きたかったのが正直なところ。キャストが錚々たる顔ぶれだけに無闇に出番を縮小出来ない都合もあったのやもしれないが、それならそれで時系列を多少前後させてでも二人のお別れを最後に持ってくればよかったんじゃなかろうかと思ってしまう。
 物語としては入ってきやすいんだけども、映画としての感動や印象は若干薄れてしまったような気がしてしまった、というのが紛れも無いところで。
 一方でそうしたらそうしたで過分にメロドラマチックになり過ぎてしまったかもしれないとも思うので痛し痒しか・・・。( *¯ ꒳¯*)



Ⅳ. 終わりに

 というわけで今回は最新公開映画『キングダム2 遥かなる大地へ』について書いてみました。
 原作漫画追ってる友人と一緒に観に行きましたが、その友人も概ね満足してたようですし、それに加えて俳優さんの新たな魅力を引き出してそれぞれのファンに提示するというキャスト目当てで観る映画としても非常に高水準にまとまっている作品だと思います。・・・・・・汗臭い物語なのでさすがにうら若きアイドル俳優さんは居ませんが。
 次作は早くも確定済みのようですが、原作内でも各登場人物とも年齢は重ねるとはいえ、製作ペースを考えるとやはり製作陣のセンスを十二分に絞っての映画ならではの大胆な省略やダイジェストで原作既読勢も未読勢も納得させつつ、原作に追いつくぐらいの更なる怒涛の勢いを見せつけて欲しいものです。

 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




・・・・・・って違うか。(=゚ω゚)ノ


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