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【最新作云々㊶】祖国存亡の危機の中、"王女"は"女王"になれるのか... 弱り目に祟り目な少女の姿がただただ痛ましく、かつてない悲愴感漂うスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

 結論から言おう・・・・・・こんにちは。
 昨日は猛烈に寒かったのに今日は今日でわりと暖かいので、フリーザー・ストームとファイヤー・ブリザードということで明日は「必殺烈風正拳突き・改」に気を付けたい、O次郎です。

闘将ダイモス
今観ると、平和裡の移住を求めた交渉の場で起きた惨事から戦争に発展していくあたりは
弟子の富野監督の『∀ガンダム』の序盤のルーツはこのあたりにあるのかなと思ったり。
Wiki読んでみたらTVアニメでは世にも珍しい高価な35㎜フィルム撮影(普通は16㎜)だったとか。
同じ35㎜フィルム撮影の『CCさくら』は十分に恩恵が感じられたけどこっちは・・・
まぁ如何せん時代が20年近く違うしね。(´・ω・`)

 今回は最新のマーベルヒーロー映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』です。
 4年前の『ブラックパンサー』の続篇ですが、ティ・チャラ / ブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンが撮影前に病没し、なんとリキャストせずに作中でもティ・チャラが病没するというボーズマン氏への製作陣からの大いなるリスペクトを背景としたシナリオ変更が為された稀有な作品。
 彼を喪ったファンと製作陣、そして作中キャラクター達の悲しみが作中全編に横溢しており、ヒーロー映画に必須の爽快感が鳴りを潜めているどころかその真反対の悲愴感が満ち満ちた異様な仕上がりになっています。
 言い換えれば"これから這い上がるためにしっかり悲しみ切ろう"という内容でもあると思いますので、観ていて特に居た堪れなかった演出・展開のあれこれを作中喪服を燃やしていたごとくあれこれ書いてみようと思います。
 マーベル映画好きの方には一意見として、ヒーロー映画苦手な方には"こんな作風もあるのか"と読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレしておりますのでご注意下さいませ。
 それでは・・・・・・・・・・・・どんとイレンコ!!

※調べたらちょうど僕が生まれたぐらいの頃の放映なんですが何故かうっすら記憶にあるんですよね。ということはソ連時代。
ストⅡ』の頃からザンギエフの出自はもうロシアだったよな~と思ったら彼もその頃はまだソ連。ウォーズマンもソ連。テトリスもソ連。



Ⅰ. 作品概要と悲痛な展開の数々

 前途有望な若き国王であったティ・チャラ/ブラックパンサーを失ったワカンダ王国が、超資源ヴィブラニウムを狙う諸外国や余所者に容赦の無い海の王国タロカン帝国ら火事場泥棒的な害意に見舞われる、というなんとも不躾な展開。
 前作ではワカンダの王位継承に伴う内乱が描かれましたが、今回は国家間の諍いがメイン。しかも各勢力とも甚大な被害を被るも、狡猾な立ち回りと巧みな恫喝に長けたサイドが傷を小さく抑えて虎視眈々と覇者的立場を狙う、という現実世界に即した実に厭なパワーゲームが終始展開され、ティ・チャラの遺した国を守ろうと"想い"で立ち向かおうとする妹シュリとワカンダの民たちの高貴さが蔑ろにされるどころか付け込まれる様がなんとも居た堪れない限りです。

そして極めつけはワカンダの女王で、ティ・チャラとシュリの母でもあった
ラモンダもタロカン帝国の襲撃に応じる中、命を落としてしまいます…。

 まだ十代の少女であるシュリが兄と母を瞬く間に失い、さらには国民の未来を守る重責を背負わざるを得なくなるのですが、さらに悲劇的なことは彼女になまじ科学者・発明家としての天賦の才が有ったことでしょう。
 そちら方面で最大限に国に尽くす本人の意向と彼女の周囲もそれを許容したことにより、国政を担う帝王学が当人の中に涵養されていないのです。

本作で最終的にシュリは兄の遺志を継いでブラックパンサーとなります。
しかしそれはタロカン帝国との全面衝突という差し迫った危機を前にしての、
科学者としてのそれまでの己の才からなんとか捻りだした力です。

 強大なタロカンの王にしてミュータント戦士であるネイモアとの直接対決に於いては彼の弱点を研究したうえでなんとか辛勝を納めます。
 しかしながらなんとか国同士の衝突は落ち着いたものの対等ぶりを示せずに外交としては及第点とは言えず、寝首をかかれる可能性は十二分に残ってしまっています。
 ネイモアにとどめを刺せる状況に於いてもそれをしなかったのは慈悲ではなく不覚悟のゆえと喝破されているのもなんとも痛々しい限りです。

それはまるで、ミネソタ・ファッツに勝負では勝ちつつも
人間的な"厚み"で負けた『ハスラー』でのファースト・エディのごとく…。


 タロカンは自分たちのヴィブラニウムを付け狙う諸外国に対しても牙を剥いているので、こと直接対決の段階に至っては、彼らを共通の敵と見做して一時的でも諸外国に助力を仰ぐ道も残されていたように思いますが、道理を重んじて馬鹿正直に仇敵に立ち向かった王女の勇ましさと強さは観ていて痛々しい限りでした。

 そして対するタロカン王国のネイモアは同胞にはどこまでも慈悲深く、それが転じて同胞を害するものだけでなくその可能性の芽も全力で摘み取ってしまうどこまでも一方通行な治世ぶり。

たしかにヴィブラニウムを巡ってそれを欲した諸外国との流血は自明の理ではありますが、
強大な武力を背景とした、予防的防衛と侵略の境が有ってないような国の舵取りは
現実と照らし合わせて鑑みるになかなかに薄ら寒いものです。
"幅広く薄い支持を得る者よりも、一部の者からでも熱狂的に支持されるものが覇者となる"
ロジック的にはまさに独裁国家のそれですが民主国家の選挙の戦い方もそう違いは無いのでは…。

 ちなみにネイモアは両足首から小さな羽が生えていてそれで飛行出来る、というなんともユニークなヴィジュアルとギミックですが、あれを観ていて思い出した作品が有りました。

やっぱ後のスニーカー文庫版のアニメ基調の整理されたイラストより
湖川友謙さんのこのべっとり情念を感じる角川ノベルズ版の単行本の方がインパクト大。
イデオンも然りね。
肝心の主人公が足から羽生やしてるイラストが出て来んやん。(´・ω・`)

 また、本作では他のアベンジャーズの諸氏が一切登場せず、比類なき力を持った仲間の助力が得られないことはもとより悲しみを分かち合う異邦人を持ち得なかったことも新女王シュリの不憫なところでしょう。

 本作の物語はどうにか兄と母の死を乗り越えざるを得なかった王女が一先ずも外敵の脅威を退けつつ、国内の超資源を相変わらずも武力でも外交でも諸外国に付け狙われつつ、同じ資源で国を興しつつ境遇も近い海の王国とは小康状態、という波乱含みのまま幕を閉じます。
 人には過ぎたる力を持ったスーパーヒーローの同胞の助力をまずは頼りにしつつ、彼らとの親交の中でその人間性は守りつつも、諸外国との危うい緊張状態に引けを取らない国家元首としての"厚み"を示せた暁に、名実ともに"女王"となれるのではないでしょうか。


Ⅱ. お終いに

 という訳で今回はマーベルヒーロー映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』について語りました。
 やはりこれだけ原作コミックやら膨大な設定を抱えた一大コンテンツシリーズとなると、生粋のファンでない身としてはドラマ面で感じた妙味を語るに終始してしまうのが我ながら心許無いところなのですが、兎にも角にも本作はどん底から立ち上がる作品でした。
 それは極彩色の新スーツやギミック等のヒーロー作品的見どころも多々あるのですが、少なくとも初見ではそのへんに目移りできないほどの悲愴感であり、ヒーロー映画としての旨味は・・・かもしれませんが新風には違いないでしょう。
 『ブラックパンサー』としての続篇はかなり先でしょうから、数年後にでも新生アヴェンジャーズ作品にて逞しくなった彼女とワカンダの雄姿を見せて欲しいものです。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




ダイモス違い・・・。(*´罒`*)

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