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【最新作云々⑱】見渡すばかりの海と島民の優しさに抱かれ、少女は己の、そして周囲の人々の痛みに向き合う 現代版"世界名作劇場"『凪の島』
結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。(゚Д゚ノ)ノ
"世界名作劇場"といえば一番好きなのは『ロミオの青い空』、O次郎です。
※19世紀半ばのスイス・イタリアを舞台に生活苦から自分の身を売って煙突掃除夫になる決意をした少年が過酷な労働環境やいじめ、さらには同じ境遇の親友の死に苦しみながらも、持ち前の明るさと優しさで仲間たちと力強く生きる物語。数年前に観返しましたが、真っ直ぐさが眩しい…。(。・ω・)
ストーリーの良さは言うまでもなく、上リンクのOP主題歌を歌っている声優の笠原弘子さんがいわゆる"声優さんの歌"ではなく"みんなのうた"的な癖の無いストレートな歌唱の上手さなのも凄い。ちなみにED主題歌も彼女ですが、そちらも伸びやかな歌声です。
シリーズ作品通して主人公がほぼ女の子ばかりの世界名作劇場の中に在って本作は主人公が男の子だったため、シンパシーを感じて観ていました。
ちなみに同時期に放送されていたNHK連続テレビ小説の『走らんか!』も同じ理由で観てたような気がします。
今回は最新公開映画『凪の島』についてです。
普段、ドラマにしても映画にしてもハートフルものや青春ものは敬遠しがちなのですが、食わず嫌いはよろしくなしなのと評判が上場のようなのとたまたまタイミングが合ってということで観てみた次第です。
前半はとにかく、まるで『サザエさん』のような事件性に乏しいホームドラマ調ののんびりした展開に若干不安を覚えましたが、登場人物に肩入れする中で徐々にそれぞれの抱える問題も描かれ、全体としての柔らかなトーンを保ったままハッピーエンドを提供してくれました。
その中で良かった点、どーにも納得いかない点等つらつらと所感を書いてみようと思います。
そんなこんなで、上記の『連続テレビ小説』や『サザエさん』のように、あまり劇的な展開をせず登場人物に裏表のない、騒がしくなく優しい物語がお好きな方々、読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレ注意なりよ。
それでは・・・・・・・・・・・・・"若草の招待状"
※『愛の若草物語』の初期OP主題歌。
当時おニャン子で人気だった新田恵利さんのソロ曲ながら、ワンクール過ぎた14話までで曲差し替えに。
うー----ん、なんというか味があるなぁ。(⦿_⦿)
ちなみに"世界名作劇場"は「カルピス~」時代は知らず、「ハウス食品
世界名作劇場」枠名の頃から観てた世代です。
Ⅰ. 作品概要
父親のアルコール依存症が原因で両親の離婚と自身のパニック障害という心の傷を負った少女が東京から母の故郷である山口県下松市の小さな島に移り住み、そこで出会った級友や大人と触れ合い、彼らの真心や苦悩を目の当たりにする中で人間として成長し、家族を再生させていく物語。
あらためてあらすじを文字にすると本当に連続テレビ小説のような非常にピュアなストーリーですが、監督デビュー以来ほぼ一貫してピュアな作品を手掛けている長澤雅彦監督の作品。
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繊細で淡い印象を残す岩井俊二監督という両極端な監督両方の薫陶を受けた
というのがまた凄し・・・。
ストーリーそのものが非常に王道の直球勝負のため、登場人物それぞれに感情移入できるかどうかが肝心ですが、主人公の小学四年生の凪を演じる新津ちせさんはまさに年齢なりの明るく多感で傷つきやすい等身大の少女ぶりで、幼過ぎもマセ過ぎもせず創られたキャラクターという感が無く、自然な存在感で好感が持てます。
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離島の廃校に近いぐらいの極少人数の小学校にしては私立みたいな洒落た制服…
なんてツッコミはどうでもいいか。(・ω・)
序盤は凪と同級生の男の子二人との日常を主軸に、"学校の用務員の不愛想なおじさんを笑わせる"とか"学校の女性教員と漁師の若い男性との恋路を見守る"とかいった緩いエピソードが続きますが、そうした何気無い展開の積み重ねが作品全体の和やかな雰囲気を醸成しつつ、島の穏やかな情景がそれと親和し、繰り広げられる悲喜劇に観客も一喜一憂出来る物語の暖かさは山田洋次監督や小津安二郎監督の作品のそれに通ずるものがあるかもしれません。
中盤に凪の父親が島を訪れるあたりから物語が大きく動き出し、凪は祖父と暮らしている同級生の男の子の内の一人に頼まれて彼の母親が入院する病院を共に訪ねます。そこにはかつて夫に不倫されて深く傷付いたことで記憶障害を発症して何年も治療に努めている彼の母親が居り、島に戻った彼がその事実を長年隠していた祖父と向き合い、絆を深くする姿を目の当たりにします。
そのことから凪は離れて暮らしている自分の父のアルコール依存症からの脱却のための闘いを認めて彼を赦し、彼の娘である自分だけでなく妻である母親とも向き合って何を望んでいるのか、これからどう生きていきたいのかをきちんと伝えるよう諭し、母親にも父親の誠意に対して答えを出すよう促すことで、結果的に家族を再生させます。
自分だけでは生きている甲斐が無いから人を助け人に助けてもらい、そのことで自分の至らない点と他人の新たな魅力に気付き、心の空白を埋めていく・・・島での生活の知恵がそのまま人生哲学に昇華されていくかのような展開はまさしく心が洗われるようでした。
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その母を女手一つで育てた島の診療所の医師の祖母佳子(木野花さん)。
"個々人がしっかり自立しているがゆえに他人を支えられる"という島そのもののような家族。
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仕事と人間関係に行き詰った女性が辿り着いた山村で自殺を思いとどまり、生きる力を取り戻す。
大自然や田舎の朴訥で朗らかな人々との交流など、本作との共通項も多い長澤監督の過去作品で、
主演の加藤ローサさんと元ボーイフレンドの徳井義実さんという配役も本作に通ずる。
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放映当時、メインの作家業より横審委員としての朝青龍とのバチバチが強烈だった
"横審の魔女"こと内館牧子さん脚本の朝ドラ。
当時僕は中三で高校受験を控えている世間体ゆえに観ていませんでしたが、
黒髪の清純派ヒロインが暗黙の了解だった当時の朝ドラに"茶髪のシングルマザー"という
いわば奇襲技を仕掛けた内館さんに"尖ってんな~"と傍で感じつつ、
頑固な気性ゆえに父無し子を産んだ娘を素直に受け入れられない父親役の伊東四朗さんに対して
田畑智子さんが「お父さん、太陽だよ!お父さんにそっくりだよ!」と、船と岸とを隔てて叫ぶ
名シーンで内館さんの目論見通りに号泣する主要視聴層の主婦の母の姿を見て
"まんま狙い撃ちされとるやん…"と内心で嘆息した昔の記憶がフラッシュバックしました…。(゚Д゚)
とまぁ脱線しましたが、以下、個人的な良し悪し点でございます。
Ⅱ. 個人的ゴイスー!!な点
・個性豊かな島民を演じる実力派俳優のお歴々の醸す存在感
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過去に難病を患う娘を亡くし、妻にも先立たれており、その自責の念から笑わなくなって幾年月。
凪の発案で在校生と卒業生の集う教室で誕生日を祝われて泣き笑いする姿の好々爺感。
そしてそれを契機に過去を受け容れ、診療所で凪の祖母から亡くなった愛娘の写真を
返却してもらうシーンも嶋田さんと木野さんのベテラン二人の名演で
二人と島が刻んだ年月に説得力を与えていました。
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元アイドルだけあって華はありますが、それを抑えて脇に徹して生徒を優しく見守る好演。
授業内での生徒の出し物のダンスの手本のポンコツぶり然り、
終盤の自身の結婚式シーンで唄う『瀬戸の花嫁』のヘタウマ感然り…彼女のファンには貴重かも?
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特撮ファンとしてはパトレン1号役でお馴染み。
吃音があるという設定ですが、それが過去のトラウマゆえの心因性のものということで
凪にシンパシーを感じて寄り添う姿はまさに優しい近所のお兄さんでナイスキャスティングなり。
登場人物は多くはないですが、知名度も実力も伴った方が配されており、上で朝ドラ感を述べましたが、キャスティングに関してもやはりそれと同じ贅沢感を感じられるのは大きいです。
Ⅲ. 個人的ムムムッ!!な点
・ギャグがいささか寒い・・・
これは個々人の感じ方でしょうが、少なくとも自分としてはそれを感じてしまったということで。
特に主人公の凪とその同級生二人との会話でのそれが顕著ですが、鬼滅・あつ森・switch云々・・・という感じで、なんというか"中高年の人が今の流行りを調べて採り入れた感"が凄まじく、このへんは観た側の年齢によって許容できるか気になってしまうかは分かれそうです。
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古さというよりは記号的といったほうがしっくり来るか。
数年前に『男はつらいよ お帰り 寅さん』を観た時に"出てくる子どもたちがちょっと記号的かな"
と思ったけど、その所感に似てるかも。
・主人公の両親が元の鞘に収まることへの違和感
そして本作を観て一番気になって納得いかなかったのがこれです。
物語中盤に徳井さん演じる凪の父である医師の島尾が島に来て凪と元妻である真央に許しを請います。「アルコール依存症の治療は続けているし、これからも続けていくつもりだ。最近ではメスも持てるようになった。だけど、立ち直っていくには目標が必要なんだ。だから真央と凪ともう一度家族になりたい」と。
なるほどもっともだと思いますし、同じ男性としては大いに共感の余地が有ります。しかし女性からするとどうでしょうか。
凪のパニック障害と過呼吸の原因は紛れも無く彼の過去のアルコール依存症とそれに端を発しての度重なる夫婦喧嘩です。たとえ凪本人が父親を赦して父と母との関係修復を望んだとしても、果たしてともすれば生涯娘が負うかもしれない心の傷とその後遺症を生んでしまった彼を母親としては赦せるのでしょうか。
もし彼女自身に暴力をふるった、ないし娘が生まれていなかったのであればそれは島尾と真央二人だけの問題であり、一人の女性としては赦す余地はあったかもしれません。しかし娘を傷つけられた、それも身体ではなく心を傷付けてしまったとあっては、どれだけ彼が反省したとしても"父親"としてはまだしも、もう一度"夫"としては認められないのではないでしょうか。
それに真央は医師ではなく看護師であり、一度結婚したからには島尾からの真央に対する敬意は有ったにせよ、あれだけ真央からノーを突きつけられればどれだけ根は高潔な男性でも「看護師のクセに…」といった上下意識が出てしまって、娘を想い続けることはあっても元妻を想い続けることは難しかったのではないかと感じてしまいます。
もちろん、大前提として僕が女性の観点を代表するのはおかしい話ですし、医師と看護師との上下関係の話は露悪的な見方かもしれませんが、"両親が復縁しそう"というところまで描いてしまったのはやや飛躍が過ぎるかも、というのが感想として紛れも無いところです。
本作は長澤監督のオリジナル脚本とのことですが、男性の願望がちょっと強く出過ぎたラストだったかな~という勿体無さはありました。
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標準語を話すのに難儀している感がどうにも否めませんでした…。
山口県が舞台なんだし、地理的に近いから関西出身の関西弁キャラでも良かったのでは?( ಠωಠ)
Ⅳ. おしまいに
というわけで今回は最新公開映画『凪の島』について書いてみました。
最後の主人公の両親の関係については未婚のおじさんの自分が何言ってんだよとは思いましたが、まぁ自分の両親が仲が悪かったゆえに少年期に色々と考えての所感ということでご容赦いただければと思いまする・・・。
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とりあえず下のほうでも内館さん…。(`・_・´)
それ以外にも、主人公がもともと海が好きという設定の背景がきちんと意味づけされていなかったのも気にはなったのですが、それでも刺激の強いドラマティックでドラスティックな展開の作品がもてはやされる昨今、こういうしんみりくる作品がスクリーンに掛かる映画として見られるのはそれだけで評価されるべきだとも思いました。
長澤監督作品での他のおススメや朝ドラ作品・世界名作劇場でのイチオシ作品がございましたら、コメントいただければ恐悦至極にございます。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。
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てことは早晩こんなのんびりした生活してられなくなるんじゃ・・・。(´・ω・`)
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