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tour "O2" を目前に控えて

宮田 何気に対バンするのってこのツアーが初めてだよね?

岩井 そうなんだよね。ずっとやりたい気持ちはあったけど。最初に飲んだときから気が合いそうだなとは思ってたよ。あのときさ、札幌じゃなくて俺らの住んでる恵庭周辺のホテルに泊まってたじゃん。あれなんでだっけ?

宮田 俺らを贔屓にしてくれてる玉光堂の人の家が恵庭だったんだよ。最初はそこに泊まるって話だったんだけど、その人の家族が「そんなの申し訳ないから近くに宿を取ってあげなさい」って言って、結局ホテルに泊まったっていう。名前は知ってたし、同じ事務所に所属してたけど話したことがなかったから、ああやって飲めてよかったよね。

岩井 そうだね。俺さ、実は宮田くんが前にやってたバンドの曲もすごい好きだったんだよ。「閃光ライオット」に出てたでしょ?

宮田 掘るねえ(笑)。でもなんなら高校の頃からつながってはいたよね。MySpaceで。

岩井 特にやりとりはなかったけどなぜかつながってたね(笑)。

岩井 俺らはつい最近自分たちでレーベルを立ち上げる発表をしたんだけど、nicotenも今自分たちだけでやってるんでしょ? なんかさ、俺らとnicotenって境遇が似てるよね。

宮田 うん。もともと事務所も一緒だったしね。俺らとFOLKSは音楽的なジャンルは少し違うかもしれないけど、なんかお互いのバンドの核になる部分が似てるんじゃないかなって思ってるんだけど、岩井くんはどう?

岩井 根底のマインドが似てるんじゃないかなと俺も思う。それに高校のとき宮田くんのバンドを気に入ったっていうことは、音楽性でも近い部分がある気がするんだよね。nicotenとFOLKS両方好きな人もけっこういるみたいだし。

宮田 そうだね。あと俺ら雰囲気が似てるってよく言われるよね。自分たちじゃどのへんが似てるのかわかんないけど(笑)。俺らもう6年も活動してるのに、ツアーと銘打って全国でライブをするのが今回が初めてでさ、その相手がFOLKSっていうのは超うれしいよ。

岩井 俺らも7ヶ所も回るのは初めてだよ。ワンマンツアーも東名阪と地元の4ヶ所だけだったし。だからnicotenから誘われたときは二つ返事でOKしたよね。お互い独立して、新しい作品を発表するっていう、このタイミングでスプリットツアーができるのはすごく意味があると思う。

宮田 ツアーのメンツもいいよね。ブッキングはイベンターの人にお願いしたんだけど、ずっとやりたかったバンドが多くて。仲いいメンバーがいるyEANがいたり、俺らのワンマンをパーカッションでサポートしてくれたぬましょうがいるManhole New Worldがいたり。

岩井 北海道公演には俺らの後輩のAncient Youth Clubとかも出るしね。彼らは本当にいいバンドだからぜひ観てもらいたいなあ。俺らはずっと北海道にいる上に人見知り集団だから全然音楽関係の友達がいないんだよね。結成してすぐデビューで、インディーズをほとんど経験しなかったからっていうのもあると思うんだけど。

宮田 それを言うなら俺らもそう。対バン考えるときも歳が近い知り合いがあんまりいなくて。だから今回のツアーで共演する人とは仲良くなりたいなと思ってるよ。

岩井 友達できるといいなあ(笑)。あとさ、ツアータイトルもいい感じになったよね、「O2」。

宮田 俺も気に入ってる。FOLKSとnicotenに共通する「O」をうまく使いたいなと思って考えてたけど、結果的に意味があるタイトルになったよね。O2(=酸素)みたいに、自分たちもみんなにとって必要不可欠なものであってほしいっていう意味が後付けだけど込められてよかった。

岩井 最近俺らの世代のアーティストってさ、分岐点に立ってると思わない?

宮田 どういうこと?

岩井 俺らって2013、14年くらいにメジャー契約をした人が多い世代じゃん。で、1回メジャーシーンに出て、2、3年経って、ここからどうやっていこうか進路を定める頃というか……。で、たまたま俺らは同じマインドを持っていて、自分たちの音楽をより追求するために独立するという道を選んだわけじゃん。

宮田 あー、そういうことか。メジャーで踏ん張って頑張ってるバンドもいれば、ずっとやっていたバンドを解散して新しいバンドを組んだ人もいるし。自分たちの音楽が1回オーバーグラウンドに出て、その結果を目の当たりにしたときに、この先どうやって動こうか悩み始めてる時期だと思う。でもそれは売れてる、売れてないに限らず、25歳っていう年齢もあると思うんだよね。3年ってさ、新卒で就職した人が転職を考える時期だとも言われるし。

岩井 転職ねえ。音楽の場合はジャンルを乗り換えるっていう感じか。流行りの音楽はどんどん変わっていくもんね。でも俺らは北海道にずっといるからか、あんまり流行りがわからなくて。

宮田 それのほうが純度の高いものができるんじゃない? 俺らもメジャーでやっていくにはある程度流行りを気にしなきゃっていう気持ちがあったんだけど、それが本当に自分たちがやりたいことなのかどうかみたいな葛藤もあって。否が応でも周りのアーティストが結果を出しているのが目に入ってくるから、負けたくないっていう気持ちがどんどん芽生えてきちゃったんだよね。メジャーシーンで音楽活動をするからには自分たち以外のスタッフの生活も担うわけじゃん。だから会社員と同じで功績を残すのが正しいという頭が少なからずあったもん。

岩井 そうだね。でもアーティストの場合はさ、大企業に勤めて裕福な暮らしをすることが正解なのかって言われたらわからないよね。今の俺らはベンチャー企業で少数精鋭のスタッフと一緒に頑張ってるみたいな状態で、これも悪くないと思うんだよ。プロモーターはこの人とやりたいとか、ツアーはこの人と回りたいとか、その道のプロフェッショナルと手を組んでやっていくことも1つの成功例だと思う。人手が足りなくなったらまた一緒にやる会社を探すのもいいと思うし。

宮田 うんうん。ちょうど俺らが独立した頃、メジャーとインディーズの垣根が取っ払われた時期でもあったなと思ってるんだよね。インディーズでもテレビに出れるし、イベントにも呼んでもらえるし。アートワークや映像も含め、バンドを中心としたチームを作り上げていくのがなんだか今っぽいよね。

岩井 独立してからFOLKSはバンドを始めた頃の楽しい気持ちに立ち返って音楽活動ができてるんだけど、宮田くんたちはどう?

宮田 一緒だよ。純粋に音楽が好きだった頃の気持ちに戻れた感覚がある。

岩井 やっぱり。自分たち主体で活動できると、音楽性を保ちつつ面白いことができるよね。音源も宅録でそれなりのクオリティで作れるようになったしさ。

宮田 でも俺はバンドを始めたときのワクワクした気持ちとはちょっと違う部分もあるよ。何かをやるときにはすべてお金がかかってるっていうことをあらためて痛感して、バンドを続けるために、そこを気にするようになったんだよね。稼ぐために何をやって、どういう音源を作るのかみたいなことを考えるようになってきちゃったとき、8月にリリースするアルバム「nicoten」のアートワークをやってくれた人に「お金かかるかどうかは後回しにしようよ。そこを考えたら自分たちが作りたいものを作れない。まずは自分たちがどういうものを作りたいかを考えて、そこから見積もりを出して削る部分を算出するべき」だって教えてくれて。そこでハッとしたの。

岩井 目の前のことばかりにとらわれ過ぎちゃダメってことか。

宮田 そうそう。本当にやりたいこと、本質的な部分を見逃してしまうときがたまにある。自分らだけでやってるとどうしても目の前のことでいっぱいいっぱいになっちゃうんだよね。

岩井 わかるなあ。仮想のターゲットに対して、こういうものを作っていこうとか、こういう戦略を練っていこうみたいに考えて、数字しか見てないっていうのが一番まずいよね。FOLKSはワンマンツアーで全然お客さんが入らなかったんだけど、めちゃくちゃ俺らにとって大事な経験になったなと思っていて。今までは「こんな人たちが聴くんだろうな」っていう想像だけで、見えない誰かに向けて北海道で曲を作ってたんだけど、ツアーを回ってみたら思ってた客層と違くて、いろんな世代のお客さんがいてさ。今でもそのときの衝撃を覚えてるよ。

宮田 理想のお客さん像があったのかもね。

岩井 うん。そうかも。だから自分の目で見て確かめることは大切だなと思ったよ。この前、俺1人で台湾に弾き語りで行ったら向こうにファンがいてさ。だから初めて行く土地で出会いやライブは楽しみでならないね。

宮田 俺らもベルギーにファンがいるっぽいんだよね。

岩井 へえ。そしたらいつかはベルギーにも行かないと(笑)。

宮田 だねえ。あと今回のツアーグッズも楽しみにしててほしいよね。「O2」をイメージした曲をお互いに作って、それがついたTシャツを用意するじゃん。俺が1人で一生懸命デザインをTシャツに刷ってるんだけど、それすら楽しいんだよね。ライブ以外の部分でも何か仕掛けられるっていうのはなんだかワクワクしちゃう。

岩井 うん。お客さんにもこのワクワクを共有してほしいよね。本当に楽しみだ。

宮田 7ヶ所よろしくね。


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