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2024年6月の記事一覧
先祖返りでオーガの血が色濃く出てしまった大女の私に、なぜか麗しの王太子さまが求婚してくるので困惑しています。(2)
2話 思いがけない求婚
ヘザーは、体は大きいが、顔つきは10歳だ。
だからこうして近づいて顔をつき合わせれば、余計にその不自然さが際立つ。
「すみません、お目汚しを……」
慌てて、頭を下げたヘザーだったが、アルフォンソはそれを遮った。
「ねえ、お名前は何て言うの? 僕はアルフォンソだよ」
「オルコット王国のヘザーです」
「ヘザーはとても背が高いねえ! 僕、大人の人だと思っていた
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3話 6年後の招待状
あのお茶会から6年が経ち、ヘザーは16歳になった。
その間に、10歳年上の一番目の姉が国内最強の辺境伯家から婿をもらって、8歳年上の二番目の姉が豪商でもある公爵家へ嫁いだ。
ヘザーは三女ということもあり、婚約者も作らず、のんびりと日々を暮らしている。
「やっぱり生まれ育った国が落ち着くわ。民はこんな私をオーガ姫と慕ってくれるし、お父さまもお母さまも、お姉さ
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4話 傾いていく心
「ヘザーさえ良ければ、ウルバーノに乗ってみない?」
構ってもらう順番待ちをしていたウルバーノを、ヘザーが両腕を伸ばして撫でていると、アルフォンソがそんな提案をしてきた。
首回りをわしわし掻いてもらってご機嫌なウルバーノには、確かに鞍のようなものがついている。
「乗れるんですか?」
「ヘザーを驚かせようと思って、内緒で訓練していたんだ。この国境にも、ウルバーノに乗っ
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5話 可愛いには勝てない
こうなることを全く予想していなかった訳ではない。
むしろアルフォンソに会うまでは、可能性が高いと思っていたくらいだ。
「アルフォンソさまの幼馴染に、あんなに可愛い人がいたなんて」
透き通った青い瞳は凪いだ海のようで、金糸と見紛う髪が美しく輝くカサンドラ。
ヘザーの力強い意志を感じさせる黄金の瞳と、針葉樹のような深緑色の髪に比べ、柔らかな色合いが際立ってい
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6話 大きいもの愛好家
「ちゃんとした飼い主かどうか、見極めるために?」
「実はウルバーノは、私の愛犬アビゲイルの弟なのです。両国の友好の証として、6年前にガティ皇国からメンブラード王国へ、ウルバーノを進呈しました」
「フェンリルの血が流れている犬が、他にもいるんですか?」
ヘザーは衝撃を受けた。
あんなに大きな犬が、そんなにあちこちに存在しているなんて。
オルコット王国にはいな
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7話 深い絆で結ばれて
滞在して数か月が過ぎた。
数日おきに行われる試験に、ヘザーは合格し続けている。
最初こそ簡単な筆記試験だったが、数回目の他国言語の試験で、メンブラード王国内の候補者がかなり減ってしまった。
試験を通過できなかった候補者たちが、仲良くなったヘザーにも挨拶をして城を去っていく。
それがヘザーには寂しかった。
オルコット王国を旅立ったときは、まさかこ
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8話 月明りの下の逢瀬
「何なんですか?」
「ヘザー?」
「夜中にこっそり来るとか」
「ごめん」
「これ以上、私を翻弄しないでください」
「ヘザー?」
「アルフォンソさまの気持ちは、カサンドラさまにあるのでしょう?」
ついに、ずっと心の中に押し留めていた感情が、顔を出してしまった。
「手紙に『僕のお嫁さんになって』と何度も書いておきながら、ちゃんと恋人がいるじゃないですか
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9話 真正面から行く
「ヘザーさま、こちらにいらしたのですか?」
共同施設の図書室にいたヘザーを見つけ、マノンが声をかける。
読んでいた本から顔を上げると、ヘザーは近くまで来たマノンに微笑む。
「次の試験のためになればと思って、いろいろな資料に目を通していました」
「熱心ですね。最終選考が近くなって、試験もずいぶん難しくなりましたよね」
顎に手をやって溜め息をつくマノンだが、実は
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10話 ヒールで全力疾走
「よろしければ、今のネイトさまの近況などを、お聞きしても? その……まだ婚約者は決まっていませんよね?」
これはもう決定打だろう。
カサンドラは、マノンの従兄ネイトに恋をしている。
やや鼻息を荒くしたマノンが、前のめりになって答える。
「もちろん、まだ決まっていません。ですが、そろそろ候補者を絞る時期に来ています」
「ネイトさまは、どなたかと心を通じ合わ
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11話 納得いかない顔
「コルネリア、あれほどヘザーさまに無礼を働いては駄目だと教えたのに、まだ分かっていないの?」
ゆらりとカサンドラが立ち上がった。
ビクッと怯えながら、それでもコルネリアは声を張る。
「だって一位はカサンドラじゃない! このまま王太子妃になるんでしょ!?」
「ならないわよ、わたくしは他に想う方がいるのだから」
「え!? そんな話、聞いてない!」
「言っていな
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12話 女子限定お泊り会
「良かったですわ、アルの説得が上手くいって」
「ヘザーさまは強くて優しくて素晴らしい王太子妃になれますよ!」
国と民に認められる王太子妃を目指して頑張ると宣言したヘザーを、カサンドラとマノンが拍手をして称える。
これであとは国王陛下が裁可すれば、アルフォンソの婚約者はヘザーに決まりだ。
そもそもアルフォンソに甘い国王陛下が、ヘザーを拒むとは考えられない。
先祖返りでオーガの血が色濃く出てしまった大女の私に、なぜか麗しの王太子さまが求婚してくるので困惑しています。(13)
13話 正しくない使用法
ヘザーは部屋の外に出て、左右へ長く続く廊下を見やる。
この離宮の中の、ほとんどの人が眠ってしまったのか、物音ひとつしない。
もしヘザーの耳が何の音も拾わなければ、いよいよ医師と騎士を呼びに王城まで走ろう。
そう思って呼吸を止め、聴覚に意識を集中する。
耳殻に手のひらを添え、少しの音も逃さぬよう、全方向へゆっくりと身をひねり、耳をそばだてた。
『ヒヒー
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14話 名探偵、現る
「ラモン公爵が怪しいと思う」
唐突にそう語り出したのは、メンブラード王国の国王だ。
ここは騎士団長の執務室で、アルフォンソは捜査内容を打ち合わせるために、いつも早朝から訪れている。
そこへ連絡もなしにいきなりやって来て、国王が自分の推理を披露し始めたのだ。
「父上、それは何か理由があっての考えですか?」
捜査の指揮を任されているアルフォンソは、資料を手繰り
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15話 離れ離れになっても
道中、大きな問題もなく、ヘザーはオルコット王国へ帰ってきた。
最後の逢瀬となった、あの夜のアルフォンソを時々思い出しては、懐かしがったり寂しがったりしながら。
城に着いてまず出迎えてくれたのは、姉たちだった。
背丈はヘザーの肩あたりしかないけれど、強く美しく逞しい自慢の姉たちだ。
親愛の意味を込めてバンバンと背中を叩かれ、父と母が待つ私室へと一緒に向