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カルアパさんから、バトンを頂きまして、法務系 Advent Calendar 2019 を投稿します。10ru です。アドベントカレンダーもはじめてなら、ブログ・noteもはじめて。みなさま、よろしくお願いします!

1 わたしについて

 インパクト重視のタイトルをつけておいて、すみません。お初ということで簡単に自己紹介です。いわゆるエンターテインメント企業で新卒として法務経験をスタートして、今は、アパレル企業で、いわゆる(ほぼ)一人法務をしています。全体キャリア10年強です。(驚愕) 音楽とキャンプと料理が趣味の、あ、そうそう、無資格法務です。

2 被災した。 

私が、今回のアドベントカレンダーのテーマとして掲げたいのは、「災害救助法」です。なぜ、私が、この企業法務とあまり関係のなさそうなこのテーマを選んだかと言いますと、タイトルの通り、今年2019年10月12日から13日の間に日本列島を縦断し、いまだに爪痕を残している台風19号(ハギビス、意味:すばやい)により、被災し、具体的には、自宅の1階が床上40cm以上浸水するという被害にあい、後述するきっかけで、同法律に強い関心を持ち、企業法務パーソンにとって知っておいて損はない法律だと感じたからです。

(自宅の写真は、はばかられため、当日の近隣の写真です。通常であれば、見える範囲はすべて河川敷の公園と野球場ですが、すべて川に沈んでいます)

画像1

幸いにして、家族は無事、現在では、日常生活はほぼ変わらずおくれていますが、現在も浸水した1階は修繕中です。

(おそらく)企業法務パーソンが、通常は関わり得ない法律について、このような機会で、その概略を知り、実際に検討する場面の際に、少しでも検討の一助になればという思いで、書いてみます。

3  台風19号における被害と企業が行った被災者支援

まず、令和元年台風19号における被害ですが、死者・行方不明者 約100名、負傷者約500名、住家の全壊3077棟、半壊2万4809棟、一部破損2万5543棟、床上浸水1万3016棟、床下浸水2万4613棟、公共建物の被害361棟、その他の非住家被害8014棟 とのことです。

台風としては、はじめて特定非常災害の指定を受けました(過去、この指定を受けた災害は、阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨の6例)。

このような、甚大な被害を受け、多くの企業が被災者支援をしています。

図1


ここで、目を引くのが、「災害救助法」(以下、「救助法」とします。)の文字。

4 災害救助法って?

そもそも、救助法は、全34条の法律(少ない!)で、1946年の昭和南海地震をきっかけに制定されたも法律とのことです。(災害対策基本法を一般法としたときの、特別法という位置づけ)

(1)目的

「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図ること」

としており、具体的には、都道府県が責任主体となって(救助法2条)被災者保護を行うことを目的とした法律となっています。そして、以下のように、(具体性のあるものではありませんが)救助の種類を定めています。

(2)救助の種類(法第4条)

○ 避難所の設置
○ 応急仮設住宅の供与
○ 炊き出しその他による食品の給与
○ 飲料水の供給
○ 被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与
○ 医療・助産
○ 被災者の救出
○ 住宅の応急修理
○ 学用品の給与
○ 埋葬
○ 死体の捜索・処理
○ 障害物の除去

いくつか、ピックアップしてみたいと思います。

〇避難所の設置

近隣の小学校、公民館などが避難所として設置されることが多いようですが、性質上、車によって避難所にいくことが困難であるため、今回の台風では、避難所までいけない、避難所に徒歩でいった結果、車が台風で浸水してしまった、避難したもののキャパオーバーで入れず、ほかの避難所へ移動することになったといったケースを見かけ、早め早めの行動が必要だということと、車の安全の確保は家と同じくらい必要だと感じました(被災後に、かなり活躍の場面がある)

〇被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与

実際に赤十字社からの「寝具そのた生活必需品の給与」を受けたものとして、毛布、タオル(写真にはありませんが、掃除用具、除菌用の薬品等々)を頂きました。

画像2

〇現金などの給与、貸与

救助法上は、現物支給にかえて金銭支給が可能となっているが、(見舞金ではなく)救助のための、現金支給は認められていないようです。理由としては、災害救助法事務取扱要領等において、災害が発生すると、生活に必要な物資は欠乏し、あるいは、その調達が困難になるため、金銭は物資の購入にはほとんどその用をなさないとの記載があり、このあたりに根拠にされていそうですが、物資があふれている現代においては、現金支給の方が、被災者のニーズを満たすものではないかと考えます。

〇障害物の除去

今回の台風被害に際して、ボランティア不足が指摘されていましたが、本来、行政の義務であることは、改めて、書いておきたいと思います。

(3)救助の原則

救助法は、以下のよう基本原則に基づき、運用されます。このあたりは、救助法の思想として、知っておくとよいのかもしれません。

災害救助法原則

(4)適用基準
 ここで、もっとも重要といえる、現実に救助法の適用をうけることができるかの基準についてです。救助法の施行令に従い、政令で定めることとされており、具体的には、以下の基準がとられています。

(災害の程度)
第一条 災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号。以下「法」という。)第二条に規定する政令で定める程度の災害は、次の各号のいずれかに該当する災害とする。
一 当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、当該市の区域又は当該市の区若しくは総合区の区域とする。以下同じ。)内の人口に応じそれぞれ別表第一に定める数以上の世帯の住家が滅失したこと。
二 当該市町村の区域を包括する都道府県の区域内において、当該都道府県の区域内の人口に応じそれぞれ別表第二に定める数以上の世帯の住家が滅失した場合であって、当該市町村の区域内の人口に応じそれぞれ別表第三に定める数以上の世帯の住家が滅失したこと。
三 当該市町村の区域を包括する都道府県の区域内において、当該都道府県の区域内の人口に応じそれぞれ別表第四に定める数以上の世帯の住家が滅失したこと又は当該災害が隔絶した地域に発生したものである等被災者の救護を著しく困難とする内閣府令で定める特別の事情がある場合であって、多数の世帯の住家が滅失したこと。
四 多数の者が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合であって、内閣府令で定める基準に該当すること。

政令で定めたものを踏まえると以下のようになります。

適用基準1

適用基準2

見て頂けるとわかる通り、1号から3号までの基準は、住家滅失の世帯数を基準として、災害のような非常時には、適用の判断が難しい場面あることが推測され、4号の適用が重要と考えられます。なお、適用される地域は、内閣府のHPに随時、掲載されます。

4 災害救助法と企業法務

(1)被災者支援の検討

冒頭にご紹介した通り、企業による被災者支援は、義援金、物資提供、無償サービス等、様々な形で行われており、いち被災者として感謝しており、とてもすばらしいとことだと考えています。一方で、企業(企業法務、リスクマネジメントの一環という文脈で)の立場で考えた場合、各社、どういった経営判断でこのような支援を実施しているのか、きになる所です。CSRの観点、企業イメージ、企業間の横のつながり、業界団体からの要請等々、いろいろなきっかけがあるかと思います。同時にPR要素を多分に含む場合も少なくないかもしれません。やらない善より、やる偽善、ぜひ、有事の際は、企業の属する方は、被災者への支援を検討して頂きたいと思います。

しかし、実際に検討する段階で、どういった基準で、どの程度のことを行えばよいのか、悩ましいと考える企業も多くあると思います(公益性の高い行為ですし、多くの企業が当然にできるものではないと思います。)。
この点は、救助法の平等の原則等の思想にえるように、不公平感をお客様に感じさせたくないという、ことが躊躇させる面があるかもしれません。 前段まで述べてきたように、本来まったく企業の被災者支援を定めている法律ではない救助法に準拠して、被災者支援を行っている企業が複数あることは、こういった点に理由があるものと推測しています。もし、この点が気になるということであれば、せっかく、行政が救助範囲を判断してくれているので、救助法準拠で、なんらかの対応を行うということでは、説得的だとおもいますし、合理性あることだと考えます。

一方で、救助法では、住居滅失の世帯数で判断するパターン(1~3号)と、行政が収集された情報をもって判断する(4号)のパターンがあり、いずれも行政の情報取集能力にゆだねられている部分が多くあり、地域格差があることが否めません。実際、私の住んでいる地域は、私のような被害が散見されていたにも関わらず、同法の適用をうけたのは、10月19日という被災から1週間が経過した後でした。この間は、かなりな不安もあり、救助法に強い興味をもったきっかけとなりました。(参考まで、今回の台風19号の関東における適用を掲載しておきます)

北関東1

関東2

従いまして、こういった現実を踏まえると、被災者支援を検討しつつも、取り組んでいないような企業は、救助法の適用範囲において、できる範囲で被災者支援に取り組む、資力や経験のある企業は、必ずしも、救助法が万全でないことを踏まえ、独自の判断も加えつつ、より積極的、より広範な支援がなされることえを期待したいと思います。救助法の適用を待たずに、支援を行うことは、被災者が求める迅速な支援に叶うものと思います。

(2)不可抗力事由

もう一点、企業法務として、このような場面で、かかわることがあるのは、契約書の不可抗力条項ではないでしょうか。一般的には、以下のような記載が多いかと思います(割とフルスペックかもしれませんが)。

地震,台風,津波その他の天変地異,戦争,暴動,内 乱,テ ロ行為,重大な疾病,法令・規則の制定 ,改廃,公権力による命令・処分その他の政府による行為,争議行為,輸送機関・通信回線等の事故,そ の他不可抗力による本契約の全部又は一部 (金銭債務 を除 く)の履行遅滞又は履行不能については,い ずれの当事者もその責任を負わない。ただし,当 該事由により影響 を受けた当事者は,当 該事由の発生を速やかに相手方に通知するとともに,回復するための最善の努力をする。

通常、問題視されるのが、適用の場面が具体的でないという点ですが、例えば、売買の場合であれば、引き渡し場所や保管場所が、救助法の適用を受けた場合に限定するなど、立場に応じて、取り入れてみることも1案ではないかと考えています。(相手方への説明が必要かもしれませんが)。この場合は、救助法の適用は、随時、内閣府のHPに更新されるものであることから、判断基準時は定める必要があると考えます。


と、だらだらと書いてしまいましたが、(自分も本当にそうだったのですが)災害に関する情報は、当事者にならないと、ほぼ記憶は残らないものかと思います。このLegal ACという場で、書かせえて頂くことで、少しでも、(今回の台風に限らず)過去の災害が風化せず、みなさんの頭の片隅の残るとよいなと思いますし、被災者・地域がしっかりと復興を遂げていくことを祈ります。

と、初のLEGAL ACは、ここまでということで。なおな、この投稿のタイトルは、Legal ACにも参加している マギー住職 が、私が被災した際に、心配して連絡をくれたときに、爆誕した名言でして、(C)マギー住職 でございますことを記し、感謝を表明したいと思いますw

さて、お次は、そんなマギーへとバトン渡すことになっている、AkifumiMochizuki さんでございます!!よろしくお願いします。                

【参考文献】内閣府HP 「災害救助法」徹底活用 (津久井進、出口俊一、永井幸寿、田中健一、山崎栄一) 大災害と法(津久井進)     特に、弁護士であられる津久井進 先生は、Twitterや書籍にて、非常に勉強になる情報を提供されており、今回、とても参考にさせて頂きました。ありがとうございます。


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