結婚できない女だった私

私は私を慰めるために文章を書く。辛い時に私を救ってくれたのは私から産み出される文章達だった。どうしようもなさ、ふがいなさ、いらだち、れっとうかん、、、全て自分1人では解決できない、かと言って、誰かに吐き出したり相談できるような性格でもない。抱えきれない私の負の感情を一緒に背負ってくれたのが私の文章だった。
言葉にできない想いを感じたくなくて、過去の辛さを掘り起こしては今の気持ちを忘れようとする。そうやって毎日をやり過ごしていた。気を抜くと思い出す、何をしてても「所詮は」という言葉がつきまとう。楽しい気持ちもすぐ消える。愛されているなと思う出来事があっても手放しでは喜べない。
私は恋人と結婚できていない事にとても悩んでいた。

悩んでいること自体、とても恥ずかしい。深刻に悩めば悩むほど「結婚できない女性」の悲惨さが前面に出てしまう。
面白おかしく「独身女性」が取り上げられる。三十路越えの負け犬。性格に問題があるから結婚できない。そこまで好きじゃない女だから誰も選ばない。価値のない存在。認められない存在。いいとこ取りの存在。いじられたら笑うしかない。本気でキレたら滑稽だ。むしろ自分から結婚できないキャラを演じて「気にしていませんよ」アピールを行うしかない。
決して「誰とでもいいから結婚したい」というわけではなかった。それならすでに既婚者だったであろう。「今すぐ結婚して欲しい」と指輪を渡された事も何度かある。それでは意味がない。本当に本当に本当に心から好きな人と結婚がしたかったのだ。
好きな人と結婚できるのなら何も望まない。指輪もいらない。結婚式もやらなくていい。年収なんてどうでもいい。共働きでも専業主婦でも何でもいい。親と同居だって喜んでする。そんな気持ちでいるのに、私は恋人と責任をもたない楽しい関係を続け、そこから逸脱できていなかった。
恋人のことを「彼氏」と呼ぶのがとても嫌だった。同棲を決めた時、「失敗した」と思った。30歳を越えての同棲に対して世間の風当たりは強い。だけど、きっと、私の場合は今のままが何年も続いていく。求めるハードルが低くても結婚できない私は、きっと本当にダメな人間なんだろう。わざわざそんな私を選ぶ決め手なんてない。これからも飯を作って家事をしてセックスするだけの女であって、それ以上でも以下でもない。


そう思っていたのに、同棲を始めて2ヶ月後に私は既婚者になった。

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