賃貸
私たちの家がなくなってしまった。
私たちの家、と呼ぶには、少し違和感があるかもしれない。だって私はその家をもう半年も前に飛び出したのだから。私の家ではなくなってから月日も流れ、そこは私が帰るべき場所ではなくなったし、寄り付くべき場所でもなくなった。私の家だった場所では、君だけが生活していた。でも、君が生活をしている、その事実があるだけで、私は帰ろうと思えば帰れるような気がした。だって私もその家で、その場所で、季節の流れを感じながら、普通の生活を送っていたのだから。事情があって長く家を空けているだけで、実はいつかまたそこで前と同じように、まだ寒いよと言いながら春の匂いを感じるために窓をあけたり、夏の暑さを消すようにベランダに水を撒いたり、食欲の秋だからと理由をつけて宅配ピザばかりを頼んだり、また冬がきたからもう4年目だねって会話をしたり、そういうことをするような気がしていた。お気に入りの家具も家電も私は全て置いてきたのだから、私はまだ、私たちの家の一員だと思っていた。
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