めっちゃでかい涅槃像

　天気いいしちょっとお出かけしたい。めっちゃでかい涅槃像、見たい。そんな気分だったので見に行って来た。

　でかい。福岡の南蔵院というお寺にある涅槃像だ。めっちゃめちゃでかい。足のとこにちょっとだけ人が写り込んでいるが、その大きさからこの涅槃像の大きさを想像してみて欲しい。でかい。ブロンズ製の涅槃像の中では世界最大とのことだった。でかいものは良い。俺は特に熱心な仏教徒というわけではないが、めっちゃでかいものはめっちゃでかいというだけで見る価値があるというもの。

　住職が宝くじに当たって作ったものということで、金運関係の祈願にくる人が多いらしい。現世利益サイコー。

　めっちゃでかい涅槃像の前にはめっちゃでかい涅槃像を座って眺められるように、日よけ付きのベンチがたくさんおいてある。めっちゃでかい涅槃像はそのデカさゆえに、多くの人が訪れる。子供連れもだ。そこそこ歩くし、子供には退屈かもしれない。そんな子供への配慮かなんなのかわからないけど、涅槃像の前のベンチには絵本や児童書がたくさんおいてあった。

　よくよくみたら『マザーテレサ』や『イスラムの王子』といったタイトルが混ざっている。バリッバリに異教の聖人の伝記とバリッバリに異教の王子の物語だ。なんておおらかなんだ。俺はこの宗教的おおらかさがかなり好きだ。

　あと、ソフトクリームも売ってる。ベンチに腰掛けてめっちゃでかい涅槃像を眺めながらソフトクリームを食べることができる。これが美味い。晴れやかな秋空の下でめっちゃでかい涅槃像を眺めながら食べるソフトクリームは美味い。

　めっちゃでっかい涅槃像はでかいだけでなく、その体内に入ることもできる。入る時はなんか祈願するための板を500円で買うことになる。買った。

　板を買うと「この中からどれか書いてください」と願い事のリストを見せてくれる。家内安全とか、合格祈願とか、商売繁盛などだ。就職成就と迷ったが、とりあえず商売繁盛と書いた。商売繁盛に就職も含まれるだろう、多分。板の裏に名前を書いたら靴を脱いで涅槃像の中に入る。仏様の中に土足で入るわけにはいかねえ。

　中には一列にタイルが敷き詰められた廊下がある。タイルの一枚一枚の下には四国八十八ケ所の霊場の砂が埋められている。そうだ、これはこのタイルを一枚一枚踏んで祈りを捧げることであのお遍路さんと同じ効果を得ようというものだ。天才かよ。

　俺はこういう仏教のアイデアツールがかなり好きだ。マニ車とか。マニ車とかこれとかズルじゃんと思う人もいるかもしれないが、断じてズルじゃない。

　マニ車は字が読めない人でも経を読むのと同様の徳を積めるようにという発明だし、この八十八タイルロード(正式名称は知らない)も四国八十八箇所をめぐりに行く体力や金がない者が祈願できるようにというものなんじゃないかと思う。たぶん。違ったらごめん。

　とにかくこういう「まあ、手軽にできるなら手軽な方がいいよね」みたいな部分は好きだ。

　タイルロードを途中まで行くと、横道へ進むように促される。順路に従って歩くと、小さな部屋へとつながる。そこは涅槃像の左胸、心臓のあたりにある部屋だ。ミャンマーから分けてもらったという仏舎利(釈迦の骨)が安置されている。御釈迦様の骨に直接祈願できるのだ。俺の前を歩いていた外国の方は説明を受けて感動したのかなんなのか知らないけど、反射的に十字を切っていた。ジーザス。まあ、さっきのベンチの横の本といい、なんかおおらかな感じだし大丈夫だろう。

　あと、この仏舎利の部屋でしか買えないお守り(スクラッチくじつき)が売ってる。なんか、マジかよって感じだ。「御釈迦様の骨の前で限定お守り(スクラッチくじ付き)売ろうぜ」って発想自体になんかビビってしまって買わなかった。買えばよかった。

　部屋を出たら残りのタイルを踏みながら外へ出ることになる。外に出たらなんか羽根突きの羽みたいなのを投げて升みたいなのに入れるミニゲーム的なのをやらせてもらえる。升には「大吉」みたいなのが書いてあり、入ったら運がいいぜ！みたいなやつだ。あれはどういうものだったんだろう。俺は全部外した。

　さらに南蔵院にはこの涅槃像以外にも敷地内には様々な仏像がある。

　これはさば大師、さば大師の「さば」は「鯖」だった。なんかつい写真を撮ってしまった。あと仏だけではなく、敷地内に鳥居もあり神も祀ってある。たまにある、お寺と神社の神仏ハッピーセットだ。興味があれば神仏習合とかその辺の歴史を調べて欲しい。面白いから。

　亀もいる。

　南蔵院、こんな感じでなんかおおらかな上にアトラクション性が高く、楽しい。最初にも述べたが神仏に興味がなくてもめっちゃでかい涅槃像というだけで一見の価値がある。またでっかいものが見たくなったら行こう。

　近くの土産物屋でつい買ってしまった般若心経手ぬぐい。これをライブみたいに振り回せばマニ車と同じ理屈で徳が積めるのではないかと考えている。