見出し画像

らぷた学パロのやつとおまけ

 つかったーは画像でやったけどね、折角文書データあるしね、うん。って訳でこれです。
 あと途中で思いついたraputaちゃん視点のの怪文書。それとraputaほとんど関係ないです。妄想だからね、仕方ないね。

本文

 学校の授業の時間は退屈だった。
 特に面白くもない話を長々と話され、わざわざ覚える意味が分からない言葉を覚えさせられる。
 だからと言ってぼーっとしていたりでもしたら、ふいに指名されて、解こうともしなかった問題の答えを尋ねられる。それに答えられずに恥をかくのは御免だったので、そんなことが起きないよう、仕方なく答えを見ながら問題の解答をノートに書いていく。
 視線を時計に向けてみる。前に見た時から過ぎた時間は二分ほど。
 早く終わらないかな、なんて思えば思うほど時間はなかなか過ぎていかない。
 なんとか集中してみようと、教師の話に耳を傾ける。それでも話は全く頭に入ってこなかった。
 もう僕は集中する気がなくなってしまい、机に突っ伏してそのまま眠りに落ちてしまう。
 次に目が覚めた時には、授業が終わろうとしているところだった。
 
 そんなことの繰り返し。
 意味もよく分からないまま、楽しみの一つもなく、同じようなことを繰り返す。
 そういえば、成績のいい奴や毎日が楽しそうな奴らには、大体目標が定まっていた。それを決めれば、一日一日の成果がどれほどそれに近づいたかが分かって、それが日々に変化をもたらしてくれているのだろう。
 なるほどな、と僕は感心した。
 だけど僕には目標も何もない。作る気もない。
 僕は変化を求めていなかった。理想像も何もなく、特段楽しい訳じゃないけど、変わらない日常が続くなら、それで良かった。
 それでも。
 不意に変化というのは、起こってしまう。

 僕のクラスには人気者の少女がいた。
 肩より少し長めに伸ばしている黒髪。コロコロと楽しそうに変わる表情。休み時間には、いつも誰かに囲まれて話をしている。
 僕は基本、教室の隅で本を読むか寝ているかだったから、彼女とは無縁の存在だった。
 それでも、そこからその様子を眺めることは出来る。
 綺麗だ。
 丁寧に手入れされているであろう艶やかな黒髪も、人形のように整った顔立ちも、柔らかい物腰で人と接する姿も、何もかも。
 輝いていて、眩しいけれど、その光は優しくて。
 思わず惹かれてしまうほど、綺麗だった。
 そう――僕はいつの間にか、彼女に恋をしてしまっていたらしい。
 授業中。僕はいつものように集中していなかったけれど、理由は違う。
 左前の、少女の席。
 黒板を見ながら、ノートに板書を書き写している彼女の姿を見ていた。
 綺麗だった。
 なんてことない動作だったのに、ため息が出てしまうほど絵になっている。
 それを眺めている時間は、特に面白かったわけではなかったけれど。
 何だか少し、幸せで。
 それから僕は、学校に行くのが少し楽しみになっていた。それを自覚したときは、自分に少し驚いたことを覚えている。
 こんな変化は求めていなかったけれど、今はその変化が心地いい。
 これがずっと続くといいな、なんて思っていた。
 だけど、彼女を取り巻く環境はそれを許さなかった。

 多方面から好かれていると言って、嫌っている奴がいないなんてことはない。
 クラスでは、休み時間などに自然と集まるグループが出来ていた。それはきっと、他のクラスでも同じこと。
 その中に、分かりやすく少女を嫌っている数人の男女で出来ていたグループがあった。
 始まりは、その中の女子がたまたま一人でいた少女に、くしゃくしゃに丸められた紙を投げつけたこと。
「わっ」
 そこまで勢いはなかったから、痛くはなかったと思うけれど。
 その行動には、明確な悪意があって。
「……あはは。やめてよー」
 彼女は投げてきた女子の方を向いて、そうぎこちない笑みを浮かべながら返していた。
 そこから。
 そのグループのいじめは、活発化していく。

 休み時間、少女が一人で居れば蹴られた。ある日、机の上には悪口の落書きがされていた。
 その度彼女はぎこちなく笑った。笑って、何とか耐えようとしていた。
 彼女は気が強い方ではなかったから、強く何かを言うことが出来なかったのだと思う。
 それらのいじめがされていることがクラスメイトに広まっていくのに、そう時間はかからなかった。
 自分まで何かされたくない。そんなことを思ってか、彼女を取り巻く人々は段々と減っていく。
 いつか、彼女が筆箱を忘れたと教師に伝えた時には、筆記用具を貸してくれるような人物はもう何処にもいなくなっていた。
 そうして。
 彼女は、クラスの中で孤立していった。

 スマホを含め機械類に疎かった少女は、クラスのグループチャットにも入っていない。それをいいことにして、彼女の話題がよく流れてきていた。
『何かしてもあんま反応しないからつまんない』『最近表情も変わんないし喋らなくなってきたしね』『前はあんなに人集めてた癖に』『でも俺らのせいであんなに変わったんだろ? それは面白くね?』『よくあそこまでされてまだ学校来ようとするよね』
 ……大体がそんな悪口ばかりだ。
 それでも僕は何もしない。クラスラインに何も送ることが出来ない。ただいじめられている様子を見ているだけの、傍観者。
 あまり見ていて気分のいいものではないから、さっとチャットを閉じる。
 こんなことが日常として続いていくのだろうか。
 そんな疑問は、すぐに晴れることになる。

「あんたさ、最近笑わなくなったじゃん。どうしたの?」
 ある休み時間。一人で本を読んでいた少女に、件のグループの女子がそう聞く。
 少女の髪は白みを帯びてきていて、前のような活発な雰囲気も、存在感もどこかに消え失せつつあった。
「……別、に……なんでも、ないよ」
 たどたどしく、弱々しくそう彼女は返す。
 すると、グループの別の男子が、
「こんなんでもさ、俺らはお前に笑っていてほしい訳よ。笑わないと楽しくないじゃん? だからさ、ほら、笑えよ」
 圧。彼らはあまりにも逆らい難い圧を少女にかけていた。
 少し間が空いたが、彼女はぎこちなく、少し口角を上げるだけして、
「……は、はは……」
「は? それで笑ってるつもりなの?」
 男子が突然、彼女の胸倉を掴む。
「ぐっ……」
「もしかして、もう笑えもしないのか、お前? 気持ちわりぃなぁ」
 グループから笑いが上がる。周りも、僕も、静観しているだけ。
 少女は苦しげな顔をしながら、
「……放して……」
 消え入りそうなほど小さく、呟く。
 だが、そもそも笑っている彼らには聞こえていないだろうから、放してくれるどころか、返事が返ってくる訳もない。
 今日もこのまま、彼女は笑われているだけ。
 そう思っていた時だった。
「——放せッ‼」
 彼女は突然大声を放ち、胸倉を掴んでいた男子の腕を勢いよく払いのけた。
 その男子は背中から近くの壁に勢いよくぶつかり、ドン、と大きな音が鳴り響く。壁はその衝撃で凹んでしまっていた。
 確実に無事では済まない音だった。
 静寂。誰も音を出さずに、出すことが出来ずに、周囲の人間は恐怖か動揺か、どちらかの反応を見せた。
 明らかにその力は異常だった。
 それは、彼女が疎外されるには十分の力を持っているということ。
「……ぁ」
 自身に集まっていく視線を見て、少女は小さく喉を鳴らす。
 その視線には、何とも言えない無言の圧力があった。
「あ……ち、ちが……」
 弱々しく、小さく首を振る。
 それでも視線は彼女を捉え続け、それに耐えられなくなったのか、彼女は崩れ落ちながら、
「……ごめ、なさい……ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい……っ」
 縮こまり、顔を抑え、嗚咽しながら謝罪の言葉を繰り返す。
 こんなことが始まってから、初めて口にした謝罪の言葉は、あまりにもか細いものだった。

 飛ばされた男子は救急車に運ばれた。まだ意識は混濁しているらしい。
 可哀想だな、とは一応思っておいた。だけど少女にとってはそれどころではなかったらしい。
 その日の午後の授業中。彼女はずっと何かに……多分、自分自身か、また何かされるんじゃないかという恐怖か、あるいはその両方か、それに怯えていたのだと思う。
 いつものように板書を書き写すこともなく、ただ自身を抱くようにして震えているだけ。
 初めて彼女は拒否反応を示していた。今までは自身は何もしていなかったが、今回彼女は明確に危害を加えた。その罪悪感に襲われているのだろう。
 綺麗だ。
 弱々しくて、小さくて。
 あまりにもそれは、綺麗だった。

 翌日から少女は学校に来なくなった。
 グループの奴らはそれに笑っている。グループチャットでも同じような反応をしていた。それ以外のクラスメイトが、何かしらの反応を明確に見せることはなかった。
 空白となった、左前の席。
 今日も、僕はそこをぼんやりと眺めている。
 以前のように寝ることが多くなってしまったけれど、僕の視線はなかなかそこから離れなかった。

 僕は前述した通り、あまり勉強が好きな方ではない。
 一応集中しようとはするけれど、それでもいつかは眠ってしまったり、文房具で一人遊んでいたりする。
 そんな体たらくでは、テストの点数も振るうはずがない。
 僕は補修の常連だった。だからと言って退屈で面倒なのが変わることはなく、結局眠りについてしまうことが多かった。
 だけど、今回は違う。
 左前の席。誰かが、いる。
 いや、あの少女だ。思わず誰かと言ってしまったのは、それほどまでに姿が変わっていたからだった。
 肩より少し長いくらいだった髪が腰ほどまでに伸び、白く染まっている。
 そう、白髪。彼女はまた異常に染まっていた。
 それでも僕は彼女を眺めることをやめなかった。
 綺麗だった。どんな姿になろうと、彼女は綺麗であることはやめられないらしかった。
 補修が終わる。いつもの僕ならさっさと帰ろうとしていたところだったけれど、今回はそれが出来なかった。
 まだ、少女のことを見つめていた。
 荷物を鞄にまとめていた彼女は、ふとこちらを見る。一瞬、目が合ってしまった。何か思われるのは嫌だったので、すぐにふいと目を逸らす。
 すると、彼女はこちらに近づいて来る。そして、僕に問いかけた。
「ねえ――どうして?」

 ふと、目を覚ます。どうやら僕は眠っていたらしい。
 そして……暗い。窓からも天井からも、何処からも光が差してこない。
 どこまでが夢で、どこまでが現実なのか。そもそも僕はいつ眠っていたのだろうか。
 考えるほど無駄な時間が過ぎてしまう。
 暗闇に目が慣れてきた。鞄を持ってさっさと帰ろうと席を立った時だった。
 廊下から、足音が聞こえる。
 時計を見る。時刻は九時を回った頃。こんな時間に、誰が?
 辺りを見回せば、左前の、あの少女の席に、鞄が置かれている。
 もしかして、と淡い期待と、どうして? と微かな疑問が浮かぶ。
 ともかく、僕はその足音を追ってみることにした。
 
 暗闇の中。足音の主もよく分からないまま、連れられるように行って辿り着いた先は、屋上のドアの前だった。
 さっき、ドアの開く音が聞こえた。この先に誰かがいるのだろう。
 そっとドアを開ければ、手すりをさすりながら月を眺めている人影があった。
「あ……やっぱり来た」
 ドアの音に振り向き、呟くように言ったのは、白く染まった髪を風になびかせる少女。
 僕が恋をした、少女だ。
 夜に覆われている空を背景に、表情も変えずこちらを見ている。
「……どうして、ここに?」
「どうして……。どうして、かな。何で……ここにいるんだろう。私」
 少しの間、静寂が流れる。
 僕は初めて彼女のことを正面から見つめていた。
 綺麗だ。
 隈で縁取られた目も、あまり手入れされていないであろうボサボサになった髪も、どちらも綺麗とは言い難いものだったのに。
 それでも、彼女は綺麗だった。
「そういえば……あなたに聞きたいことがあったんだ」
 彼女はこちらに近づいて、
「あなたが、私のこと好きって話。……ほんと?」
 少し腰を低くして、上目遣いでそう見つめてくる。
 その噂が流れていたことは知っていた。恐らくいじめられている際に伝えられていたのだろう。
 だが、こうも本人に直に言われると狼狽えてしまうというもの。思わず頬が赤くなってしまい、少し間が開いてしまったけれど、もうここしかないと思って。
「……好きだよ。僕は君が、好きだ」
 そう、言いきってみせた。
 すると、彼女は静かに手すりの方に近づいていく。
「そっか。好き……か。ほんとだったんだ。……良かった。それなら、最後まで笑わずに居てくれるよね」
「……え?」
 学校の屋上で、最後という言葉。
 それも、手すりをそっとさすりながら。
 つまり彼女は――
「まさか……」
 綺麗だった。
 儚くて、淡くて、脆くて。
 今にも消えてしまいそうなほどに――綺麗だった。
「――ありがとう。私のこと、好きって言ってくれて。最後にあなたと話せて、よかった」
 そう、彼女は初めて――優しく、笑ってみせて。
 僕はそれに何も言えなかった。何も出来なかった。
 何かを、しようとする気さえ起きなかった。
 やがて彼女は僕に背中を向けると、手すりを越え、音もなく暗闇へと落ちていく。
 その暗闇を見つめながら立ち尽くす中。
 彼女の死を告げるように、ひときわ強い風が通り過ぎていった。
 
 翌日。
 少女が自決したことは、一瞬で学校中に知れ渡った。
 大体の人物が困惑と動揺の表情を浮かべる中、例のいじめていた奴らが浮かべていたのは、嘲笑。ここまで来ても、自分たちがやったことの重大さが分かっていないらしい。
 だけど、僕がそれを気にすることはなかった。
 左前の、少女の席。
 もう何処にもいないのに、あたかもそこにいるかのように、彼女の席をずっと見ている。
 どれだけ輝いていようと。
 どんな姿に成り果てようと。
 確かにそこにいた彼女の、幻を見ているだけなのかもしれないけれど。
 脳裏に、目に、焼き付いて離れない彼女の姿は、どこまでも綺麗だった。
 いつまでも、いつまでも。
 綺麗だった。

怪文書

学校に行かなくなって、どれくらい経ったのだろうか。
あんなことをしてしまったのだから、もう誰にも合わせる顔がない。というか、これ以上行ったらもうどうなるか分からない。
ふと、鏡の前を横切ると、白く伸びきった髪が見える。
立ち止まって鏡を見て、初めて私のものだと分かった。
手入れされていないことを表すようにボサボサだ。もうまともに寝れた覚えがないくらい眠れていないから、隈が目を分かりやすく縁取っている。
笑いが出た。はっ、と声が出て、少し表情も笑った。……その筈、だった。
笑い声は、出た。掠れていて、聞くに堪えなかったけれど。
それよりも……表情が、笑っていなかった。ただ、口が少し開いていただけ。
少し笑ってみようと、口角を上げようとしてみた。けれど、上手く上がらない。上手く、笑えない。
……ああ、なるほど。
どうやら、私は笑い方を忘れてしまったらしかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?