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気になる音楽#2

kate tempest は気になる。

あれは何年前になるのだろうか。オーストラリアの国営放送ABCの"QANDA"という公開討論番組で彼女を見たのは。―ここで当の番組を調べてみたら2016年の5月16日の放映となっていた。さらに調べると彼女がラッパー兼ポエットとしてオーストラリアでパフォームした最初は、2013年だった。私達が日本に帰国したのが、2012年の2月だったのだから、彼の地のテレビでkate tempestを見たという私の記憶は正しくないことになる。この記憶違いは、70歳というすでに老化が始まっているであろう年齢によるものなのか、さらにはパーキンソン病という忌まわしき疾病の所為なのか、私にはわからないー。いずれにしても、在豪中にテレビか新聞でkate tempestという英国の女性ラッパー兼ポエットを知ったと記憶する。なぜならその時の彼女のパフォーミングは、ラップというよりポエットリー・リーデイングであり、その容貌は地味なTシャツにジーンズ姿にすっぴんで、およそミュージシャンの女性というそれまでの私のイメージからは、かけ離れていたからだ。そしてその意外性が私をして彼女のとりこにしたのだ。

近年の彼女のラップは、初期のポエトリー・リーデイングに比して音楽性を増してきて私の好きなダブ(dub)に近い楽曲もある。あの ダブ・ポエットlinton kwesi johnson の現代女性版で、その衝撃性はパテイ・スミスとの出会いに近い。youtubeで彼女のglastonburyでのパフォーマンスが見られるが、私の一押しは"hold your own"である。一聴をお勧めしたい。

あっそう、ダブ・ポエットと言えば、日本にもいました。いとうせいこう氏だ。彼はジャパニーズ・ラップの草分けのような存在だろうが、近年の彼は dubforceというダブバンドの下でポエトリーリーディングをしている。メッセージに説得力があって、世界的レベルに達している数少ないミュージシャンである、と思う。

あっ、もう一人思い浮かんだ。なんと中川五郎さんだ。70歳前後の人ならご存知だろうが、昨今の諸君にとっては遠い過去の遺物のような存在かもしれない。私も彼が現在も活動しているのを知らなかったのだが、最近youtubeで「烏山神社の椎の木ブルース」を聴いてぶっ飛んだ。ウッデイ・ガースリーやピート・シーガーのプロテストフォークのスタイルをそのまま日本へ置き換えて、世田谷区の烏森神社の四本の椎の木の由来にまつわる衝撃的な歴史を生ギターに乗せて語りそしてしまいには叫びながら、終わるのだ。それは、関東大震災直後の朝鮮人虐殺の事実とその後の日本人の関わりについて怒りを込めて語っていた。まさに歌というよりポエトリーリーディングであって、フォークソングの伝統がよみがえっているのだ。

この曲も是非、若い人達に聴いて欲しい。strongly recommeneded!




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