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さくら、もゆ。感想【ネタバレ注意】

 今回の記事は首題の『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』という恋愛アドベンチャーゲーム(まあ要するにエロゲ)のプレイ後の感想です。
 こちらのブログ、自転車ネタ用にするという方針でしたが、どうしても……どうしても言わなければ収まりがつかないことがあるので、この場に書かせてもらいます。何が収まりがつかないかと申しますと、この物語があまりにも衝撃的すぎて、攻略から1ヶ月経った今もまだロスを引きずっているからです。
 今まで恋愛アドベンチャーゲームは80本以上遊び、アニメも1クールにつき10本弱ペース、ラノベも月約2冊ペースでサブカルコンテンツを消化している私ですが、これほどまでに思考を支配されたのは個人的三大神ゲーである『CLANNAD』『装甲悪鬼村正』『いろとりどりのセカイ』ですらあり得なかった異常事態。寝ても覚めても さくら、もゆ。のあれやこれやしか考えられない。あそこが良かったとか、ここに込められたメッセージがどうだったとか、SNSでぶちまけて共有したい!しかしギャルゲというものは難儀なもので、SNSはネタバレ厳禁。リア友のプレイヤー組は全員攻略途中なので、共有する相手がいません。
 そこでブログの出番です。この抑圧を解放するにはブログしかありません。この自転車ブログの2本目の記事をエロゲレビューにしてしまう所業をお許しくださいませ。

 ちなみにオールクリアした人限定の記事です。
  ネ タ バ レ 全 開 です。
 内容を知ってる前提なのであらすじもいちいち書きません。説明なしで通称略称使いまくります。ですので、未プレイの方や将来遊ぶ可能性のある方は、どうかこちらの記事はそっ閉じしてください。こんな駄文でこの物語の真相を知ってしまうのは惜しいです。人生の損失です。FAVORITEさんにも益になりません。クリア後にまた見に来てください。ついでにいろセカのネタバレも一部含みますのでこれもご注意。
 前置きが長くなりましたが、OKな各位は下へスクロールして、本記事をご覧くださいませ。



 あ、ちなみにこの物語は難解なので、記憶違いや解釈違いがあるかもしれませんし、長いので推敲せずに投下しますので読みづらいかもしれません。その辺りはご容赦を。

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この記事に添付した全ての画像と物語の内容の著作権は有限会社フェイバリットに帰属します。

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◆前日譚
 まずは さくら、もゆ。が発売する前に遡ります。
 2017年12月。さくら、もゆ。のキービジュアルやキャラクターデザイン、あらすじが公開されました。夜汽車と桜の幻想的な一枚絵、4人のヒロイン。前々からアナウンスがあった通り脚本は漆原先生。
 前作のアス永遠の構成が星メモフォーマット(ダブルエースヒロイン)であったことを勘案すると、今作はいろセカフォーマット、つまりエースヒロインとセカンドエースヒロインとミドルヒロイン構成で来るのではないかと予想できます。いろセカでエースだった真紅の立ち位置には身長的にクロ。セカンドである加奈の立ち位置はキャラ紹介の2番目につくハルでしょう。いろセカで加奈は主人公に「助けてください。私とってもピンチなんです」とお願いし、さくらでハルは主人公に「魔法少女に戻して」とお願いするところから物語が本格的に動き出すわけですから、この二人の立ち位置はシンクロしていますね。
 ということで、この時点で攻略順は決まりました。最初は千和(なんとなく)、次に姫織、そしてセカンドヒロインのハル、最後にエースのクロです。後に分かったことですが、ハルとクロの√はロックされているのでこの二人は先の順でしか攻略できないとのこと。

◆OPムービーと体験版公開
 2018年9月の発売予定から延期に延期を重ね、同年12月にやっとOPムービーと体験版が公開されました。

 え? なにこのOP最強じゃん。
 これが さくら、もゆ。の世界観なのか!とショックを受けました。OPだけで世界観に引き込まれたのは『穢翼のユースティア』以来でしょうか。しかもこのOP、オールクリア後に見返すと芸が細かすぎて目が潤む……。特に1:48のクロが時計の部屋にいる描写とか切なさが炸裂してもう駄目。
 このOPムービーは公開から今日に至るまで毎日の筋トレのお供です。

 体験版も夢中でプレイしました。ここで初めて動く登場人物達が見れたわけですが、第一印象からガラッと変わったのは姫織と十夜ですね。姫織は日本人形っぽくてお淑やかそうだと思っていましたが、蓋を開けてみればゴーイングマイウェイな不思議ちゃん。キャストもナイス演技で、なるほどこれが姫織かってなりました。十夜は蓮みたいな性格かなと思いきや、ちょっと生意気だったりアホっぽかったりでもうくそわかいいありがとう最高だぜ!!!
 そんな体験版は製品版の発売までに5周しました。

◆共通√

――これは、"魔法少女"のための物語だ。

 主人公の誕生日の日、施設を飛び出して"ゆめのねどこ"に転がり込み、"魔法少女使い"の役割を継承するところから物語が始まります。ちょこちょこと登場人物が出てきたり、"夜の国"の大雑把な説明がなされるのがこの共通√です。
 "夜の国"の設定がこの物語の中枢にして超難解な部分になりますので、"夜の国"について整理しながら本稿を書き進めていきます。まずこの共通√で語られる"夜の国"の設定は以下の通り。

 ・心が大人になっていない人間しか生身のまま這入ることができない。
 ・心が大人になった人間は、"夜"での記憶をだんだん忘れてしまう。
 ・万が一"夜"の中で死んでしまった場合、現実世界では行方不明になる。
 ・人間ではない"夜"の住民が暮らしている。
 ・参禅町に暮らす人々が夜に見ている夢とリンクしている。
 ・負の感情といった"悪夢"は魚などに実体化して現れる。
  それを回収するのがあさひさんたちの仕事。
 ・"悪夢"は肥大化すると"夜の国"で暴走する。
  悪夢を見ている現実世界の本人にも悪影響を与える。
 ・"悪夢"の中でも一際巨大で人類滅亡の危険すらある存在が"夜の王"。
 ・"夜の王"は10年前に激戦の末、魔法少女が討伐した。
 ・"夜"の中で魔法少女は自らの想像力により魔法を創造する。
  夜の住民は想像力を持たないので魔法が使えない。
 ・あさひさんは魔法少女の魔法発動を承認し行使させる"魔法少女使い"
  の権限を持っている。
 ・"夜の王"を討伐した魔法少女達は、魔法を現実世界にひとつだけ
  持ち出すことができる。
  (しかし魔法少女使いのあさひと特別な関係になりきれなかったので
  魔法を持ち出せないまま今日に至る)
 ・"夜の国"の奥には、死者の魂や行き場を失った悪夢が"次"へと
  旅立つ"刻の終着駅"がある。要するに輪廻転生のターミナルである。
 ・生前の記憶や経験を金貨や銀貨に換金し、銀貨で才能を、金貨で
  次の人生の切符を買うことができる。
 ・"次"を望まない魂は倉庫の中で眠りにつく。つまり解脱する。

 ざっとこんなもんでしょうか。文章にするとやたら長いですね。これでも夜の国の設定としては氷山の一角なのが恐ろしい…。
 ここで注目すべきは刻の終着駅ですね。輪廻転生のターミナルと言えば、いろセカの最果ての古書店を思い出します。古書店は神様的な管理人とマンツーマンな空間だけど、刻の終着駅はずいぶんと賑やかな様子。しかも死ぬか管理人の招待(誘拐?)が無ければ入り込めない古書店とは違って、刻の終着駅は"夜の国"の中にあり、同じく"夜の国"の中にある人々の夢と同居している状態です。つまり夜の住民や夜に這入れる子供は黄泉の国へ遠足気分で行けちゃうわけです(!)。このシステムのおかげで姫織√の十夜やクロ√のクライマックスがドラマチックになるわけですね。
 あと蛇足ですが、死後の人間がどうなってしまうのかという、人類が最も恐れ、科学で解明できず答えを宗教に求めるしかない究極の命題に、この物語の世界では回答がでており、しかも主人公たちはそれを把握しているという異常事態が起きています。主人公君が命について薄情なところもこれが少なからず影響しているのかも…?

 √分岐はいろセカ方式でしたね。いつ分岐したの?と混乱してる人もいたようですが、彼らはきっとロックされてたハルへ行こうとしたんでしょうか?

◆千和√

幸せは足元を掬いにやって来る

 まずは千和√の感想です。この√は、最初は付き合い始めるまでの普通のギャルゲー的展開になる第一部、千和パパが殺されて千和の過去回想が一巡する第二部、大雅とナハトが激突しナハト視点の回想が入る第三部、皆が千和を忘れて再び思い出し、卒業式を行う第四部、そしてエピローグの5パートで構成されているとします。

 第一部は普通のギャルゲでした。しょぼいエロゲならこのあとHしておしまいみたいな普通さです。しかし第一部は序章も序章。起承転結の"承"にすぎません。第二部で千和パパがナハトに惨殺される強烈な"転"が入り、千和の過去回想が始まります。この回想で、ロリ千和が両親に監禁されて暮らしていたことや、ヒトデナシの一族の所業、夜の怪物の生態、千和が夜の王に立ち向かってまで叶えようとした願いの内容(ソルを蘇らせてナハトに謝罪し、また3人で暮らせるようにする)等が一気に語られます。共通√で語られなかった"夜の国"に関わる負の部分が語られるので割と重要です。

 すでに情報量がやばいですが、第三部に突入し、一度ナハトに夜から追い出された大雅がクロのアシストで舞い戻り、ダイナミック『娘さんを僕に下さい』イベントを強行。その流れでナハト視点の過去回想が始まり、千和が未来に向かった後にナハトが企てた茶番劇の種明かしがされます。この回想のナハト、ぬいぐるみを作るところとか誕生日パーティーのところとか、ああもうなんだよこの不器用な愛情は…すてき……ってなりましたね。それを受け取った千和が心から喜ぶところとか本当に天使。

 大雅君の必死の説得により和解が成立したかと思いきや、場面は突然ひとりぼっちになって学校に通う千和と、なぜか智仁と砂漠を旅する大雅…という第四部に移ります。ここ、初見だとなにが起きてるのか分からなすぎて混乱しますね。クロのアシストで土壇場で千和を思い出した大雅は、てんやわんやで学校に駆け付けて第一部の『学校へ行こう』展開の再現をします。ここでこの再現はうまいですね~。これにてナハトと交わした誓いを果たし、千和と長く共に暮らすための代償の支払いを終えて、幼馴染面子でプライベート卒業式を執り行います。CLANNADでもこんな展開ありましたけどこういうの好きです。

 そしてエンティング……からのエピローグ。このエピローグが衝撃的!普通のエピローグは『二人はこれからずっと幸せ!ちゃんちゃん!』でさくっと終わるものが多いのに、なんと千和が死にかけてるじゃありませんか!?もはやこれまで……と思ったところにナハト出現!死んだはずでは…!?
 そう。ナハトは身体をすり減らしながらも、大人になった千和と大雅を陰ながら手助けしていたのです。どこもかしこもボロボロのナハトに、病床の千和は語り掛けます。

「私には、やさしいふたりのパパと……もうひとり、お父さんがいてくれたんだもん。だから今日までずっと、さみしくなかった。いっぱい、いっぱい、幸せだったよ」

 見抜かれてんじゃねえかぁあああああああっつぁあッ!!!!!!
 ああああもう!!!千和天使!!!!!くそっ!!くそッぉ!!!
 そしてナハトの声。もう掠れ掠れ。ちくしょう!ほうでん亭センマイいい仕事しやがってこのやろう……!!
 そしてナハトは千和に『絶対に不幸になれない呪い』とたくさんの花々を残して消滅。千和の体調は快復し、今度こそハッピーエンド。千和√ 完。

 よ゛か゛っ゛た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛! ! !

 ……いや待て、落ち着け。
 まだ個別シナリオひとつだぞ!?グランドエンティング一本駆け抜けたぐらいの疲労感を感じるけど大丈夫かこれ。これだけでそこらへんのロープライスゲー叩き潰せるぞ。クロ√はこれを超えられるんか!?(越えたけどね)
 いろセカで鏡やつかさ√が短かった反省なのかもしれないけど強くなりすぎでしょ本当にありがとうございます。

◆姫織√

さよならだけが人生だ

 お次は姫織√です。姫織√のはずですが、まずは十夜の物語が始まります。いろセカで言うところの"白の御霊送り"ですね。要するにロリがメインヒロインの座を奪うというFAVORITEの伝統芸能です。ぅゎょぅι゛ょっょぃ。
 話が逸れました。さて、この十夜√ですが、十夜が"おともだち"とお別れしてしまい、傷心して帰宅してくるところから始まります。その"おともだち"は大人になってしまい、十夜のことが急に見えなくなってしまいました。十夜は、「また『さよなら』を言えなかった」と悔やみ、落ち込みます。読んでるこっちも胸が痛みます。不憫に思った主人公は、このときばかりは意地悪せずに十夜に優しく接します。

画像1

 ――――えっ?

 ちょっと……ねぇ、ちょっと、FAVORITEさん。

 なんで………

 な ん で イ ベ ン ト C G が 無 い ん で す か ッ ! ! ! ? ? ?

 アス永遠Fではできてたじゃないですかああああああ!!!?????

 このバグについては早急な修正パッチ配布が待たれます。
 また話が脱線したので戻します。その後、十夜と大雅君は"夜"を介して"おともだち"に会いに行くと、その子から"大切な人"のお願いを叶えて欲しいと乞われます。ここで始まる回想が、"おともだち"の祖母であり、過去に十夜と友達でもあった女の子のお話です。
 彼女は学校でひどい虐めに遭っていましたが、十夜との交流によって元気を取り戻し立ち直ります。が、同時に心の成長によって十夜が見えなくなってしまいます。月日は流れ、大人になった彼女は大好きな母親と死別。絶望の淵で心優しい男性と出会い、再び立ち直ります。嫁いだ先はヒトデナシの家系でいろいろ苦労もありましたが、やがて二人の間に子供ができます。名前は遠矢といいます。
 …繋がった!?遠矢といえば千和の第三のパパです。「母を受け入れてくれたこの家には恩義がある」と言っていたのはこのことだったのか……と感心しました。
 で、そんな彼女も遂に老衰し、天寿を全うします。が、ひとつだけ心残りがありました。それは十夜との交わしたもう一度会う約束を果たせていないこと………。
 祖母が亡くなってからもうすぐ1週間。その彼女はまだ次へ行かずに十夜を待っているはずだと、"おともだち"の子は言います。死んで"夜"に来てから"次"へ行かずに1週間を過ぎると、夜の国を永遠に彷徨う何かになってしまう。大雅たちは姫織の魔法を借りながら必死に彼女を捜索。二人は再会を果たします。ここで入る回想で、彼女に忘れられてしまった十夜は、あさひさんからもらった『一度少しの間だけまた話せるようになる』魔法の懐中時計をもらい、再開の機会を待っていたこと、そして再び現れた彼女は母親との死別で酷く傷ついており、とっさに懐中時計の魔法を優しい男性と引き合わせるために使い切ってしまったことが語られます。
 十夜、めっちゃいい子です……。あそこで独り善がりに彼女と話しても駄目なんです。ずっと隣にいることなんてできない。すぐ忘れてしまう。だから、それができる人にお願いする。それが彼女の将来のために正しい選択なんです。でもさ、これは残酷すぎるよなぁ!?人間と夜のイキモノは相容れない。人間のことをどうしようもなく好きになってしまうのに、住む世界も、時間も、幼き日の一瞬を除いて、何もかもが断絶してしまう。でもこれは仕方のないこと。"そういうもの"なのだから……。とかいう設定にしやがって!漆原ー!漆原ぁああアア!!!
 ……ともあれ、苦しい時間を乗り越えた二人はこうして感動的な再会を果たし、長年の夢を叶えることができました。彼女は"次"へ進む選択肢を手放してしまいましたが、夜のイキモノとして生まれ直す選択肢が残っています。これから二人はずっと友達として笑顔で過ごせます。十夜√、完。

 え?まだ途中?そういえばこれ姫織√でしたっけ?
 長くね??www

 ではここからやっと姫織√本編です。十夜の一件の際、姫織は大雅に
「夜の中に忘れ物があるから、夜の夢の中で寝ている私を起こしてほしい」
 とお願いし、ナナちゃんの汽車に乗って"惑星(ほし)のかけら"を集めて回る。このとき時折入るミスリードを誘う回想が不安にさせてきましたね。一時は大雅に死亡フラグが立ったのかと思いましたよ。
 一行は刻の終着駅に辿り着き、姫織はさくらの樹の前に向かい合います。そして自らの心臓(命)を人形に差し出して消えてしまいます。消えてしまった姫織を連れ戻すために十夜の異能とクロの魔法を組み合わせて駆け回るところは面白いですね。一回使い切りの魔法を十夜の未来視で回数を増やすなんて、ちょっと興奮しました。
 でも結局は大雅は姫織を見つけ出せず、代償として支払った"姫織の迷子気質を引き継ぐ"呪いを受けて夜を彷徨います。一方で姫織を見つけて心臓を還したナナちゃんは、姫織に大雅のピンチを伝えて二人を引き合わせて事なきを得ます。
 さんざんミスリードを誘ってきた回想は、ここでやっと姫織のお母さん視点だったことがわかります。姫織母は幼少時代、千和と同じように夜の怪物に攫わせるために監禁されていました。またしてもロリ監禁事案です。けしからんですね。しかし姫織母は攫われる前に屋敷から逃がされ、いろいろあって子供をもうけることになるのですが、流産してしまいます。この死産してしまった子が姫織です。姫織母は自分の心臓(命)を使って流産した姫織を蘇らせますが、もう次に夜に這入れない姫織母は慌てて人形を作ったため、欠落した部品のせいで姫織は迷子気質と空腹体質を背負うことになったのです。蘇った姫織はなんとなく自分の命が母親のものだと知っており、これを還したいと願って、かつての夜の王との戦いに身をやつしたわけでした。
 不完全な自分はここにいるべきではないと思っていた姫織は大雅君の奮闘によってこれからも幸せに生きていくと決意し、ハッピーエンド。
 ……と、思いきや。エピローグに入るとナナちゃんが消えかけている!?オーマイゴッド!!姫織母との感情移入度が強かったナナちゃんは、衝動的に禁忌を破って姫織を助けてしまったので、人知れず消えてしまうことになってしまったのです!あまりの衝撃に椅子から転げ落ちそうになりました。そしてそこに魔法少女モードの姫織が登場。姫織は温存していた最後の魔法をここで使い、もう一度だけナナちゃん(姫織母の代弁者)と話をできるようになったのです。つまり当初の願いが叶ったわけです。ついでに代償として大雅から迷子気質も取り戻し、しっかりとハッピーエンドを迎えることができました。姫織√、完。

 はい。事実上の十夜&姫織√終わりました。セカンドエースヒロインのハル√の前に、千和と姫織シナリオでオープンになった重要な設定をおさらいしておきましょう。

・さくらの樹に少女の命を捧げて"夜"を維持する"夜の怪物"がいる。
・"夜の怪物"は悲しい思いをしている少女を攫ってくる。
・さくらに命を捧げられた少女は夜のイキモノとなる(永遠の命を得る)。
・"夜の怪物"は基本的に無敵だが、大人の人間に触れると損傷する。
 限界に達すると一輪の花になって消える。
・永遠の命を得ようとあらゆる手を尽くす"ヒトデナシの一族"がある。
・その手段の一つとして実の娘を監禁して"夜の怪物"に攫わせて永遠の命を
 与えられたところを食うことでそれを得るという迷信を信じている。
・ナナちゃんの汽車は条件付きで過去と未来を往来できる。
・さくらの樹を介して命の交換ができる。
・死んだ魂が刻の終着駅に駐留できるのは1週間まで。
 最終列車を逃してしまうと"夜"を彷徨う何かになってしまう。
・昔、現実世界でさくらの花が街を埋め尽くしたときにさくらの樹の下に
 生き埋めにされた少女たちの末裔が"ヒトデナシの一族"。
・そのときに少女たちを生き埋めにした"元ヒトデナシの一族"は
 いまは"ヒトデナシの一族"に絶対服従の下僕となっている。

 一気に不穏な設定が増えてきましたね。この"ヒトデナシの一族"が厄介です。FAVORITE作品のキャラは基本的に性善説で、どんなに酷いことをするやつでもそれにはやむを得ない事情があったり、愛情の裏返しだったりと必ず情状酌量の余地のある理由があります。これは個人的に大事なポイントです。ただ意味もなく他人を嬲るのに愉悦を覚えるだけの敵とか、とりあえずレイプしてしまえ的な悪役とか、そういう雑な悪性は大嫌いです。こういったものは勧善懲悪な子供向けの作品に多いですね。悪を成すにも理由ぐらいつけろって話です。
 FAVO作品における本当の敵や災厄といったものは、立ち絵も声も名前もないモブだったり、世界そのもののルール・理不尽が多いと思います。今作はあらゆる元凶(でもあり楽園)であるところの"夜"の設定を理解できないと彼らが何と戦っているのかわからなくなるので、考察には夜の設定を整理するのが重要ですね。

◆ハル√

桜の樹の下には屍体が埋まっている

 ハル√です。この√はクロ√の土台になるので、クロ√に繋がる伏線が多数あります。登場人物の一挙手一投足が見逃せません。さあ、セカンドエースヒロインの登場!
 ……の前に、兎蛙姉弟ラブストーリーが始まります。まず智仁君が突然アイドルグループ結成を宣言します。学園祭に合わせてゲリラライブをしようという計画です。その過程で大雅君が女装をさせられたり下校中にあず咲お姉ちゃんとお話したりします。そしてここで幼少時代の回想が入り、あず咲お姉ちゃんの秘密が明かされます。彼女は、満月の夜に眠ってしまうと未来へ跳躍してしまう呪い(才能、あるいは病気)を持っており、これに悩まされていました。智仁はこの呪いを治すことを願って、夜の王との戦いに参加しています。逆に智仁はヒトデナシの一族から無能の烙印を押されて虐げられており、あず咲さんは彼の才能を開花させることを願ってここにいました。
 あず咲さんの呪いには発動時に周囲にいる人間も巻き込んでしまうという副作用があり、これに幼少期の大雅とハルが巻き込まれてしまいます。危険な状況でしたが、たまたまハルが持っていた魔法の携帯端末……時をも超えてどこでも繋がる携帯端末(元々はハルが"おじさん"と話をするために用意したもの)でクロにSOSを送り、不思議な力でどうにか生還します(この一件でクロの物語が波乱万丈になるとは初見では夢にも思いませんでした…)。その際、あず咲さん本人はどこか遠い未来へ飛び、代わって半透明のあず咲さん(心の一部、悪夢のようなもの)が残ります。願いを叶える前に本人が消えてしまい目的を見失った智仁ですが、新たに『世代を超えて語り継がれるような最高の音楽を作り、未来へ行ってしまった姉へ届ける』という目標を打ち立てます。半透明のあず咲さんは、智仁らが大人になって大雅とハル以外から認識されなくなっても智仁のことを応援し続けます。そして学園祭を控えた今、あず咲さんは最後の魔法を使って智仁に最高の音楽を作るための力を与え、智仁はそれに応えるように一曲の音楽を作り上げます。

 『さくら、もゆ。』

 生涯たったひとりを。
 あなただけを愛し続けると誓うための"歌"。
 "愛"と"勇気"の歌が、ここに生まれたのです。
 ……タイトルコール、めっちゃズルいです。すき。

 ゲリラライブは成功を収めましたが、智仁の傍から去ることを魔法の代償とした半透明のあず咲さんは次へ旅立つ"夜"の列車に乗り込みます。列車が発車し、もう二度と会えなくなる………そのとき、大雅が連れてきた智仁が駆けつけ、二人は仲直りと、感謝と、愛の告白を交わし、そしてお別れをします。智仁がこれを覚えていられるのはこの一夜限りです。
 せつねえ……切なすぎるよぉ……でもいい話だったよぉ……。今作、サブキャラ全員光に包まれすぎててやばすぎます。サブキャラにここまで物語のバックボーンを担わせるとか正気の沙汰じゃありません。

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 ところで私、幼少時代のあず咲お姉ちゃんめっちゃ好きなんですけど魔法少女バージョンありませんか?


俺は何度だって、散りゆくのだと――……

 閑話休題。さあハルの出番です。兎蛙姉弟の一件の後、入れ替わりに大雅はハルの願いを叶えようとします。二人は恋仲になり、大雅はハルの『さくらの樹を満開にする』というその願いを、なぜそれを願うのか問わず、ハルを信頼して魔法を使う許可を出します。しかし一夜明けると、学校で待ち受けていたのは満開のさくらと、半透明のハルと、冷たくなったハルの亡骸。半透明のハルは「ごめんなさい。私はあなたを騙した」と言い残し、異形の悪夢に取り込まれて世界から消えてしまう…。
 Oh... my god...
 急いで"夜"の中でハルを探しますが見つかりません。ハルはこの世界から完全に消えてしまいました。呆然とする大雅君。そんな彼にまだ希望はあるよとクロは声を掛け、魔法を使うように促します。二人で協力して魔法を練り上げますが、出来上がった魔法にクロは絶句します。その魔法は、タイムリープの弾丸。撃ち抜いた対象が最も後悔している過去のポイントに意識をタイムリープさせます。その際、撃ち抜く前と後の世界はA世界とB世界に分岐し、B世界には巻き戻った意識が移り、A世界には撃ち抜かれた対象の死体が横たわって残ります。しかも死ぬことは代償ではありません。この魔法の代償は"孤独"。そして弾丸の数は、6発―――。

 あああだめです。これはもう6発使い切るフラグですよね!えげつねえ!ここからプレイヤーの精神もズタズタにするトライアンドエラーの旅が始まります。

 さあ、ためらいながらも自らを撃ち抜いた大雅君。巻き戻り中にナナちゃんからチュートリアルを受けて、B世界に降り立ちます。しかし降り立った先はもう魔法を発動した直後。魔法を許可しないという選択肢は残っていません。安全なゆめのねどこに向かおうとする二人に、魔法少女のロリハルの悪夢が待ち受けます。超不気味なその悪夢はマシンガンをぶっ放し、ハルを瞬殺。悪夢の方は姿を消します。なるほど。まずはこれが一回目の失敗ね。
 二度目のタイムリープを使いC世界へ。そこでもハルはロリハルの悪夢に瞬殺されます。ここで大雅君はすぐにタイムリープせず、あさひさんに事情を話します。残酷な今までを説明をする大雅に、あさひさんは
 「よくがんばったな。えらいぞ大雅」
と労い、抱擁する。大雅はその大切な人の胸の中で、負けるなとエールを受けながら自らを撃ち殺すのです。

 あさひさん……!(´;ω;`)
 こんなのって……!

 D世界に降り立った大雅君。今度はあさひさんの入れ知恵により、ロリハルの悪夢を弾丸で撃ち抜き、そのハルを強制的に後悔のポイントに巻き戻して彼女の過去を垣間見るという作戦を敢行します。1発無駄撃ちしてしまい、その隙にD世界のハルは殺されてしまいますが、2発目を悪夢に撃ち込むことに成功。ハルの過去回想が始まります。

 幼少時代のハルは、暗い一室に閉じ込められています。またしてもロリ監禁事案です(けしからん)。しかも今回は不死のためではなく、かまってちゃんな実母が誘拐事件を自作自演するためにハルを監禁しています。狂ってます。そしてまた遠矢さんが絡んできます。なんと遠矢さんはハルの祖父にあたる人でした。十夜のお友だち(死んだおばあちゃんじゃないほう)は遠矢さんの実娘だった(はず)ですので、この子がおそらくハルのお母さんでしょう。人物相関、今作も複雑です。そしてハルは未来人でした。もうぐちゃぐちゃですね!

 監禁生活を強いられているハルに、見覚えのない古い携帯端末が鳴ります。恐る恐る出てみると、知らない"おじさん"の声。彼の正体は大雅。大人になって夜のことを忘れ、けれども、忘れてしまった何かを求め探し続けていました。
 このままだと殺されてしまう。けれども母の愛が欲しい。母の思いに応えなければならない。そう言って渋るハルですが、大雅は屋敷に乗り込み半ば強引に連れ出します。そして二人のグルメ紀行が始まります。だんだんと心を開くようになったハル。ハルは"おじさん"に想いを寄せるようになります。その過程で、ハルはおじさんの心の影を感じ取ります。おじさんは忘れてしまった大切な人(クロ)のことをずっと探している。私はおじさんの一番にはなれない……。そうしているうちに、おじさんは死んでしまいます。誘拐事件の容疑者になっていた大雅は、堂々と犯人として名乗りを上げてハルの母親をおびき出し、取っ組み合いを演じて二人で諸共に時計塔から落ちて死んだのです。ハルの母は勇気ある悲劇の母として、大雅は前代未聞の大罪人としてこの世を去りました。
 これ、悲劇のようでいてある意味でハッピーエンドです。悪の所業をしていた母親には報いを。そして大雅はかつて願った『最低最悪な死』と、切望した夜への帰還を果たせたのですから。しかしこれはやっぱり、ハッピーエンドと呼ぶには弱すぎました。死に方としては最低最悪ですし、なによりハルがひとりぼっちで残されてしまっているのです。ハルは『おじさんとの出会いを無かったことにして』この悲しい結末を否定するべく、ナナちゃんに導かれて過去へ飛び、夜の王へ立ち向かっていったのでした。

 ハルの過去を視ることで未来の自分の過ちに気付いた大雅。この状況を打開するための方法を考え出しますが、必要な2発の弾丸に対して残弾は1発だけ。1発足りません。そこにクロが現れ、エクストラな7発目の弾丸を差し出してきます。そしてクロに優しく看取られながら大雅は引き金を引き、自らを撃ち抜きます。

 クロぉ……ッ!!(´;ω;`)
 このクロとの別れのシーンは辛すぎるだろッ……!

 大雅はE世界に舞い降りハルと向き合います。動揺するハルを説得し、口説き落とし、そしてハルに過去と未来を託し、大雅は愛するハルを最後の弾丸で撃ち殺します。

 無常なり………。大雅君はハルの遺体を処理し、E世界で孤独の代償を払いながら生き続ける道を歩み始めます。

 一方で、ハル。彼女は夜の裏側、"時間の墓場"に飛ばされます。そこにある無限の可能性の扉から、ひとつの正解を選び抜かなければいけません。しかしどの扉を覗きこんでもバッドエンド、バッドエンド、バッドエンド…。
 心が折れかけたその時、歌が、"愛"と"勇気"の歌が聞こえてきます。そこには正気を取り戻したハルのお母さんがいました。お母さんは心からの贖罪と本物の"愛"を捧げて、ハルに"勇気"を届けます。目を覚ましたハルは、たったひとつのゴールに続く扉を見つけます。その扉の続く先は、共通√でゆめのねどこの玄関で大雅と再会したその瞬間。そこでハルは大雅に愛の告白をして、エンティング。エピローグはFAVOの十八番であるウェディングドレス(あさひさんの手作り)。3ヒロインのエピローグはどれも大人になった二人を支えてきた夜のイキモノとの離別ENDでせつないですね…。ハル√、完。

 はい。緊迫感溢れるハル√が終わりました。長い!ここまで長かった!しかしこれまでの話は全てクロ√の前座に過ぎません。スケールでかすぎ!

 クロ√の前に"夜の国"の設定のおさらいタイムです。

・"夜の国"は未来へ跳躍したあず咲が作った。
・"夜の国"の裏側には"時間の墓場"がある。
 そこはどこにも行けるし、どこにも行けない暗闇。
・パラレルワールドが存在する。
・時間軸もブレブレである。

 ここまで書いておいてアレですけど、私"時間の墓場"がよくわかっていません。無かったことにするところとかどう解釈したらいいのか……

 では、遂にトゥルーシナリオです。この√の感想を書きたかったがためにこの記事を書いていると言っても過言ではありません。文字数マシマシでお送りします。
 尚、二人いる『大雅』が紛らわしいので、ましろのパートナーの大雅は『奏大雅』、クロのパートナーの大雅は『大雅』と表記します。

◆クロ√

それは、幾千の夜を舞う、さくらと少女たちの物語――

 冒頭は夜の王との決戦。ひとりの少年が黒鯨に銃口を向けて言います。
 「……やっと、追いついたよ。俺のヒーロー」
 そう言って引き金を引きます。
 このアバン、初見では状況を知る術はありませんが、クリア後に振り返ってみるとこのシーンは"奏大雅"が魔法の弾丸を夜の王となった"大雅"に撃ち込んで夜の王という存在から引きずり下ろす……。その瞬間だったわけですね。
 場面は変わって、大人になって日々を鬱々と過ごしている奏大雅が寝起きしている様子が始まります。ここはハル√でタイムリープの弾丸を撃つのをためらってしまい、何もなせないまま大人になってしまった世界。そんな彼に、見覚えのない携帯端末のコールが鳴ります。クロです。ここから共通√から伏せられていた多くの謎『"夜の国"とは何なのか』『大雅とクロの叶え難い願いとは』『"まっしろなあの人"と何があったのか』『クロは何者なのか』の種明かしの長い回想が始まります。
 思えばいろセカのトゥルールートの構成もこんな感じでしたね。いろセカは寮生全員の問題を解決したが誰とも付き合わず真紅のことを忘れた悠馬が、鈴さんから話を聞かされる形で長い種明かしの回想が始まりました。今回もそれと同様ですね。

 回想は少年時代の奏大雅が"現実と夜を繋ぐ右手の異能"を使って夜の国に這入り込み、時計塔の管理室であの"まっしろなあの人"、隠しヒロインましろと出会うシーンから始まります。真紅の対が藍だったように、クロの対はましろってわけでした。安直ですねw
 そしてここで O P 2 です。鳥肌です!『輪廻』めちゃくちゃいい歌です。OP動画ってメーカー的にはかなり予算を割くものらしいですね。OP2を用意してくる作品はどれも開発側の熱意を感じます。敬意を表したいです。サントラ早よ。


眠ることは死者の世界に生きることである

 管理室で待っていたましろ――"夜の女王"と呼ばれているその人は、奏大雅に昔話を始めます。奏大雅が探しているヒーローについて、そして"夜の国"の生い立ちを――。
 "夜の国"を創ったのは、未来へ飛ばされてきたあず咲さんとましろ。あず咲さんは"夜の国"を利用しようとするヒトデナシの大人たちの思惑に抵抗し、夜の国があるために犠牲になってしまうであろうたくさんの少女達のためにも、夜の国を創ることを拒んでいました。夜の国を創れば、後天的に手に入れた"過去へも飛べる"という力をもってしても辿り着けない時間へ――愛する弟に逢いに行けるとわかっていても、そうすることはしないと誓っていました。しかし、未来へ飛ばされてしまうあず咲は知ってしまいます。数百年後の未来、大人の心を蝕む月の光が、月の接近によって人々の心を壊して地上にいる人類が滅亡してしまう。そんなバッドエンドを観測してしまうのです。人類滅亡です。セカイ系なにおいがしますね。
 話は脱線しますが月と言えばいろセカでは、月に悪の拠点があると断じて破壊した大人たちのこぼれ話がありましたね。藍はそれを大人の独善だと嫌っていましたが、あのエピソードには本当に人類滅亡を阻止できたという真相が隠されていた……のかもしれませんね?

 話を戻します。人類滅亡の未来を知ってしまったあず咲。地球から逃げおおせる裕福な大人やVIPはいますが、そうでない子供たちは滅んでしまう悲しい未来。そんな大勢の子供たちを滅亡から守るためのシェルターとしての役割を"夜の国"なら果たすことができる。多少の犠牲に目をつぶり、大勢の子供たちを守るため、あず咲は大人たちの思惑通り"夜の国"を創り上げる決意を固めます。そんな彼女に"歌"が届きます。愛する弟が、遠くへ行ってしまった愛する姉へと手向けた愛の歌"さくら、もゆ。"……。その歌があず咲に届いた瞬間、夜の国は完成します。そしてあず咲は夜の中で過去へ向かい、愛する弟と再会します。そして子供ができます。その子供が奏大雅です。二人が性交渉をしたのかは不明です。『なぜかその子を身ごもった』とあるのでインモラルはしていないように思います。もしかしたら智仁の"歌"が精子となり、それがあず咲の"魔法"と結実したことで"夜の国"と"奏大雅"という双子が生まれたのかもしれませんね(妄想失礼)。

 生まれたばかりの赤ん坊を抱えたまま未来へ飛んできてしまったあず咲。ましろに奏大雅を紹介し、不意に未来へ飛んでしまう自分に変わって保育してもらうようこの時間の親戚に託します。半透明なましろもずっとそばで見守っています。奏大雅はこの家――ヒトデナシの一族の家で"夜と現実を繋ぐ才能"を見初められて不自由なく育てられます。しかし、才能が無かったものが送り込まれる地下牢があることを知った彼はが興味本位でそこへ踏み入れると、そこには理不尽に虐げられる同世代の子供たちがいました。この世の地獄に悲観する奏大雅ですが、この牢獄で歌い継がれ、希望の依り代になっている愛と勇気の歌を知ります。こんなにも多くの人に希望を与えられる歌を作れた人こそヒーローなのだと憧れを抱き、自分もあの子供たちを助けられないかと暗躍するようになります。
 一方で夜の国は楽園を目指してあず咲の手で肥大化を続けます。しかし、あまりにも膨張しすぎた夜の国は、それ維持するための少女の命の必要量が比例して増していきます。あず咲はもうその矛盾に気付けない………月の光に心を蝕まれてしまったのです。ましろはこれを否定し、暴走するあず咲を夜から排除して自らを鍵として夜の国をロックしました。そしてましろは一計を案じます。"月は墜ちてこない""人々の心は護られる"。そんなふうに未来を塗り替え、誰も犠牲にすることなく人類も"夜"をも救う――唯一、ましろを除いて……そんな方法を、"魔法"を想像しました。魔法の代償によって、誰もが畏れ、誰もが憎む、人々の心を蝕む月"夜の女王"はましろに置き換わります。そして強大な"夜の女王"を打倒するシルバーブレッドとしての特別な力を持つヒーローが奏大雅。ましろは管理室に引きこもって夜の国を守りながら、今日この日までヒーローがやって来るのを待っていたわけです。ましろはこの小部屋の中でずっと悪夢を見続けていました。それはましろが生きていた頃の記憶。重い病を患ったせいで両親から見放され、屋敷の地下室で監禁されていたこと。眠っている間だけ不思議なさくらの樹がひとときの幸せな体験をくれたこと。しかしさくらの樹が花びらで街を埋め尽くした際に生き埋めにされる少女のうちのひとりにされてしまったこと……。
 ましろ、とにかく受難すぎてつらいです。

 奏大雅は彼女のそんな想いを否定します。君だけに寂しい思いなんてさせたくない。犠牲になんてできない。赤ん坊のころに笑顔を届けてくれた大切な人。奏大雅が心から愛する女性……。俺は君を夜から連れ出す。共に生きよう。そう言ってましろを口説き落とそうとします。
 奏大雅のことを我が子のように愛していたましろはドキッとしますが、彼の熱意と、そして夜の住民たちの後押しも受けて駆け落ちを決意します。
 ましろを外に連れ出すことに成功した奏大雅は、現実世界の管理室で待っているましろを迎えに行くために走ります。もう少しでそこに辿り着くその時、なんと彼は月に心を壊され見当違いの悪意を持ってしまったモブキャラに刺殺されてしまいます。えーーー…………(;´Д`)
 代わってましろのもとに辿り着いたのは、失語症みたいに無口な少年と黒猫。彼は奏大雅が地下牢から連れ出した少年で、息絶えようとしていた奏大雅がその右手の呪いとましろを託して送り出したのでした。奏大雅が死んでしまったことを知ったましろ。夜へ戻って彼と再会することも考えましたが、彼が救おうとした目の前にいる少年のことを放っておけず、少年の母親を探すという目的を果たすために力を貸そうとします。半透明でありながらも少年を楽しませながら根気強く母親探しをするましろ。二人と一匹で、いろいろな思い出を残していきます。そんな中にましろが夢を語るシーンがあるのですが…

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 どうみてもいろセカの"最果ての古書店"です。あからさますぎて気づかなかった人はいないんじゃないでしょうか?私は動揺しすぎて一瞬パニックになりましたよ。


人は誰でも誰かになりたい

 少年の母親を探して花火大会にやってきたましろ達。そこで遂に少年とその母親は再会を果たすのですが、母親は少年の認知を拒否し、知らない女の子の手を引いて立ち去ってしまいます。良かれと思ってやったことなのに、結局は少年を深く傷つけてしまった。そんな独善を邪悪と断じたましろは深く反省し、再び"夜の女王"となって夜に戻ってしまいました。

 残された少年はましろの魔法の効果で母親との絆を取り戻しますが、ヒトデナシの一族に連れ戻され、夜の女王の居場所を尋問されます。わからないと答えても、母親が、夜の住民が人質にとられ、目の前で次々に消されていきます。ひでえ………
 少年は決意するのです。自分さえいなければ幸せになれたはずの二人。自分を救い出してくれた奏大雅と、自分に親身になって力を貸してくれたましろを救うために、名無しだった少年は憧れのヒーローである奏大雅の名を借り、黒猫のクロはましろの容姿を借り、"夜の女王"討伐を求めるナナちゃんの汽車に乗って過去へと向かって進んできました……。
 そう。かつて魔法少女たちが戦ったという"夜の王"……しかし元々は正体がましろである"夜の女王"だったのです!初見では「あれ?夜の王では?」となりますよね。ここらで新出した夜の設定をまた整理しましょう。

・昔、虐げられていた子供たちの想いに、さくらの樹が夢のゆりかごを
 与えていた。
・さくらの樹に集まった子供たちの想いの中に漆黒色の心が混ざってきた。
 ある日これが溢れ出し、現実世界に心を壊す月光だったり、街を埋め
 尽くす花びらになって大人たちに牙をむいた。
 これは愛する我が子を虐げたり、呪いを持って生まれてきてしまうという
 ものも含まれている。
・子供たちの想像力を恐れた大人は、それを鎮めるべくさくらの樹の下に
 子供を生き埋めにした。
 ましろはそのとき埋められた子供の中の一人である。
・人類は数百年後に滅亡する。
・"夜の国"は人類滅亡の危機の際のシェルターとして期待されている。
・"夜の国"はあず咲とましろが二人で創った。
・"夜の国"は発生した瞬間にあらゆる世界、あらゆる時間に出現する。
 逆にどこかで消滅することがあれば全ての世界と時間で消滅する。
・ましろは自分以外の全人類を救うため、"夜の女王"になる。

 "夜の国"の設定で最も扱いづらい設定が、あらゆる世界と時間に隣接しているという点です。夜と現実が交差する出来事が起きるたびにパラドックスが乱立してしまうのです。この作品がSFだったら速攻で破綻しています。この作品はファンタジーであるのでそれは許されていますが、それでも矛盾によって物語が破綻しかねない綱渡りを強いられています。漆原先生と水間Dの苦労を察しますね……。
 この設定により、元々の魔法少女たちは"夜の女王"と戦っていたはずですが、後の大雅君の魔法によってそれは"夜の王"に書き換えられ、全ての世界と時間……各シナリオで我々が読んでいた物語でも、"夜の女王"ではなく"夜の王"と戦ったことになっていたのです(たぶん)。

 

猫に九生あり

 過去へと降り立った大雅とクロ。大雅はあさひさんに"最低最悪の死"を教えてくれと願います。共通√で語られていたこれは、大雅の本来の願いではなく、代償のほうだったのでしょう。願う魔法は奏大雅と夜の女王の救出。しかしそれに見合う代償が思い浮かばない。想像力が足りない。大雅があんな意味不明なことを願った理由は、そういうことだったのです。
 一方でクロはあさひさんに自分の持っているであろう異能について調べてもらいます。そして判明したのが"大切な人に降りかかる不幸を全て肩代わりする能力"。……え、めっちゃ不穏な能力……。
 そしてすぐにそれを使う機会が訪れてしまいます。あず咲の呪いに巻き込まれて大雅とハルが未来に飛びかけてしまったあの事件です。その異能を制御するためのマジックアイテムが用意されるはずでしたが、それがまだ無いうちに発動してしまったため、クロはあず咲の呪いをその身に宿してしまいます。しかもなぜか満月の夜じゃなくても発動するっぽいです。大雅の足手まといにならないようにこのことを隠すと決めたクロ。あさひはそれに賛成し、黒電話を預けて未来へ送り出します。未来へ飛んでしまったクロはゆめのねどこの刻の調整室で時間を止め、世界が分岐しないように周りに干渉せず、再び時間跳躍しないように一睡もせず、元いた時間が追いついてくるまで待ち続ける生活が始まりました。唯一できることは魔法の電話で大雅と話をすることだけです。
 …は?なんだよこれ?禁固刑とか終身刑とかより遥かに残酷だろ

 やがて10年の年月が経ちます。ここで大雅はやっと代償を決めました。その代償は"魔法少女使いとしてハル、千和、姫織の願いを叶えること"
 大雅はあさひから魔法少女使いの役割を譲り受け、まずはハルの願いを叶えるべく動き出します。そして知っての通り、大雅はハルを追ってタイムリープの弾丸で自殺します。その果てにハッピーエンドを探し当て、一生を終えます。天寿を全うして夜に戻った大雅と、彼を待っていたクロ。二人は夜の中の線路の上で語らいます。大雅は7発目の弾丸の空薬莢を取り出して言います。
 「クロ。……ありがとう――本当に。これは君の"命"、だったんだね」
 なんと驚くことに、あのときクロは自殺した大雅の死を次々と肩代わりし、大雅を追いかけるようにタイムリープしていったのです。その副次的な効果で死んだはずの大雅は蘇っており、代わりにクロが死んでいます。クロには九つの命があるので完全に死ぬことはありません。そしてE世界まで追いついたクロは、まだ残っている命を削って7発目の弾丸を紡ぎ出し、大雅に授けた。あのシーンにはそんな真相があったのです。
 クロぉぉぉぉぉおおお!お前ええええ!!(´;ω;`)

 クロはその後も陰ながら大雅のサポートをします。後腐れなく生活できるように、ましろに関する記憶も不幸の肩代わりとして消し去っています。
 大雅はそれらの優しさに感謝した上で、ある告白をします。ひとつだけ嘘をついていたこと。魔法の代償は"魔法少女使いとしてハル、千和、姫織の願いを叶えること"……なんかではない。本当の代償は、"誰もが憎悪する夜の王になること"。そうして奏大雅とましろに本来あるはずだった幸せな人生を返すのだと宣言します。クロの涙ながらの制止を振り切り、全人類の敵となって消えてしまいます。
 あれ………目から汁が…………。
 ここからです。クロ√はここからずっと泣かされっぱなしでした。ここから先の感想はほぼ全て『泣いた』が付きます。


これは"魔法少女"のための物語……。
なんかでは、ない。
これは、幸せを探し出すための物語。
これは、あなたの人生のための、物語。
さくらもゆ"夜"の中……。
もう二度と、君が悲しまなくてもいいように――
さあ、引き金を引け。
たったひとつの君を救うため。
俺は。
俺は何度だって、散りゆくのだと――……

 大雅が"夜の王"になった世界。そう書き換えられたことで、奏大雅は刺殺されずにましろのもとに辿り着き、ましろは"夜の女王"になることもなく、二人であたり前の幸せをずっと歩み続けることができました。
 が、奏大雅が死んだ後、夜の世界に帰った二人は知ることになるのです。この幸せだった時間は、あの少年の犠牲と、あの黒猫の孤独によって支えられていたことを。そして二人は決意します。今度こそ、誰も悲しまない、本当のハッピーエンドにする。大雅とクロを救い出す。そのために、ましろの支払いで大雅そっくりの身体を作り、その身体を使って奏大雅は大雅として生まれ直し、彼のしてきたことをなぞって夜の王を救う方法を探そうとします。奏大雅が生まれ変わるために支払った代償は"今のましろとの離別"。そして未来に残ったましろは、夜の国を不幸の温床にならない仕組みに創り変えるために行動を始めます。
 ましろの口ぶりからすると最果ての古書店に改装するような感じですが、何をしたのかもどうなったのかも語られることはありませんでした。
 生まれ直した奏大雅はハル√のシナリオに沿うように彼の人生をなぞります。しかし、ハルが死んで、それを追いかけるための引き金がビビッて引けません。奏大雅はそのまま無為の時間を過ごし、大人になって"夜"のあらゆることを忘れて、取り返しのつかなくなるギリギリのところまで来てしまったのです。
 これでやっと回想が終わります。なげー…

 さあ時間が追いつきました。
 クロの電話で全てを思い出した奏大雅は、改めて引き金を引くことに挑戦します。でも結局勇気が出せず、最終的に事故的なアレで撃ち抜かれて過去に戻ります。格好悪いですね。
 魔法少女たちが集結した地点に戻ってきた奏大雅は、あさひさんや仲間たちに事情を説明し、夜の王を倒すのではなく救ってほしいと頼み込みます。一縷の望みにすがってやってきた彼女らからしたら詐欺のような話ですが、だれ一人欠けることなく協力を申し出ます。その際、奏大雅が智仁に――彼にとっての最初のヒーローに、父親に、「がんばったな」と言ってもらえたシーン。あれ……?目から生理食塩水が……。(泣いた)

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 ぼくはそんなお姉ちゃんもすっごくいいと思います!

 夜の王救出に目標を切り替えた魔法少女達。彼女らは刻の終着駅から別の世界に飛び、大雅の説得を試みます。ハル√で何度もハルを殺害した悪夢の正体はこのとき説得に向かったハルでした。なん…だと……。
 ロリハルは5発目の弾丸で撃たれて重傷を負います(うわぁ……)。息も絶え絶えのハルですが、その状況の中でひとつの魔法を編み出します。それは、ぐちゃぐちゃに絡まった世界をひとつに収束させる魔法……。夜の王から引きずり降ろされた大雅が数多の世界の中の誰なのかを確定させる魔法。見えなくなったクロを探して彷徨っていた、そしてハルを救い出した、"おじさん"と呼ばれた世界の、大雅。唯一救われていない大雅でした。

 一方でクロは未来の世界から大雅の悪夢が生まれたポイントを探します。そしてなんとかそれを見つけ出しました。その日は大雅の誕生日。…そう。このゲームの開始直後のあの場面のそのほんのちょっと前。クロが誕生日プレゼントのチョコを渡すための書置きを書いています。でも上手に字が書けずに半べそをかいています。
 ああああああクロけなげすぎるよおおおおお(´;ω;`)
 このシーンのせいでもう共通√を直視できなくなりました。
 あれ?目からチョコレートが……
 おかしいな。俺ってこんなに涙もろかったっけ………

『きみがこの世界に生まれてきてくれて、本当に、よかった』

 クロが大雅に贈ったこの言葉は大雅に勇気を与えました。同時に、その勇気は夜の王になる決意の最後の踏ん切りを踏ませることにもなります。これこそが大雅の悪夢……いや、悪夢ではなく、それ以上の希望が眠っていたポイントでした。夜からそのポイントへ向かおうとするクロですが、クロの中に潜む悪夢……大雅の母の心を壊した罪の心がそれを阻み、クロは自壊するように死んでしまいます。
 電話でクロの答えを受け取った奏大雅は、大雅に銃口を向けます。この物語をハッピーエンドに書き換える手段は、クロが見つけたポイントに大雅を送り、やり直すこと。奏大雅の銃に装填されている弾丸は"対象が最も希望を抱いている過去のポイントにタイムリープさせる"もの。そして奏大雅は「母性で好いてくれている人を口説くのは大変だぞ」と要らんアドバイスをして大雅を撃ち、送り出します。

 誕生日のあのときに舞い戻った大雅。逃げ出そうとするクロを追いかけ、震えるクロを抱きしめて大雅はクロを口説きます。共に生きようと。大好きなんだと伝えあいます。
 あれ………目から華厳の滝が………(泣いた)

 これで遂にハッピーエンドに辿り着いた―――なんてことはありません!
 いろいろな困難を乗り越えた二人ですが、まだひとつだけ障害が残っています。それは『夜の国の住民と太陽の時間の人との断絶』です。大人になった人間は夜の国のことを忘れてしまいます。このことは十夜やあさひ、ナハトといった夜の住民に重くのしかかり、誰もがこの理不尽に嘆いてきた、この物語で最も解決困難な障害です。眠ってしまったクロは時間跳躍し、大人になってしまった大雅に認識されなくなってしまいます。絶望に暮れるクロですが、ずっと彼に寄り添い、彼に降りかかる不幸を九つの命を使って肩代わりし振り払い続けます。どんなに振り向いてくれなくても、小さな猫のまま、少しずつ年老いていく彼を助け続けます。
 クロ…………(´;ω;`)(←ずっと泣いてる)

 やがて、彼がもう歳を召した頃のある日、クロはとうとう最後の命を使い切ってしまい、夜へと戻ってしまいます。刻の終着駅で大雅を待ってみますが、やってくることはありません。クロは切符を買い、次へ向かう最終便へ乗り込みます。が、ナナちゃん(的な誰か)に乗車拒否され、代わりに別の切符を渡されます。
 ここで最後の回想が始まります。時はクロが眠ってしまった後のこと。最も困難な障害を乗り越え、同じ生き物として生きる道に進むべく、大雅はあさひさんに正真正銘の最後の魔法を願います。その魔法は"クロの夢を全て叶えること"。その代償は、"大人になってもクロを忘れることができなくなること。そしてそのことをクロに知られないこと"そしてもうひとつ――

「孤独に生きる」
「…その"代償"を支払い終えるのは、いつまでだ?」
「死が、ふたりを別つまで」

 ここです。泣きました。ここで今作で一番泣きました。
 彼がこれから歩むことになる孤独な人生を。
 親友たちとの惜別を。
 それに込められた勇気と希望を。
 生涯たった一人を愛し続ける誓いの言葉で…。
 幸せの絶頂で宣言するはずのその台詞をここで、言う…!
 うわあああああああああ(´;ω;`)
 PCの前で顔を伏せてめそめそと泣き崩れました。数分間クリックできませんでした。

 回想は続きます。それはあさひさんがクロ宛に残したメッセージ。
 ナナちゃんから受け取ったであろうその切符は、もう一度、ほんの少しだけ太陽の時間に戻れる"命の切符"。あさひと十夜の命を支払って作られた特別な切符。これを使って、代償を支払い終え今わの際にいるであろう大雅のところへ駆けつけられる。私たちのことは気にせず逢いに行ってこい。私たちは次へ行ってしまうけど、またどこかの世界で会えたらいいな。
 ……そう言って、あさひさんと十夜は列車に乗って"次"へと旅立って行きました。…………(´;ω;`)(←泣き止まない)

 クロは大雅の隣へ帰ってきました。再会を喜び合う二人。そして、大雅が生涯をもって書き続けてきたノート――"あなたの人生のための物語"の、最後のページをクロと綴ります。そして、ただただ孤独だった人生を送った彼は、最高に幸せな最期を遂げます。
 (´;ω;`)(←泣き止まない)(←というか今これ書きながら泣いてる)

 二人は夜の国で再会し、愛し合います。そして、代償を支払い終えたことで発動した魔法の臨時列車に乗り込みます。
 さくら舞う、夜の中。
 今度こそ二人肩を並べて共に歩める人生の希望を胸に、
 二人を乗せた列車は走る……

画像5

 ああああああああああああああああ(´;ω;`)

 ここでエンドロール。そしてエピローグです。
 どこかの世界の、どこかの家族のひとコマです。ましろのような容姿のかわいげのあるお母さんと、仲のいいお父さん。あさひさんのような容姿の面倒見のいいお姉ちゃん。そして十夜のような容姿のちょっぴり生意気な妹。
そして、"ぼく"と、幼馴染のあの娘………まっしろな君が学校で隣にいる。
 そんなごく当たり前の小さな幸せに包まれたあたたかな日常風景で、この長い、長い物語は幕を閉じます。

 B r a v o !!!!!
 "次"で再会を約束した皆が集い、誰一人として犠牲にならず、全ての問題を乗り越えてここに至った!完全無欠のハッピーエンドである!すげえ!!

画像6

 そしてご覧くださいこのCG!彼女に右耳が描かれているんです!
 ケモミミキャラには暗黙のルールのようなものがあり、ケモミミが出ているときは人間型の耳はもみあげで隠されたりして描かれません。特にクロに至ってはケモミミが出ていない時ですら、どの立ち絵でもCGでも人間型の耳が描かれないという徹底ぶりです。しかし、この最後のこのCGで遂に描かれます。まさしく人間に生まれ変われた象徴です!これに気付いた瞬間震えました。ありがとう、さくらもゆ。クロ√、完。


◆これは"魔法少女"のための物語……。なんかでは、ない。

 この物語は魔法少女の物語ではありませんでした。彼女たちの物語はもう10年前に終わっています。これはヒーローに憧れた少年と、人間になりたがった猫の、愛と勇気の物語でした。
 この世界には次の4つの大きな問題があり、登場人物たちを苦しめます。

・夜の国の住民と太陽の時間の人との断絶
・魔法の奇跡と代償
・ヒトデナシの一族の虐待
・漆黒色の子供たちの呪い

 どれも理不尽で大変な問題でした。特にクロ√ではこれら全ての問題を解決しなければなりませんでした。この逆境から完璧なハッピーエンドへ導いたこと。あれだけの感動を読み手に訴えてきたこと。職人技として言いようがありません。私はこのシナリオを絶賛したいと思います。

 もちろんわざと語り残したであろうこともありますね。特に闇落ちしたあず咲と、夜の国を創り変えようと決めたましろのその後とか……。これはFDに期待でしょうか。

◆美術
 100点満点です。特に背景美術の美しさは圧巻です。これらが無ければ、夜の国の情景が想像できなかったに違いありません。

◆音楽
 アス永遠同様にすごい曲数です。以下、気に入った曲です。
・はるのあしおと
・モーメンティリー・ハザード
・Reincarnation Ⅰ
・Never land -よるのくに-
・満月の夜会 -Arrange-
・地上の、ひとひら
・光ある場所へ
・ホーリーナイト

 歌はどれも魂に響きました。サントラ早よ……。


 以上で『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』のレビューを終わります。長文失礼しました。


☆追記
人物相関図をまとめたので別記事に掲載しました。よければご覧ください。


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