さんぽ 7

キツネが去ったあと、

我に帰ったご主人さまは、

「…ホントにしっぽ太かったね」とか、

「…何で動物園のより、全然まるまるしてるんだろう」

とかボクに話しかけたりして、

幻想的な景色の中、

人生初体験のことが起こったことに、

もう、仏像を訪れることは

どっちでも良くなっているようでした。

ここに住んで十数年。

生まれた地元ではないけども、

道や場所は憶えてきたつもりなのに、

まだこんな場面に出会えることがあるなんて。

今度は、必ず携帯を持って来ようと、

ご主人さまはボクに微笑みかけて

ふたりで幸せを噛みしめつつ、

山を下りました。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?