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あげる / #文字でスケッチ

気配に顔を上げると、胸の前でソフトクリームを持つ女性が視界を横切った。
と、その女性の後ろには女の子が“続いている”ことに気付く。

やや力の込もった足取り、背を透してソフトクリームに吸い寄せられている眼差し、何より右手に握られた長めのプラスチックスプーン。
スプーンは槍のように垂直上向きで、歩き方と視線も相まって、やにわにトランプ兵を思う。

あぁ、前の追われる“アリス”は女の子の母親なのかと合点する。

お母さんが僕から2席分空けたベンチに腰掛けると、ソフトクリームも自ずと女の子の目の前に下りてきた。

待ちきれないとばかりにスプーンを挿し込むが、それがちょっと強い。

母は苦笑いでたしなめる。「やさしくやらないと落っこっちゃうよ」
娘の体に手を添え、ベンチに促すと、後ろ向きでおしりがぶつかった所にただおしりを置く女の子。

結局はお母さんに「あ〜ん」してもらう形になり口を差し出すも、顔が前に出、体まで前に出てしまって、なんかまた立っている。ハハハ

大半を女の子が、お母さんも1口2口食べると、もう白いところはなくなった。

手を引き寄せ、茶色のコーンを覗き込む女の子。
次にお母さんの顔を見て、考えて、「あげる」

なくなっちゃった残念さと、お母さんにあんまりあげてない罪悪感と、美味しかった満足感と、思いがいろいろ混ざった表情での“あげる”

テヘペロ感をその場に残してあらぬ方向へ走っていく。テッテテー

お母さんは見守りながらサクサクと音を立てている。




趣旨とマガジンの説明: #文字でスケッチ とは

眼前の光景に心のひだが震えた。絵に留めるかシャッターを切るか。いや僕らには文字がある。どの一瞬も文字で切り取ることができる。文字ならではの流麗さを以ってスケッチを試みる。

集めたスケッチはWeb展覧会を模してマガジンに集約していきます。

お誘い: #文字でスケッチ してみませんか?

ルールというほどのものはありません。どなたでもスケッチしてみてください。ただ1つだけ、できればおすすめしたいことがあります。

それはトップ画像にその瞬間そのものの写真や絵を載せないこと。せめて“匂わせる”くらいにとどめておくことをおすすめしたいです。

文字で顕すスケッチの前段にいきなり“答え”が出てしまっていては、せっかくの空想の楽しみも半減してしまうと思うのです。

個人的には最後まで写真や絵がなくてもいいと思っていますが、載せたい方はぜひ文章のあとに貼ってみてください。

参加方法: #文字でスケッチ をつけて投稿

#文字でスケッチ  をつけて投稿してくだされば、マガジンに登録させていただきます。僕とフォロー/フォロワーの関係にない方でも、初めましての方でも全く問題ありません。
(タグがないと気付くことができませんのでご了承ください。マガジン登録には少しお時間をいただきます。)

僕以外にもこの企画を面白がってくださる方がいらっしゃる場合は、何か次の展開も考えるかもしれません。


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