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モアザンワーズでむせび泣く。


思いがけず、と言ったら失礼になるのですが、
とてつもなくいい作品でした。余韻がすごいど。

あの青春の日々は、ときに優しく、ときに切なく、いつもはかなく輝いている――同じ高校に通う、親友だった美枝子(藤野涼子)と槙雄(青木柚)。一緒に始めたバイト先で大学生・永慈(中川大輔)と出会い、3人はつるむようになる。ある日、永慈が槙雄を好きだと言い出し、2人は結ばれる。しかし周囲が交際に反対。槙雄と永慈を引き裂こうとするなか、美枝子が彼らのために2人の子供を産むことを決意。3人の特別な関係は徐々に変化していく。そんなとき、槙雄は元同級生の朝人(兼近大樹)と偶然再会し・・・。若者たちの痛々しいほどピュアで、美しくも切ない青春群像劇。

Prime Video

原作があるようなのですが、そちらは未読です。
なので完全にドラマだけの感想になってしまいますがご了承ください。

(この先めちゃくちゃネタバレあるよ…!)


正直あまり馴染みのない内容で少しかまえていたのですが、気づいたら最後まで観て、抜け殻状態。

もうね、苦しい切ない苦しい。
青春なんて甘酸っぱいもんじゃない。
全然ピュアじゃない、けどとてつもなくピュアだ。

私はもういいだけ歳食った大人なので、やりきれない思いで観てました。

どう転がってもハッピーエンドにはならない決断をしてしまう3人。
それまで本当に微笑ましく、友情以上の深い絆で結ばれていたように見えたのに、突然生々しい現実を突きつけられる。

マッキーの言う通り。
家族ごっこなんかできるわけない。

ねぇ、永慈。
あんた2人よりお兄さんなんだからさ、わかるでしょうよ?
大事な人と会えなくなってしまって?知らんがな!冷やしトマト口にぶちこむぞ!
と、私情入りまくりでモヤモヤするわけですが。

8話で登場する、救世主・スギモンに完全に心を奪われる。
おそらく全人類が好きでしょ、スギモンのこと。

マッキーよかったねぇぇぇ。
なんて目頭熱くさせてたら、8話の最後、マッキーの苦手なもんで胸がしめつけられてモヤモヤ再び。

美枝子と永慈は幸せなのか?
何事もなかったかのように暮らしていける?
なぜマッキーを探さない?

10話マッキーがスギモンに過去を打ち明けるシーンがものすごく好き。
柵を乗り越えて隣に座るところ、グッとくる。
一歩踏み込んで関わってくれる存在がマッキーには必要だったと思う。

3人の再会を見守る後ろ姿。
とぼとぼ歩くマッキーの後ろから
「せのおくーん、元気ですかー?」とかける声の優しさ。(ここめっちゃキュン)
「えらかったなぁ」と抱き寄せる手の温かさ。

これ、最初に観たときは「偉かったなぁ」の意味だと思ったけど、
多分きっともう一つの「えらかった」も含まれているのかなと、今書きながら思ったりして。関西の設定ですもんね。えらかったね、うん。

おそらく全人類に必要な存在、スギモン。好き。


そして、再会からの永慈のシーンですよね。

今もなおマッキーの面影がしっかり残る部屋を、懐かしむように見渡す永慈。
子供のもので溢れる中で、写真を見ながら思い出すのは自分の名前を呼ぶマッキーの声。

もうね…思い出しただけでむせび泣いてしまうんですよね、私…。

得てして人生とはうまくいかなくて、そのときは最善だと思ってしたことが後になって大きな傷になってて、それが自分だけならまだしも、大切な誰かにも痛みを与えてしまったのだと自覚したとき、耐えられないほどの後悔が押し寄せて苦しくて、でも結局はそのすべてを抱えて生きていくしかなくて。

性別とか恋とか愛とかそんなの関係なしに、ただ好きで、一緒にいたいだけなのに、それがいちばん難しいのは、なぜなんだろう。

永慈がこの先、背負うものの重さを思うと、喉の奥がギュッととなる。


もうとにかく役者の皆さんのお芝居がすごすぎて、ドラマというよりリアルな瞬間を覗き見しているような感覚でした。生配信見てるみたいな。親友3人ですき焼き食べてみた!みたいな。

藤野涼子さんの美枝子も中川大輔さんの永慈も素晴らしかったのですが、特に青木柚さん。尋常じゃない。
つかみどころのないフワフワした感じとか天性の人たらしっぽさとか、8話からガラッと雰囲気が変わるのも見事すぎ。
この3人の他の作品も観てみたいなと思いました。

あとスギモン役の兼近大樹さん。
びっくりしました。お芝居もできるのか…。
普段のイメージとは全然違う役柄だけど、優しい雰囲気はそのままという感じ。
ドラマの中でも誰かの辛いことの出口になるわけですね、さすが救世主・兼近大樹。


切なくて苦しいお話だったけど、いろいろ背負いながらも未来は明るいかもねっていうぼんやりラストが私にはちょうどよかった。
絵に描いたようなハッピーエンドなんてそもそもありえないし。

それでも1人より2人のほうがいい、誰かと生きていきたいと久方ぶりに思わせてくれた、とっても良いドラマでした。

まだまだ余韻から抜け出せそうにない。





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