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振り出し

当然芸人になろうと思ったから相方を探して舞台に立った。全てが素晴らしく楽しくて、やっと見つけたかった何かを見つけたような気がした瞬間も多かった。

あまりにもお笑いの経験を浅く過ごして来てしまったから、始めてからもお笑い一本で生きて行こうと決めることに悩みに悩んで度々躊躇してしまった。でも「やって行こうよ」と言ってくれる人と組めた。だから腹を括ったつもりでいた。
そんな経緯だったから「芸人をやる覚悟」と「このコンビでやる意志と熱意」が同時に形成されていってしまった。きっとこの思い入れにはコンビで差があるから、ゆうちゃんには本当に迷惑な話だと思う。

芸人やるつもりで組んだんだからコンビが変わろうが当初の目的を果たせよ。と本当にそう思う。自分の意志の弱さとか自信の無さに絶望する。人前に立つことにあんまり緊張であがったりもしないし、基本何をすることにも躊躇わない方なのにこんな所で軸がブレてしまう。自信が揺らいでしまう。

ゆうちゃんがどう思っての発言か、真意はわからないけれど私が躊躇する度にやる気にさせてくれた相方だったことに本当に感謝してるし、だから頑張ろうとより強く思ってきた。

私もネタを作ったけれど二人がこれをやろうという程の何かにはならなかったし、ゆうちゃんの目標である「最短で売れたい」為の相方では無かったから解散が挙がってるのは重々わかっている。困難を乗り越えてまでこの人と頑張りたいと思わせられなかった時点で私は奇文学の御役御免。
それでも「たかが一年予定がずれ込んだだけじゃん。その位なんとでもなるからコンビ続けようよ。」と言える自信と熱意を探している。この期に及んで。

もしあの時、駅に来たのがゆうちゃんじゃ無くて初めて舞台に立った自分が奇文学のツッコミじゃなければもうとっくに"芸人になろうとしたこと"そのものが無謀な挑戦として終わっていた可能性は充分にある。そうならなかっただけのものを私は勝手にこのコンビに見出していた。


暫く連絡が取れなくて、ずっとこうではいられないんだろうなと感じ始めていた。なんとなく今の予定で行くのは厳しそうだなというのはあったから一年社会人やることになるかもな、と思って舞台に立ってから辞めていた就職活動をまた始めていた。何かあったから次のネタ合わせが無い訳で、冷静に考えれば終わりだけれど「奇文学のままでいる未来」が何故かずっと念頭にあった。だから連絡を取ろうとしていたし、ネタを作って送っていたし、次作ろうとしていたネタの参考になりそうな本を買って、次会ったら新しく何かを始める話をしようか、とか考えていた。

私が最短で売れたいゆうちゃんの遠回りにはなりたくないし、そもそも相方に「解散しよう」という意思があるんだからその時点でコンビとして終わっている。それもわかっている。理解はしている。

理解した上で、まだまだやりたいことがあった。こんなにも躊躇する未来に賭ける気になるほどの勝算を自分なりに見出したつもりでやって来ていた。





人生をなんとかしたくてとにかくこのままではいられなくて、意を決して掲示板の1番上の投稿にメールをした、あの振り出しの日に戻って来てしまった。とにかくそれだけが事実。

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