どこまでもシネマティックな時代

先週末、ラグビーワールドカップフランス大会が開幕しました。
日本代表の初戦は「近年実力をつけてきている」と紹介されるチリ。テレビは「チームもファンも情熱的」と伝え、インタビューに答えながらチリの国鳥のタトゥーを入れた腕を見せつけるキャプテンの笑顔が印象に残ります。

私は中学からラグビー部に入っていて、もうかれこれ20年くらいテレビでラグビーを見ています。まあ「テレビでやっていれば」程度の熱なのでそこまでファンでもないのですが、近年の日本代表の成長には興味があり、今回もできるだけリアルタイムでテレビ観戦しようと思っています。そんな私がこの初戦を見た時、いつもと画面の雰囲気が少し違うことに気づきました。

選手がグラウンドに入る直前、縦一列になっている代表選手の顔になかなかピントが合いません。手前か少し奥か、どちらに合わせるのか、はよ決めてくれと言いたくなります(というかテレビを見ながら言っていました)。最近はiPhoneでもシネマティックな映像を撮れる時代ですが、スポーツの中継には合わないのではと思います(思いながら言ってもいました)。

試合中もライン外でステディカムを操作するカメラマンが目に入りますが、こうやって撮られた映像が何度か差し込まれてもあまり成功しているように見えません。近年ライン際で映像を撮ることが増え、時には人がぶつかる音も聞こえて臨場感を感じることもありましたが、被写界深度が浅い映像は動き回るスポーツにはどうかと。ドローンで空中から取るのはめちゃくちゃわかりやすくていいですけど(今回の中村のトライシーンとか)。まあ試合中にドローンの影が映るのが少し気になりますがそこは慣れなのでしょう。

とかなんとか思っていましたが、試合中盤でリーチがトライを決めた後のシーンでこのシネマティック撮影がバッチリ決まります。トライを決めて自陣に戻るリーチ、左右にメンバーが近づくもいつも通りの渋い表情、これをやや下のアングルから捉えたそれは背景がぼやけていても真ん中のリーチにピントが合っていてシネマティックでドラマティックです。テレビニュースで見た方も多いと思いますが、リアルタイムで失敗続きの映像を見ていた末にこの映像を見た私は、これがやりたかったんかと納得しました。

被写界深度の浅い映像はこの映像SNS全盛期、よく見かけます。地下鉄の車掌がホームを確認するためのモニタもそんな感じで、それは全部にピント合わせた方が良いのではと思いながら綺麗な映像に毎回見入ってしまいます。あとなんか最近シネマティックvlogみたいなのもあるらしいですね。手軽に撮れるからこそでしょうが、そういうところから映画の画作りが良くなっていくといいのになと思ったりもします。

なんだかまとまりはないですが、本来シネマティックなんて感覚から離れている印象の強いスポーツ中継でこんなことが起こっているのか、と興味深かったので書き残してみました。この先の試合、そんな面からも楽しみにしています。

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