毒を喰らう権利

職場でお土産などのお菓子をもらう時、必ずアレルギー表示を見ます。個包装の場合は包み紙の方にアレルギー表示が載っていてそれはもうゴミ箱の中だったりするので、ネットでHPを確認します。私にアレルギーがあることは職場でだいぶ知れ渡っているので、確認した上で買ってきてくれる人が多いのですが、ナッツがお菓子に入っている割合は思っているより多いのです。

アレルギーの症状が出るようになったのは高校生の頃、食堂の定食でアーモンド和えを食べた後でした。グラウンドでキャッチボールをしたことでより血中に回ったのか、気持ち悪さから午後の授業を受けられませんでした。元々アレルギー体質なこともあったのですが、私の記憶ではそれ以降ナッツ類を食べると口の中がイガイガしたり、痒くなったり、気持ち悪くなったり、時には唇が腫れることもありました。

微量のコンタミ程度なら大丈夫なのですが、ソースに入っていたりすると厄介です。よけて食べることができないし、濃い時もあるし、吸収率が高いです(個人の感想)。見た目や匂いでわからないとなると、外食に行った際毎回確認しなければいけません。ちょうど私が高校から大学にかけての頃、店先やメニュー表の裏に用意してあったアレルギー表示はすべてネットに移行していきます。アレルギー表が整備されている環境は良いことですが、そのアクセスについて不便に思ったことのある人はどれくらいいるでしょうか。食事がワンストップではないのです。

先日、松屋のガパオライスを食べました。時々SNSのタイムラインに現れる松屋の期間限定メニューによくつられます。店に入ってデカデカとポスターに印刷されているガパオライスの写真を見て「もしや」と思いますが、もう目の前には券売機。スマホでQRコードを読み込むとアレルギー情報のページに飛べますが、後ろに並ぶ人を気にしてそんな面倒な確認をすることをためらい、発券します。席についてチケットを渡し、やっとスマホで調べると入っています「落花生」が。

考える暇もなく運ばれてきたガパオライスを見て、私は決めます。今日は昼寝して体調も良いし食べるか、と。酒に弱い私は毎回顔を真っ赤にして動悸が激しくなりますが、酩酊感を楽しんでいます。アセトアルデヒドは毒です。同じように私にとっての毒である落花生が入ったガパオライスも、料理という嗜好品として楽しもうと思ったわけです。ガパオライスの落花生はソースに入った状態で前述の通り少し危険なのですが、味が嫌いなわけではありません。少しずつ味わっていきます。半分ほど食べたところで口の中がイガイガしてきました。イガイガは水を飲んでも消えませんが、私のふわっとした経験値で「いける」と判断してそのまま食べ進めます。水を多く飲みながらだったためか一品だけでお腹いっぱいになりながら、完食することができました。その後映画を2本観るという予定があるのに、半ばギャンブルでそういった行為を楽しんだのでした。

その日ではないですが、『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』という映画を観ました。痛みの感覚や感染症の心配がなくなった未来で、刺激を求めて身体を傷つける人々の話です(変な映画ですね)。詳しい話は置いておいて、その中で「プラスチックを食べることのできる」少年が登場します。その少年を「毒の入った特性チョコバーを食べられるようになった」人々が崇めます。今も人間はマイクロプラスチックを知らぬ間に体内に入れているのだから、それをもっと体内に取り入れて消化できるようになるのが未来の人間なんだ、みたいな話です(たぶん)。

芥川賞をとった『ハンチバック』は読みましたか?私はまだ読んでいませんが、あらすじが気になります。「出産を望めない重度障害者の女性が妊娠と堕胎を望む」そんな内容だと聞きました。

私は仕事で発達障害のある人の就職の手伝いをしています。こだわりや興味の強さから身体に過度な負荷がかかったり、自分の健康状態を把握しにくいことがあります。そんな人に「ちゃんと食べてますか」とか「早くに寝ましたか」とか「調子が悪かったら通院したほうが」とか言ってるうち、違和感が襲います。そんな管理はしたくないと。

『セヴェランス』というドラマは管理社会の息苦しさや薄気味の悪さをSFという枠で表現しています。会社に閉じ込められた人々がしょうもない余暇を与えられ、狭い範囲でしか楽しみを得られない。その様子を管理者側から写真に撮られる気持ち悪さはどうしても自分の仕事を思い出してしまいました。

特にまとまりのない話ではありますが、職場でもらったお菓子から広がって最近感じたことをそのまま書きました。こういったことがもう少し言葉にまとまると良いのにな、と思います。

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