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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 後編 (観客唖然 !?映画史を変えたラストの謎)

 前編ではタランティーノの作家性について書き連ねてきましたが、まだまだ書き足りない事、音楽の使い方やダラダラした会話など沢山あります。映画評を最近始めたばかりなので長く続けていくうちにまたタランティーノ作品について書く事があるでしょう。ですのでその辺りの話はここで切りあげたいと思います。

・歴史改変三部作、イングロリアス・バスターズ以降の作風の変化

 タランティーノは『イングロリアス・バスターズ』で初めて歴史物に挑戦する。しかしタランティーノ自身は歴史物で社会派の重厚な作品を作ろうといった意図でこの作品を手がけた訳ではない。タランティーノの好きなマカロニ(イタリア製)戦争映画『地獄のバスターズ』を元にした、ただカッコいい戦争アクションにしたいと思っただけだとインタビューで語っている。

 「でも歴史を描くなら、歴史観が必要だ。だからいっぱい勉強した。そのうち歴史の見方が変わっていった。第二次世界大戦は差別についての戦争だったと思う。ナチがユダヤ人を絶滅しようとし、アメリカは白人と黒人を隔離した軍隊でナチからヨーロッパを解放した。」

 『イングロリアス・バスターズ』以前からタランティーノ作品にはある一貫したテーマがある。それは「復讐」だ。『イングロリアス・バスターズ』ではユダヤ系アメリカ人で編成された極秘部隊がナチスを血祭りに上げていく。

 そしてラストには大きなサプライズが待っている。「本当の歴史ではあっちに進んだけど、僕の映画ではこっちの道に進む。僕が想像したキャラクター達が歴史を変えてしまったんだ。もちろん歴史的事実ではない。キャラクターは実在しないから。でも、もし実在したら、この映画の結末は必然なんだよ。」この作風は次の作品でも引き継がれる。

 マカロニウエスタンのオマージュで作られた『ジャンゴ 繋がれざる者』は南北戦争直前のアメリカの南部が舞台。黒人奴隷だったジャンゴが奴隷主の悪い白人どもを皆殺しにする物語だった。本作はアメリカが目を背けてきた奴隷問題を描いた数少ない作品だ。

 実は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、これらの歴史上酷い目に遭った人々が映画の中だけでも仇討ちをして溜飲を下げる、歴史改変三部作の三作目に当たる作品なのです。歴史が変わるのは勿論、1969年8月8日の事件。本作において歴史を変えてしまうタランティーノが想像したキャラクター達は主人公のリックとクリフ、そしてクリフの愛犬ブランディです。どのように変わるのかは未見の方の為に書くのは控えておきますね! 

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