白波の狭間で #1 転校
少し暑いがよく晴れて心地の良い朝に軽快なアラーム音がなり目が覚めた。僕は急いで準備をし、余裕を持った時間に家を出る。
今日は夏休みが終わり、登校初日。
チャイムが鳴り、教師に呼ばれ教室に入る。そして教師は言った。"自己紹介をお願いします"と。そう、僕はこの縁高校へ転入したのだ。そのまま僕は言う。「稲荷 蒼(イナリ アオイ)です。北高校から転入してきました~」と軽く自己紹介をし、案内された席に座る。
ホームルームを終えると、僕の机の周りには人が集まってきた。という訳でもなかった。
理由は僕か俗に言う"陰キャ"だからだ。
髪は清潔感がない訳では無いが整えてはおらず、あからさまに明るくは見えない容姿をしてるためであろう。
そのまま何事もなく、帰りの時間を迎える。
学校は坂の上にあり、帰り道では街並みが見え、遠くには海が見える。
僕は海が好きなので少し海へと寄り道をすることにした。
ここはお世辞にも綺麗とは言えないが、潮風が心地よく、波も穏やかで居心地が良かった。
そのまま海を眺め、テトラポットの上で好きな小説を読み始めた。タイトルは灘雲。作者は一織(イオリ)という。僕はこの作家が好きだ。
世界観がとても深く、言葉選びがとても綺麗なのだ。そしていつも主人公がどこか僕と近しい雰囲気が漂い、とても共感ができる。
読み始め、少し経つと後ろから女性の声が聞こえる。
「キミ、アオ…稲荷君だよね」と。
振り返るとどこか懐かしい雰囲気が漂うロングヘアが良く似合う綺麗な女性が立っていた。そして急に話しかけられて驚いたからなのか、声も出さずにただ頷いた。
そして彼女は僕の隣へと座る。
僕は名前伺ってもいいですか?と聞く。
彼女は驚いたような表情を見せ答えた。「私は桜井 梨織(サクライ リオ)。キミの1学年上で生徒会長をやってるんだ!好きな物は...うーん。
"海"と"読書"かな。気軽にリオって呼んでね」
続けてリオは様々な事を語ってくれた。
気付けば空は赤く染まり、太陽と水平線が重なっていた。そして連絡先を交わて解散しそのまま家に着く。ドアを開け、ただいまと言うが返事は無い。一人暮らしだからだ。
父は7歳の時海外へ単身赴任、母親は先月亡くなった。死因は事故だそうだ。
1人になった僕は、叔父の家の近くにあるアパートを借り、生活している。そしてこの場所は両親と生活していた時期に住んでた場所でもある。小学卒業とともに母親の借金の夜逃げで1度引っ越していたのだ。父からの仕送りで遊び歩いていたが足りずに借金をしていたらしい。
僕はおもむろにリュックを下ろし、郵便受けを見ると一通の手紙が届いていた。宛名は描かれていない。
不思議に思い、靴を履き脱ぎソファーに飛び込んで封を開けた。
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