"シラフ"を得るためのブロン

いつからだったのだろうか、ブロンがサプリメントと化したのは。

私の身体はブロンに対して非常に都合が良く、21t入れれば6時間はちょっと元気に、その後更に6時間は眠れないのが確定する。計12時間ほど、活動が出来る様になる。耐性も付きづらい様で、ついている様子はない。
辛い時に全部飛ばす為に飲んでいたブロンは動く為のサプリメントへと変容を遂げた。

テンションが上がる代物だと思っていたのは初めの頃だけだった。
ある時気付いたのだ、テンションは上がっているのではなく元に戻っているだけなのだと。
落ちると瞬く間に未遂しかねない状態になる私のテンションなんぞ、底上げしたところでシラフにしかならないのである。
それからは直ぐサプリメント化、常用である。

「鬱じゃない私の方が周りは喜んでくれる」
「飲まないと、いつもの笑顔を周りに振りまけない」
「周りに迷惑をかけない為に、飲むべきだ」

頭の中の声がする。生まれてからずっと他人のために生きてきた私にとって、飲んだ方が都合がよかった。
サプリメント化してからはコスパを重視し、必要最低限の量に抑える。
21t、何故20tにしないのか?界隈のみんななら察しがつくであろう。1瓶84tを4で割るとちょうど21tになる。1瓶で4回、シラフになれる。
蓋に手をかけ迷わずクルクル回す。

「あぁ、よかった、よかった、これで私は今日も普通に生きられるんだ」

安堵と自己嫌悪で涙が出そうになるのを堪える

手のひらの上に糖衣錠を出して錠数を数える。誤差がほぼ無く出せるのは我々特有の技術とやらなのではないのだろうか。
手のひらの上の21tを水で流し込む。限りなく少ない水で、一口で飲み込めるのも我々特有の技術とやらなのだろう。

「私は大丈夫、これでいい。」

30分もすればニセモノの幸せが訪れる。
私はニセモノというのが一番のポイントだと思っている。
本物の幸せを碌に味わわず、いや、味わえずに生きてきた我々は本物の幸せなんか信頼出来ない。ニセモノの幸せのが都合が良い。
偽なら裏切られたとしても「どうせ偽物だし」と、傷付かないで済む。


断薬しようと何度も思ったが、このお手軽シラフサプリとは暫くさよなら出来なさそうだ。
何処へ行く時も、お守りみたいにブロンの瓶を持ち歩く。胸なんて張れない。前も向けない。ただそれでもお陰様で歩む事は出来る。

絶対的信頼のある即席シラフ、ありがとう。今日もお前のおかげで一日を一般人コスプレして生きていけたよ。

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