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安田幸宏(ROOK RECORDS,珍庫唱片,NGOO USELESS SOUNDPIT,ANTONIO THREE)インタビュー

安田さんが人生で最初にオープンしたレコード屋、NGOO USELESS SOUNDPITのショッパーには
「YOKKAICHI...boring town」
とデカデカとプリントされていました。
そう嘆きながらも三重県四日市市で長きに渡りレコード屋として街を眺め続ける安田さんのインタビューです。
現在、安田さんが先代から引き継いだROOK RECORDSは同じく四日市のPUNK SHOP/VENUEであるVORTEXの1Fに移転しており、本インタビューではVORTEXのバンさんにも少し参加していただきました。
インタビュー内では暗い話題も少なくないですが、アンダーグラウンドな音楽に携わりながら地方都市で生きていくリアルさを感じられるような気もするのであまりカットせずに残してあります。
収録中にバンさんが差し入れしてくれた卵焼きを食べながら安田さんが、
「卵焼きはソースをかけて食べるのが好き。卵焼きの醤油と砂糖の味とソースの味が合わさって訳分からん味になって美味い」と言ったのを聞いて、バンさんが
「今の言葉がすごく安田さんを表してる気がする」と返していて、良いコンビだなと思いました。
どんな形であれ、安田さんの表現するブルースをこれからも少し離れた場所から見続けていたいですし、とりあえずご飯はしっかり食べて欲しいです。
冒頭で触れたNGOOのショッパーには
「get a hustle on a change the better,we all」
ともプリントされている事も付け加えておきます。

聞き手、編集:五味秀明
インタビュー収録日:2024年1月13日



年始早々に倒れて。

-え!?安田さんが?

うん。彼女に「大概にしろよ」って言われて。
そうやなー、ちゃんとご飯も食べなあかんし、水も飲まなあかんよなって反省したんやけど、「あれ?待てよ、去年も倒れてたよな?」って確認したら、
「そう、同じ時期に倒れてる」って。
去年も今年も年末年始はバタバタ忙しくて、ご飯も食べてなきゃ水分もろくに摂ってない状態で、寒いところから暖かいところに入った時に体温の調節が上手くいかなかったのかな。
よくおじいちゃんとかが風呂場でなっちゃうやつみたいな感じなのかも。
今回はライブを観に行った時になっちゃって周りの人にも迷惑をかけたけど、去年は気がついたら飲み屋のトイレで倒れてた。
で、輩に「こんなとこで寝てたらあかんやろ」って蹴られて、それで正気になって。
多分おしっこしてる時に意識が飛んだ。


-去年のルークレコードでの最後のインストアイベントの時も終盤はそんな感じでしたよ。
ほとんどみんな帰ってからルークのトイレの前で安田さんが倒れてて、バナナレコードの人がその日にルークのCD棚を引き取りに来る予定だったのに、安田さんがそんな状態なのでその場にたまたまいたタケシさん(DO NOT)が対応したって聞いたような。

2023年にルークレコードの旧店舗にて
行われた最後のインストアライブ
イベント終了後に路上で寝転がる安田さん。
10年くらい前はライブ会場でこんな状態になっているのをよく見かけました。
(撮影:hotaru)

いや、酒飲んでてそうなるのは分かるけど、この前のは酒飲んでなくて倒れちゃったから。ヤバいなーと。
あれやっちゃうと2日くらい体調おかしくて、戻るまでにすごい疲れる。マジであんまり良くないと思う。


-そりゃ良くないですよ…。
今年も相変わらず年始からレコードの外販で色んなところに行ってますね。

最初の頃は店の売上のプラスになるから出店数も多かったけど、結構交通費とか経費がかかるから最近は出店する店はどんどん減ってる。
去年かな、一番すごかったのが青森に行って、経費が16万円くらいかかって入金が7000円とか。


-若手バンドのドサ周りみたいですね…。
安田さんは出店先に直接行くスタイルじゃないですか?レコードを会場に発送するのはダメなんですか?

よく言われるけど、結局今は直接行った方が安いんちゃうかな。
昔はもっと送料も安かったけど、発送のサービスが変わって送料が割高になってからはガラッと状況が変わった。
ルークレコードの先代は車の免許を持ってなかったからバイトは大体こき使われてたな。車も出して、運転してみたいな。
で、みんな辞めてく(笑)
でも、今はレコード屋も自分の店舗であまり売れないからああいうレコード市に出店したがってる人も多いんじゃないかな。
こんなの言うのもなんだけど…亡くなったアーティストのレコードってみんな欲しがるから、今えらい事になってるよ。
「みんなアリスのレコード持ってくるの!?」みたいな。やっぱり売れるんだよね。
アーティストの訃報を聞いて、聴きたいけど手元に無いから買うか、みたいな感じで。
四日市の自分の店には全然お客さんが来ないから、最近は挙動不審な子が来たら声をかけるようにしてるんだけど、今日来た子は一回店を出てからまた戻ってきてレコードを見てて、めちゃくちゃ挙動不審だったから、
「何探してんの?」って聞いたら、
「METALLICAのレコードありますか?」って。多分中学生くらいちゃうかな。

-多分METALLICAのレコードって良い値段しますよね。

「METALLICAのレコードは結構高いよ。予算いくらくらい?」って聞いたら、
「え、そうなんですか?お年玉貰ったんで5000円かな…」
「多分それじゃ買えやんと思うけど…ちょっと探してみるわ」
ってやり取りがあって。
「お父さんいくつ?」って聞いたら、
「お父さん50歳です」って。
「あー、僕より歳下かー」つって。

「音楽はどうやって聴いてんの?」って聞いたら、
「お父さんのレコードを借りて聴いてます」って言ってた。


-最近結構VORTEXにも若い人がたまに来るってバンさんが言ってましたよ。スケーターの子とか。

バンちゃんと喋ってたら今日も中学、高校生くらいの子が4,5組くらい来たって言ってた。誰かが広めてくれてるのかな。

-口コミとかですかね。

若い人はTikTokじゃないの?彼女が今年はTikTokでレコード屋の存在を広めていこうって言ってて。

-安田さんが踊りながらレコードの紹介をするみたいな。

踊ってみた、とか…絶対嫌やなあ。
でもロバートフリップも踊ってたよな?奥さんが歌ってる後ろで。すげー良かった。


-安田さんが無理して踊ってるのを見るのはかなり辛い気持ちになりそうだな…。
ちょっと前置きが長くなりましたが、今回レコード屋としての安田さんの話を聞こうと思ってまして。
もともと四日市出身なんですか?

四日市ですよ。
その前にちょっと誰かにやって欲しいことがあって。
八百屋にいるおばちゃんとかに音楽遍歴のインタビューとかやってくれへんかな?
自分と接点のない全く知らない人のインタビューとか昔からめちゃくちゃ興味あるねんけど。ファンジンにしたらおもろいんちゃうかなって。
という事をずっと考えてるんですけど…。
えーと、自分は四日市の人ですよ。


-本当に四日市にずっといるんですね。

この街ずっと大嫌いなんですよ。昔から。

-音楽はいつから興味を持ったんですか?

小学四年生くらいかな。YMOがキッカケで。
いつまで経っても歌わないし、そういう音楽を聴いたことが無かったから。そこからやな。
中学の時にジャパメタブームで、周りは割とメタルを聴いてる子とかおったけど、僕は中学の時はクレイジーキャッツとか聴いてたな。レコードもそういうのを買って。
で、中学2,3年の時に社会見学みたいなのあるやん?みんなでバスで移動してみたいな。
その時にバスの一番後ろの席にいたヤンキーがスターリンの玉ネギ畑を大音量で聴いてて、こんなんあるんやと思って。
それと並行して1人で本屋に行くのが好きで、宝島とかフールズメイトとかを立ち読みするようになってから、おかしなってったな。
名古屋プレイガイドジャーナル、フールズメイト、アドンとかサブとかがあるコーナーがあって…。


-後半に出てきた名前の雑誌は何ですか?

アドン、サブは言うたら男色家の雑誌。

-かなりめちゃくちゃなコーナーですね…。

大手の本屋やで。一階の誰でも出入りできるところのちょっと裏手のコーナーがあって。学校の帰りにいつもそこで立ち読みしてた。
山塚アイが都立家政スーパーロフトで無茶苦茶したりとか、PSYCHIC TVの来日ライブに爆弾を持ち込むとかしてた頃だったから、
「ヤバい人って世の中におるんやなー」と思って。
昔は田舎のレコード屋って輸入盤はあったけど国内の自主盤とかはあまり無かったから、雑誌に載ってる広告のレーベル直販とかで買ってた。
あと勇気を出して名古屋のバナナレコードとかスウィンドル(GREAT ROCK'N'ROLL SWINDLE、現在は閉店)に行ったり。
まあ、欲しいものは大体売り切れてたりするんやけど。
でもせっかく名古屋まで来たんだから何か買っていこうってやってるうちにどんどん音楽の興味が広がってって。
それが高校生の時くらいかな。


-ヤンキーとかではなかったんですか?

全然ヤンキーじゃない。高校のクラスでノイバウテン(Einstürzende Neubauten)とかYoung GodsとかZoviet Franceとか聴いてたのは周りでは僕だけやったけどね…誰も話が合うわけないよね。

-当時から変わり者だったんですね…。そういった音楽の情報も雑誌からですか?

そうそう。全部雑誌ですよ。聴いてガッカリするようなやつばっかり買ってた。
それと並行して全く知らん歌謡曲とかも買ってた。


-当時からそういう音楽の聴き方をしてたんですか!?
安田さんの店のあの感じというか、センスというか…10代の頃から地続きなんですね。
音楽を等しく聴くというか、日が当たらない所にも目を向けるというか。すごいな。

うーん。何か知らんレコードを見たら中身どんなんか聴いてみたくなるやん?
昔はたくさん量を買えへんから、買ったレコードの良いところを探すみたいな事をずっとやってて。


-でもそこでジャンルに固執しなかったんですね。

しなかったすねえ。昔は歌謡曲も安かったし、いっぱい買えると思って。とりあえず音楽をいっぱい聴きたかった。

-高校を卒業してからはどんな生活をしてたんですか?

就職で東京の方に行って。最初は横浜に住んで、埼玉、東京に行ったのかな。
最初の1,2年は会社の寮生活で、その時はなかなかハードであんまり覚えてへんな…。
普通にサラリーマン。給料出たら家賃と光熱費以外は酒とレコードを買って、最初の一週間で全部使っちゃう。
夜中まで残業も多かったから普段お金使わへんし、給料も良かったんよ。
給料が良かったらレコードと酒を買うじゃないですか?
で、ご飯もろくに食べず…今とあまり生活変わってない。


-(笑)

ご飯も食べずにレコード買って、酒飲んでってしてたから…その時も一回倒れてる。
友達と一緒に「久しぶりのご飯やー」ってファミレスに行って肉食ったら倒れた(笑)
多分血糖値が爆上がりして。で、救急車で運ばれて。
その時に医者から「あんたこのままだったら死ぬとこだった」って言われた。


-…そんな生活からどういう経緯でレコード屋で働く事になるんですか?

サラリーマンをこのままやってたら、ええ人生を送れやんなと思って。
そもそも、ええ人生って何や?とも思うけど。
サラリーマン生活もそこそこ楽しかったんやけどな。結構ライブも観に行ったし、レコード屋も行きまくったし。
サラリーマンを5年やって、3年目くらいから頭おかしくなってきて、会社のデザイン部の人達がスーツを着ずに好きな格好して仕事してるのに、何で僕はスーツを着なきゃいけないのかと思って、下駄履いて会社に行きはじめて(笑)


-(爆笑)

情報システム部でパソコンの仕事だったから、下駄履いてオーバーオールで行ってたな。
IBMとかと打ち合わせする前日に部長に呼ばれて、「頼むから明日はスーツを着てくれ」って言われたり。
5年会社勤めした後にやりたい事をやろうと思って、花屋をやった事ないから花屋で働き始めたんだけど、ペーパードライバーだったからいきなり事故ってしまって。
花屋は辞めますって言って、サラリーマン時代にちょっと英語も勉強してたから、英語をもっと勉強したいなと思って、カナダにワーキングホリデイに行くことにして。
金が必要だから深夜のコンビニのバイトと飲み屋のバイトの掛け持ちをして半年くらいで200万円くらい貯めた。
飲み屋で15時くらいから仕込みして働いて、0時になったらコンビニ行って朝まで働いてって感じの生活で…倒れた(笑)


-またですか(笑)

それで200万円貯めてバンクーバーに行って、バンクーバーでもレコードと酒しか買ってない。
その後に円盤屋(名古屋大須にあったレコード屋、現在は閉店)に入るんですけど、面白いと思って履歴書をカナダから送ったら、帰国してすぐに円盤屋から連絡があって、面接に行ったら「明日から来れる?」って言われて。
その時の上司がグレヒ(greatest hits,名古屋大須のレコード屋)のタカシマさん。
タカシマさんが「俺、辞めるから」みたいな感じで言ってて、そうなんすかって思ってたら、いきなり自分が円盤屋中古店の店長になった。


-え!?レコード屋未経験で?

未経験で(笑)めちゃ適当にやってたよ。
今は値段の平均値が調べれば分かるやん?昔はもっと値段の付け方も適当だった。


-円盤屋は何年くらい働いてたんですか?

94年くらいから90年代終わりくらいまでかなあ。メロコアが流行ってた頃。
よく考えるとめちゃくちゃだったよなあ。
円盤屋の後にルーク(ROOK RECORDS、四日市のレコード屋。店主が亡くなられた後に安田さんが店を継ぐ事になる)に何で僕が入ったのかっていうのも、(ルークの店主に)「離婚する事になって人手がなくなるから手伝ってくれ」って言われて。


-安田さんが円盤屋で働いているのを知っててですか?

ヘッドハンティング。
「今いくらもらってんの?」って聞かれて、
「30万ももらってないくらいですよ」って答えたら、
「40万出す」って言われて「マジで?」ってなって。
でも一回ルーク辞めてまた戻った時は時給700円に戻ったけどね(笑)

その時のルークも嫌な空気ですよ。別れるって決まってる店長の嫁はんと一緒に働いて。

-じゃあスカウトされたから円盤屋を辞めたんですか?

うーんと…そもそも一回四日市で自分の店をやりたいっていうのがあったから、とりあえず四日市で店をやるってのがどんなもんなのかを知りたかった。
四日市が嫌いやから東京に行ったり、円盤屋に入ったのにね。


-最初ルークではどれくらい働いてたんですか?

そんなにやってないんちゃうかな。2,3年くらい働いて、自分の店をやりますわって言って辞めた。

-それで始めたお店がNGOO(ングー)って事ですね。

そうそう。まあ…無茶苦茶でしたね。

-NGOOってどういう意味なんですか?
お店の存在を知った時、何て読むんだろう?ってずっと思ってました。

何なんでしょうね。自分でも分かってないす。
後付けやと思うんですけど、NGってNO GOODじゃないですか?で、OOってインフィニティ(
♾️)になるでしょう?
NO GOOD無限大みたいな。後付けやけど。


バン:「ん」から始まる名前にしたかったって聞いた事あります。

タウンページに「ん」から始まる店って無いと思って。
でも割とあるんですよ。同じような事を考えてる店が(笑)
あの頃は面白かったですけどね。全然売れなくて借金ガンガン増えたけど。マックス700万とか。


-え!それは全部レコードとかCDの借金ですか?

それもあるけど、あの頃アメリカからバンドを呼んでツアーを周ったりとかもしてたから。借金まみれやったな。

-それがいくつくらいの時ですか?

店始めたのが31,2歳くらいの時やったから…30代後半はめちゃくちゃやったよ。

-じゃあ30代はNGOOをやってたって感じなんですね。

やってたねえー、全然響かんかったねえ…。

バン:いや、私には響きましたけど…。


-色んな人達に響いてたと思いますよ。
僕も当時何度かお店に行きましたけど、夜中しか開いてなかったイメージです。

最初は昼間から開けてたんだけど、これじゃ無理だと思って、昼間ルークでバイトをしながら夕方から自分の店で働くっていう訳の分からんスタイルでやってた。
その時も倒れてるわ。


-夜中にNGOOに行ったらシャッターが半分閉まってて、恐る恐るくぐって店の中に入ったら安田さんが床で寝てたって事は何度かありましたね…。
自分の店をやるって決めた時にはどんな店をやりたいって思ってたんですか?

それこそ分かりやすく言えば、DISCHORDの全タイトル置いてあるような店。SSTが全部置いてあるとか。

-新譜が揃ってる店をやりたかったんですね。

やりたかった。割と当時は新譜を入れてたよ。
新譜がちゃんと置いてある地域は中古も流通が良くなると思ってたから結構頑張ったんだけど。
もっと音楽に興味を持ってバンドを始める人とか増えるかなと思ったけどそうでもなかったし。


-四日市に戻ったのもそういった思いがあったんですね。

多少はあった…かな。
昔、P-MODELのツアー日程を見た時に四日市の知らないライブハウスの名前が載ってたから調べたんだけど、古いツアー日程の情報だったのもあってもうそのライブハウスは潰れてて。
P-MODELが来るようなライブハウスがあったという事は、そういう音楽が好きな人達が少なからずはこの街におる訳やから、もうちょい底上げにならんかなと思って始めた。
ルークも元々ジャズの店やけど、多分キタノさん(ルークレコード店主)もそういう気持ちもあって店を始めてるはずなんやけどな。
まあ、時代の移り変わりでルークにもお客さんが来なくなって、それだけが理由では無いと思うけどキタノさんはレコード屋の仕事自体が面白くなくなったんやと思う。
直接は聞いてないけど、亡くなる前にそんなような事を言ってたみたい。
キタノさんが亡くなってから代替わりして自分があの店に座るようになってからも、四日市以外の人は結構来るけど、四日市の人は全然来なくて「ダメだこりゃ」って思った。


バン:でも、シマダ君(奈良の喫茶店/レコード屋Please To Meet Me店主)とかCHEAP SKATEとか出てきたじゃないですか。

-今日これ持ってきたんですよ。自分が四日市周辺のパンクシーンを知るきっかけになったテープなんですけど。

Band In MxIxEというタイトルの
コンピレーションテープ。内容最高です。


ああ、これシマダ君が作ったやつやね。

-これすごくて、確か100円で買ったんですけど、中にめちゃ小さい字で結構なボリュームで参加バンドメンバーの対談も載ってて。

これタイロウさん(原爆オナニーズ)に怒られた話とか載ってるやろ?タイロウさんに3時間くらい説教されて。円盤屋時代に。
CHEAP SKATEの佐藤君がこれくらいの時期に、「前々から気にはなってたんですが…」って、重い腰を上げた感じで店に来たな。

-やっぱNGOOに行くのにハードルがあったんですかね。

分からんけど…。
「じゃあ何か企画とかする時があったらCHEAP SKATE呼びます」ってなって。

バン:佐藤さんが初めてVORTEXに来た時に、「どんなとこでライブしてるんですか?」って聞いたら、
「高校生のバンドとかとライブしてる」って言ってて(笑)


-あはは(笑)

バン:メンバーを聞いたら元FLASH GORDONの人がいるって言うし、今までどこにいたんですかって思ったな。

佐藤君がもう一個やってるバンド、確か未だにライブやった事ないでしょ?
落語家の同級生と一緒にやってるバンドがあって、多分20年以上やってるんじゃない?練習は入ってるらしいけど。


-佐藤さんも安田チルドレンと言っても良いんじゃないですか?

いやいや、佐藤君は憧れの存在です。

-シマダさんとかカズキ君(record shop A-Z,Killerpass,POVLACION,SKIZOPHRENIA!)は安田チルドレンだと思いますけどね。

カズキは…あいつが高校生の時に、ギターやってるって言ってたから「ドラムやれ」って言った。

-どういう事ですか(笑)?

ギターはいっばいおるけど、ドラムはあんまおらへんからドラムやっといた方が良いんじゃない?って言って。
そしたら(カズキ君が)「そうっすね」って。

-シマダさんもカズキ君も一味違う個性的なお店をやってますし、そういったところも安田さんの影響があるのかなと思います。

いやあ…恐れ多いですよ。
まあ、でも何か普通にレコード屋やっててももうダメっぽいでしょ。今。

-うーん、どうなんですかね…。NGOOをやってた当時からそういう事は考えてました?

普通にやっても面白くないなとは思ってた。
何か…レコード屋も面白いけど儲からんなと思って。
最終的に借金が700万になった時に「ダメだこりゃ」ってなった(笑)


-一回店を閉めるキッカケは借金が大きかったんですか?

いや、閉めるキッカケは2011年の震災。
あれで借金全部クリアにしようと思って債務整理した。生々しいけど。
で、NGOOがあった場所も潰すから立ち退きになって、ルークでバイトしながら今と同じように外販で出店したり、ウェブショップもやってたんだけど、その時にボロい商店街で喫茶店をやってたおばちゃんが、
「こっち(商店街)おいでよ」って言いにきて。
「家賃いくらですか?」って聞いたら2万っていうから、じゃあ入りますってなって居酒屋だった店を借りた。


-それが居酒屋 優(まさる)ですね。元々あった居酒屋の名前をそのまま使ってレコード屋をやるっていう。

↑言うまでもなく店の前で寝ているのが
安田さんです。
当時のお店の雰囲気がよく伝わる映像だと
思います。

債務整理もやって楽になったから、もうどうでもええわって思ってたらまた店を始めてしまうっていう。

-あの店はすごかったですよね。訳が分からなかったです。
本当にカウンターだけの狭い飲み屋のスペースで無理矢理店をやってる感じでしたもんね。10人も入れないくらいの。

すごかった。訳分からんかったね。
あの頃、大阪の子らがDJしに来てあの店の中に25人くらい入ってん。
あの時DJで誰が来てたんやったっけな…訳分からん子らがいっぱい来てたな。


-優は何年やってましたっけ?

2年くらい。
債務整理してからとりあえずやってみたものの、「これダメやな」って思いながら店やってて、2013年にルークのキタノさんに「この業界から足洗います」って言って。
たまたま神戸の運送屋から話があったから、2013年から2019年は神戸で運送屋。
その時はレコード屋としては家に在庫を置いて通販だけやってた感じだったかな。


-安田さんとしてはそのままレコード屋業界から離れるつもりだったんですか?

いやいやいや、働いてたらお金貯まってくるじゃないですか。
そしたら店やりたくなってくるでしょ。
で、ちょうど大阪に引っ越したいと思ってたし、自分で店をやろうと思ってたんやけど。
そしたらルークから「お前暇か?土日だけバイト入ってくれへん?」って電話かかってきて。
分かりましたっつって、月から金は神戸で運送屋をやって、金曜の仕事が終わったら四日市に行って土日はルークで働いて、40連勤とかする事になる。


-当時はさらにバンド(ANTONIO THREE)もやりながらですもんね…。

うん。で、一時期ルークのキタノさんと全然連絡が取れへんかって、半ギレで
「何か言わなあかん事があるでしょ?」って電話したら、
「俺もう死ぬんやわ」って言われて(笑)
「え!?」ってなったんやけど、
「あとはよろしく」って頼まれて…。
色々細かい時系列とかはあるけど、ざっくり言うとそんな感じでルークを継ぐことになった。


-それを見越して安田さんに声をかけたのかもしれないですね。

他に頼める人がおらんかったんやろ。
歴代のバイトの人らはみんな普通に生活して、家庭もある人ばっかりやし、頼みやすかったんじゃない?
最初はルークのレコードの在庫は要らんって言ってたんやけど…でもいざキタノさんが死ぬとなると、俺が要らんって言ったら誰かに迷惑がかかると思って…。
でも色々考えたらやっぱ要らんって言っとけば良かったって今となっては思うけど(笑)
まあ別に何とでもなるやん、レコードは。
そんなんですよ。人生の選択を間違い続けてる。


-ずっと茨の道を進んでる感じですよね。

好きなんですよ、そういうのが。
やっぱり商売やる以上はある程度お金が好きじゃないとあかんじゃないですか?
でもそんなにお金に執着無いんですよね。そこが多分ダメなんですよ。


-まあ…それでも何とか生きてますもんね。安田さんが継いでからルークはどれくらいやっているんですか?

何とか生きてますね。
先代が2019年に亡くなってるので、5年くらい。


-ルークを継いでからお店も安田さんの色が出てますよね。

久々に来たジャズのお客さんとかに、
「だいぶ変わったよね」って言われたりはした。
本質的には変わってないと思うんだけどね。


-ジャズが強いお店だったんですね。お店の看板にもJAZZって書いてありますし。

安く物を出してたし、ヨーロッパのディーラーと取引が多かったから他の店と筋がちょっと違ったんじゃないかな。

-20年近く前にルークの店内で結構インストアライブをやってたじゃないですか。
あれでルークを知った人も多いと思いますけど、何回くらいああいうインストアライブはやったんですか?
STRUGGLE FOR PRIDEとか出てましたよね。

3,4回くらいじゃないかな。
キタノさんに「ライブやらせて下さい」って聞いたら、「ええよ」って(笑)
the futuresも来てたっけ?

-来てるはずですよ。futuresが出た時に出演バンドの曲が収録された配布CDRがあった気がします。idea of a jokeも来てますよね。
U.G MANも来てましたっけ?

U.G MANはルークじゃなくて別の場所。
2回目にU.G MANを四日市に呼んだ時は、ボーカルの河南さん(UG KAWANAMI)が来なくて、U.G MACHI(ユージー待ち)ってバンドで出てる(笑)


-(爆笑)

結構尖った事やってるじゃないですか、僕。

バン:SUBWAY BARとかでも企画してましたもんね。ECDとか呼んで。
昔は四日市も色々ライブがありましたよね。


みんな若かったしね。今、歳とった人にもっとライブやってよって言ってもしょうがないし。

-当時はレコード屋をやりながらバンドもやって、ライブの企画だったり色々してたんですね。

何であんなに色々やってたんやろね。楽しかったんやろうけど…結局何にも残ってない。

バン:色んな人の記憶には残っていると思いますよ。今、顔を見ない人の中にもそれぞれ思い出があるんじゃないですかね。

そろそろ「あの時に助けていただいた鶴です」みたいな人が現れるんじゃないの?
…無いかあ(笑)
まあ、選んで僕は孤独なんやと思う。
そりゃ儲からんよなと思うし。


-あの場所でルークを閉店させる事にしたのは何が原因だったんですか?

面白くないからと、家賃。
家賃が店の1カ月の売り上げと一緒くらいやったから何も残らへんやん?
外販とか行って、ランニングコストかかるような事をすると支払いとかどうしようってなるし、これを一生やるのはしんどいなと思って。
ちょうどその頃バンちゃんと2人して
「もう辞めたいね」って話をしてて、
「俺も辞めたいから、そっちに行かせてもらって一緒にこの先考えますか」って事になった。
店で売れる日と売れない日があるのは普通なんやろうけど、1日仕事して売り上げが150円みたいな日が続いたら頭おかしくなってくるでしょ。
外に売りに行けば多少レコードが売れるから、それで生計を立てる方に振った方が良いんじゃないかとも思ったし。


バン:安田さんが店にいない日も多かったし、こっちに来ません?って言って。
蓋を開けたらすごい物量だった(笑)


-レコードの量が?

(先代の)レコードと生活のゴミが。

-僕もお店の片付けの手伝いに行きましたが、2階はものすごい状態でしたもんね。

今だから言うけど、2階はアスベスト剥き出しで。
先代は肺ガンで亡くなってるんだけど、絶対2階には入るなって言われてて。
どうすんの、これ?って思ったんだけど、
夜逃げしろだの、借金を踏み倒せだの先代に言われて、(先代が)最期死ぬ前とか無茶苦茶やったよ。
こっちが借金を引き継いで…未だに払えてない。それでコロナ禍に突入やから。
すげえなあ…。


-他人事みたいすね…(笑)

バン:あの時に店を引っ越してなかったらあのままですもんね。

今もあそこにいたらどうなってたんやろうな。あんまり考えへんけど。


バン:お店に来るお客さんも前と全然ちゃうでしょ?

全然ちゃうんですよ。今は結界が張られてる感じやから。
商店街の真ん中で店やってた時はパンチある人も結構来てた。

VORTEX/ROOK RECORDSの玄関

-当時、ルークの店の前に営業中なのに虚無僧が立ってたって聞いた事があります(笑)
バンさんはいつから安田さんの事を知ってたんですか?

バン:ANTONIO THREEで知ったのかな。
あの時みんなマッシュルームヘアで誰が何の人なのかよう分からんかった。
ボーンマシーンで初めて見ました。


ボーンマシーンっていう黒川さん(ANTONIO THREE)が働いてた無茶苦茶な飲み屋があって。そこでみんなライブをやってたんよね。

-ライブがやれる飲み屋だったんですね。

いや、やったらあかんようなとこやったけど。
ライブをやってたらヤクザが怒鳴り込んでくるみたいな。あの頃が一番面白かったな。


-バンさんはどうやって安田さんと知り合ったんですか?

バン:ANTONIO THREEのライブは観てましたけど、安田さんと喋るようになったのはNGOOに行って「はじめまして」みたいな感じで。
私、あんまり四日市のガレージシーンに入り込めなくて。そういうところに素直に行ける感じのタイプではなかったので(笑)


当時ボーンマシーンには色んな人が出とったよ。
井口君っていう確かILLDOZERもやってた子とか…。
あとeleven.(三重の野外パーティー)のメンバーの子らがやってたバンドとかもライブやってたもん。
…何かそれで思い出したけど、僕ディクショナリーに載った事あるわ。


-それは何ですか?

何か服屋とかに置いてある小さい本知らん?

-知らないすね…。何が載ってる本なんですか?

サブカル(笑)
名古屋の特集とかを組んでたのが確か井口君だったんじゃなかったかな…。
だから昔からサブカルなんでしょうね、僕。
サブカルクソ野郎ですよ。


-バンさんにとって安田さんはどんな存在ですか?

バン:師匠。安田さんが一時期四日市から離れて神戸に行った時とか寂しかったもん。
私もやってる事が最初からちょっと異質やったから、唯一先輩で気持ちとか価値観を共有できる人が見つかったのに一つ指針が無くなったというか。


色々オーガナイズしといて言うのもなんやけど、つるみたくないんすよ。
この感情はややこしいんやけど、色んな事をオーガナイズしてバンドとか人を集めときながら、そんなにつるみたくないから。


バン:その感じが私と同じみたいな。

なんて言うのかな…あんま深く付き合いたくない…人と(笑)

-それはもうしょうがないですよね(笑)

そんな人が色々オーガナイズとかしてたんだから、そりゃ色々大変でしたよ。
でもあまりにもほっとかれると、少しは構えよって思っちゃう(笑)
そういう意味では猫と同じですよ。


-今こうしてVORTEX内に移転してきてどうですか?

気分的にはすごく楽やけどな。前の店に1人でおる時はマジでしんどかったから。
檻の中にいるみたいだったやん?誰もお客さん入ってこないし。
それに比べると今は精神衛生的にも全然良い。
相変わらず地元の人は全然来ないけど、最初に話したみたいに若い人もたまに来たりして。

2023年の夏にROOK RECORDSと
VORTEXの合体を告げるフライヤー

バン:デートスポットみたいな。レコードを見に。

彼氏がうんちく垂れて。今日も結構若い人来たなあ。

-安田さんはレコード屋をやる上で影響を受けた店とか人とかいるんですか?

何かレコードが好きなんじゃなくてレコード屋が好きなんじゃないかと思った時があって。
レコード屋やってる人って全員個性的やん?
ややこしい人もおるけど。
値段とかラインナップとか店主の性格が出るじゃないですか?そういうのを見てるのが楽しい。
だから未だに色んな店の人に影響受けてるけど、若い時に衝撃やったのはスウィンドルとかなのかなー。


-レコード屋をやる上でのこだわりとかはあるんですか?

もうない。
普通に考えたら今年56歳で、今ある在庫が1枚100円とかでも売れてってくれれば死ぬまではいけるはずやから。
かといって全部100円均一みたいなのにしたらハイエナしか来なくなるから、それはそれで面白くないと思うし。


-ルークから引き継いだ在庫も相当ありそうですもんね。

いや、ゴミばっかよ。
今日も倉庫に行って3時間くらいレコード見たけど、「これいける!」って抜いたレコードもキズとか反りがすごくて。あと中身が入ってなかったり。
時間の無駄やん…って思った。
似たような感じの人が働いてくれればええんやけど…1人で管理するのは限界がある。
上(VORTEX 2Fのライブスペース)も誰か一緒に借りてみんなで家賃折半したりとかできないかな。
…最終的にはカズキに全部やらせよう(笑)
多分あいつなら乗っかってくると思うけど。
「今のうちに金貯めて、PAのやり方も覚えとけよ」っつって。
…今後どうしてったらいいすか?


-安田さんがVORTEXにいるので、また面白いイベントの企画とか期待しちゃう気持ちはありますね。

いや…やるにあたって、どうせ地元の人は来やんしなって思いながら企画するのってまあまあ苦痛やから。
話を振られたらちょっと考えますわって言うけど。


-去年にルークでやったインストアライブも結構インパクトあったと思いますけどね。

でもまた企画してもどうせ誰も来やんから…。
言うたらバイブス高めな人達の前には行きたくないじゃないですか、幸せな人とあまり交わりたくないんで。
…何か相当クセが強い人みたいになってきたな…。
かといって不幸な人が好きな訳じゃないんやけど(笑)、そっとしといてほしい。
ある程度やりたい事は全部やったと思ってるんで。
この先どうなっていくんでしょう。


-何かビジョンとか…やりたい事とかってありますか?

特に無いですねえ。やりたい事…何かある?

バン:ここに関わるような事でやりたい事は何も無い。ただの遊びに行く人になりたい(笑)

ほんとそうやと思う。何年か前からやけど、この場所を維持したいみたいなのは無くなってきた。
いつ辞めても良いっていうか、マイナスはできるだけ小さくして手放したい、みたいな…。
別に割と前向きなんやで。


バン:安田さんには大阪でレコード屋さんをやって欲しいですけどね。

大阪ではやりたいですけどね。
今年も怖い事に青森の出張のオファー来てるからね。青森の後に岩手からもオファー来て、断ろうと思ってたら周りから固められて、行くぞってなった。
3月の予定は無茶苦茶なんすよ。
仙台に行って、荷物を引き取って帰ってきて、浜松で3日間出店して、翌日岩手に行く。


-マジで大変な仕事ですね…。

大変ですね。レコード屋ってみんな楽な仕事だと思ってるでしょ?

-去年自分のバンドのレコードを自主で作ってみて、多分レコードに関わってる仕事をしてる人で楽してる人なんて殆どいないんじゃないかなと思いました。

最近、5年後くらいに日本から中古レコードが無くなるっていうのをみんな危惧してるみたい。
海外にバンバン売ってると本当に良い物が国内に無くなってく。
そうなったら、さだまさしと松山千春の専門店をやらなあかんと思う。

-(笑) 本当に何が起こるか分からないですもんね。山下達郎のレコードがあんなに高くなるなんて思わなかったですもん。

でも、ある店の人は山下達郎の再発のレコードをたくさん仕入れたけど、全然売れなくてどうしようって言ってた。
何でもそうやけど、やっぱ大衆を動かすには煽りとか宣伝が必要なんじゃないですか。

バン:私らにそういう事ができたらね。

でもそういう事が本当に苦手なんです。

バン:ね(笑)


好きにやってもらったら良いんですけど、そういうのをやりたがる人とはあんまり関わりたくないとは思いますね。

-そろそろ締めましょうかね…。最後に何かあります?

あの…今日も昼間にバンちゃんと言ってたんやけど、入りづらい店に思い切って入る勇気ってあった方が良いと思うんすよ。
今日僕も勇気を出して挙動不審なお客さんに声をかけたら、男の子やと思ったら女の子でビックリして。
僕、女の子と喋るの苦手やから「あああ…」ってなっちゃって。
人付き合いが上手い人達はナンパギリギリの所を攻めてフランクに喋るじゃないすか?
すごいなーと思って。

バン:きっとあの子はまた来てくれますよ。


自分は人付き合いが下手なんですよね。

-そう考えたらある種レコード屋は天職なのかもしれないですね。1人で作業できますし、会社とかに比べて人付き合いとか少なそうな気もしますし。

天職か…あ、でも最初レコード屋を始めようってなった時に、これでレコードを買わなくて良くなるって思ったけど、やっぱり買うんよね。
買うし、個人で消費する以上に仕入れるからよく分からんかったな(笑)
ずっと好きなもん聴けるしって思ったけど、そうでもなくて世の中上手くいかんなって思った。

-安田さんの独特な視点で書かれるレコードのコメントやレビューにはファンが多いと思うんですけど、あれはどういう感覚で書いてるんですか?

えーっと、インフォを丸写しするのが恥ずかしくて感想を書いてる。
でも同業者には、「それは感想であってレビューではない」ってよく言われるけど(笑)
逆に買う人に分かりづらくしてるみたいなところはある。

バン:でも聴いてみたくなるもんね。

真野さん(CH CARGO)曰くカード職人っていうんやけど、面白いカード職人が書いたレコードのプライスカードを集めた本を作りたいって話が前にあったよ。
真野さんがやってたignitionってレコード屋のマンスリーにたまに2yangが文章を書いてたんやけどめちゃくちゃ面白かった。

-その人の個性が出てるレビューとかコメントを見ると嬉しくなっちゃう感じはありますよね。

バン:昔の雑誌のレビューとかは関係のない話とかみんな無茶苦茶に書いてたじゃないですか?ああいうのが面白かった。
今はみんな無難というか…はみ出ると吊し上げられるから。


吊し上げられるし、それをみんな分かってるから忖度してるというか。

-安田さんが書いたハードコアのレコードのコメントでたまに「ガッカリコア」って紹介してるのを見かけるんですけど、ガッカリコアって何なのか具体的に説明できます?何となくニュアンスは分かるような気はするんですけど。

ハードコアで、インフォを咀嚼してそのまま真っ当なコメントを書いても売れやんレコードってあるやん?
DISCHORDとかだってハードコアが好きな人が聴いた時に、「あれ?」って思うようなバンドを一時期いっぱい出してたでしょ?
それの一番底辺みたいなとこで、ハードコアのレーベルからリリースしてるけど「お前誰やねん?」みたいなバンドを聴いてみたらオルタナだったりするやんか?

ああいうのを楽しむために、「これはガッカリコアですね」って言い出したのがCHEAP SKATEの佐藤君(笑)

-佐藤さんが産みの親なんですね(笑)

そう。ガッカリコアで一括りにできるよなってなって。
2yangにその話をしたら、
「分かる分かる。それを俺達は豚骨メタルって呼んでた」って言ってて、みんな考える事が同じなんやって思った。

バン:そこが好きな人もいますもんね。


そこが好きな人はよっぽどやし、相当屈折してると思う(笑)
でもそういう人とは話が合うと思う。
目の前に湘南乃風がおっても絶対にタオル振らないし、矢沢永吉を観に行ってもタオル投げない人でしょ。
共感できるわ…。

バンさんと安田さん

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