テライショウタ(GOFISH,SIBAFÜ,NICE VIEW,ネス湖) インタビュー
愛知に住んでいるとテライショウタさんの音楽にたくさん触れられます。
自分にとって一番多くライブを観たハードコアバンドはNICE VIEWだし、一番多くライブを観ているシンガーソングライダーはGOFISHです。
10代の頃からNICE VIEWのライブをたくさん観れた事は大きな体験だったし、GOFISHのライブで味わえる歌詞を耳で追っているうちに気づいたら曲の中に入り込んでいるような感覚も自分にとって特別な音楽体験だと言えます。
そしてNICE VIEWにしろ、GOFISHにしろ、ショウタさんが企画するライブがいつも面白くて、そこで初めて知った音楽やミュージシャンもたくさんいました。
近年筆者とSIBAFÜというバンドを一緒にやっている事もあり、色々と話を聞く機会も多かったのですが、今回は2021年5月にリリースされたアルバム「光の速さで佇んで」(12月22日にはLP盤でもリリース予定)の話を中心にインタビューさせていただきました。
また、インタビュー後半では個人的にショウタさんと共通点が結構あるのではと思っているラッパー、Campanella君にも参加していただいています。
GOFISHは作品毎にある種のキャッチーさが増していく印象がありましたが、多彩なゲストを迎えバンド編成で録音された今作は、より楽曲に広がりが生まれながらも少し離れた場所から眺めているような視点も健在で、クールさと温かさが同居している様な独特な質感を纏った傑作だと感じました。
NICE VIEWを知った時からショウタさんからは音楽の持つ面白さ、豊かさを教えてもらっていると勝手ながらに思っています。
聞き手、写真、編集:五味秀明
トップ写真撮影:熊谷直子
インタビュー収録日:2021年9月5日、26日
―いきなりなんですが、まず気になったのが表記が今までは頭文字が大文字のGofishでしたが、今回は全部大文字のGOFISHになったなと思ったんですけど、何か理由ってあるんですか?
アルバムとかの表記は全部Gが大文字始まり(Gofish)だったんだけど、前から全部大文字の表記(GOFISH)も使っていて、ちょっと表記をまとめようと思って。
―あ、でも「よかんのじかん(4thアルバム)」は全部大文字で表記されてますね。
ほんと?(アルバムを手に取り)あ、ほんとだ。
―じゃあ、定まってなかったんですね。
そんな決まってないね。たまにライブのフライヤーやSNSで名前を載せる時に、日本人のシンガーソングライターの人と一緒に名前を並べるとさ、アルファベットの小文字が入るとちょっと(字面の)ボディーが痩せてるというか若干縮まるじゃん?
だから日本語の名前の人と一緒の時は並びを良くするために全部大文字表記にしてたりとかしてて。
で、今回新しいアルバムを出すにあたってタイトル(光の速さで佇んで)を迷ってたのよ。
これで良いのかなってずっと悩んでて。
ちょっとスピってるっぽく感じてずっと引きずってたんだけど、最終的に字画で決めようって「GOFISH/光の速さで佇んで」の字画を調べた時に大文字の方が運気が良かった。
―(笑)あー、そうか、HとかFとか画数違いますもんね。
HもFも違うし、Iも一画増えるし。
ていう、そんだけの事。自分の中でこれでいこうってそれで決意をしたっていうか。
―今回のアルバムタイトルはこれまでの作品よりも長めというか、詩的というか今までとはちょっと違う感じですね。
うん、今までには無い感じだったかもしれないね。でも今回収録はしてないけど結構前からライブでもたまーにやってる曲があって、そこからタイトルを取った。
次のアルバムにはその曲も入れようかなって。
ちなみにTHEピーズでも同じようなパターンで「とどめをハデにくれ」ってタイトルのアルバムがあるんだけど、同じタイトルの曲が次のアルバムに入ってるよ。
―今回のアルバムはバンド編成ですが、トリオからバンドになった経緯はどういう流れだったのでしょうか?
単純にトリオはもうやらないという事になって。まあ事実解散をしたんだけど、次どうしようかなーって考えてた時にもうバンドでやろうって自分の中では決めてた。
弾き語りとバンドが合わさった、そういうコントラストをつけて音源を出そうと思っててその形になったかな。
―メンバー編成はどのように考えていましたか?
まず、ピアノの音を入れたアルバムを作りたいって思ってたのと、ルーツロックっぽいもの、THE BANDとかNeil Youngみたいな感じのベーシックな編成で自分の歌をアレンジしたいなって気持ちがあった。
―トリオの時はジャズのJimmy Giuffre3みたいなイメージがあったと以前聞いたことがあったんですけど、バンドは王道的な編成のイメージがあったんですね。
そうだね、王道的なものがやりたかったね。何が王道かっていうと人によって違うだろうけど。
―確かに今回のアルバムを聴いてて、そういうちょっと懐かしさのような感触は感じましたね。
音像は現代的な音だと思いましたけど、曲や全体像として古き良き時代の音楽が持っていた要素を感じられるというか。
それだったら自分の狙いが成功してると思う(笑)
自分の今の気持ちで作ったものだから、そういった古き良き時代の音楽に憧れて作ったとしても、今っぽさは出るだろうなっていうのもあったし。
あと、所々そういうルーツロックとかアメリカンロックっぽいアプローチをしてもそういったものとは違うフックを持ってきたりとか。
昔の音楽を踏襲しつつも新しいことはできるんだろうなと思ってやったつもり。
―GOFISHの音楽に触れるきっかけって、僕もなんですがNICE VIEWとかハードコアパンクの文脈から聴く人も結構いると思うんですけど、今言ったようなルーツロックみたいな音楽はずっとショウタさんの中には昔からあったものなんですか?
うーん、どうだろうね…(少し考える)。
でもハードコアを聴き始めた時にはもうNeil Youngとかは普通に聴いていた気がするな。
90年代になってからだね。NIRVANAとかグランジが出てきて、Neil Youngはグランジのゴッドファーザー的な扱いだったからさ。
―彼らがルーツに挙げてたりってことですよね。確かJ.Mascis(Dinosaur Jr.)とかもNeil Youngに影響を受けたとか言ってた気もしますし。
そうそう、でもそういう意識をせずにたまたま一緒に聴いてた気もするしな・・・。
ハードコアを聴きながらもフォークミュージックを演奏することがちょいちょいあって。
―NICE VIEWより前ですか?
NICE VIEWよりも前よ。
大学に通ってた時に先輩にギターちょっと弾いてくれって頼まれてNeil YoungとかTom WaitsとかBeatlesとかストーンズとかを二人でアコースティックでやってた時があって。
だからある意味、NICE VIEWよりも先にフォークとかをやってたといえばやってた。
まだGOFISHではないけどね。その時はコピーだし。
―ハードコアと平行してそういった音楽にはずっと触れてきてたんですね。
NICE VIEWをやりながらそのままGOFISHとして活動していくのも、割と自然にというか・・・。
全然自然だったと思うよ。
―それもGOFISHを知った当時の自分にとってはかなり新鮮だったんですよね。
ハードコアのバンドをある種、卒業してから落ち着いた音楽をやる人は結構いたと思うんですけど、同時進行でNICE VIEWみたいなエクストリームな音楽をやりながら、一人で弾き語りもやってるような人って僕は知らなかったので。
今もそんなにいないんじゃないかなって思うんですけど。
うーん、当時もいなかったし、今もいないと思う(笑)
遊びでやってる人はいっぱいいると思うけど。
自分の中でやっぱ山本精一さんがでかかったかな。BOREDOMSをやりながら羅針盤とかもやって。
そういうのを見て、やっていいんだっていうのは思ったよ。
―同じようにショウタさんのそういった活動の影響を受けてる人もいっぱいいると思いますよ。
いるのかな・・・?全然実感ないけどね。
―アルバムの話に戻しますけど、今回制作に1年くらいかかったと聞いていますがどんな感じで制作されていったのでしょうか?
そうだね、とりあえず、うーん、どういう風だっけな。もう忘れちゃった(笑)
―えーと・・・、いつから録音を始めたんでしたっけ?
録音したのは去年の3月、最初の緊急事態宣言の直前だね。3月の頭だったから。
東京の七針って場所で3日間ぐらいでベーシックの演奏のレコーディングをして。
そこから色々オーバーダブとかをしながら、結局ミックスやマスタリングとかも終えて全部できたのが確か今年の2月くらいだった気がする。
―じゃあ本当に丸1年近くですね。
そうだね。緊急事態宣言とかもあったからあんまり東京に行けなくなっちゃったってのもあるけど。あと遠隔でのやり取りを俺が上手くやれなかったり。
だから中々先に進むのがゆっくりになっちゃって大分伸びちゃったかもしれないね。
―あれだけメンバーがいると集まるのも大変そうですもんね。
でもね、レコーディングで集まったのはその時(去年の3月)だけだよ。
最初にギターとベースとドラムを録音して。ピアノとかは後から入れてもらって。
ボーカルは全部演奏と一緒に一発で入れたけど。
―へー!ギターを弾きながら一緒にって事ですか?弾き語りの人とかは割とそうなんですかね?
うん、そうじゃないとやれなくて。
でも意外に演奏と一緒に歌を入れてない弾き語りの人もいっぱいいるみたい。
―今までもそういう方法で録音してたんですか?
今まで全部そう。そうじゃないとなんか上手くいかないんだよ。
俺が結構わがままなリズムで歌ってるから、演奏を録った後で歌を録音しても全然合わないのよ。
結構モタってるの、歌が。
歌を後から入れると全然上手く乗せられなくてね。
―じゃあ録音は毎回かなりライブに近い感じで録ってるんですね。すごいな・・・。
色々後から「あー、ここちょっと音程を外してるな・・・」とかめちゃめちゃ思ったりするよ。
でも完璧なものなんて無いと思ってるから。
―演奏も歌も一緒に録音ってなると何回もやれないですよね。
そうだね。でも、それなりにテイクを重ねた曲もあるよ。5,6回やった曲も確かあった気がする。
ハードコアだったら逆にボーカルは楽器と一緒に一発であんまり録らないよね。体力がもたないし音が被っちゃうし。
―今回GOFISHとしてバンドでの録音は初めてだと思うんですけど、これまでの作品と比べてどうでしたか?
新鮮だった。エンジニアの大城真君が頑張ってくれたっていうのもあるけど、すごい良い仕上がりになった。
今までGOFISHでドラム、ベース、ギター、ピアノっていうベーシックな編成でやったことって無かったから、長い時間をかけてようやくこのスタンダードな形に辿り着いたっていう感慨深さがあるっていうか。
何て言うんだろう・・・、今までずっと編成にしても変化球的な感じだったから。
―トリオの時はライブを観てても、それこそジャズみたいなバチバチした緊張感も感じましたけど、バンド編成になって良い意味で風通しが良くなったのかなっていう気はしました。
曲調も結構URCの作品みたいな曲もあるなと思いましたし。
そうね、やっぱりバンド編成になった事によって単純にドラムがあるってすごいなと思って。
リズムに身を委ねられるというか。すごい事してるよ、リズムって(笑)
―1曲目の「メメント」はショウタさんがドラムのリズムを結構注文して作っていったんでしたっけ?
この曲はこう叩いて欲しいというビジョンがあったので、メンバーに渡したデモの段階でドラムのフレーズを入れていたね。
―ああいう歌モノでドラムがビシビシ来る感じもあんまり聴いたことないなって思いました。
あれは結構ブレイクビーツを意識してて。曲調はアメリカンロックっぽいけど、ドラムはブレイクビーツっぽいような。
―収録曲のバンド編成の曲と弾き語りの曲はどのようにして分けていったのでしょうか?
Neil YoungのアルバムのHarvestとかAfter the Gold Rushとか、弾き語りとバンドサウンドが一緒になってる感じが良いなって思って、バンドの曲はバンドでイメージしてたし、弾き語りの曲は弾き語りで、って思ってたね。
曲を作った時に頭の中でドラムが聴こえてるか聴こえてないかっていう所で、その時点で多分どちらにするかもう決まってるよね。
―逆に今までは「この曲はドラムの音が欲しいな」みたいな事って無かったんですか?
いやいや、あったあった。
でも自分のバンドをやろうって言ってメンバーを集めるっていうよりは、流れに身を任せながら巡り合った人達と一緒にやってきたから。
なのでグッとくる人とか、一緒にやったらきっといいだろうなって思う人がいずれ出てきたら巡り合わせでやりたいなって思ってて。
バンドサウンドでやりたいって気持ちはずっとあったけど、あんまり自分がリーダー気質じゃないからさ。
何かこう、人を集めて何かやったりとかそういうのがすごい苦手っていうのもあって。
―でも今回あれだけの人数のメンバーにレコーディングに参加してもらうとなると、それなりにリーダーシップを執らないといけないですよね。
そうだね。でも今回のレコーディングはまずベーシックだけ作っておいて、そこからどんな音が必要か考えていくうちにどんどんメンバーが増えていった感じなんだよね。
例えば1曲目の「メメント」とかだと、とりあえずベーシックなドラム、ピアノ、ギター、ベースで作っておいて、後からエレキギターも必要だなと思って潮田(雄一)君に頼んだりとか。
最初っから全て設計図を作って持っていった感じではないし、あんまそういうことが出来る人間でもないから。
ゲストで入ってくれた人にはもうちょっとこうして欲しいって注文する時もあるし、演奏してもらってこれでオッケーってのもある。
潮田君には何か郊外の地方都市の、冴えない町に流れてる川の上で、そこで見た景色。ほんとに別にどこにでもある景色だけど、それがずっと焼き付いてる感じです、郊外の川のイメージですって伝えて。
そんなギターを弾いてくださいと言ったかな。
―今回のアルバムからシングルカットで7インチレコードのリリースもありますが、それはどういった経緯でしょうか?GOFISHって結構7インチのリリースしてますよね?
うーん、単純に「さよならを追いかけて」という曲をシングルで残したかったんだよね。
何かあるのかもね、7インチに対しての思いが。
今回もジャケットのイラストは一平ちゃん(松井一平/TEASI, MALIMPLIKI etc.)にお願いして。
―今までの7インチジャケットの多くを一平さんが手がけていますが今回もすごい良いですよね。音源も出てバンド編成のライブもようやく名古屋で観れるかなと思っていたのですが、夏に予定されていたツアーもキャンセルになってしまって残念でしたね・・・。
ツアーは一応延期という形なんでしたっけ?
まあしょうがないよね、そればっかりは。
ツアーは延期になったんだけど、12/24にバンド編成でTOKUZOでワンマンが決まってて。
―バンド編成でTOKUZOはめちゃくちゃ合いそうですね。座って観れますし。
今作を聴いて、弾き語りのライブで聴いていた曲もバンド編成になると良い意味でポップスのように聴こえるような印象も持ちました。
今回のアルバムに入ってない新曲もバンド編成だとギターを持たずに歌っていたりとか、今後フォークシンガーから良い意味でもっと自由に表現していくようになるのかなと。
多分バンドの編成の影響じゃないかな。結果的にそうなっていったんだと思う。何やっても良いじゃんって気持ちがどんどん出てきてるから。
もちろんポップスも聴いて育ってきてるし、単純に自分が吸収したものをどう表現するかは出てくるまで分からないからね。
ハンドマイクで歌ってる曲も結果そうなったっていうだけで、そういうアイデアが出てきたからそうやってるっていう。
曲ができた時に「これは王道なポップスだな」って思って。
―あの曲はそうですよね。僕も初めて弾き語りで聴いた時に、岡村ちゃん(岡村靖幸)みたいな曲だなって思って。
岡村ちゃん好きだしねー。昔だったらあの曲もボツにしてたかもしれないね、ちょっとポップスに寄りすぎてるな、みたいな。
そういうのはどんどん無くなってるから何をやっても良いと思ってる。
ただハンドマイクで歌うっていうのはね・・・ハンドマイクで歌うべき人が歌うって思いがあるから(笑)
全編ハンドマイクとかはまだ自信がない気がするな。単純に技術的に。
ピンボーカルで歌う技量はまだ持ってないなと思うし。
―ボーカルスタイルに限らず今後バンドで曲を作っていくと色々アプローチは増えそうですね。
でも一応ソロユニットだからさ、このままバンド化していく事が良いのかというせめぎ合いはちょっとあるんだよね。
―確かに名義もGOFISH BANDとかじゃなくてGOFISHのままですもんね。
GOFISH BANDっていうネーミングはあまりにもダサいでしょ(笑)
バンドって色々大変じゃん?そう考えるとソロユニットって何か都合よくやってるような気もして。
でもそれでも一緒にやってくれてる人がいるから、メンバーが面白がってやってくれてるうちはできるなと思ってる。
―少しアルバムの話から離れます。昨年の春からコロナウィルスの感染が拡がり生活も大きく変わっていく中で、最初の緊急事態宣言中にTwitterで毎日曲をアップされていましたよね?
そういった活動もこの不安定な状況から生まれたものなのかなと思いますが、去年から続く今の状況はショウタさんの音楽にどのような影響を与えていると思いますか?
どうなんだろうな・・・やっている音楽はそこまで以前とあんまり変わらないような気がする。
このコロナ禍の状況に対する気持ちを音楽に乗せようとはほぼほぼならないし。
でも、自分のアウトプットしている事に対して正直でいようって思うようになったかな。
色んな曲を作って出来たものがどんな曲でも良いじゃんって思ってる。
縛りが無く、思いついたものをどんどんやってみて自分の中でルールを作らないというか。
それがコロナウィルスが蔓延している事とどこまで関係してるかは分からないけど、単純に時間って限りがあるって事は意識し始めたかも。
今の状況がこの先も続く可能性はある訳だから、それを考えたら出し惜しみしてる場合じゃないというか。やれるだけやろうと思ってる。
Twitterに毎日曲を上げてたのは・・・そういうモードだったのかもしれないね。
あの時はライブもできなかったし、曲を作ってTwitterでアップすれば良いじゃんっていう単純な動機だったかな。
当時Twitterで「#歌つなぎ」っていうのが流行ってて、俺にはそのバトンは回って来なかったんだけど(笑)、その時に「バトンが回って来なきゃ歌わないのか、君達は」って思って(笑)
「何それ」っていう反発の気持ちも確かあった気がする。
歌いたかったらバトンが回ってこなくても歌えばいいじゃんっていうカウンターみたいな気持ちだったかもしれないね。
―自分はあの時期ってライブもできないし、ライブが無いとなると音楽的な事をほとんど何もしなくなっちゃったんですけど、その時に自分にとっての音楽ってバンドで演奏する事だったり、ライブの為に曲を作ったり練習する事だったんだなと実感したんですよね。活動のベースがライブにあるというか。
ショウタさんがああやって曲を毎日アップしてるのを見て、本当に日常的に音楽をやってるというか、日常の中に自然に音楽がある人なんだなって思いました。
まあ曲も作らない時は作らないけどね。でもライブのために曲を作ってる訳ではないかな。
あの時はたまたま世の中の状況と自分のモードが合致したのかもね。
今(2021年9月)の方が状況は悪化してる訳だし、本来ならやるべきなのは今なのかもしれないけど、今はそれがやれる気がしないし。
何か去年よりも今の方がメンタルは参ってるよ・・・。掴まるものがないというか、何を信じればいいのか分からないというか。
情報も多くて、分断も進んでいるし・・・。けど日常も進んでいくし。
大半の人にとっては自分達のような音楽の事とかどうだっていい人がほとんどだろうしさ。
―音楽を主体として生活している人には本当に今の状況は厳しいですよね・・・。
ー以前から2人は結構共通点があるんじゃないかなと個人的に思っていまして・・・。
まずCampanella君はショウタさんにどういう印象を持っていますか?
Campanella:出会った時から不思議で魅力的な人だなと思ってますね。GOFISHの音楽を聴いていても、色々話をしていても、ふと出てくる言葉が良い意味で不思議だなーと感じる時があります。
―去年リリースされたCampanellaのアルバム、「AMULUE」にショウタさんが参加していますけどその経緯を教えてもらえますか?
Campanella:アルバムの中にトラックがMockyで中納さん(中納良恵/EGO-WRAPPIN')に参加してもらってるThink Freeって曲があるんですけど、全体的なバランスを見てその曲の雰囲気をアルバムにどう生かしていこうか考えてる時に、ちょうどギターの音が自分の音楽に欲しかったって思ってた事もあって。
シンガーソングライター的な音楽も結構聴いてたりもしたし、そういった要素を作品に入れたいと考えた時に、テライさんやってくれないかなあと真っ先に思いましたね。
―Campanella君はラッパー、ショウタさんはシンガーソングライターとして、それぞれ個人として活動していますけど、共通点って感じたりします?
Campanella:お酒が好きってとこですかね(笑)
テライ:飲み友達って感じだね(笑)
―まあそういうのもあるとは思いますが…(笑)、自分が思うのは2人とも幅広い人脈があるし、ライブも色々な場所に呼ばれて多様な活動をしている印象があります。
テライ:俺はあまりシーンに興味が無いというか、そんなにシーンのど真ん中みたいなところにいた事が無いから、違うジャンルにも引っかかりやすいというのはあるかもしれない。
Campanella:自分は色々なライブとかに足を運ぶっていうのはあるかもしれないですね。
―ショウタさんも色々な所にいますよね。クラブとか。
テライ:まあ、ストレスなく楽しめる場所には行くんで・・・完全にそういう遊ぶ場所の繋がりのような気がするね。
住んでる場所が一緒っていう大前提があって、遊ぶ場所が近いっていう。
―遊ぶ感覚が近いというのはあるかもしれないですね。
2人ともメジャーレーベルで活動する訳ではなく、自分達のペースで音楽制作やライブを中心とした生活を送っていますが、それも名古屋では今まで結構珍しかったんじゃないかなと思っていまして。
それぞれ元々は別で仕事をしながら音楽をやっていたと思いますが、どのように今のライフスタイルになっていったんですか?
Campanella:単純に俺、マジで仕事できないんですよね(笑)
テライ:俺もできないんだよ・・・(笑)
一同:(笑)
―そこも共通点なんですか(笑)
Campanella:遅刻もたまにするけど・・・メモとらないとか、根本から・・・。
テライ:俺もなんだよ。何度も同じ失敗をしちゃうんだよね。
Campanella:俺もやっちゃうんですよね、ボーっとしてて、さっきミスった同じことをもう一回やっちゃって。
そういうのばっかでしたね。
テライ:マジで向いてないんだよね。上手くいった試しがない。
―今みたいに自分で生活をコントロールする方が向いてるって事ですかね?
僕の場合は逆に仕事があるから、自分の生活のペースを作れているような所もあるような気がして。
でも2人とも朝早く起きてるなーとか、結構規則正しい生活しててすごいなーとか思ったり。
テライ:ただ早く起きてるだけだけどね(笑)規則正しくとかそういうつもりもないけど。
Campanella:昔、仕事をしてた時は夜中に曲を作ってたりしましたけど、午前中とか明るい時間に音楽の制作をする方が良いかなと思いますね。夜の方が合う曲もあると思いますけど、基本的には明るい時にやる方が自分に合ってますね。
―ショウタさんは今のような生活にはどういった感じでなっていったんですか?
テライ:ほぼ流れだね。音楽でやってやるぜみたいなのは正直無いけど、何となく定職につかなくてもやっていけるんじゃないかなっていう流れができて、そのままずっと来てる。低空飛行でずっと(笑)
―メジャーデビューしてとか東京に行ってとかでもなく、そういうテンションで生きていけるっていうのも良いなと思いますけどね。
音楽をやってる若い人とかにとってもそういう選択肢があるっていうのは良いことだと思いますし。
テライ:でもそういう生活に対する努力とか何もしてないけどね、何のお手本にもならない(笑)
ヤンモ君(Campanella)はしっかりしてそうな気がするけどね。締めるところは締めるというか。
Campanella:ダラける事は自分でも分かってるんで、家事とかは先にやって・・・。
動かないとほんと動かないで、行くとこまで行くタイプっていうのを分かってるので・・・(笑)
テライ:ほんとそうなんだよ・・・。
―そういう所も似てるんですね(笑)ショウタさんも朝から音楽活動とかするんですか?
テライ:俺は結構バラバラかも。その時の気分で。
朝から曲作ったりするのが良いのは分かってるんだけど、朝早く起きると「まだこんなに時間がある」って結局ダラダラしちゃう。
Campanella:朝に曲作ると、歌詞とかに反映されすぎちゃって恥ずかしいみたいな(笑)
ポジティブバイブス出すぎてるなーって時はありますね(笑)
夜に聴くと何か違う、みたいな。
―Campanella君にはショウタさんに質問を考えてきてもらっているのですが、何か聞きたいことはありますか?
Campanella:色々考えてきたんですけど、話の中で結構出てきちゃいましたね・・・。
今はGOFISHとして活動をしてますけど、他に何かやってみたい事とかってあります?音楽に限らず。
テライ:映画は撮りたいね。でっかい夢として。
―よく観られてますもんね。昔から映画は好きなんですか?
テライ:映画は好きだね。そんなオタクみたいな感じで観漁ってる感じじゃないけど、小さい頃から映画館が好きなんだよね。中学生の時の将来の夢に映画監督になりたいって書いてたから。
Campanella:それ実現できるんじゃないですかね。そういえばゴンゾさん(村上ゴンゾ/SOSOS CLUB)も映画撮りたいって言ってましたよ(笑)
テライ:ゴンゾ君は映画音楽もやってたしね。それが上映されたのかは分からないけど・・・。
Campanella:ゴンゾさんに映画を撮りたいって話を熱くされたから、自分のPVに出てもらったんですよ(Campanella-PELNOD feat.中納良恵)。
一同:(笑)
Campanella:あの人、ちゃんと真面目に撮影したシーンを確認してましたね。
「こっちの方がええかなあ?」とか言いながら(笑)ほんとに好きなんだなと思って。
テライ:ゴンゾ君は役者とか良さそう。主役でも良いくらい・・・・。
自分が撮るならゴンゾ君が主役が良いな。ゴンゾ君が裸足で海岸を歩いてるだけでも絵になりそう。波打ち際をこう・・・それだけでも何人かは泣いてくれるんじゃないかな(笑)
ゴンゾ君はスケジュールも押さえやすいし。
一同:(笑)
―他に何か質問はありますか?
Campanella:うーん・・・。最近カレーは作ってますか?
テライ:ぼちぼち作ってるよ。最近タコスも作り始めて。この間初めて生地も作った。
小麦粉とオリーブオイルに塩をちょっと混ぜて、それを寝かせて、生地を伸ばして・・・。
具も結構スパイスを使ったりカレーに似てるところもあってね。
Campanella:それはイベントのフードとかでも食べてみたいですね。
テライ:俺も質問して良い?・・・えーっと、リリックはスマホで書いてる?
Campanella:スマホにしました。前はリリックノートにバーッと書いて消してを繰り返すうちに自分の中のフロウとかメロディができてくる感じがあったんですけど。
そこからまた清書しちゃうとレコーディングする時に何か違うなっていう事もあったり。
でも長くやってるうちにやり方も色々変えてみようと思うようになって、結局スマホになりましたね。どこでも書けますし。
あと、最近トラックを流さずに無音でリリックを書く事が多くて、そうすると、いざレコーディングする時に頭の中で思ってたBPMと実際の速さが違って「あれ?」って思ったりするんですけど、それをわざと曲に反映させても面白いかなっていう。偶発性というか。
テライ:リリックは書き溜めたりとかはしないの?
Campanella:メモしてる時もあったんですけど、やらなくなりましたね。
―ショウタさんは歌詞はノートですか?
テライ:俺は基本ノートかな。何でノートなんだろう・・・ノートが埋まっていくっていう快楽はあるかもしれない。
何冊も溜まっていくのを見て、俺、頑張ったなじゃないけど。
Campanella:良いですよね、あれ。
俺一回リリックノートのジンを作った事があったんですよ。
アルバムを作ってからリリックノートのジンも作っていって、読んでたら「あ、これあのアルバムのリリックだ」みたいなのをやりたかったんですけど、そういうのを忘れてそのまま携帯に移行しちゃいましたね。
テライ:詞は結構思いつく?
Campanella:詞は最近思いつきますね。最近は結構書くの早いかもしれないです。
テライ:俺は最近書けない。曲とかはすぐできるんだけど。ヤンモ君は言葉の量も多いじゃん?
Campanella:まあ、大抵同じようなことを言ってるんで。パターンもあるからそれを崩したいなと思ったりもしますけど。
―それではそろそろインタビューの締めに向かっていこうと思うのですが、Campanella君から何かあればお願いします。
Campanella:テライさんと一緒に曲を作りたいですね。
―良いですね。それは是非実現して欲しいです。ではショウタさんに聞きますが、今後どんな活動をしていきたいですか?
新しい作品を作りたいっていうのもあるし、今の流れを途切れさせたくない気持ちがあるけど実質途切れてるっていう・・・。
頑張ってやり取りをしながら次のアルバムに向けての動きを進めていく方向にはなってるけどね。
あと色々勉強しようかなって思ってる。
音楽の事もだけど、世の中の事とか。分からなすぎるもんな、世の中の事は。
―最後に聞きたかったことがありまして、以前Twitterだったかな?何かのインタビューかもしれないですが、ショウタさんが「GOFISHもパンクだと思ってやってる」みたいなニュアンスの事を言っていた気がするんですよ。
音楽のスタイルとしては所謂パンクでは無いとは思うのですが、その辺りの事をもう少し突っ込んで聞けますか?
えーと、それっていつ言った(笑)?繋がってるっていう所はあると思うけど。
―ハードコアバンドをやってた人が違った感じの音楽を始めた時のレビューとかに「パンク/ハードコア通過後の~」とか書いてあるのを見ると、「いや、通り過ぎないでくれよ」とか思っちゃうんですけど、GOFISHがパンクっていうのは何か嬉しかったんですよね。通過しないというか。
音楽的には全然違うって思われても仕方ないというか、実際やり始めた当初はハードコアシーンからの風当たりもあったっていう話も以前聞いた気がします。
まあ、当時のゴリゴリのハードコアシーンの人達からしたら、ハードコアやりながら弾き語りもやるとか意味分かんないって思われてもしょうがないよね。
ライブしててもその場に自分が全くハマってないんだなって気持ちになることはよくあるし。
―憶測ですけど、NICE VIEWもそういう感じだったんじゃないかなともちょっと思いますけどね。
NICE VIEWも正直どこにもハマってなかったと思うよ。パワーバイオレンスのムーヴメントが起こった時もパワーバイオレンスのバンドではなかったし、envyのSONZAIからアルバムを出したといってもエモではなかったし。
何か俺という人間がどこにもハマれないのよ。
・・・うーん、そういう事なんだけどね(笑)
でも自分の中ではハマらない事がパンクだと思ってるから。爪弾き者というか。
ハードコアシーンにいても自分の中にまず違和感がある。場所もだし、多分精神性もかもしれないけど。
ガッツリしたパンクの理念に自分の精神をハメる事ができないというか。
そういうハマらない部分に自分の本質がきっとあるんだろうし。
・・・かといってそれを別に誇りにもできないし(笑)、でもそのハマってない部分が良くも悪くも自分なんだからそれと共に生きていくしかないなって。
だからある意味成長してないのかもしれないし、はみ出したところを大事にしてるっていうか大事にせざるを得ないというか。
一生それは付き合う所だからさ、それを自分が見捨てたら自分じゃなくなってしまうから。
それが自分のパンクなのかもしれない、だからずっとパンクだって言ってるのかもしれないし。
そのはみ出した部分っていうのは音楽のジャンルじゃないからさ。
―はみ出そうとしてはみ出た人と、結果的にはみ出してしまった人って全然違いますもんね。
パンクのファッション的な部分もかっこいいとは思うけど、自分はそういう所にはいけないし、それをしたら自分じゃなくなるっていう気持ちがあるから。
だからすごい裏腹というか、パンクを否定する事がパンクというか・・・ひねくれてるのよ。
―カウンターに対するカウンターというか・・・それはNICE VIEWの時から一貫している気はしますね。
ショウタさんは音楽以外にカレーも作ってイベントで出店したりもしてますけど、店舗を出したりする予定はないんですか?
それも音楽と一緒で巡り合わせがあればやるかもしれないね。
流れのままに泳いできたんですよ、それがGOFISH(笑)
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