見出し画像

カズキック(Record Shop A-Z,Killerpass,POVLACION,SKIZOPHRENIA!)インタビュー

愛知パンクシーンを20年以上に渡り支え続けてきたRecord Shop ANSWERが2019年に閉店し、愛知のパンクスが「これからどこでパンクやハードコアのレコードを買えばいいのか・・・」と途方に暮れている最中、2020年に突如として今池に現れたのがRecord Shop A-Zでした。
店主はKillerpass,POVLACION,SKIZOPHRENIA!といったバンドで精力的に活動し、自身のライブが無い週末は日本全国どこかしらのライブハウスに出没する男、カズキ氏。

自身のバンドであるKillerpass,POVLACION,SKIZOPHRENIA!の3マンライブ(彼のドラミングを観たことがある人なら、3バンド連続でライブをする事がどれだけハードな事なのか分かるはず)、昼に東京でKillerpassでライブをしてからすぐに飛行機で沖縄に飛んで同日夜にSKIZOPHRENIA!でライブ、約2.5キロのカツカレーを完食、等、マジですか…と思える事を飄々とこなしてきた彼が去年起こしたアクションがパンクレコードショップのオープンでした。
これは自分にとっても大きなニュースで、その報せを初めて聞いた時は本当に興奮したのを覚えています。
Killerpassの林君が以前、「パンクは捧げる音楽ですからね」と言っていたのですが、彼を見ていると生半可な愛では辿り着けない場所って多分あるんだなと思います。
GAUZEとLOS CRUDOS、30代でどちらとも共演している人なんて世界にもそういないでしょう。
本インタビューでは主にRecord Shop A-Z店主としての話を聞きました。
改めてやっぱりこの人には敵いません・・・。

interview by 五味秀明


-それではまずお店の紹介をザックリで良いのでお願いします。

昨年(2020年)1月12日から名古屋市の千種区仲田(ほぼ今池)のビルの一室でRecord Shop A-Z(エートゥズィー)という名のレコード屋を始めました店主のカズキです。
国内外問わずパンク・ハードコアをメインで取り扱っています。

-読み方は「エートゥゼット」じゃなくて「エートゥズィー」でお願いしますって感じですね(笑)
ラジオじゃなくてレディオみたいな。

はい。その通りです(笑)
開店当初は、好きに読んで(呼んで)もらえればいいかーと思ってたんですが、途中から何でもいい訳ではないなーと思い始めまして…。
あ!あと『A to Z』でもありません!この場をお借りしてお伝えさせてもらいます(笑) 


-お店をオープンして一年経ちましたが今までやってきてどうですか?

コロナウィルスの蔓延もあり営業をストップしたりした期間(3月下旬から7月初旬の3ヶ月間)もあったりで当初思い描いてた一年とは異なる部分はありましたが、とにかくずっと忙しなくバタバタしていた一年でした。
最初はやはり知人や友人が主に来店してくれていたのですが、一年経ったということもあり、今では『名古屋のパンクのレコ屋』という事で色んな土地の方も来店してくれるようになり、見切り発車な開店ではあったけど店舗として開店して本当に良かったな。と日々感じています!

-カズキ君は3つのバンド(Killerpass,POVLACION,SKIZOPHRENIA!)で活動しているけど、去年はコロナの影響でライブがあまりできなくなったからレコ屋の業務を精力的にやれたっていうのは多分あるよね。

そうですね!コロナ禍で新しい趣味や楽しみを見つけたっていう人も沢山いるとは思いますが、自分の場合はそれが、まさにレコ屋業務でした。
自分が出演したライブスケジュールを久々に見返したんですが、2015年から2020年までは年間80本〜90本くらいはライブしてたので、それくらいライブがあったら今のようにレコ屋を精力的にはやれてなかったかもしれません(笑)

-毎年平均で4日に1回位ライブしてたのか…(笑)
そうなると去年は本当に生活スタイルがかなり変わったんじゃない?

そういう事になりますね…(笑)
ひたすら家で過ごしたり、ゴロゴロする休日ってのは昔から本当にニガテでして、自分のライブが無ければ全国規模で行きたいライブを探しては観に行ってたので、いわゆる自粛期間中は出かけられないことが本当に辛かったです…。
今となっては家でゴロゴロする休日の素晴らしさに気付いてしまいましたね(笑) 
あと自粛期間で12キロ太りました(笑)

-やっぱりあの激しいドラミングは相当カロリー消費してたんだね(笑)
自分がKillerpassのベースヘルプでスタジオに初めて入った時も、カズキ君はライブと全く変わらないテンションでめちゃくちゃ汗をかきながらドラムを叩いてて結構ビビった記憶があるなー。
今は空いている時間はA-Zにいる事が多いと思うけど、レコード屋をやろうと思ったキッカケがあれば教えて下さい。

あはは(笑)、あの叩き方じゃないと、ドラム叩いてる!って感じがしないんですよ(笑) 練習だからといって手は一切抜きませんよ!

A-Zを始めた一番大きなキッカケは、やはり名古屋の大須にあったパンクのレコ屋、Record Shop ANSWERが2019年5月6日に閉店したことですね。
閉店がネット上で公式発表されたタイミングでアンサーの中村さんから『カズキくん、7インチとかLPの棚欲しいかい?』と聞かれたんです。
アンサーの長い歴史をアンサーと共に過ごしてきた棚で、自室でレコードを見ることが出来たらそんな嬉しいことはないよなーと思い、『欲しいです!」と即答しました。
閉店日の少し前に棚を2基頂き自室に運び込んでから、アンサーの棚が自室にある姿を見ては悲しい気持ちと惚れ惚れする気持ちが入り混じるような感覚だったんですけど、そんな中、ふと思ったんです。『この棚を使って何かやれればいいなぁ』と。
そこから興味本位で不動産屋さんのサイトを見るようになりました。そして、アンサーが閉店。
その後、ライブで会う人から口々に聞こえてくる『これから先、PUNKのレコードはどこで買えばいいんだ』『もうPUNKのレコードを買わなくなってしまいそう…」などなど。
そんな私のまわりの人の悲しげな顔や声を見たり聞いたりしているうちに、このままでは自分の好きな場所(ライブハウス)から好きな人たちがいなくなってしまうと感じたんです。
それからは興味本位に何気なく見てた不動産屋さんのサイトを本腰入れてチェックするようになっていきました。
ある日、広さと立地、そして賃料が今の自分にでもどうにかなりそうな好条件な物件を、名古屋市内、しかも自分が暮らしているエリアの今池に発見するんです。
不動産屋さんに連絡をして実際に現地を見させてもらった晩から、気が付けばどこにどういう風に棚を置くかなどを考えてしまってました。
業者さんなどは一切使わず、仕事終わりにホームセンターへ行っては材料を調達し毎晩少しずつ作業を進め、12月頭から作業を始めて 2020年1月12日に何とかオープンさせる事が出来ました。
長くなってしまいましたが、先ほどお話した出来事と『やるしかない!』と思ったタイミングがバシッと重なりあったのがRecord Shop A-Zを始めたキッカケとなりました。
…こんな感じで大丈夫ですか?(笑)

↑Record Shop ANSWERから引き継いだ棚

-ANSWERのレコード棚は僕も譲り受けたけど、自分の部屋のスペース的にいけるのか?という不安もありつつ、あれはやっぱり「欲しいです」って言っちゃうよね(笑)
あのレコード棚は確か元々Great Rock’n’Roll Swindle(名古屋にあったパンクショップ)で使われていたものだと聞いたけど、こうして新しいレコード屋に脈々と受け継がれていくのも熱い流れだなーと思います。
ANSWERの閉店は本当に大きな出来事だったね。
どこかで聞いた話なんだけど、昔名古屋にA2Zってレコ屋があったんだっけ?しかもANSWERの隣にあったって聞いたような…。

そうです!『A2Z』っていう表記が違うけど読み方が同じレコード屋さんがANSWERの隣にあったという話を当時を知る方から聞きましたよ!
じつは色んな候補があった中で、悩みに悩んだ挙句『Record Shop A-Z』でいくぞ!と決めたんですが、決めた少し後に偶然ネット上で『A2Z』さんの存在を知ってしまったんです。
でも、むしろそんな単純明快な名前で被らんほうがムリやろ!と自分に言い聞かせて、そのまま決定しました(笑) 
表記も違うし現存していなければいいか!…と(笑)

-ANSWERの隣にあったっていうのがまた凄いよね。ある意味ドラマティックだと思うし。
カズキ君はレコ屋をやる事は勿論、レコ屋で働いた事も無かったと思うけど、どんな店にするイメージを持っていましたか?

そうですね!ドラマティックと捉えて頂ければ幸いです!(笑)
店舗として構えるからには老若男女問わず色んな方に足を運んでもらいたいし、A-Zがキッカケでパンクを好きになってくれる人や若い世代が少しでも増えて、新しいバンドとか出て来たらサイコーだよなー!とかA-Zを開店するまでは楽しいイメージばかりしてました。

-今の時代、例えばオンラインのみでの営業っていう方法もあったと思うけど、やっぱりレコード屋として店舗を持つ事にはこだわりたかった?

そうですね!ぼく自身レコード屋に行ってレコードを買うのがとにかく好きですし、好きなレコード屋の人と世間話をするのも同じくらい好きという事もあり、オンラインのみでやるという選択肢はありませんでした。

-自分もレコードを買うのと同じくらいレコード屋に行く事自体が好きなんだなと思いますね。
A-Zを見てて、前述したANSWERと四日市のNGOO(ングー。四日市のレコード屋。現在は珍庫唱片)にかなり影響を受けているように思うんだけど、この2つのお店について何か思いだったり、影響を受けたと思う所があれば教えて下さい。

おー!その2つのレコード屋さんは自分にとってかなり大きい存在なので、そう思ってもらえてすごく光栄です!
まず、入荷してるラインナップに関して言えばやはりANSWERの影響はかなり大きいです!
というのも、三重県から名古屋に引っ越してきてからは特にパンクのレコードはANSWERで買うことが多かったので、店主の中村さんから教えてもらったり、知らないバンドだけど中村さんが入荷してる音源だし聴いてみよう!ってな感じで好きなバンドも増え、知識も増えていきました。
自分的には、あくまで『これだ!!』と思うものを入荷しているだけなのですが、ANSWERを通じて好きになったものが沢山あるからこそ自然とそれが出ているんだと思います。

NGOOに関しては、高校生の頃に店主の安田さんと知り合ったんですが、その頃はいつ行ってもやっていない(笑)、変則的なレコード屋っていうイメージだったし、「居酒屋 優」という名義で営業してた頃は基本的に夜の営業だったし、他のレコード屋さんでは考えられないようなことを天然でやってるというか、とにかくめちゃくちゃな人だなと(笑)
MILKのBRICKSのリリースをキッカケにA-Z Recordsというレーベルを始めたのですが、コロナ禍でレコ発ライブをすることも出来ないけど何かやりたい。やらないと気が済まない。ってことで、発売日にRecord Shop A-Z 24時間営業をしました。
今改めて考えると意味不明な企画をしたなーと我ながら思うんですが(笑)、24時間営業を思い付いた時に頭の中にチラついたのが実は安田さんの顔でした。
あの安田さんもさすがに24時間営業はやってないだろう!…じゃあやるか。みたいな(笑) 

安田さんは、他人からすれば『そんな事やる意味あるの?』と思われそうな事をいつも熱量一杯にやってる人っていう風にぼくの目には映っています。
そして、それってめちゃくちゃカッコいいなと思うんです。やはり安田さんの生き方には、かなり影響を受けてると思います。

↑珍庫唱片のホームページ。
安田さんは四日市最重要バンドの一つ、ANTONIO THREEのベーシストでもあります。
僕は安田さんの独特な視点で書かれたレビューが大好きです。

-ANSWERも中村さんの視点でパンクの中でも幅広いジャンルをカバーしてたけどA-Zもそんな感じがするし、ANSWERに通ってたら中南米のハードコアを好きになっちゃうよねー。

そうですね!ANSWERに通ってなかったら中南米のハードコアは、こんなにも好きになってなかったかもしれません!
五味さんと僕のこのやりとりを読んだ方で中南米のハードコアっていったいなんなんだ?みたいに思ってくれる方が1人でもいれば良いなと思います。

-安田さんは営業中に店内の床に突っ伏して寝てたっていう伝説を聞いた事があります(笑)
あと去年の一時期、閉店後に店内にテントを張って寝てたって言ってたような(笑)

あはは(笑)安田さんがどういう理由で寝てたか分かりませんが、気持ちはすごく分かります…。
というのも、2020年の大晦日の夜から年越し営業ってのをやったんですが、マジで来客がなかったので、じつは店内にブルーシートを敷いて寝たことがあるんですよ。
好きな物に囲まれた自分の部屋のような感覚なので床は硬いけど寝心地がすごく良くって…。
ちなみに、誰にも目撃されることなく朝を迎えました(笑)

-やはり安田さんの血を受け継いでいますね…(笑)レーベルの話が出たけど、レーベルもずっと構想があったのかな?
個人的にANSWERもそうだし、BASEのMANGROVEやPUNK AND DESTROYのMOUSEとかレコード屋の人がやっているレーベルは幅広くかっこいいリリースが多い気がします。

レーベルの構想は2014年からあったんですが、ただ漠然と『MILKの音源をリリースする時にレーベルを始める!』ってだけで、まさかレコ屋を始めた後のタイミングでレーベルを始動できるとは自分自身思ってもいませんでした!

-MILKをリリースしようと思ったキッカケとかはありますか?カズキ君にとってMILKはどんなバンドでしょうか?

県外や国外に行ったタイミングで『地元にいるカッコいいバンドは?』という会話をする場面が頻繁にあったんですが、数年前からずっと『MILK』と言い続けていました。
これはあくまで私観ですが現行の愛知県のパンクで今、絶対にチェックすべきバンドはMILKだと思ってますし、(ぼくの中で)一番カッコいい愛知県のバンドもMILKだと断言できるほど、ぼくにとって本当に大好きなバンドです。サウンドは勿論のことメンバー全員の人柄もルックスも全てにおいてここまで好きになれたバンドはいないかもしれません。とにかく本当に最高なバンドだと思います。

2014年にSummer Of FanからMILKの『MY E.P.』がリリースされる話を聞いた時に『先を越された…』という悔しさもありましたが、それまでのSOFリリースタイトルからはMILKをリリースするのが意外に感じたのもあり、『この人たち、ほんまにMILK好きなんかよ』と思ったんです(笑) 
そして、その時に決めたんです。『MILKの音源をリリースする時にレーベルを始めよう』と。しかし、お金もタイミングもなくレーベルを始動させる日はなかなか来ませんでした。
そんなMILKが2019年4月に初のアメリカツアーに行く事が決定し、ツアーに行くのをキッカケにアメリカのレーベル(HYSTERIA)から7インチをリリースするかもという話をボーカルの松原君から聞きます。
『最高じゃーん!』なんて言いながら聞いてたんですが、結局アメリカツアーのタイミングでレコードがリリースされる事はありませんでした。
気付けば2020年になり、ツアーの時にはリリース出来なかったけどHYSTERIAから7インチをリリースする話を改めて進めているという話を聞きます。
詳しく内容を聞いてみるとプレス枚数は300枚予定とのこと。
今のMILKがリリースする音源って絶対に最高だし、日本国内に入ってきたとしても即入手困難・即レア盤扱いになるだろうと思いました。
産み落とされた素晴らしい音源が、活動している国や地域で欲しいのに買えなくなってしまってる状況を今までにいくつも見てきたというのと、プレス枚数を増やして日本国内にも流通できるくらい作ったとしても海外からの送料が高いので必然的に売値が高くなってしまうということもあり、そこで日本国内版のリリースをさせて欲しいという話を持ちかけました。
HYSTERIAからは、すんなりオッケー!という事もなく(笑)ボーカルの松原君がA-Z Recordsからリリースすることは本当に重要なことなんだ!と熱弁してくれたからこそリリースすることができました。
すっかり長くなってしまいましたが、これがMILKをリリースしたキッカケとなるエピソードです!

↑店内に並べられたMILKのレコード。

-なるほど、『MY E.P.』の時からMILKに惚れ込んでたんですね。
MILKの魅力って具体的にどんなところでしょうか?

MILKの楽曲を聞いたり、ライブを見たりする度に、負けてられへんなー!って毎回のように思わされます。とにかく刺激をいつも与えてくれるところがぼくにとってのMILKの魅力なんだと思います。

-シンプルなのにガツンと来るっていう今まで名古屋にいそうでいなかったタイプのバンドだよね。
レーベルとしてはどんなレーベルにしていきたいかイメージはあったりしますか?

リリースのペースはゆっくりでもいいので、とにかく自分がこれだ!と思うものを愛情込めてリリースしていきたいと思ってます。
もちろん愛知県のバンドだけではなく、サウンドのスタイルも国も関係なくリリースしていこうと思ってます!

-A-Zで取り扱っているラインナップのようなレーベルになりそうだね、今後のリリースも楽しみにしています!

そうですね!ありがとうございます!自分の選球眼を信じてこれからもやっていこうと思います!

-ではレコード屋についての話に戻すけど、最近レコードブームなんて言葉もたまに耳にするけど実感する事はありますか?
お店には若いお客さんも来たりする?

扱ってるタイトルが原因なのかレコードブームを実感することは残念ながらありません…(笑)
自分がレコード屋さんに行き始めたのが高校生の頃だったのですが、今のところ高校生の来客はないですね…ただ20歳〜25歳くらいの年齢層のお客さんは数人ですが来てくれたりしてますよ!

-今の高校生でレコード聴く人ってどれくらいいるのかな…?
自分が高校生の時は割とパンクのレコードとかは新品でも買いやすい値段だったりしたけど、今は大人じゃないとなかなか手が出ない金額のような気もするしサブスクとかもあるもんね。
自分が高校生の時はとにかくたくさん音楽を聴きたかったから、当時サブスクがあったらレコードを聴いてなかったかもしれないなとも思ったり。
カズキ君はサブスクだったりデータで音楽を聴く事についてはどう捉えていますか?

高校生がレコードを買いに来るって話は知り合いのレコード屋さんから聞いたことがあるのでいるにはいるんでしょうけど、それってかなり珍しいかもしれませんね。

サブスクやデータで音楽を聴くことに対しては、どちらかといえば反対意見でした。
特にパンクのバンドはジャケットをシルクスクリーンで手刷りしてたり、手書きでナンバリングしてあったりと、手が込んでる作品が多いように思うので、バンドやレーベルの苦労や想いはデータなんかでは伝わらないでしょって。
でもA-Zで取り扱ってるタイトル(特に現行の海外のバンド)もサブスクで聴けるやつが割とあるってことを知りまして、『これならサブスクでも聴けるよ!』ってお店に来てくれた方にバンドやレコードを紹介する為と、『サブスクとはなんぞや?』という好奇心から半年くらい前からspotifyユーザーになりました。
本当に色々聴けるんですね。びっくりしました(笑) 
これは実体験としてあった事なのですが、自分より若い人が『そんなんどこで知ったん?』て思うような音楽をサブスクをキッカケにして知っていたりもしましたし、海外の方から『どんなバンドやってるの?バンドの名前は?』と質問された時に、その場ですぐに聴いてもらう事ができたり(おまけに気に入ってくれた)。
っていう感じで老若男女・国籍問わず音楽の話をする一つの手段になっていて、今となってはとても良いサービスだと思ってます。
まぁレコード屋の店主としては、サブスクも良いけどレコードで買うと、もっと最高だよ!ていう姿勢は絶対に曲げられない部分ですが(笑)

-自分もサブスクを利用してるけど試聴ツールって感じもあるかな。特にパンクやハードコアだと本当に気に入った音源はどうしても物で欲しくなっちゃうし。
最近、日本のパンクシーンに若者があまりいないって話もよく聞くけどそれについてはどう思いますか?
アメリカのハードコアのライブ映像なんかを観てると新しい若いバンドも次々と出てくるし、お客さんも若そうな人達がガンガン暴れてるような印象もあったりするんだけど、カズキ君はバンドで海外ツアーにもよく行ってますが海外と日本のシーンの違いとかって何か感じたりしますか?

若者が少ないって事に関しては、今って数年前よりも遊ぶ選択肢が多くて、例えば家に居たって映画好きな人は家でいっぱい観れるし、一昔前よりも家で一人で遊べるっていうのも若者がパンクのライブとかに居ないっていう事と多少繋がってるのかなって思ったりするんですけど、居る所には居るんですよね。
身近な所でいうと、LOW VISIONとかMILKが出た時にZIONに久々に行ったんですけど、普段の自分達のライブではあまり見かけないような若い人達が暴れてて、まだ若い人達も結構いるんだなーってその時思ったんですよね。
この店のお客さんにもZIONでよくライブをやってる、僕よりもちょっと若い子がいるんですけど、その子に「ZIONって若い人達が多いイメージがあるんだけど何で?」って聞いたんですよ。
そしたら「元々別に音楽とか好きじゃない友達をめっちゃ誘ってる」って言ってて、何ならそれで結構ライブが好きになってその後も結構遊びに来てくれる事もあるみたいなんですよね。
海外に行った時もパンクとかおそらく普段そんな聴いてなさそうな人が暴れてる光景とかを結構観てて、「なんだお前ら、日本から来たのか!かっこええなー!」みたいな感じで話しかけられたりとかもあったり。
海外の人達にとってライブハウスとかバーとか、ライブをやっているような場所が普通に遊びに行く選択肢として入れられてるからこそ、そういった事も起こるのかなと思いました。
海外に行った時に日本と違いを感じたのも、パンクがめちゃ好きな人がライブハウスにいるってだけじゃなくて、友達に誘われたからとか友達がライブに出てるからっていう理由で来てる人も多くて素敵な事やなーと思ってたんですけど、自分の周りは割とみんなやってる音楽に自信を持ってるのに、友達に観られるのは恥ずかしいとか、僕も昼間働いてる職場の人にバンドの事を言うのとか以ての外ですけど、ZIONの話とか聞いてると気楽に誘ってくれるような人がいるっていうのは、若い人が来てくれるキッカケに繋がっていたりもするのかなと思いました。

-自分も昔は結構友達をライブに誘ってみたりとかもしたけど、あんまりその友達にはそのライブがハマらなくてちょっと気まずいみたいな経験もあったりして、どうしてもどんどん誘いづらくなるっていうのはあるんだよね。ライブに来てもらうにはチケット代を払ってもらうわけだし、そのライブはちょっと変わった音楽をやってる場であったりするし。
変に気を遣ったりもするから、最近は面倒くさくてそういう事もあまりやらなくなっちゃったな。

自分は今こうやってレコード屋を始めたので、音源は買うけどライブはあまり行かないような人を巻き込めたらよいなと思います。僕はクラブとかあんまり行かないですけど、SNSとか見てるとお酒を飲んで大きい音を聴いて遊ぶ場所として、ライブハウスよりもクラブに行く方を選択をしてる若い人が今は多いのかなって気はしますね。

-クラブとライブハウスは楽しみ方も違ったりするしね。自分は割とどちらも楽しめるけど、DEATHRO君はやっぱりクラブのパーティーよりもライブハウスでライブを観る方が好きだって言ってました(笑)
ではまたレコード屋の方の話に戻します。入荷する商品はどのようにして選んでますか?

海外のバンドに関しては新しいバンドはBandcampとかを細かくチェックして、この店に入荷してるレコードはとにかく何回も聴いてから入荷してます。
自分自身もコレクターなので、まずは自分が欲しいなと思うものを選んでいますね!

-国内ではA-Zでしか買えないレコードも結構あると思うけど、そういった音源はどうやって見つけてきたりするんですか?

レコード屋を本業としている方達にはやはり入荷のスピードとか敵わないし、まめにリリースをチェックしたりもできないんですけど(カズキ君は本業の仕事を終えた後にレコード屋の業務を行っており、そういった理由で平日の営業時間が20時頃~24時頃となっている)、自分の店の特色として南米のパンクとかが豊富だったり、勿論再発音源も良い物はたくさんあるんですけど、今の時代を生きている現行のバンドに魅力を感じているので、他のお店が入れないだろうという音源をがんばって探していますね。
バンドのメンバーに直接コンタクトを取って入荷したりは結構しています。大きいレーベルやディストリビューターからまとめて入荷した方が楽ではあるんですけど、入荷のやり取りをする流れって大きいレーベルも個人もそんなに変わらないので。

-そういう事ができるのも、カズキ君がバンドで海外ツアーをしてできた繋がりが大きいかもね。

海外に行った時の話をすると、僕はそんなに英語が喋れないですけど、どんなバンドが好きかとかそういった簡単な話が多いので、その時に超ローカルな知らないバンドの名前が出てきて聞いてみると「●●ってバンドをやってた○○が始めた新しいバンドだよ」みたいな情報が入ってきたりするんですよね。
それを頭の片隅で覚えてて、ちょうど昨日やり取りが終わって発送してもらうレコードも、アメリカで会ったコロンビアのパンクスに「コロンビアで今かっこいいバンドって何?」って聞いたら「INFRAってバンドがかっこいいよ」って教えてくれたんですけど、そのレコードは多分他のお店には入らないだろうなと踏んでましてゴリ推しする予定です(笑)

-PUNK AND DESTROYのサザナミさんも扱ってるレコードのコメントに海外で実際にライブを観たエピソードをちょくちょく挟んでるけど、あれも何か説得力あるように感じるし(笑)、直接シーンに入っていったり、現地の人から生の声を聞くのは大きいだろうね。
ではA-Z的にオススメのレコードの紹介をお願いします。

・RATA NEGRA/Una Vida Vulgar。
スペインのマドリードの女性ボーカルのバンドで、今までの音源でも少しずつ音楽性は変わってきていたんですけど、この最新アルバムで一つの完成形に到達したんじゃないかなと。
メロディックパンクとか好きな人もいけると思いますし、色々な人を巻き込めるようなポップさや哀愁感もあって本当にかっこいいです。

・SALVAJE PUNK/Demo 2020
2020年にリリースされたブルックリンの新しいバンドのカセットテープです。
このバンドを知ったキッカケっていうのが、RATA NEGRAもリリースしているLa Vida Es Un MusのHPに今後の入荷予定っていうぺージがあるんですけど、レーベルオーナーのPacoはすごい情報が早い人なのでよく参考にしていまして、このバンドもそこに載ってたんですよね。
検索してみるとYouTubeにメンバーが曲をアップしていて、聴いたらめちゃかっこよかったので、概要欄に載っていた連絡先からメンバーに直接コンタクトを取ったんですけど、大分ノンビリした人で1月末からやり取りしてたんですが、5月末に突然届きました(笑)
来日もしたSUBVERSIVE RITEとかQUESTIONっていうバンドをやってるJoe Bっていう人や、来日予定もあったWARTHOGのメンバーなどが集結して組んだバンドです。
サウンド的にはEXTREME NOISE TERRORみたいな感じというか、正直新しい音楽ではないかもしれないですけど、めちゃくちゃライブを観てみたいと思わせてくれるバンドでA-Z的にオススメ音源です!

-ありがとうございます。どちらもA-Zって感じがするチョイスですね。
カズキ君は出会った時からずっとパンクに夢中なイメージがあるんですけど、カズキ君にとってパンクの魅力ってどういう所ですかね?

パンクをメインに扱っているレコード屋としてこういう回答はアホかと思うかもしれないですけど、やっぱ聴いててスカッとするんですよね(笑)
こういううるさい音楽を聴き始めた時は、そういった音楽の中でもジャンル分けがあって色々と聴いてきたつもりではあったんですけど、聴いていくうちに本当に好きな物が自分の中で決まってきたような気がします。
スカッとするっていうのも歌詞の内容も含めてなんですけど、訴えかけてくるようなメッセージがあるバンドが多い音楽だと思いますし、音の耳触り的にも総じてスカッとするんですよね。
あと、昔ライブハウスに全然知り合いが居ない時に、鋲ジャンを着た人達がいっぱいいるようなライブって何か怖かったんですけど、でも実際バンドをやりだしてそういう人とも関わるようになると人の温かみを感じる瞬間も多くて。
他の音楽に興味が向かないくらいパンクが好きなんでしょうね。

-スカッとするような音楽的な良さもあるけど、パンクのカルチャー的な面も含めて夢中になってる感じなのかな。
・・・まあ、そうじゃなきゃこんなレコード屋やらないよね(笑)

そうですね(笑)

-それではレコード屋として今後の展望があれば教えてください。

店をオープンさせて1年半くらいですけど、日本にはまだまだパンクが好きな人でこの店を知らない人は絶対いるので、時間がかかってもそういう人達に認知されたいですね。
バンドとかで県外や国外に行った時に僕が名古屋に住んでるって話をすると、名古屋といえばANSWERみたいな感じで、やっぱりANSWERってすごい認知されているんだなと実感する事も多かったので、考えたり工夫しながらまず色々な人に知ってもらえるようにやっていきたいです。
とはいえ、店の規模を大きくしたいとかは無いですし、自分が欲しいと思わない音源を入れるような事とかはせずに、小さいスペースですけどそういった所はブレずにやっていきたいですね。

-あとレーベルもあるしね。

そうですね、今度パナマのバンドを出しますよ。

-そうなんだ(笑)、やばいねー。

こないだリリースしたPÖLSのようには売れないと思いますけど(笑)
だいぶ物好きなリリースにはなりますが、自分がこれだ!と思ったものはリリースしていきたいですね!

-そろそろ締めようと思うのですが何か一言お願いします。

この店をオープンして2か月でコロナ禍になってしまったので、自分が思い描いていた感じとちょっと違った営業になってしまったり、V.A/POSTPONED PLEASURE(2020年に来予定だったが実現できなかったバンドを集めたコンピレーションCD)に収録されていたバンドも本来ならみんなこの店に来ていただろうなと思ったり・・・。
こういうご時世でも来てくれるお客さんがいるのは本当に有難い事ですが、コロナが無かったらどういう風に店をやっていたのかなとか思ってしまう時はあります・・・。
とはいえ数年で辞めるつもりはさらさら無いですし、こういうタイミングで店を始めたので、今だからできる事もあるし、長く続けるつもりでやっていますので、今こういう時代だからなかなか来れないという人もいつでも来れるタイミングで店に来て欲しいですね!

-最後に名古屋のオススメグルメの紹介をしてもらいました。

名古屋に住み始めてもうすぐ8年経つのでそれなりに名古屋のお店にも詳しくなったんですが…やはり伏見の『ラーメン大』ですね。

三重県の実家から名古屋の学校に通ってた頃は最低でも週に2、3回(しかも学校に行く前に食べて学校帰りにも行く日もあったので6食ラーメン大を食べる時もありました笑)は行ってて、最近は行く頻度は減りましたがなんだかんだ10年以上通ってます。

いわゆる二郎系ラーメンなのですが味もやり方もずっとブレずにやってて本当に大好きなお店です。

オススメは『大盛り豚入りラーメンの全マシマシ』

↑写真右側が『大盛り豚入りラーメンの全マシマシ』、左側は普通盛り
ラーメン大 名古屋店
愛知県名古屋市中区錦2-9-6 名和丸の内ビル1F

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?