正しいクラウドファンディング:バーチャロンの再生
何かと話題のクラウドファンディング(以下クラファン)。
なんとなく「こんな社会貢献するから支援して!返礼品は手作りの何かだよ!」のように社会貢献が主目的でなければならないイメージを持ちがちです(少なくとも私は持ってました)。社会貢献に対して金銭をかけてもいいという価値観は全ての人が持っているわけではなく、それが敷居となってクラファン自体から遠ざかる人も少なからずいると思います(そしてその考えは否定されるものではありません)
しかし、クラファンは社会貢献に向けたものだけではなく、シンプルな資金調達やニッチ向けガジェットの受注販売も多くあります。
その中で一番アツいもの。それが株式会社タニタによるバーチャロンのツインスティックです!
タニタの名前は皆さんもご存知でしょう。体重計、体組成計を始めとした健康用計測機器がメイン商品のメーカーです。
では「電脳戦機バーチャロン」はご存知でしょうか?
バーチャロンは1995年にゲームセンターに登場したロボット対戦ゲーム。
その登場は衝撃的でした。
3DCGの世界でロボットを2つの操縦桿で操縦し、戦う。
建物に隠れて身を隠し、隙を突いて飛び出し、攻撃する。そんなアニメの中でしか見られなかった戦闘を、コックピットにいるかのように自分の手で作り上げることができる。そんなロボット好き少年の夢を具現化したゲーム。まさに「できないことが、できるって、最高だ。」の世界でした(メーカー違うけど)
当時はまだPlay Stationとセガサターンが発売された翌年。ポリゴンの凄さにまだ驚いていたタイミングで、操縦桿によって生まれた"ロボットを操縦している"感覚。今思えばヘッドセットもなくポリゴンもまだまだ荒かったものの、その体験は間違いなくVRの体験でした。
98年に出た次作「電脳戦機バーチャロン オラトリオタングラム」では、専用の筐体が各地のゲームセンターに登場(前作から専用筐体はありましたが数は多くなかったように記憶しています)。コックピットに乗り込む体験が加わり、没入は更に加速します。個人的には乗り込んで100円玉を入れ機体を選んだ後のロード画面で、座席の位置を調整するのがロボットの出撃準備感が強くて好きでした。
そして2001年、ガンダム連ジ〜VS系の流行りを受け2対2対戦の「電脳戦機バーチャロン フォース」が登場。カードを作って自分の戦績と機体を登録、写真左の司令部みたいな機械で時々新機体をもらえる。私このゲームの時は高校生でお金に余裕が出てきていて一番プレイししたかもしれません。ゲームセンターで1対2で戦っている知らない人に「入っていいですか?」と声をかけるハードルはめちゃめちゃに高かったのを覚えています。。
その後もフォースをベースにした家庭用版の「電脳戦機バーチャロン マーズ」も出ましたが、それ以降、10年以上に渡りシリーズ展開の音沙汰はありませんでした。途中、プラモデルの発売で「もしや!?」と期待してもゲームの話は出てこない。好きな作品がもう終わってしまったかもしれない。もちろん終了の宣言もなく、ただゆっくりとした失望感が広がっていくのでした。
しかし今年。完全新作ゲームとして復活を遂げたのです。
「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」。「とある魔術の禁書目録(インデックス)」とのコラボレーション。おそらくバーチャロン単体では商用化の決断は降りなかったのでしょう。新作が出たこと自体が奇跡であり、そのために考え出されたウルトラCの企画だと思います。迷いや戸惑いはなく、ただただ圧倒的な感謝。それしかありませんでした。
ただ、1つ問題がありました。
バーチャロンの一番の特徴の1つである2本の操縦桿。しかし家庭用ゲームとして発売されるため、操作は通常のコントローラーで行うことになります。過去作の移植の際はツインスティックコントローラーも同時に提供していたのですが、今作ではツインスティックを発売しないことが発表されました。
ゲーム発売自体が奇跡のような作品。更にコントローラー実機を製造し流通させるのにはハードルが高すぎる。誰がどう見ても納得するしか出来ない理由。どうすることもできないのかーー
そこで1人、立ち上がった人物がいます。
それが株式会社タニタ代表取締役社長、谷田千里氏。
谷田社長はセガ製品、バーチャロン好きとして有名でTwitterきっかけでセガとタニタで対戦会が開かれたことも↓
「株式会社タニタでは、2018年2月15日に発売されたPS4用ソフト「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」に対応するツインスティックを開発いたします。」
その想いと経緯、なぜタニタがやるのかはタニタのホームページに記されています。
ただ社長が好きだからだけでなく「ものづくりの心意気」「日本の製造業も活性化」を考えての行動、プロジェクトであると。そしてその方法にはクラウドファンディングが用いられました。果たしてどれくらいの人がツインスティックを欲するのかわからないため、賢明な判断であったと思います。
新規開発されるツインスティックを手に入れるために必要な支援金は55,400円。リターンはツインスティックコントローラーのみ。
5万円が小さくない金額であることは明白です。コントローラーに5万は高いな、と感じる人もいるでしょう。
ただ、このままではバーチャロンに次は無いのです。これが最後かもしれない。奇跡の復活は二度も起きない。その一度きりのために、他で得られない体験のために必要な金額に、高いかどうか等どれほどの意味があるでしょうか?
このプロジェクトはAll-or-Nothing方式。目標金額分が集まらないと開発・製造は為されません。目標台数5000台。目標金額は2億7700万円。これはCampfireの中でも最高額。この支援を7月中に集めなければこの世に新しいツインスティックは登場しません。
支援には、支援しやすい3,000円のタニタコーヒープランから企業向けの協賛枠もあります。成立しなければ支払いは発生しません。成立すれば奇跡の一員、成立しなくても損は無し。
興味を持っていただけたなら、支援に参加していただけると幸いです。
愛されたコンテンツを消さないために。