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バイオティクス

近年、免疫を高めて、自分の力で自分を守ろうという流れがじわじわと浸透し、その一躍をになっている発酵食品も改めて脚光を浴びている。

発酵食品による免疫賦活に関してはこの一年内に始まったことではなく、数年前、乳酸菌で自己免疫を活性化させるという謳い文句で食品メーカーの製品がマスメディアを賑わしたのは記憶に新しい。

そんな風に乳酸菌が持てはやされる時代になったのだが、今や、食品メーカーの製品に飽き足りず、自分自身で発酵食品を作りだす人々もいるらしいとか。ヨーグルトや味噌、ザワークラウトならまだしも、麹から作りだす強者もいるとかいないとか。手前味噌どころじゃない。

さて、世の中にはバイオティクスという言葉が存在する。

プレバイオティクスとプロバイオティクス、シンバイオティクスである。これらは所謂、人の体に良い影響を与えるもので、一番最初に提唱されたのが確かプロバイオティクス。これは生きた有用菌である。そう、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌等々のことを指し、最近では酪酸菌なんかも話題になりつつある。

その次に言われ始めたのがプレバイオティクス。実は腸内細菌が体に良い影響を与えているという事が研究で明らかになり、ほなそいつらを増やしたらええやんということで、そいう言った有用菌を増やす目的で積極的に摂取されるべき物質がプレバイオティクスと呼ばれ、食物繊維やペプチドである。

シンバイオティクスはプレバイオティクスとプロバイオティクスの両方を一緒に取れる製品のことを指すらしい。

この三つのバイオティクスがこれまで、業界(?)をリードしてきたらしいのだが、ここで新しいバイオティクスが脚光を浴びているらしい。

ポストバイオティクスである。なんやねんポストバイオティクスとは。これは、有用菌の代謝産物のこと、つまりウ○チみたいなものを指すと言われていたが、その後、殺菌体や有用菌の表面に出ている菌体成分のことも含んでいるようで、最近では雨後の筍のように色んなものがポストバイオティクスの名を冠しているようだ。

なので、メーカーによっては殺菌体をポストバイオティクスと呼んだり、代謝産物、酪酸や菌体外多糖(有用菌が出す糖がつながったもの)のことをポストバイオティクスとしたりと、あまり明確な定義がされないまま使われている。

そこで見かねた国際団体(INTERNATIONAL SCIENTIFIC ASSOCIATION FOR PROBIOTICS AND PREBIOTICS)が2019年にポストバイオティクスという言葉を改めて議論し、直近のNatureにポストバイオティクスの定義をレビューとして投稿した。

”ポストバイオティクスとはヒトに有用な効果を示す殺菌体あるいは不活化された菌、もしくは菌体を構成する成分とする。”

ここで追記があり”菌体の代謝でできる物質、アミノ酸や短鎖脂肪酸、抗生物質等はポストバイオティクスと呼ぶのではなく化合物名で呼ぶこと。”

つまり、免疫賦活が期待される酪酸や菌体外多糖は物質名で読んでねーと言うことなのである。そう言った菌代謝産物をポストバイオティクスとして商品展開していたメーカーにとっては今回の再定義は痛手となるんじゃないかな。下記にURLを添付するので興味があれば参考にされたし。

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/isaf-igo050521.php

ちなみにポストバイオティクスという言葉は耳馴染みがないが、昔から同じような意味合いでバイオジェニックスという言葉が使われており、これは日本の菌研究の第一人者である光岡氏が提唱していた。バイオジェニックスは菌代謝物や殺菌体など、直接、もしくは腸内フローラを介して、免疫賦活や、コレステロール低下作用など人体に有用な効果を示す食品成分とされていた。

今回このバイオジェニックスから殺菌体や菌体成分のみを独立させたようなものがポストバイオティクスなのであろう。

いずれにせよ、この先行き不透明な時代に新しいバイオティクスが誕生したのは、菌研究の世界においていいニュースである。

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