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漂舶の初読が衝撃すぎて海神を読み返した

初読の時は斡由に対する尚隆の想いが衝撃of衝撃すぎて正直何も覚えてないんですけど(え?)海神を読み返しての漂舶をもう一度冷静に読むとこの短編、改めてヤバい。
あと、初読の後に三官吏で尚隆の下に残ってるのは朱衡しかいないと聞いてそれもめちゃくちゃダメージ受けてるんですけど たしかによくよく思い返せばアニメ版も陽子は朱衡しか会ってないわと思って「ひぇ〜」となった。
えなんでどこに行ったんですかみなさん嫌です船降りないでくださいって感じで、しかも私は漂舶を初めて読んでいままでの尚隆から斡由の気持ちも分からなかったような小童なので帷湍と成笙……もしや謀反……???と戦々恐々でグルグルしました。 が、ガイドブックp174で

「ここしか帰る場所はないんですから」

「だといいがな」
帷湍が吐き捨てると、朱衡はおや、と書面から顔を上げた
「あなたには玄英宮より他に帰る場所があったのか」
は、と瞬いた帷湍に、朱衡は笑う
「それは羨ましい。帷湍よりずっと年若のわたしでさえ、ここより他に帰る場所はないというのに。なかなか隅に置ませんね」
「いや、それは」

を読んでウワ〜〜〜!?これは!?!?帷湍はもしかして仙籍返上したりして!?その相手とよろしくやって死んでいきました!?とかなんか謀反ではなさそうな空気が読み取れたのでよかった。ここの三官吏が謀反起こしてたら、私、月影影海の上巻より人間不信になる
少し話逸れるんですけど朱衡の一人称が「わたし」なのめちゃくちゃ好きなんですよね漢字でもないただの「わたし」
というか見た目帷湍より若いんですね(?)  はぁ〜朱衡尊い 終始底が読めずニコニコしているところ、刺さる。大好き 当方、利広推しなんです(バレる性癖)

あと初読の時は余裕なさすぎてこれも触れなかったんですけど『漂舶』ってヤバない?漂う舶????誰ですかこの題名考えたの 朱衡ですか? 天才。
最後に大きな舶みたいなもんやろ〜って朱衡が話してて、その辺もなんか凄く延の脆さとか色々闇が垣間見えるのがすごい。500年も続いている大国で、延主従もめちゃ仲良しで、麾下も有能な人ばっかりで、それなのになんでこんなに危ういんだろう ドミノ倒しをしているような危うさが凄い 側から見れば豊かで、尚隆も人格者でそういうものとは無縁な国っぽいのに帰山とか漂舶とか読むたびに「ヤッ……ヤベ〜奴じゃん……」ってなるの、なんというか 胃の中に少しずつ石詰められて心の隅が針でチクチクされてる感覚(言語化能力の低さよ)
こういうものを摂取し続けると延から浮かび上がることが出来なくなるんでしょうね

あとここで話したいのは尚隆の「なるほどな……」ガイドブックp165 について。
尚隆はここで自分と斡由の違いについて一つ、納得したということなのだろうけど、これって"斡由と尚隆は全くの異質だ"という「なるほどな……」というよりも、私にはどうにも"結局、斡由と尚隆の間に変わりはなかった"に対しての「なるほどな……」だと思うんですけど誰かの意見がとても聞きたい。
ここは蓬莱と常世、両者で生まれ、そしてある一定の同じ条件を対に共にした六太と更夜、そして尚隆と斡由の対比で、尚隆自身は自分を(ガイドブックp164)

「事実上、父親を殺して厄災を乗り切り、民を生かした斡由と、罪人になることを恐れて父親を生かし、民を死なせたそいつと、果たしてどちらがマシだったのだろうな」

って捉えてるわけで。
斡由が美名を貫くことができたのならもしかしたら王は自分ではなく斡由だったかもしれない。たまたま自分が王位についていたから斡由が選ばれなかっただけかもしれない、って考えてることを踏まえると
尚隆の言う「なるほどな……」って、その前の湘玉の「そうでなくても、斡由には何かが欠けていたのよ。」って言葉に関しての答えが尚隆の中で一つ出たってことだと思うから。
で、私が考えるに尚隆の中での自らと斡由の違いって"状況"だけだったんじゃないかなって思うんですよ。
多分尚隆が斡由と同じ立場に置かれたとして、父親が梟王の言いなりになっていて民を虐げ始めたらきっと尚隆も父親をなんとかしてしまうと私は思ってて、それは多分尚隆自身も自覚があって、それって華胥から痛いほど学んだし。
正しいこと、人のためにすること、がいつでも正しくて人のためになるとは限らないじゃないですか。その自我というか自らの信念みたいなものが尚隆にはあるから、だから斡由の状況で尚隆は斡由と同じことをしてしまう自覚があったと思うんですよね。
私は斡由と尚隆は全くの別物だと思ってますが、それは私が斡由が裏でめちゃくちゃ臣下を殺しまくってたことを知ってるからだし、その辺は本人にしか分からないシンパシー的なところがあるのかな、とか。
尚隆の父親は愚者ではあったけど民に被害を直で加えたかと言われると結果論で小松が潰れたという話で父親が手を下したわけではないし、尚隆が父親に手を下すには理由がなかっただけなのかなって。尚隆はやろうと思ったらやるので。

「なるほどな……」の一言に関して、"""私は"""自分と斡由が何も変わらなかったことに対する納得だと思ったんだけどこれって私がもっと歳を重ねたら思うことが変わったりするのかな。
同じ時代に権力者の息子として生まれ、権力者の息子として持ち上げられて期待を受けながら、そこに"権力者である自分"を見たか"自分が負っている権力"を見れたかの違いだと思うから私はまじで尚隆に自分と斡由を重ねてほしくはないんだが (私は権力者である自分を見てしまうタイプだという自覚があるので) それでもやっぱり尚隆が斡由のことをこんなに拾い上げるのって自戒なんだろうなってめちゃくちゃ思う。私も私だったかもしれない斡由を拾い上げて自戒にしたいなと思います。


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