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クリスマスの誓い。

「ごめん、今日残業で遅くなる……」


クリスマスイブの夜


サンタを信じている子供たちそして愛する妻と
ケーキを囲みパーティーをするはずだった……

「だった……」と言うのはほんの10分前まで
気分はウキウキ楽しみで仕方なかったからだ



10分前


「はい……ハイ……ハイ……」

それは、緊急の呼び出しだった
しかも今日中に終わる気がしない内容だった……

結局集まったのは8人
出張の宿泊組を除く全員が集められた……

このときなぜか
クリスマスイブの緊急招集で
全員を集められる統率力におどろいた

それぞれのプライベートがあるのにだ……

「おれ、今日彼女とデートなんすよ、マジカンベンっすよ」
「オレなんてマジで今夜告る予定だったんすよ」
「おーそれ、0時ちょうどに行ってサプライズで告ればOKもらえるぞ」
「それ、JRのCMじゃないっすか」
「あはは、マジ受ける」


ちょっとだけ空気が和やかになったのが唯一の救いだった……


「よし、そろったか、さっそくはじめるぞ」
その上司の声をきっかけに
一気に緊張感が張り詰めた

手分けして作業するぞ
「俺こっちやります」「オレはこれ調べます」「おれ電話します」
さすが皆プロだ、無駄のない行動で各々動き出す



ちょっとだけワクワクした……



その緊張感も3時間もすると
「あー、だめだ、終わる気がしねーよ」


それぞれがイラ立ちはじめ、ピり付いてきた……


いつの間にかいなくなっていた上司が
絶好のタイミングで

「みんなーちょっと休憩しよう」
とコンビニで買ってきたであろう
飲み物と軽食を袋いっぱいに持ってきた


ちょっとドラマのワンシーンを見ているような
錯覚に陥った、すげぇな
こんな状況で仕事してるって……
かっこいいと少しだけ……
思った


煙草を吸いに外に出ると
ピンと張り詰めた空気が冷たくて
少しだけ気持ちよかった……


胸ポケットから取り出した煙草に火をつけ
携帯を見ると、妻からメールが来ていた


添付を開くと動画が流れた……


そこには大好きでたまらない
子供たちが
ニコニコ
しながらいた

「パパおしごとがんばってね
メリークリスマス……



ママーとれたー」


と流れた……


突然押し寄せた暖かい気持ちに

笑顔になった

そして
なぜか
胸がきゅーーっと
締め付けられ



目が熱く熱くなり
その笑顔から
涙があふれた……



後ろから後輩が
「寒いっすねー」と煙草に火を付けながら近づいてきた


背を向けたまま
「ちょっと、たばこ買いに行ってくるわ」
と歩いた……



まだ残っているたばこの箱を
グシャッと握りしめた……


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