結局「現在(過去)完了」って何なの?

完了ー古代日本語には存在したが現代日本語には存在しない「時制」概念(実は違う)ーって結局なんだよっていう話です。


1.そもそも「完了」ってなんだよ

最初に小難しい話をすると「完了」は「時制」ではなく「相」なのであり、これを混同するからややこしくなるのだ、云々という話を見かけますし、実際その通りです。時制は端的に、動詞の出来事が「今」か「昔」か「将来」かを問題にする一方で、相は「その動詞の状態が任意の時制においてどうなのか」を問題にします。
日本語にもある相として、進行相が一番わかりやすいと思います。次のAは進行相、Bは反復相かなんかになるでしょう;
A.私は寝ている。
B.私は寝る。
問題は、現代日本語に「完了」相なるものがないということです。古典日本語には「つ」「ぬ」「たり」「り」で完了相があるんですが、現代日本語では「~てしまった」「~しちゃった」なるよくわからん訳語が当てられがちです。はっきり言ってそんな訳語をくそ真面目に当てていたらキモいです。そんな喋り方するやつなんかいねえだろ。

さて、完了の本質は「昔」の話なんですよね。しかしながらそれが特に「haveの時制となんらかの関わりがある」話であることが重視されるように思います。要するに、haveの時制の一つ前の出来事、そしてhaveの時制にも影響する話、ということです。
「終わった」話と捉えることもできなくはないんですが、そうすると継続用法や完了進行形が説明できません。あるいはドイツ語の現在完了を見てみると、話語では過去形と同等の位置づけがされているものであり、やはり「現在との関わりがある昔の話」と見るのが妥当な気はします。
注目したいのは、単なる過去形では、haveの時制においてその動詞の状態がどうなっているかはあまり関係がないことです。

2.じゃあ現在完了って過去形と違うのか

その通り。具体的に現在完了を用いて、よく言われるやつをみてみましょう。
1. I went to Tokyo.
2. I was in Tokyo.
3. I have gone to Tokyo.
4. I have been in Tokyo
5. I have been to Tokyo.
1,2は普通の過去形で、3,4,5は現在完了ですが、いずれにせよ「私は(その昔)東京に行った/いた」という事実は変わらないわけです。しかしながら、じゃあ何が違うんかというと「過去の話が現在どうなっているのか」というのが問題になります。言い換えると、本質的には過去だが、現在はどうなったかを着眼点とするのが現在完了なのです。
一つ問題は4と5でしょう。1-3、2-4で対応させたんですが、4,5はtoとinが違います。実際I am(was) to Tokyo.って言わないじゃないですか、be to+infという言い方は確かにあるけれども、toのあとは動詞の原型がきます。したがってhave been toって一種の句動詞と考えていいんじゃないかと思います。
さて、4と5の話はいいとして、次に1-3、2-4の話を見ていきましょう。これらは過去形-現在完了形という対応になっています。どれも「東京に行った/いた」という話自体は過去の話であり、そこから現在どうなっているのかということが主眼になります。
したがって、泥臭く翻訳してみると
1' 私は東京へ行った。
2' 私は東京にいた。
3' 私は東京へ行っ(て、そして今も行ったままだ)。
4' 私は東京にい(たし、今も東京にいる)。
5' 私は東京へい(たことがある)。
という感じになります。

3.じゃあ過去完了ってなんだ

なんか小難しい話ばかりされがちな過去完了ですが、「完了」を大雑把に「haveの時制まで続く昔の話」とすれば、過去完了はhadより昔の話、ということになりますよね。雑にいうと、時制を一つ昔にずらした話というわけです(実際には過去より昔の時制はありませんが、たとえとしてこれが雑ながら当たらずとも遠からずだと思います)。
①When you arrived in Tokyo, she had left there.
→あなたが東京についたとき、彼女はとっくに出発してたよ。
以上、ということです。

ところで過去完了が時間を表す節ないし句がなく使われていることってあまりない気がします。未検証なので仮説なんですが、誰か調べてください(丸投げ)。ただし例外として、昔の出来事が前提されているならばそれより昔のこととしての過去完了はありうると思います。
過去完了って目的として「過去より昔の出来事」を表現したいわけなので、単体で使う意味がわからんというのは一応理屈としてあり得るんじゃないかなあと思っています。

4.結局どういうことだってばよ

要するに、haveないしhad(現在/過去)を基準の時間として、それより昔に始まったことを表したいときに完了形が使われる、ということです。
雑にいうと本質は過去なんですよね。


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