思い出したくない

私には思い出したくないことがある。

それは初体験だ。

4年が経ち、好きな人と結婚もしてふと思い出しては自分の情けなさと悲しさに嫌気がさす。

それは20歳の頃。

友達に彼氏が出来て初体験を済ませていく時私には彼氏がいたことも出来たこともなかった。

「気持ちよかった」や「こんなところが嫌で〜」という話を聞く度に私には話せることもなんにもない、ただただ大人になって行く友達を横で見ているだけだった。

ある日友達から「裏垢やってるんだけどさ」と言われた。

最初は愚痴の事なんだろうなと思ったら、エッチな写真を載せて色んな男の人からチヤホヤされていた。

友達はそのアカウントで知り合った男の人と話し、経験人数を増やしていたことを知りなぜだか私もやってみたいと思った。

ただ私の「やってみたい」は「早く処女を捨てたい」という焦燥感からきたものだった。

でもやってみたはいいものの、知らない男の人から来るリプやDMに気持ち悪さを感じつつ、「こんな写真を載せてる私も大概だな」と思っていた。

そんな時、ある人とDMでやり取りをかさねていた。

20代で年上だし住みが近いし話していて楽しいしいいかなと思って会った。

趣味で始めたTwitterで女の人とは何度か会っていたが、初めてネットで知り合った男の人に会うということでガチガチに固まっていた私にその人はコンビニでミルクティーを奢ってくれた。

その時ゴムを手に取ってレジに行く姿を見て「あぁこの人とやるんだ、本当に」と思った。

そしてそのまま新宿の歌舞伎町にあるレンタルルームで私は処女を捨てた。

はずだった。

現実は予想以上の痛さで入らず、その人が私の別の穴に入れた。(察していただきたい)

これじゃない、私の想像していた初体験はこれでは無い。

やめて欲しいと頼みたかったが痛くて声が出なかった。

何とか我慢してその時間が過ぎ、シャワーを浴びていたが感情がなかった。

なぜかその人に気にいられセフレになってよなどと言われ、私はレンタルルームを後にした。

帰り道、私は泣いていた。

ただの焦りで見知らぬ人と体を重ねて捨ててしまった。

親への申し訳なさや自分の醜さで涙が止まらなかった。

そんな私に「大阪から来たんやけど〜ご飯これから行かへん?」って言ってきた推定45歳のおじさんのナンパは無視した。

それから何かが吹っ切れたようにその人やその人以外の色んな人と体を何度か重ねたりしていた。

裏垢を辞めるに至った理由があるがそれはまた今度。

夢にまで見ていた初体験は脆く崩れ去っていった。


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