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昼茶屋優勝の備忘録


鵺野、いえ、「右耳を甘噛み」です。



どうしてこうなった。




第1章 挫折


(1~3章無駄なんで4章から読めばいいです)


話は前日に遡る。鵺野は喘いでいた。決して右手と仲良くしていたわけではなく、自分の大喜利の弱さにだ。


何日かにわたって入賞出来ない日が続いていた。だが正直それはどうでもよかった。だって合わないお題が続くことはよくあるし、投票で下振れを引くことだって茶屋ではザラだから。だからたとえ偏差値40台以下を引こうとも自分の回答に納得いっていれば別にいちいちクヨクヨしたりなんかしない。男の子だし。


一番自分がヘコんでいたのはシンプルに「面白い回答が浮かぶイメージが全く沸かない」ことだった。


お題がどうとかではない。今まで(それなりに)出来ていたはずの「回答を組み立てるプロセス」みたいなものが完全にエラーを起こしてしまっていた。しかしまがいなりにも半年近く茶屋をやっている鵺野は小手先のテクニックだけは覚えていて、決して面白くもない発想や使い古された言い回しでなんとなく決勝ボーダーくらいの票を取るだけの鳴かず飛ばずの茶屋が続いた。


それでもやり続けることが打開する為のただ一つの方法だと信じていた鵺野はシーズン6の方々の活躍に下唇を噛み血をダラダラ流しながら毎晩頭を回転させて茶屋と向き合った。しかし順位は落ちていく一方。そして先日遂に平均10票以下、40票台を出した。



俺は茶屋を離れることに決めた。


「別に40票台なんて普通に強い人でもたまには取るだろ」という人もいるかもしれないが、問題はそこではない。先述した通り見た目の票数うんぬんではなく今の脳みそでは絶対に今後も面白い回答は出せないという確信が自分の中にあるのが耐えられなかったのだ。





第2章 僥倖


その日の夜中、俺は餃子を包んでいた。


目の前にある100枚の餃子の皮を使い切ろうとりんご酢サワーを片手にひたすら包んでいた。10個で飽きた。まずい。このままではいつまで経っても終わらない。せめて話し相手がいれば。


そうだ、スペースとやらを開いてみよう。もしかしたら夜を無駄遣いしてる暇人がいるかもしれない。話題は何にしよう。大喜利の話はやだな。今距離置いてるし。そうだ、夜だしエロい話にしよう。最近Pixivで見たポケモンのR-18絵の話でもするか。そんなことを思いながらスペースを開いた。するとそれに食いついてくる奇特な方々がチラホラ。


最初に来てくれたのはツルミチッ素さん。シーズン7勢にして既に何度も頂点に上り詰めている化け物だ。そして少し遅れて最近覚醒してるPOPOJIさんが合流。シーズン6勢の同期だ。


俺は思った。こんな方々来てメスケモの話なんてしてる場合じゃねぇ、と。


そこからはアツい茶屋談義が始まった。「この企画ってどういう風に取り組んでる?」「よく使う単語リストみたいなのある?」「固有名詞使うのってアリ?」「決勝で言い回し変えてる?」「自分と近い回答と遠い回答どっちに投票する?」「今日の夜茶屋のこの問題どう組み立てた?」エトセトラ、エトセトラ。


気付けば時刻は深夜3時。すっかり話し込んでしまった。しかも途中調子こいて「俺明日どっかで絶対回答に”餃子”って入れます」とか言い出す始末。アホか。ついさっき茶屋から離れるって言ってたやんけお前。


ツルミ「せっかくだから最後に話したかった「最近一番エロいと思うポケモン」の名前だけ言っていいですよ」



鵺野「ええ!いいんですか!ツタージャってエロくないですか??」


ツルミ&POPO「………………おやすみなさい」


ありがとうツルミチョ、ぽぽぽ。お前らのありがたき言葉はしっかりと心に留めておくぜ。



第3章 天啓


翌日。仕事の無い俺は昼過ぎまで寝ていた。朝飯という昼飯を食ってぐだぐだYouTubeを見ていると通知がぴろん。


「14:00から昼の茶屋です!よろしくねー!」


そうかもうそんな時間か。しかし今の鵺野は俗世(おおぎり)から離れた身。こんな通知はもはや俺には関係ない。悪いな大喜利茶屋。俺は一度した約束はたがえぬ男だ。










いやめっちゃ大喜利やりたい。


せっかく昨晩茶屋強者の2人から直々にアドバイスを頂いたのだ。それを実践しないでどうする。しかし俺は「強くなってから戻る」と前日に誓った身。そうやすやすと帰ることなど許されない。一体どうすれば…









(新しいアカウントを作るのです…!)


あ、あなたは!


勘のいい方は分かると思いますが俺が何でサブ垢でやってたかって前日に「大喜利茶屋から離れる」とか抜かしたくせにしれっと翌日に参加するのが何となくバツが悪くて作っただけなんですよね。まあもちろん成績とか茶事とか関係ないところでもう一度楽しむ気持ちで大喜利をやってみようって気持ちもあったんだけど。


そんなこんなで鵺野凛音はサブアカウント「右耳を甘噛み」を作りました。「"みぎみみ"って言いにくくて噛んじゃうよね」って意味であって全然変な意味じゃないです。そう聞こえるのはあなたの心が汚れているからです。



第4章 戦場


1巡目

経験上、画像お題は細かい要素を拾いすぎると説明臭くなってウケないと思っているので写真撮ってる女性は無視して考えていくことに決めた。



まず「このホワイトボードには何が書いてあるか?」というのを考えて「シフトや会議のスケジュール」「文化祭の出し物」「大会の勝敗表」「明日の時間割」などが思いついた。これらの要素から男性の表情に合いそうなものを選んでいく。


なんとなく「しれっと何かを書き換えている」感じに見えたので「出退勤をイジって遅刻をなかったことにしてる人」「試合の結果を勝手に改竄してる人」のどちらかで行こうと決定。最終的により被らなそうな後者を選んだ。


あとはそれをどういう言い回しで伝えるか。前日の談義でも出たが、言い回しを考えるときはなるべく直接的な単語は避けて輪郭から状況を想像させるのがベター。今回の場合は「試合」や「トーナメント」といったワードはあまりにも直接的で説明臭さが拭えない。



言い回しはよかったと思う。「全勝はバレそうだから1敗にしてリアリティを出そう」っていうちょっとこなれてる感が表情とうまくマッチした気がする。


2巡目

言い回しがかなり鍵を握るお題だ。返事ということを無視すればかなり自由度は高いが、ちゃんと返そうと思えば要素が少ない分被ることも考えられる。言い回しで上回らなければならない。


わりと最初に「相手に閉めさせる」系の回答が思い浮かんだのでそこから精査していく。

月!やったぜ!


実際これ系の回答は何個かあったけどより理不尽さの出る言い回しを出来た分アドが取れた。やっぱり日常どこかで聞くような文を別の脈絡に持ってくるとそれだけでインパクトがある。作戦勝ち。




3巡目

シンプルな2要素お題。自分はわりとこういう方が好き。


最初に思い浮かんだのは「ほら、こんなにドキドキしてる」って言って胸に手を当てられてそこが心臓なんだと知ったという回答。長い。要は身体のパーツが人間と違いすぎて分からないということを言いたかったんだけど端的にまとめられずボツ。


次に浮かんだのは「動物園を見に行った後、動物園に食べに行った」という回答。怪物だから動物とかも食うよなと思ったんだけど、これも経験上、こういう「○○した後、○○した」みたいな同じワードを2回使う回答はそんなに伸びない。最近でも「職質中に職質された」という回答をしたが偏差値50割ってたと思う。


仕方ないので動物園をもうちょっと掘ることにした。怪物と動物園行ったらどうなるかな。まずチケット買うだろ。いや待て、怪物ってどの種類のチケット買えばいいんだ?




得た発想をもとに回答を構成。おそらく怪物によって起こるトラブルをネタにした回答が多くなると思ったのであえてトラブルが起きなかったという逆の意外性を持ってきてみた。まあ正直どこかで見たような回答になってしまってる感はあるんだけど着眼点は悪くない気がする。



4巡目


穴埋めお題ほんと苦手。


回答方針としては2パターンあると思う。「全然落ち着いてねーじゃねえか」のパターンか、「今それじゃねえだろ」のパターン。俺は後者を選択した。


遭難したときに本来すべきじゃないけど誰かはしそうなことってなんだろうって考えた結果、ネット配信とかSNS投稿とかが浮かんだ。でもこれも「Xで拡散」とかだと直接的すぎるというか被りそうな気もするしもうちょっと言い方を考える。うーん。




正直これはかなり上振れた気がする。おそらく伝わらない人もいるだろうなあと思って出した。これも前日の談義に出てたんだけど、やっぱり茶屋で票を稼ごうとするなら一部からの2票を狙いに行くより多数からの1票を狙いに行った方がいい。そのためには分かりやすく、できるだけ平易な言葉でということを心がける。個性は単語で出すな。発想で出せ。俺のばあちゃんが昔そう言ってた。




5巡目

いわゆる「逆の世界」お題。2要素といい台詞お題といい、大喜利お題の教科書みたいな問題が続く。


「逆の世界」お題は自分の場合はどちらかの要素に着目して入れ替わって面白そうなものを探すっていうパターンが多い。今回でいうと「葬式でめちゃくちゃ怒られる」とか。でもこのタイプだと被りやすいっていうのと爆発力に欠けるっていう難点がある。



どーせ別垢だし色々試してみよーっていうことで普段あまり使わない「両方の要素を拾う」ということに挑戦してみた。思いついたのは「スーツ→漫才の衣装 全身タイツ→コントの衣装」という発想。


ウーンまあそこそこ?


最後まで言い回しに悩んで結局あんまり納得してないまま出した。結果を見てみるとわざわざ2要素の中間をとった曖昧な書き方をしなくても普通にスーツ→漫才にフォーカスした回答が上位にいたので、変なとこでこねくり回したりせずにシンプルにどっちかの要素から考えるのが一番強いねやっぱり。



途中結果



まーーーーーーーーーーーーーーーじで??(ぱちくり)


昨日まで「決勝すらいけねー!」って萎えてたのにサブ垢作った日に途中結果1位???は???


でもね、実は鵺野、途中結果1位は経験してるんです。その時は決勝で下位を取り4位入賞。表彰台すら逃した。本当にメンタルがクソザコナメクジなので決勝死ぬほど弱いんです。


だから本当に9割諦めてたというか「こういうとこでミスるのが俺なんだろうな」って思ってたので逆にリラックスしてました。仮に表彰台乗ったところでサブ垢だから茶事も開かないしなーみたいな。



決勝


ここにきてセンス全振りのお題かよ…


茶屋をそれなりにやってる方なら分かるだろうが、このお題の「日本代表」は要素であって要素ではない。このお題の本質は己の中の強いワードをぶつけるだけのパワーファイトバトルだ。


鵺野はセンス系がめっぽう弱い。何せ俺の大喜利は一言でいえば「理詰め」。お題に対する「納得感」を大事にするファイトスタイルなのでよく言えば安定感があり、悪く言えば爆発力に欠ける大喜利だ。生大喜利の大会は中位ばかり取っている。


その自分にとって何のとっかかりもないこのお題はもう砂漠を歩いているようなもの。「パワーワード」という名のオアシスを探して彷徨い続け、どんどん流砂に足を呑まれていく。ずぶずぶ。


時間が過ぎる。1分、2分…何でもいい、何でもいいから俺に単語をくれ。最悪逆月でもいいから、「これで負けるなら本望」というワードを、どうか…









「俺明日どっかで絶対回答に”餃子”って入れます」









残り1分。俺は空欄に「餃子」とだけ打ち込んだ。単語は決まった。ここからは俺のフィールドだ。


要素を拾うのは俺の得意分野だ。「日本代表」と聞いて真っ先に思いつくのはスポーツチーム。サッカーとか野球とか…さらに広く取ってオリンピック?国体?いやいや違う。そんな手前にあるワードじゃ埋もれるに決まってる。もっと別の…スポーツ以外で国と国とが誰かを代表にして戦うようなもの…学力とか、経済力とか、食文化とか、容姿とか…容姿?


「ミスコン」!!これだ!!










今まで獲ったどんな表彰台回答よりもこの4位が一番嬉しかった。


途中結果で2位以下の方の名前は覚えていた。俺より上位には誰もいなかった。それでも何かのミスで順位が入れ替わっていたらと思うと結果発表までのわずかな時間が途轍もなく長い時間に感じられた。








やった。やったよ。






エピローグ


「まじか」


優勝して最初に出た言葉。昼過ぎまで寝ててカーテンすら開けてない薄暗い部屋で掴み取った優勝。何を思えばいい。



別にそのまま「謎のアカウントが昼茶屋優勝」で終わりでよかったんだけどさすがに自己顕示欲に負けた。何より前日にアドバイスをくれた人はじめ、長らく茶屋を一緒にやってきた人たちに報告したかった。






それにしても「面白い回答を出すぞ」とのめり込んで下位に沈み続けていたのに「面白いとか関係なく好きにボケてみよう」ってアカウント変えた途端に優勝ですよ。分かんないけど、たぶんそれが何かしらの答えなんだろうな。本当に、本当に笑いって面白い。大喜利って面白い。


自分はまだまだ大喜利のテクニックやら指南やらを書けるほどの実力が無いのでこの備忘録も何の参考にもならないただの記録に過ぎないんだけど、ただ一つ最近大喜利を始めた方に言えることがあるとするなら「大喜利なんて所詮ゲーム」ってことくらい。別にバカにしてるわけじゃなくて、そのくらいで挑む方が楽しいし強いんじゃねっていう俺なりの結論です。メンタルやられるまでやるもんじゃないよほんとに。


とはいえ俺はやっぱり結果を出したいし夜茶屋でも生大喜利の大会でもいずれは優勝したいと思ってるので、怪傑ゾロリばりに「まじめにふまじめ」にこれからも大喜利を続けていきます。おしまい。読んでくれてありがとうね。愛してるぜ。ちゅ。






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