【壬癸の怪】 バスルーム
引っ越したばかりのアパートでシャワーを浴びる。
排水口に向かって渦を巻くお湯の流れが淀んでいた。
知らぬ間に大量の髪の毛が溢れている。
セミロングの私の髪よりはるかに長い髪の毛。
例え自分の髪だとしても、こんなに抜けたら絶対に気がつく。
気味が悪いがそのままにも出来ず、シャワーを終え、掃除をしようとゴム手袋をして髪の毛をつまみ上げる。
排水口の金具の部分に絡みついた長い髪の毛を辿っていくと、指先に思いの外強い抵抗を感じた。
仕方なく金具を外して見ると――排水口の奥に目玉が一つ。
呆然としている間に、私をキロリと睨んで消えた。
了