専門医制度と地域医療

 はじめまして、EZRと申します。当記事は医学生及び若手医師、地域医療関係者向けとなっています。 

 2022年度の専攻医募集の日程がやっと告知されました。11月1日から登録開始、相変わらず遅いですね。日程を守らずに早期に内定をだしている病院も多いのではないでしょうか。

 さて、最近m3やネットニュースで専門医プログラムに地域(医師不足地域、僻地)での一定期間の研修を必須とする事が話題として挙がっています。また2018年度から都市部での診療科別シーリングが始まりました。これは都市部で皮膚科、眼科など志望者が多い診療科の専攻医数を制限して地方勤務医や不人気診療科に誘導するという制度です。この地域強制派遣や診療科シーリング制度は専攻医のキャリアや人生設計に大きな影響を与えるので、専門医機構の思惑と制度の問題点をまとめようと思います。(個人的見解です)

・地域医療で色々な症例に触れ、実践的な経験を積む

・診療科横断的に医療に携わり、プライマリ的視点を養う

機構理事長は上記を地域での勤務のメリットとしています(機構公式見解でなくあくまでインタビューなどでの私的見解だそうですが)

一方実態は

・医師不足の地域市中病院に安定的に勤務医を供給する(地方の医師不足の解消)

これが若手医師を地方に派遣する最も大きな理由だと思わます。これまで大学医局が地方の不人気病院や僻地病院への医師派遣機能を担っていました。しかし初期研修制度と、その後自由に後期研修先を選ぶ医師の増加によって、医局に派遣する余力がなくなりました。田舎の総合病院はどこも深刻な医師不足となりました。

当然、地方自治体や厚労省から医師偏在改善の対策の声があがります。元々専門医の質の向上を目的とした新専門医制度でしたが、徐々にその役割が変性していき、診療科シーリングや地域派遣で地域の医療格差是正が機構の大きな役割となりました。

専門医の有無は医師としてのキャリア形成や就職に大きく影響します。この「専門医取得」をエサに医局がおこなっていた医師地方派遣機能を専門医制度で代替しようとしているのではないでしょうか。

 専門医プログラムという首輪で繋がれた医師は行政や大学にとって、とても都合の良い存在です。専門医取得を盾に「どこでも」「いつでも」若手医師を働かせることができるのですから。また、採用の時点でシーリングをかけることで診療科人数を調整する事も可能となります。専攻医自身の意志を軽視したこれらの制度は、望まぬ地域での勤務や診療科の専攻を助長するだけでなく、結婚、妊娠出産など人生設計に大きな影響を与えます。

 私は僻地の研修病院で働いており、田舎での医療にも様々な魅力がある事を知っています。しかし、本人の意志に反して地域に派遣する事は反対です。研修内容や福利厚生を高め、自発的に医師が来る環境を整える事が、本来あるべき地域医療の姿だと思います。

今後も突然の制度変更がなされると思われます。専門医機構の動きを注視していく必要があります。おしまい