【日本馬出走】ドンカスターマイル(GⅠ)有力馬解説
※本記事の情報は4/5現在のものです。
ドンカスターマイル
The Star Doncaster Mile
2024/4/6 16:35(日本時間14:35)
格付け:GⅠ
開催地:オーストラリア・ニューサウスウェールズ州
ロイヤルランドウィック競馬場
条件:3歳以上・右回り・芝1600m
斤量:ハンデキャップ
頭数:フルゲート20頭・補欠馬4頭
総賞金:400万豪ドル(約3億9570万円)
1着賞金:230万豪ドル(約2億2750万円)
《出走予定馬》 ※()内の数字はゲート番
①(15) シンクアバウトイット(Think About It) セ5
調教師:J.プライド 騎手:S.クリッパートン(57kg)
②(08) オオバンブルマイ(Obamburumai) 牡4
調教師:吉村圭司 騎手:D.レーン(55kg)
③(16) ペリクレス(Pericles) セ4
調教師:J.カミングス 騎手:B.シン(54.5kg)
④(04) ミリタライズ(Militarize) 牡3
調教師:C.ウォーラー 騎手:Z.パートン(54kg)
⑤(19) ズーゴッチャ(Zougotcha) 牝4
調教師:C.ウォーラー 騎手:C.ウィリアムズ(53.5kg)
⑥(01) ゴールデンマイル(Golden Mile) 牡4
調教師:J.カミングス 騎手:J.コレクト(53.5kg)
⑦(12) コヴァリツァ(Kovalica) セ4
調教師:C.ウォーラー 騎手:T.ベリー(53.5kg)
⑧(02) デトネータージャック(Detonator Jack) セ5
調教師:C.マーヘル 騎手:T.クラーク(52.5kg)
⑨(13) バークシャーシャドウ(Berkshire Shadow) セ5
調教師:C.マーヘル 騎手:A.モーガン(52.5kg)
⑩(07) ラスティックスティール(Rustic Steel) セ6
調教師:K.リーズ 騎手:T.シェリー(52.5kg)
⑪(05) アトラクタブル(Attractable) セ5
調教師:S.ライアン 騎手:R.ジョーンズ(51.5kg)
⑫(10) レディーラグーナ(Lady Laguna) 牝4
調教師:A.ニーシャム 騎手:M.ディー(51kg)
⑬(11) デモクラシーマニフェスト(Democracy Manifest) セ5
調教師:C.ウォーラー 騎手:J.フォード(51kg)
⑭(24) フィアーソン(Phearson) セ6
調教師:B.ウィダップ 騎手:R.スチュワート(51kg)
⑮(23) ロークイーグル(Loch Eagle) セ5
調教師:K.リーズ 騎手:D.ギボンズ(52kg)
⑯(22) リンダーマン(Lindermann) セ4
調教師:C.ウォーラー 騎手:Z.ロイド(50.5kg)
⑰(17) セマナ(Semana) 牝4
調教師:C.マーヘル 騎手:A.アドキンス(50kg)
⑱(21) アナザーウィル(Another Wil) セ4
調教師:C.マーヘル 騎手:J.カー(50kg)
⑲(06) セレスティアルレジェンド(Celestial Legend) 牡3
調教師:L.ブリッジ 騎手:T.シラー(49kg)
⑳(20) サウスポートタイクーン(Southport Tycoon) 牡3
調教師:C.マーヘル 騎手:R.キング(49kg)
【補欠馬】
㉑e(09) ナゲット(Nugget) セ7
調教師:C.マーヘル 騎手:D.ベイツ(51.5kg)
㉒e(14) ヒンジド(Hinged) 牝5
調教師:C.ウォーラー 騎手:未定(50kg)
㉓e(18) ナヴァホピーク(Navajo Peak) セ5
調教師:D.ペイン 騎手:未定(52.5kg)
㉔e(03) パルメット(Palmetto) セ5
調教師:J.サージェント 騎手:M.バーク(51kg)
《人気順・オッズ(TAB)》※4/5現在
⑱アナザーウィル 3.80
⑲セレスティアルレジェンド 8.00
④ミリタライズ 8.50
②オオバンブルマイ 10.00
⑫レディーラグーナ 11.00
⑧デトネータージャック 12.00
⑦コヴァリツァ 17.00
⑤ズーゴッチャ 18.00
⑳サウスポートタイクーン 18.00
①シンクアバウトイット 19.00
⑯リンダーマン 19.00
⑬デモクラシーマニフェスト 21.00
㉑ナゲット 26.00
⑰セマナ 34.00
③ペリクレス 41.00
⑥ゴールデンマイル 61.00
㉒ヒンジド 61.00
⑩ラスティックスティール 71.00
⑨バークシャーシャドウ 101.00
㉓ナヴァホピーク 151.00
㉔パルメット 151.00
⑪アトラクティブ 201.00
⑭フィアーソン 201.00
《概要・有力馬解説》
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の競馬における秋(オーストラリアは南半球のため、季節が逆転している)の一大開催、「ザ・チャンピオンシップス(The Championships)」の時期が今年もやってきた。
ザ・チャンピオンシップスとは、シドニー近郊のロイヤルランドウィック競馬場を舞台に4月1週と4月2週の土曜日、2日間に渡って行われる開催のことである。
3月下旬にローズヒルガーデンズ競馬場で行われるゴールデンスリッパーミーティングなどと合わせ、計6週間ものGⅠ開催は「シドニーオータムレーシングカーニバル(Sydney Autumn Racing Carnival)」と総称される。
ドンカスターマイル(GⅠ)は別名「ドンカスターハンデキャップ」とも呼ばれ、オーストラリア最高のマイルレースだとされる一戦。
現在はザ・チャンピオンシップス1日目のメインレースとして施行されている。
創設は1866年。今年で第158回を迎えるレースの走者には、世界のマイル戦の中でもトップクラスとなる高額賞金が与えられる。
歴史と伝統、格・賞金──その全てにおいて文句無し。過去の勝ち馬にはウィンクス(Winx)やサンライン(Sunline)などオーストラリア競馬の歴史を築き上げてきた名馬たちがその名を連ね、昨年の覇者も現在のオーストラリア競馬を牽引するトップホース・ミスターブライトサイド(Mr.Brightside)である。
まさしく「オーストラリア最強マイラー決定戦」と呼ぶに相応しいレースである一方、本競走は「ハンデキャップ競走」でもある。
各馬の斤量はBM(ベンチマーク)により決定され、今年のトップハンデは57kg、最軽量ハンデは49kgと、斤量差は実に8kg。
故にドンカスターマイルは20頭にもなる出走馬、その全頭にチャンスがあるレースと言えるものになっている。
多頭数の競馬による展開の紛れなども相まって、ギャンブラー達の血を沸き立たせる展開も期待されるレースだと言えよう。
では、有力馬解説を始める前に、簡単にコースについて説明しよう。
舞台となるのはロイヤルランドウィック競馬場。
ローズヒルガーデンズ競馬場と並び、ニューサウスウェールズ州の競馬の中心となるメトロの競馬場(オーストラリアでは、競馬場ごとに開催の「格」「レベル」などと言うものが明確に決まっている。詳しく書くとそれだけで記事一本書けてしまいそうなので省略するが、ロイヤルランドウィック競馬場は要するに日本で言う東京競馬場みたいな場所)だ。
1992年にエリザベス女王が来場したことから、「ロイヤル」の名を使用することを許されている、格式高い競馬場である。
周回コースは右回り(オーストラリアは州ごとに競馬場の周回方向が決まっており、ニューサウスウェールズ州は全てが右回り)で、最後の直線は410メートル。
最終直線には上り坂があり、これは「ザ・ライズ」と呼ばれる。
詳しくはJRAの公式サイトをご覧頂きたいが、芝1600mは向正面の引き込み線からコーナー2つのワンターンコース。
イメージとしては阪神競馬場のマイルが近いかもしれない。
スタート地点から最初のコーナーまでの距離が長く、枠順自体による有利不利は比較的少ないとされる。
馬場としては良馬場なら日本と大差ない高速馬場となるが、逆に渋るとかなりタフな馬場になる。
そして、この時期のシドニーは雨が降りやすい。
ドンカスターマイルや翌週のクイーンエリザベスステークス(GⅠ)は渋った馬場で行われることも多い。
今年も週末にかけて雨が降っており、ドンカスターマイル当日の開催は馬場がかなり悪くなることが予想されている。
実際、前日のロイヤルランドウィック競馬場の馬場状態の発表はSoft7。
重馬場、それも不良に近いほどに水を含んでいるようだ。
日本はダートと芝があるが、オーストラリアは基本的に芝のレースしか行わない(最近はオールウェザーコースを敷設した競馬場が出てきたり、辺境では「サンド」という砂の馬場で競馬を行う場所もあるが、主要競馬場は全てが芝である)。
当日のロイヤルランドウィック競馬場では10レース(全て重賞)が施行されるが、ドンカスターマイルは第8レースに組まれている。
馬場が渋れば、それまでの7レースで内が荒れてしまい、外差しのトラックバイアスが現れることなどが予想される。
国内から馬券を買うことはできないが、予想を組み立てる際はトラックバイアスを注視する必要があるだろう。
そんなドンカスターマイルには今年、1頭の日本馬が遠征している。
昨年11月、ローズヒルガーデンズ競馬場・芝1500mで行われた4歳(南半球)限定の高額賞金レース「ザ・ゴールデンイーグル(The Golden Eagle)」を見事に制した4歳牡馬、オオバンブルマイだ。
今回のレースでは、現在オーストラリア・メトロ開催の騎手リーディングで3位につけている若き名手、ダミアン・レーンを新たに鞍上へ迎える。
オーストラリアのトップジョッキー・D.レーンと、既にオーストラリアで大きな結果を出しているオオバンブルマイ。
55kgとトップハンデに次ぐ斤量を背負わされることになったオオバンブルマイだが、彼への評価と期待値は現地でも高く、レース前日のオッズでは10倍ちょうどの4番人気に支持されている。
ドンカスターマイル後、オオバンブルマイは4/28にシャティン競馬場で行われる香港チャンピオンズデーの一戦・チャンピオンズマイル(GⅠ)への転戦を予定している。
しかし、彼の地には香港史上最強マイラーとの呼び声も高い生ける伝説・ゴールデンシックスティ(Golden Sixty)が控えていることも考えると、今春のオオバンブルマイにとっての最大目標はここ──ドンカスターマイルと見ても良いのではないだろうか。
ローズヒルガーデンズ競馬場とロイヤルランドウィック競馬場という違い、1500mから1600mへの距離延長(特にこの100mがオオバンブルマイにとっては大きいのではないだろうか)、渋るであろう馬場と不安要素はいくつもあるが、ここを勝ってGⅠ制覇を達成し、もう一度大盤振る舞いといきたいところである。
しかし、相手関係についてはザ・ゴールデンイーグル以上のものとなり、このタイトルを獲得することは決して簡単ではない。
目下の最大のライバルとなり得ると考えられるのが、ジェイミー・カー騎手がハンデ50kgで騎乗する前売り1番人気馬、アナザーウィル(Another Wil)である。
50kgという軽ハンデ、オオバンブルマイと比べて5kgもの斤量アドバンテージがあるということが脅威なのは言うまでもないだろうが、ひとまずこの馬のプロフィールと実績を以下にご紹介しよう。
アナザーウィルは父ストリートボス(Street Boss)、母アロハヌイ(Arohanui)、母父ビアンコーニ(Bianconi)。
3/30にローズヒルガーデンズ競馬場で行われたGⅢ・ドンカスタープレリュード(芝1500m)を優勝し、連闘での参戦となる。
とはいえ、オーストラリアでは中1週や連闘などさほど珍しくもないため、ローテーションを気にかける必要はない。
オーストラリアの馬は連闘だろうがなんだろうが、走る馬は走る。
実績としてはGⅢを1つ勝ったばかりだが、ここまでの成績は7戦5勝、2着1回、3着1回。
生涯複勝圏内を維持し続けており、実績に劣る上がり馬であるが故にハンデも軽く、その上でトップジョッキーであるJ.カー騎手を鞍上に据えてきた(継続騎乗)──という点で、1番人気の評価は頷けるものがある。
また、先週のドンカスタープレリュードでは番手から抜け出して2と1/4馬身差の快勝と、レースの中身も非常に良かった。
前走の53kgから3kg軽くなるというのもプラスに捉えられ、キャリアの中でHeavy(不良)のレースを経験しているというのも心強い。
とはいえ、今回は前走までのレースとは比べ物にならないほど、相手関係が強化される。
いくら斤量的に有利であり、成績の良い外枠を引いたとはいえ、このメンバーの中でどこまで走れるのかという疑問は残るだろう。
2番人気のセレスティアルレジェンド(Celestial Legend)は父ダンディール(Dandeel)、母サラカ(Sarraqa)、母父スニッツェル(Snitzel)。
現在、重賞2連勝中の3歳牡馬であり、前走は3/9にロイヤルランドウィック競馬場の芝1600m(ドンカスターマイルと同コース)で行われたランドウィックギニー(GⅠ)を優勝している。
それでいてハンデはなんと49kg。3歳馬というのもあるかもしれないが、ズルくね?
しかし、ハンデが軽すぎるためか前走・前前走で騎乗したケリン・マクエヴォイ騎手が今回乗れないようで、乗り替わりになっていることが不安要素としてある。
また、ゲート番も6と内目を引いた。トラックバイアス次第では、どこかで外に持ち出さなければ厳しくなるだろう。
3番人気となっているミリタライズ(Militarize)は、ランドウィックギニー(GⅠ)の2着馬である。
この馬も3歳牡馬で、父はダンディール(Dandeel)、母父がドバウィ(Dubawi)。
セレスティアルレジェンドが(バリアトライアルを除けば)ランドウィックギニーからの直行であるのに対し、こちらは一戦挟んでの参戦となる。
前走は3/23のGⅠ・ジョージライダーステークス(ローズヒルガーデンズ芝1500m)。ここを3着として、中1週での出走というローテーションを取ってきた。
2歳時はオーストラリア2歳三冠の二冠目となるGⅠ・サイアーズプロデュースステークス(ロイヤルランドウィック芝1400m)と三冠目のGⅠ・シャンペンステークス(ロイヤルランドウィック芝1600m)を制覇。
3歳になってからもGⅠ・ゴールデンローズ(ローズヒルガーデンズ芝1400m)を優勝しており、これほどの実績がありながらハンデは54kg。全体的に見れば重いが、オオバンブルマイよりは軽い。
近走は勝ちきれない競馬が続いているとはいえ、ロイヤルランドウィック競馬場での実績が豊富なことも魅力である。
しかし、この斤量のためか、主戦のジェームズ・マクドナルド騎手は今回騎乗できなくなったようだ。
その代わりとして、今回は香港からザカリー・パートン騎手を招聘している。代役としては申し分ないだろうが、結局テン乗りにはなるので不安が残るだろう。
と、ここまでのオオバンブルマイよりも人気している馬を3頭紹介したが、前述の通りハンデ戦であるため、これ以外の馬にも当然少なからずチャンスがある。
シンクアバウトイット(Think About It)はトップハンデの57kgを背負わされており、個人的にはマイルは距離が持たないのではと思う。
しかし、昨年のジ・エベレスト(ロイヤルランドウィック芝1200m)の勝ち馬が同日開催の6ハロン戦・T.J.スミスステークス(GⅠ)ではなく、敢えてドンカスターマイルを選んできたという点では注目すべきかもしれない。
GⅠ・カンタベリーステークス(ロイヤルランドウィック芝1600m)でシンクアバウトイットを破って優勝したレディーラグーナ(Lady Laguna)にも、警戒が必要だろう。
この馬も乗り替わりにこそなっているが、ハンデは51kgと軽い。
前走のジョージライダーS(GⅠ)も勝ち馬と差のない競馬をしており、頭まで突き抜けても何ら不思議はない能力があるように思われる。
ズーゴッチャ(Zougotcha)はGⅠ・クールモアクラシック(ローズヒルガーデンズ牝限芝1500m)の勝ち馬。
この馬もモスバーガーさん、もといJ.マクドナルド騎手からの乗り替わりが不安要素となるが、代役がクレイグ・ウィリアムズ騎手ならば、さほどのマイナスにはならないはずだ。
案外人気していないという印象で、ハンデ53.5kgと19番枠を活かすことができれば、面白い存在となるだろう。
日本馬出走というトピックを抜きにしても、オーストラリア競馬のトップレベルで戦う強豪たちが顔を揃えた本レースは、非常に見ごたえのある1分半となるはずだ。グリーンチャンネルでの放映がないため、日本国内からは中継を見る手段がないが、多少なりオオバンブルマイ以外の出走馬について知っていると、レースが違って見えてくるのではないだろうか。
今年も素晴らしいメンバーが揃ったドンカスターマイル。
タフな馬場でのレースとなるだろうが、全人馬が無事に、素晴らしい走りを見せてくれることに期待したい。
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