オンラインイベントを運営してみて感じた学びの設計について

仕事の関係でオンラインイベント運営のお手伝いをすることがあったので、運営していて感じたことやポイントなどを共有したいと思います。想定読者としては、普段対面型のビジネスやイベントをしていたが、今後オンラインでの開催対応を検討される方。セミナーや授業などをオンラインで実施・運営する予定のある方などです。

前提

まず前提となるイベント情報ですが、ある書籍著者を登壇者とした「オンライン読書会」でした。概要は以下の通り。また、書き手である私は普段、人材開発分野でセミナーなどを取り扱っている会社に所属しています。そのため、リアルなセミナーとの比較した内容が中心になっています。今回、オンラインイベントの運営は他の運営メンバー含めてはじめてのことでした。

以下がイベントの概要です。

・使用ツール:Zoom

・日時:平日19:00〜21:30

・参加人数:参加上限300名、申込者300名、当日250名前後が入室⇒終了時190名強

※ブレイクアウトセッション開始時の退室が目立ちました。

・運営:司会1名、Zoom操作1名、チャット等裏方3名の計5名

・登壇者:著者の先生1名、ゲスト講師1名の計2名

活用したZoom諸機能

・入室IDのほか、入室用パスワードを設定

・加えて申込者以外の参加をお断りすることでZoombombなどのリスク対処

・待機室は参加人数が多く運営コストとの兼ね合いで活用はなし

・ブレイクアウトルーム機能は10分間のセッションを2回使用

・投票機能を1回使用

・参加者は基本ミュート設定でブレイクアウトセッション時のみミュート解除

リアルセミナーとの違い

・リアルセミナーとの違いは大きく以下2点が感じられました。

①コミュニケーションデザインが立体から平面へ

②参加者の参加度合いの幅が広い

①について

オンラインなので当たり前のことですが、参加者はPCやスマホ/タブレット等の端末で参加します。そのため、視覚的には画面(平面)上の情報の提供(デリバリー)、コミュニケーションに制限がされます。一方、リアルなセミナーでは教室(空間)を用いたコミュニケーションや視線誘導が可能なため、コミュニケーションデザイン、学びのデザインの前提に大きな違いが生まれると感じました。
 オンラインセミナーの場合、参加者は常にPC等画面内からは視線を動かすことはなく、画面上における変化(例えば、話者から投影資料、または話者⇒グループセッションなど)は運営側で操作などする必要があります。リアルセミナーだと参加者の意識を講師から例えば配布したテキスト、もしくはホワイトボードなどへ誘導することが簡単にでき、様々な媒体や情報のチャネルを通して参加者の思考や体験を作り込めます。その点、オンラインセミナーでは参加者は画面のみを注視することになるため変化が感じられないとすぐに飽きられてしまうなと感じられました。

→リアルとオンラインでは、コミュニケーション(学びの)デザインの前提に違いが生じる

・リアルセミナー:立体的なコミュニケーション(学びの)デザインが可能

・オンラインセミナー:画面上という限られた平面内でのコミュニケーション(学びの)デザインが必要

また、上記に伴い、講師や運営側に求められる機能やスキルも新たに生じてくるのかなと思います。
思いつく工夫としては、

・講師から受講者への定期的な問いかけ

・講師、投影資料、ホワイトボード、映像教材などを画面上に映して視覚的な変化をつける

・チャットを活用したテキストコミュニケーションを行なう

・講師がチャット内容を拾い、話を展開する

・投票機能やブレイクアウトルームを使用する

・休憩の頻度をあげる

・講師の背景を定期的変える

などでしょうか。

②について

「参加者の参加度合いの幅が広い」について、リアルなセミナーだと同一空間に参加者がいるため、参加意欲に多少の差はでるがその場に対してすべての人が一定の影響力持つことになります。一方、オンラインセミナーの場合は「耳だけ参加」などに代表されるように極端には他のことをしながら参加する「ながら参加」も可能になります。参加度合いの幅がリアルセミナーに比べて広がるなと感じました。

・リアルセミナー:参加者はその場にいて、講師や参加者同士のコミュニケーションが取れることが前提

・オンラインセミナー:参加者はオンラインでしか繋がってなく、音声やカメラの接続は参加者任意となる。参加者へ、相互のコミュニケーションやカメラの接続を強制するのであれば、場のルール設定や心理的安全性の確保をすることが重要。

以上の①②から、オンラインセミナーの進行・運営には通常のインストラクションスキル、研修運営スキルやファシリテーションスキルをベースにしつつも、
オンラインセミナー特有の「デジタル・インストラクションスキル」のようなものが必要になるのではないかと感じました。
※「デジタル・インストラクションスキル」=オンラインにおける画面(平面)上でのコミュニケーションや学びのデザインを前提としたインストラクションスキルと定義

その他

その他、細かな点ですが「ブレイクアウトセッション中の各グループのディスカッションを運営が把握することができない」、「ブレイクアウトセッションに移ると資料共有が解除される」などの細かな使用上の課題も見られました。こうした機能上の特性はきちんと準備段階で認識した上で、参加者の動きを想定してイベントを設計する必要がありそうです。


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