ベルナルド・アミスタ

コルドニア王国の騎士。
国王であるアンヌの右腕として内務大臣を務め、健気にアンヌを支えるエリザベッタの息子。
胸いっぱいに愛を持ち合わせた母の血を継ぎ、強い正義感とコルドニアへの忠誠心を抱えた勇敢な青年。
そんなベルナルドの最大の魅力はズバリこれだと、私は思っている。


そう、彼は

肝心なところで上手くいかないおっちょこちょい


なのである。

それはもう「がんばれ、ベルナルドくん!」みたいなタイトルの絵本でも刊行できそうなほどに、ベルナルドが不憫な目に遭う度に舞台上まで駆けつけて「……ファイト」って肩ポンしてやりたいと思うほどに、彼はとにかく不憫。

この不憫さが、ひたすらに愛おしくてかわいい。

もちろん不憫でかわいいばかりではなく、すらっと伸びた脚やひとつに括られた長くて綺麗な茶髪といったビジュアル面に加えて、市民へのあたたかい振る舞いや心から国を思う純粋さ、十七歳の少年ならではの母との関係性など、ベルナルド・アミスタという人間を形作る魅力は数知れない。

そんな彼の等身大の可愛らしさや健気さ、他にも数ある魅力を、物語の展開に沿う形で感想として書き連ねています。
最初から最後まで主観、あくまで個人の解釈でしかありませんのでご注意を…
(ベルナルドにスポットを当てているため、内容はかなり端折ってます)

大まかに分けて
・ロザリオ大好きベルナルドくん
・ベルナルドくん、見せ場をトコトン奪われる
・対ラウルへの熱い嫉妬心
・母とのすれ違いで揺れる感情のもどかしさ
こんな感じ。


戯曲本を参考にしながら記憶を辿って書き連ねているため、台詞などニュアンスが若干違う場合もあります。

舞台「薔薇とサムライ2」のネタバレを、それはもうめちゃくちゃに含むので、閲覧の際はご注意ください。




第一幕 女王は美しく散る
──イクシタニア王国 国王の死

十七世紀初め、スペインとフランスに挟まれた小さな小さな四国で、壮大な物語が始まろうとしていた。
事に火を着けたのはソルバニアノッソ王国の女王、マリア・グランデ。他三国のイクシタニア王国、ボスコーニュ公国、そしてコルドニア王国の全ての併合を企んでいた。
マリア・グランデは手始めに、シャルル陛下の行方不明により混乱していたボスコーニュ公国を狙い、シャルルの弟であるラウル・ド・ボスコーニュを説き伏せて併合してしまう。その併合を皮切りに次第に事態は深刻になっていく。 

ロザリオ大好きベルナルドくんのターン。

ベルナルドを語るには欠かせない女性、ロザリオ・イクシタニア。イクシタニア王国の王女であり、国王になる器を持ち合わせた立派な少女。しかし"女だから"という理由で王座に就くことができず、「身分に関係なく才能を生かせる場所を与える」という方針を謳うアンヌ陛下の治めるコルドニアへ身を置いている。

そんな身も心も美しい女性、ロザリオに密かに恋心を抱いているのが、そう。ベルナルド・アミスタ。

ベルナルドはきっとババ抜きは最弱だし、サプライズは絶対に失敗するし、夜ご飯をつまみ食いしたら即バレる。
何が言いたいかって、ベルナルドはとにかくめちゃくちゃ分かりやすい。
あまりにも分かりやすいので思わず「頑張れ…!」と拳を突き立てて応援したくなってしまう。
なんせ初登場のシーンから「あ、ベルナルドってロザリオのことが好きなんだ」と容易に見て取れてしまうので。
(※恋心に関しては公式パンフレットを参照していますが、公式設定で恋の矢印が断定されているわけではないです)

そんなベルナルドの初登場シーンは、とあるパン騒動がきっかけ。

コルドニア王国の宰相であるボルマン・ロードスは己の権力拡大のために、"パライソブランカ"という名の麻薬のような成分が含まれる塩を入手し、アンヌを陥れるため、その塩を使って作ったパンをアンヌに公の場で配らせようとする。
アンヌの勘が働き、ボルマンのパンは表に出ることはなく、内々に処理されることとなった。
ベルナルドはそのパンの処理班として仕事を済ませ、ロザリオにパンの始末を終えた報告をしに部屋に駆けつける。

ベルナルド「パンは始末したよ。誰にも気づかれてない。もう心配ないよ!(清々しいほどのドヤ顔)」

誇らしげに腰に当てられた手。
えっへん、と空耳が聞こえる。
この時点でわかるザ・褒められ待ちの顔。

あのね。ベルナルドくん。好きな子にはもうちょっと感情を抑えて、少し駆け引きをしてみるってのもいい手だと思うよ。うん。……と私の中のお節介おばさんがつい顔を覗かせる。

そして、見ているこちらがそんなベルナルドのロザリオへの淡い恋心を知った直後、

ロザリオ「ありがとぉ〜!ベルナルドぉ〜〜!よしよしよし!(ベルナルドを抱きしめた後、うりうりと撫でくり回す)」

で、(ああ……ロザリオはなんとも思ってないんだ……)とすぐに分かってしまう。あまりにも切ない。辛い。
ロザリオのこのスキンシップはあくまで友人との戯れ、頑張り屋さんでほっとけないベルナルド……いや、ベル公、もはやポチ🐶にいい子いい子してあげなくちゃ、くらいの軽い気持ちでしかない。
そんなロザリオからのハグに、目を見開いて喜ぶベルナルド。

「ロザリオ…!好き!大好き!俺が守る!好き!」

の顔で。
……痛い。心が痛い。

この至福のよしよしタイムは、母であるエリザベッタの「ベルナルドォ!!!!!(クソデカ声)」によって幕を閉じる。

好きな子にデレデレしているところを母に見られてしまったベルナルドの「かっ、かあさん…?!(裏返った声)」に年頃の青年とは思えない純粋さが表れていてとてもいい。
続けて隣室にいたアンヌも現れ、このほんわかした場面は、エリザベッタの言葉により重苦しい雰囲気へ一変することになる。

エリザベッタ「イクシタニアのエルネスト国王が……お亡くなりになりました……っ」

父の死の知らせを耳にし、動揺するロザリオ。
アンヌはロザリオへ、すぐに祖国へ戻るよう伝える。

アンヌ「ベルナルド、馬の準備を。あなたも護衛でついていくように」
ベルナルド「お任せください。ロザリオの身は必ず守ります」

この勇ましさに、思わずグッと胸が熱くなる。
つい先程まで、好きな子にわしゃわしゃされてキャンキャンしていた子犬とは思えないほどに、覚悟の決まった声色。

イクシタニア王国の王女ロザリオは、俺が必ず護り抜いてみせる。そんな覚悟が見える強い眼差し。ロザリオを心から大切に想ってこそのベルナルドの立ち振る舞いに胸を打たれる。

エリザベッタ「しっかりね、ベルナルド!」
ベルナルド「はい、かあさん」

ベルナルドはきっと母であるエリザベッタのことも心から大切に思っていて、同時に尊敬もしているように見える。
アンヌを信頼し支える、愛国心の強い母。そんな母に背中を押され、守るべき対象は想い人。ベルナルドにとってこの瞬間は、かなり大きな覚悟を背負う場面であったのではないかと思う。

このエルネスト国王の崩御をきっかけに、ロザリオとベルナルドはコルドニアを去ることになる。



──ソルバニアノッソの襲撃

イクシタニアの国王の崩御を知ったマリア・グランデは、すかさずこの機会を逃すまいとイクシタニア侵略を図る。イクシタニアの広場では、その噂を聞きつけた市民たちが慌てふためき、大混乱を招いていた。
そこへ現れた、科学者であり医者のケッペル・レンテス。南の島で研究をしていたが、エルネスト国王の死の知らせを聞き葬儀に参列するためイクシタニアへ駆けつけた。ところが、街の様子を見る限り、どうやらそれどころではない。

街を見渡すケッペル。そこへロザリオとベルナルドが駆けつける。慌てふためく市民を見て心を痛める二人。その姿を捉えたケッペルが「ロザリオくんじゃないか!」と近づいてくる。

このシーンは切り替わりが早くすぐに立ち去ってしまうものの、ベルナルドのロザリオへの過保護さが垣間見えるので個人的にとても好きなところ。

というのも、このケッペル・レンテスという男。
かつてロザリオとラウルの家庭教師を務めていた。
(隣国ということもあり、ロザリオとラウルは幼なじみ)
久々に会ったケッペル先生に、ロザリオも「ケッペル先生!」と喜びの表情を見せる。
そんなつかの間のハッピームードの中、眉を顰め、猛烈な敵対心を剥き出しにしている男が一人。

「先生……?(警戒心満載のドス黒い声)」

そう、その名も、ベルナルド・アミスタくん。

あのさ。ベルナルドくん。そんなに警戒しなくてもほら、ロザリオちゃんの知ってる人っぽいしさ、そんな眼光で睨みつけなくても、ね。いいじゃん、ね。

と宥めたくなるほどには凄まじいその勢いに、ちょっと面白くなってしまう。
同時に、例え素性が知れている人間でも、自分が何者かを把握していない者への警戒心は一切緩ませない、そういう強い正義感がありありと表れていてもはや感動もする。

そんなこんなで三人は合流し、ロザリオの実兄であり次期国王のコバル・ド・イクシタニアのいる宮殿へと急ぐ。

ロザリオの実兄、コバル・ド・イクシタニアは、玉座にふんぞり返って娯楽を嗜んでいた。彼はマリア・グランデの併合の話を受け入れるつもりでいる。何故かって、死にたくないから。
そんな意気地の無い兄に怒りをあらわにするロザリオの前に現れたのは、ロザリオの幼なじみであるラウル。コバルとラウルはマリア・グランデの要望を受け入れる者同士意見を分かち合っており、兄と幼なじみと意見が割れてしまったロザリオはやりきれなさに頭を抱える。

宮殿でのベルナルドは番犬さながら。ロザリオの後ろでずっとグルル……と威嚇している。
これがまた物凄い眼光の強さで、思わず笑ってしまいそうになるほど。
この睨みの鋭さは、市民の思いを蔑ろにするコバルへの軽蔑に加え、ロザリオの幼なじみであり近しい関係であるラウルへの嫉妬心も孕んでいるであろうというところが、またいい。
(ラウルへの嫉妬云々に関して、これも公式パンフレットの演者さんのコメントを参照しています)

台詞はほとんどなく、本当にただずっとコバルとラウルを睨み続けているだけ。二人が言葉を発する度に眉がギュッと顰められたり、足を一歩踏み出したり。
ロザリオのことが大切で仕方がないのと同時に、ベルナルドもまた市民と国を心から思う青年。権力者に易々とねじ伏せられているコバルとラウルを睨みつけるその目から、ベルナルドの誠実さが窺える。

ロザリオは兄とラウルに「さよなら」と吐き捨て、イクシタニアの国民をコルドニア王国へ逃がすため、ベルナルド、ケッペルと共に王宮を後にする。





__ここまでの出番でわかること。
ベルナルド、もはや護衛騎士というより番犬。飼い主様を愛するわんころ。強火ロザリオ担。

ただそれだけでなく、国や国民の幸せを願う心優しき一面も垣間見え、ベルナルド・アミスタという一人の少年の魅力にどんどん惹き付けられていく。

ベルナルドは、この併合の騒動が巻き起こす様々な危機からロザリオを護るため奮闘していくことになる。
物語は既に中盤へ差し掛かっているが、むしろベルナルドの本領発揮はここからと言っても過言ではないかもしれない。
ここから、ベルナルド・見せ場奪われがち・アミスタの不憫劇場が幕開けする。





──ムッシュ・ド・ニンジャの登場

ソルバニアノッソの侵略を恐れるイクシタニア市民をコルドニア王国へ逃がすため、川に濡れ森に迷い、国境を目指すロザリオとベルナルド、ケッペル達。
そこへ現れる、ハビル将軍率いるソルバニアノッソの軍。ラウルの姿もある。「戦争を起こしたいのか?」とロザリオに詰め寄るラウル、「市民のみんなはソルバニアノッソの侵略が怖くて逃げてきたのよ」と反論するロザリオ。互いの正義がぶつかりどうすることもできず、軍の兵士達は市民を襲い始める。市民達を庇うロザリオとベルナルド。しかし圧倒的な経験値と実力の差で、劣勢に陥ってしまう。

ベルナルドの初の殺陣のシーン。
兵士の腕をグッと掴む動作から始まり、剣がぶつかり合う。
長い手脚に加えて、ベルナルドを演じられている西垣さんはフェンシング経験者なのでとにかく型が綺麗で、殺陣自体は初心者なので初々しさが残るものの見惚れてしまうところ。

舞台中央ではロザリオとラウルが剣を打ち合っており、幼なじみである二人の戦いに胸が締め付けられる場面。
攻撃に押されつつもなんとか切り抜け、ラウルの攻撃からロザリオを守るため二人の間に割り込むベルナルド。

ベルナルド「見下げ果てた奴だな、ボスコーニュの御曹司」
ラウル「君は?」
ベルナルド「ベルナルド・アミスタ。コルドニアの騎士だ!」
ラウル「なるほど」

ロザリオを救うため、剣を突き立てるベルナルド。
彼女の幼なじみであるにも関わらず対立してしまった"裏切り者"に立ち向かう、感動するシーン……と思いきや、ここでも少し不憫さが表れているので、心打たれつつも胸の奥で「フッ」と小さな笑いが零れてしまう。いや、ほんと申し訳ない。

だって、ベルナルド。
ラウルに敵対心を剥き出しにしているけど、肝心のラウルはベルナルドに一切興味が無い。それはもう爽快なほどに。

何者かを尋ねられ、堂々と答えたその返しが「なるほど」って。なんならラウルとベルナルドが初めて会ったのはこの場ではない。そう、先日イクシタニアの王宮でも一度顔を合わせている。(まあ、王女の護衛の男なんてむしろ顔を覚えている方がおかしいので、自然な反応かもしれないけれど)
それにしたって、ベルナルドのラウルへの対抗心を思うと、少し、いやかなり同情してしまう。
この、ラウルのベルナルドへの興味の無さからくるベルナルドの不憫具合がなかなかに面白いので、これは後ほどまとめて叙述します。

兎にも角にも、ラウルの刃からロザリオを守ったベルナルド。何度か打ち合い接戦になるものの、ハビル将軍の参戦により二対一と不利な状況になったベルナルドはそのまま打ち勝つことができず、腕を斬られ倒れ込んでしまう。

避難民に剣を扱える者はおらず、抵抗虚しく絶体絶命……と、そこへ爆音と共に現れた変わった装いの謎の男。

「拙者、ムッシュ・ド・ニンジャ。ヨーロッパいちの忍者でござる!」

固まる一同。(※ムッシュの正体は変装した五右衛門)

(この時、長々と自己紹介をするムッシュが、「マグリッド…ド…ド……ッ(セルフエコー)」の時にベルナルドにビシィッッ!!っと剣を向けるのがシュールでツボ。ベルナルドも「うぉっ」って感じでちょっと引くのか面白い。あとそれを見たロザリオ改め石田ニコルさんが堪えきれず顔を背けて笑いを噛み殺しているのも可愛くてツボ っていう余談)

なんだ?この変人は……といった空気を蹴散らすように、兵士共を容易く斬りつけていくムッシュ。
避難民達を先に逃がし、ソルバニアノッソの軍を次々と倒していく。
(この場面、斬られた腕を押さえて苦しそうに歩くベルナルドの肩にそっと手を添えて"ほらあっち!"という風に向こう側へ逃げるよう誘導するロザリオの姿が見えるので、「あ、ベルナルド、ロザリオに世話焼かれてる……」とちょっとニヤけてしまうところ)

きっとこの時はベルナルドも純粋にムッシュ・ド・ニンジャに感謝の念を抱いていたと思う。……多分、この時は。

逃げ惑う避難民たちを見送ったロザリオに、ムッシュ・ド・ニンジャは

ムッシュ「さあ!コルドニアのロザリオちゃん!」
ロザリオ「なぜ私の名前を?」(※正体は五右衛門なので、ロザリオに会ったことがあるから名前は知ってる)
ムッシュ「ニンジャは地獄耳でござる!ここは拙者にお任せあれ!」

とカッコつける(カッコつける)。
そこでまたビシィッッ!!っと剣を向けられるのがベルナルド。

ムッシュ「そこの若者!しっかり彼女を守るでござる!!」
ベルナルド「……俺の名前は、知らないのか?」

五右衛門はベルナルドに会ったことがないので名前を知らないのは当然なのだけれど、ロザリオは知っていてベルナルドは知らない、この時点で既にちょっと可哀想。なのにムッシュはさらに傷をゴリゴリと抉ってくる。

ムッシュ「……取捨選択もニンジャの心得!」

取捨選択って。

取捨選択って言われちゃったよ、ベルナルド。
ロザリオが取、ベルナルドは捨。

不憫だ。
あまりにも不憫。

でも、ぐっと身を乗り出して「俺の名前は知らないのか?」と主張する姿は、やっぱり可哀想で可愛い。

そんなこんなで、何故か助かった避難民達は、この場を切り抜けることに成功する。
きっとベルナルドは己の手でロザリオと避難民達を守りきることができず無念だったであろうが、ひとまず「頼むぞニンジャ!」と言い残して、傷の疼く腕を押さえつつこの場から走り去っていく。

この殺陣のシーン、ベルナルドが本気でロザリオを護るために奮闘する姿と、"頑張り屋さんだけどやっぱりやられちゃう部分"が同時に見られて、個人的にとても好き。

無事コルドニア王国へ辿り着いたロザリオ達。自らの手で避難民に救いを差し伸べるアンヌ陛下のもと、ロザリオ、ベルナルド、ケッペルの三人は怪我人への治療や食事の用意をする。

久々に母のエリザベッタと再会するシーンでもあり、母に腕の怪我を心配された時の「大丈夫、全然大したことないから」とでも言うような満面の笑みがとてもいい。

怪我人の手当をする時のベルナルドはエプロン姿で、市民のためにせっせと動き回る。自分だって腕を負傷しているし、道中、市民を守るために戦ってかなり疲弊しているはずなのに、辛そうな素振りは全く見せない。それどころか、常に笑顔を絶やさない。

ベルナルド「イクシタニアから続々と避難してきてる!ロザリオのやったことは間違ってなかった!」
ロザリオ「凄いのは……凄いのはアンヌ陛下よ」
ベルナルド「なれるよ。あの方のように……ロザリオも」
ロザリオ「……だといいね」

これは劇中でも特に好きなやり取り。
誇らしげに辺りを見渡しながら、ロザリオのこれまでの頑張りを力強く肯定する。
ずっとそばでロザリオの努力を目の当たりにしてきて、ロザリオの国と市民への熱い思いを知っているからこその言葉。
ロザリオは根っから真っ直ぐで情熱のある強い女性で、民衆のためにずっと矢面に立って最前線で戦って、壁にぶち当たってもめげずに歩みを止めようとしない。普通ならどこかで挫折してもなんらおかしいことはないのにここまで折れずに頑張れているのは、もちろん彼女が芯の強さを持ち合わせているからこそではあるけれど、きっとベルナルドの支えもあってのことなのだろうなと思う。

薄暗くも優しさに包まれた避難所に、突如忌まわしい空気が蔓延る。ボルマン宰相、マリア・グランデが訪ねてきたのである。二人はアンヌを陥れるために協力し、"アンヌ陛下が海賊行為を行った"という話をでっち上げる。呆れたアンヌは隠していた兵を出すも、避難民に紛れて入国していたソルバニアノッソの兵士が続々と現れ、コルドニアの兵士達に襲いかかる。

ボルマンが現れた時、ベルナルドは咄嗟にロザリオを庇うように腕を伸ばしてロザリオの前に立ちはだかる。
続いてマリアが出てきた時にはロザリオの後ろに回り、すぐに戦闘に入れる位置につく。
ここでもまた番犬のようにグルグルと威嚇するように、物凄い眼光でボルマン達を睨みつけている。

話は逸れるけど、この場面はベルナルドが戦闘モードに入る直前、脱いでから丸めて手に持っていたエプロンを上手の舞台裏めがけてポーン!!とぶん投げる仕草がちょっと面白くて好き。ちなみにその後剣を抜く時に鞘もぶん投げる。誰が回収してるんだろう(メタ発言)。

いざ戦闘に入る直前、ボルマンが「アンヌを捕まえろ!ついでにその、目鼻立ちのハッキリした黄色い小娘(ロザリオ)も」と言った時のベルナルドの顔が面白い。(黄色い小娘?……あ、ロザリオのことか……え、……は?)みたいに眉を下げてキョロキョロしてる。

ソルバニアノッソの兵がコルドニア兵に襲いかかり、ベルナルドも参戦する。コルドニア兵は不意をつかれていたのですぐに劣勢になり、ベルナルドは一人ソルバニアノッソの兵に上手側に追い詰められる。

ロザリオ「ベルナルド……!」

剣を構え息を整えるも、ソルバニアノッソの兵4人vsベルナルド、の図になっており、これはかなり不利な状況。

でも。しかし。

ここでソルバニアノッソの兵をなぎ倒し、ボルマンとマリアを捕えることができれば。

最高。すげぇカッコイイ。光の勇者。めっちゃ英雄。大功績もいいとこ。何より、今度こそロザリオにいいところが見せられる。

やるしか、ねぇ。

チャキッ、っと剣を鳴らし、深く腰を落として剣を構える。この勝負、白星を上げるのは俺____

ティロリロテテンテティロリロリ~ン🎶

……え?

と、辺りを見回すベルナルド。

(ファ○リーマートの入店音……のコピーライトにギリギリ引っ掛からない)妙に聴き馴染みのある音と共に、ぬるっと姿を現したのは。

ムッシュ「ムッシュ・ド・ニンジャは忍びでござる!!」

爽快なBGMと共に現れたのはそう、あの時の。
ベルナルドは未だにピンと来ていない様子で(……誰?)と見つめている。
そしてその後すぐに、ムッシュ・ド・ニンジャが俺の名前を知らなかったあいつであることに気づく。
(あっ、あぁーーっっ!!あの時の!!あいつ!!!)と驚いた後に、やれやれと肩を落として大きなため息、うんざり顔。

ロザリオ「この前助けてくれた……!!」

ロザリオのこの台詞でベルナルドは目を大きく開いて、ロザリオとムッシュを交互に身体ごとキョロキョロと。
(くっっっそ、あいつ、ロザリオに喜ばれて……っあぁーーっ!!!)って多分思ってる。

マリア・グランデの腹をぶん殴り、「ここは拙者が食い止める!今のうちに逃げるでござる!」と見事な剣捌きで兵士達をボコボコにはっ倒していくムッシュ。

またしても彼に見せ場(?)を持っていかれてしまったベルナルドは、嬉しそうにムッシュに笑顔を見せるロザリオを見て「っあぁ゛!!くっそ!!(※言ってない)」という顔で、長い脚を振り上げてダンダカダンダン地団駄を踏む。友達がみんな持ってる新作のゲームを自分も買って欲しかったのに「みんなって誰?言ってみ?」と言われてしまった時の小3男子のような見事な地団駄。可哀想で可愛い。

そして客席ですら、ほとんどのお客さんがムッシュ・ド・ニンジャを見ているので、ベルナルドのこの地団駄に気がつく人は多分だいぶ少ない。悔しがってるんですよ、彼。誰か慰めてあげて。ね。お願い。

ソルバニアノッソ兵4人vsベルナルドは正直危なかっただろうから、ムッシュ・ド・ニンジャが来てくれてよかったんだよ、なんて口が裂けても言えない。

結局ベルナルドは、ムッシュの剣に守られながらなんとか速い足で兵士達の攻撃を切り抜け、先に逃げたアンヌ陛下とロザリオを追いかけてめちゃくちゃ走る。走って逃げる。この時のベルナルド、本当にめちゃくちゃ速い。

ムッシュ・ド・ニンジャの登場により危機を免れたロザリオとベルナルドは、追っ手から逃げる際にアンヌ陛下とはぐれてしまう。必死にアンヌの名を呼び辺りを見渡すが、捜せど捜せどアンヌの姿は見つからない。

ロザリオ「陛下…!」
ベルナルド「アンヌ陛下!!」

腹の奥から出した大声は虚しくも山に消え、アンヌからの返事はない。

ベルナルド「はぐれた?そんな……っ」
ロザリオ「どこに行ったのかしら……ご無事だとは思うけど……!」

不安を抱えながら逃げ続けるロザリオとベルナルドに、ボルマンの息のかかったコルドニア兵であるミザッカ将軍が追いつき、アンヌの姿を必死に捜す二人を見て嘲笑う。

ミザッカ「なぁんだ、アンヌじゃないのか!……が、まあいい。お前達だけでも手柄にはなる!!」

ロザリオとベルナルドに襲いかかろうとするミザッカ。

……もしや。
もしや、これは。

ここにいるのは自分とロザリオ、そして敵。

これは…………

ベルナルド「彼女に手は出させない!」

やっと、やっと本気の見せ場だ……!ロザリオの身は、俺がこの剣で守り抜いてやる!
今度こそ、この勝負、凱歌を奏するのは俺____

🦅「クァ〜〜〜ッッッ!!!」

深く腰を落とし剣を突き立てたベルナルドの目に映ったのは、ミザッカに襲いかかる謎の大きなアンヌ

鷲の攻撃によって前が見えなくなり、もがくミザッカ。すかさずロザリオがミザッカの口に気絶飴を放り込み、見事な連携でミザッカの撃退に成功する。

ロザリオ「今のうちに逃げよう!」
ベルナルド「お……おう」

駆け去るロザリオとベルナルド。

…………

………………

本当に。

本当に、舞台上に乗り込んで、ただ何も言わずそっと肩に手を添えてあげたい。

大丈夫。君はよく頑張った。大丈夫。

……うん、大丈夫。

誰も「ロザリオの方がしっかりしてるんじゃ……」なんて言わないから。大丈夫。

ロザリオ、ベルナルドとはぐれてしまったアンヌは、マリアの手下であるラビータ率いるソルバニアノッソ軍に追いつかれ、数発殴られた後に滝壺に落下し、その衝撃により今までの人生の一切の記憶を失ってしまう。

第一幕の終了。
頭に残るのはベルナルド、めっちゃ可哀想でめっちゃ可愛いの一言に尽きる。

とにかく純粋で、どれだけ険しい道を歩んでも一切弱音を吐くことなく、常に笑顔を絶やさずに見返りの求めない優しさを民衆に振り撒く。
ロザリオを一番に支え、自分があるべき姿、成すべき役割を全うする。

第一幕では、そんなベルナルドの正義感の強さと純粋さ、ロザリオにいいところを見せたいけど全然上手くいかない不憫で可愛い部分はもちろん、感情がそのまま顔に出ちゃうところだとか……ベルナルド・アミスタという人間がどんな人物かを知ることができて、彼の等身大の魅力にぐっと心を鷲掴みにされるような、そんな感じ。

変わって第二幕では、個人的に、
・ラウルとベルナルド
・エリザベッタとベルナルド
ここのそれぞれの関係性に心を動かされて、ベルナルドだけでなくその他の人物の心情の変化もよく見えるのでとても好き。


第二幕 薔薇は気高く去る
──そのパンを…

マリア・グランデはボルマンと手を取り、自国のソルバニアノッソと、コルドニア、イクシタニア、ボスコーニュを併合することに成功させる。己の権力を振りかざして人々に重税を課すなど、やりたい放題のマリアとボルマン。
ロザリオ、ベルナルド、ケッペルの三人は、そんな横暴な政府に反抗する"レジスタンス"として、苦しむ民衆を救うために動き始める。

まずはビジュアル。
一幕の衣装とは打って変わって、全体的に迷彩カラーの落ち着いた服装。長袖のシャツは腕まで捲り、その上にベスト、後ろが編み上げになったパンツ。ひとつに結っていた髪は下ろされている。
騎士の正装と比べると随分と軽装なので細長さが増して見える。本当に折れそう。

吟遊旅団の歌に乗せて、ロザリオとベルナルドとケッペルの三人が登場する。
ベルナルドはこの時銃を構えている、けど……。一幕のベルナルドを思い返すと「……ベルちゃん、それ、撃てる?」って言いたくなってしまう。いや、ほんと、ごめん。

占領下のコルドニアの市街で、人々が飢えに苦しんでいる。そこへ現れた、ボルマンの手下であるデカールとミザッカ、その他兵士達。コバルとラウルの姿もある。彼らは民衆へ「ボルマン宰相のパンだ、有難くいただけ」とパンを配り始めた。
喜ぶ民衆達。各々がパンを手に取り、その香ばしさに頬を溶かす。そんな中、ラウルは民を守るために併合を受け入れたことを「本当にこれでよかったのだろうか」と思い悩んでいた。

ボルマン宰相のパン。
もちろんこれは、例の麻薬効果のある塩"パライソブランカ"がたっぷり練り込まれた危険なパン。

ミザッカの「ほぉら、食べろ!!」の合図で、民衆は大きく口を開けてパンを頬張ろうとする。

瞬間、民衆の動きは、突如聞こえた大きな声によってピタリと止まる。

ロザリオ「待って!!!」

民衆が毒入りのパンを食らう既の所で、レジスタンスが駆けつけたのである。

レジスタンスは民衆に、パンの代わりに別の食料を配り、ラテン調の歌に乗せて「政府が配った塩は使うな。その塩は毒だ」と説明を始める。

(ラテンダンスは物語の内容には関係ないのであえて触れないけど、ラテンダンスが始まる直前のベルナルドの「ハッ!!」、あれ本当に縦に長すぎてびっくりするよね)

もしも食っていたら、待ち受けていたのは死。
それに気づかされた民衆達はパンを放り投げる。

そのレジスタンスの行動に一番に反応を示したのはラウル。

ラウル「どういうことだ……!」

と詰め寄るラウルに、ケッペルはパライソブランカの中毒性と、マリアとボルマンの魂胆を説明する。
「君もその手助けをするつもりか?」とケッペルに諭されたラウルは苦い顔をして顔を背ける。

ロザリオ「マリアとボルマンに伝えろ!必ず祖国は取り返す。我々はレジスタンス、トルネード党だ!」

ここでレジスタンスの三人が客席を向いてバシッッと胸に手を当ててポージングをするところ、可愛くて好き。

(話は逸れてしまうけど、ロザリオがアンヌを心から尊敬しているあの関係性がとても好きなので、"トルネード党"という名付けには少しグッときてしまう)

もちろんこんな状況を兵士達は許すはずもなく。
レジスタンスを捕らえるために襲いかかってくる。
その時の、ベルナルドの台詞。

ベルナルド「売国奴達に負けてたまるか……っ!」

劇中で一二を争うほどに好きな台詞。

国を愛しロザリオを傍で支えてきたベルナルドの"怒り"が、鋭い視線から、力の込められた腕から、ビリビリと空気が振動するみたいに伝わってくる。
軽蔑を含むその目にはメラメラと炎が燃え滾っていて、ベルナルドの本気の度合いをヒシヒシと感じる。

戦うレジスタンスと兵士達。
そして、その流れに反するように、レジスタンスのほうへ歩みを進める者が一人。
ラウルだった。

コバル「どうしたラウルくん、早く君も戦え!」

ラウルはソルバニアノッソの軍門に下った証である紫色のタスキを勢いよく外し、レジスタンスに背を向け剣を突き立てる。

ラウル「加勢するぞ、ロザリオ!」
ロザリオ「ラウル……!」

幼なじみである二人が、国民を思う気持ちは同じなのに、なぜ反発し合ってしまったのか。
そんな悔しさから解き放たれる瞬間。
ラウルもロザリオの芯の強さをずっと近くで見てきている人間のうちの一人。だから、"ロザリオを信じる"ということがラウルにとって何よりも大きな決め手になったのだと思うと目頭が熱くなる。

ラウル「イクシタニアの誇りを守っているのは彼女だ!」
ベルナルド「それだけではない!コルドニアの女王の魂も引き継いでいる!」

アンヌ陛下が行方不明のまま半年間、彼らはずっと国に反発して民衆のために戦ってきた。特にアンヌ陛下を心から慕うロザリオにとっては不安で仕方がなかったはずなのに、"コルドニアの女王の魂も引き継いでいる"、傍で見守ってきたベルナルドにそんな風に言わせてしまうほどに彼女は情熱だけで走り続けてきた。

この半年、きっとベルナルドはロザリオの言葉を信じて、障害にぶつかる度に励まし続けてきたのだと思う。
誰かを信じるって単純に見えて実はそう簡単なことじゃないから、そうやってずっと信じ続けてくれているベルナルドに、ロザリオもきっと救われてきたんじゃないかな。

ベルナルドの言葉に「その通りだ」と同意するラウル。

ラウル「だから僕も……ボスコーニュの誇りに生きる!」

この場面は全体を通して、ラウルの気持ちの移り変わりが色濃く見えるところ。一人の青年が重圧に悩まされながらも「ボスコーニュの誇りに生きる」と自分の中での"正解"を見つける瞬間。それを見届けられて、なんだかじんわりと胸が熱くなる。
そんなラウルに喜びの表情を見せるロザリオ、ケッペル。
レジスタンスもラウルも、目指すべきは国の平和、民の安全。同じ場所へ向かっている者同士が手を取り合うこのシーンは何度観ても感動するところ。

ラウル「聞け!ボスコーニュの輩よ!僕に続く者は、共に戦え!」

ラウルの加勢により、形勢は一気に逆転する。
見事コバル、ミザッカ、デカールを追い払うことに成功した、ラウルも加わったレジスタンス。
国と民を思う者達の気持ちが、ここでひとつに重なった。

民衆を見送り、トルネード党のアジトへと移ったロザリオ、ベルナルド、ケッペル。
ラウルは空に羽ばたいている鷲を見つけ、その姿を追ってどこかへ行ってしまう。
が、すぐに戻ってくる。頭にそのアンヌを乗せて。

まず、アンヌとは。ラウルの兄であるボスコーニュ公国のシャルル陛下が飼っていた鷲のこと。シャルルはアンヌ(アンヌ・デ・アルワイダのほう)に首ったけだったので……

このトルネード党のアジトのシーンでは、とにかくこのアンヌがいい味を出す。というか、ラウルとアンヌのコンビネーションが。
綺麗な淡いブルーのボスコーニュの正装を身に纏ったラウルが、頭にクソデカ鷲を乗っけて真剣な顔でアジトに入ってくる。このシュールさったらない。

一方ベルナルド。ラウルがレジスタンスに加勢した時こそ受け入れていたものの、いざピンチを乗り切って冷静になってみると。この状況、面白くはない。

脚を開いて椅子に座り、太腿に腕を乗せる形で前のめりになりながらナイフを布で拭いている。それはそれはつまらなさそうな顔で。

アンヌを頭に乗せてアジトに入ってきたラウルを一瞥した時のベルナルドの顔、

😒←これ。

ロザリオとケッペルはラウルにパライソブランカの秘密について改めて説明をする。

ケッペル「デルソル島の塩がコルドニアに来ていることを知って戻ってきたのだが、まさかこんな大変な事になっているとは……」
ロザリオ「巻き込んでしまって、すみません……!」

この時、ずっと不貞腐れた顔をしていたベルナルドが、ロザリオがケッペル先生に頭を下げるタイミングで慌てて立ち上がって一緒にペコッと一礼するのが可愛いポイント。

そこで少し平常心に戻ったかと思いきや、ベルナルドの胸の奥の炎は次のケッペル先生の言葉で完全に燃え盛ってしまう。

ケッペル「いいや、仕方がない。それよりも、教え子の二人が協力することになって嬉しいよ……(しみじみ)」

メラァ…とまた表情が曇るベルナルド。
でも、考えてみれば自然な反応かもしれない。だって……好きな子に幼なじみがいて、昔は同じ家庭教師の元で一緒に勉強をしていて……それだけでただでさえ羨ましいのに、その贅沢な男は今、頭にクソデカアンヌを乗っけてスン…としている。

なんなんだよ。
今まで散々ロザリオを傷つけてきたくせに。
民を犠牲にしてきたくせに。
どの面……いや、どの鳥下げてここにいるんだよ。

ってなるのも、わかる。

我慢ならなくなったベルナルドは椅子にドカッと座り直し、小さなテーブルの反対側の椅子に座っているラウルに物凄い目つきで威嚇を始める。

ベルナルド「俺はまだ、信じてねぇけどな(ドチャクソガラの悪い声)」

ギリっとラウルを睨みつけた一秒後。
スーーーッ……っと、ベルナルドの視線がラウルの目から、アンヌの目へと移動する。

ベルナルド「てかその鳥はなんだァ!!!!(クソデカ声)」
アンヌ「グァ〜〜〜ッッ!!!」

このシーンは色んな意味で好き。もはや感動もする。
なんてったって母親譲りのクソデカボイス。
そしてベルナルドが劇中でしっかりとお客さんの笑いを取れるシーン。

ラウル「……鷲だよ?」
ベルナルド「鷲はわかる!見ーれーばわかる!!いつの間にそんなもの頭に乗っけてんだよ!そんなふざけた格好の男信じられるかァ!!!」

見ーれーばわかる!!でテーブルに両手をバン!と叩きつけながら立ち上がって鷲を指さすところ。
ピーンと伸びてるからかいつも以上に脚が長すぎてビックリするんだけど、それは置いといて。
そんなふざけた格好の男信じられるかァ!!!で座り直して腕を組んで、ふんっ、と顔を背ける。

いや、あの
なんて言うか……

めちゃくちゃガキ

あ、うそ、ごめん、口が滑った

でも、だがしかし、これがベルナルドのいいところ。……ベルナルドのいいところっ✨(CV.ロザリオ)

だって、そりゃそう。
ずっと傍でロザリオを見守ってきて、ラウルのせいで苦しんだロザリオも見てきてる。そしてラウルにも言い分があるにしろ、民を傷つけていたことに変わりはない。
そんな男が今更、こちらの味方になるだなんて。

おまけにふざけた格好もしているし。
認めたくない、こんな奴。

でも、そう思いながらも、きっと頭のどこかでベルナルドはわかってる。
こいつも自分達と同じように国民のためを思っていて、その気持ちに嘘はない。
ロザリオだって、こいつが仲間になってくれる方がきっと喜ぶ。
わかってる。わかってるけど、でも。

モヤモヤと落ち着かないベルナルドに、ロザリオは容赦なく淡々と答える。

ロザリオ「いいえ。鷲がいるから信じられる」
ベルナルド「えぇ゛〜〜〜っっ?!??!なんで!!!!!!!(クソバカデカ声)」

(余談だけど、私の記憶の限りでは初観劇の時(大阪公演)は戯曲本の淡白な雰囲気のまま「そんなふざけた格好の男信じられるか!」「えー!なんで?」くらいのわりと落ち着いたテンションだったと思うんだけど、回を重ねるごとにクソデカ声の持ち主エリザベッタの息子としての魂が燃えてきていてすごく面白い)

椅子から立ち上がってびっくり仰天のベルナルド。ロザリオはそんなベルナルドに、この鷲は私達を助けてくれた鷲だよ、と説明する。

ロザリオ「難民の避難所から逃げ出す時に!」
ベルナルド「あァ?!?(あまりにも治安の悪い声)」

そう、あの鷲。

あの時の、あの鷲。

アンヌ陛下とはぐれて、、ミザッカに襲われそうになった時、見事に出番を奪ってくれやがった、あの鷲。

ベルナルド「…………あっ、……あの時のか……」

ちっ、と舌打ちでもかましそうな勢いで、眉を顰めながら一歩踏み出してロザリオ達に背を向け、怒りをあらわにする。

マジでめちゃくちゃガキ

ラウル「この鷲の名は、アンヌ!」
ロザリオ「アンヌ?」
ラウル「シャルル兄の……親友だ!」

ここからはラウル劇場。
頭にアンヌを乗せながら、必死にこれまでの自身の葛藤を語り始める。ダイナミックな動きで。

ラウル「僕は怖かっただけだァ!!!逃げてたんだ!!僕は!!!(台パン)」
🦅「グァ〜〜ッッ……」

本当に面白い。
あとこのラウル劇場を見ている時のベルナルドの顔。
「な、なにしてんだ……」って困惑した顔。
さっきまでプンスカしてたくせに、一応ラウルの話には耳を傾けるし。

アンヌを一旦放して、話を仕切り直すレジスタンス達。
(これまた余談だけど、ラウルの「よぉ〜し!アンヌ!ちょっと遊んでこい!」の「よぉ〜し!」の言い方が、手紙でのシャルル兄の喋り方リスペクトで良い)

ラウル「色々とすまなかった……ロザリオ」

と頭を下げるラウルを、腕を組んで険しい顔で口をとんがらせながらじっ……と見ているベルナルド。
今更謝ったって、ロザリオもきっと怒って……

ロザリオ「もういいよ」

……へっ?

って顔が、本当にわかりやすい。
え?え、許しちゃうの?って顔で、ロザリオとラウルを交互に見るベルナルド。

ロザリオ「これから一緒に、戦ってくれるなら!」

えぇ……マジ……?許すの……?え〜〜……
って、顔に書いてる。本当にわかりやすい。ベルナルド、喜怒哀楽が全部顔にそのまんま出る。

その後、勢いよく「ああ!」と返事をするラウルの言葉を遮るように、ラウルとロザリオの間にずいっと入り込んで「アンヌ陛下もかあさんも、きっと無事だ!」とロザリオに笑いかける。

(ここで母のエリザベッタも行方不明であることに気づかされるから、陛下に加えて母も見つからない状況で半年も、よく頑張ったよ……ベルナルド……と泣きそうになる)

ラウルがロザリオに近づくのを阻むように一歩踏み込んだベルナルド。何万回だって言うけど、本当にわかりやすい。

その後、ケッペル先生が「製塩所の場所がわかれば……」と頭を抱えると、すぐさまラウルが「その場所ならわかる!」とひと言。
ボルマンの補佐の仕事をしていたから、場所なら聞いている、と。
そう言うラウルを、思いっきり「えっ?」と書いてある顔(書いてある顔)で凝視するベルナルド。
え?知ってんの?マジ?と身体ごとラウルを覗き込む。

ラウル「ニルヴァールって街だ!」
ロザリオ「ニルヴァールね…!」

今度はラウルに微笑むロザリオを目を見開いてガン見するベルナルド。そしてラウルとロザリオを交互にキョロキョロと見る。
きっと、ラウルが味方についていきなりロザリオの役に立っていることが気に食わないのだと思う。
わかるけど。いや、わかるけどね。
気持ちはわかるけど。

それから気を取り直して四人はブルブルジュースで乾杯をする。新生レジスタンスが誕生した。





──ブルブルジュースの秘密

山間の製塩所で、人々が無心にパライソブランカを砕いている。安い給料で働き、塩の麻薬効果に侵される人々。そんな闇に包まれたニルヴァールに、記憶を無くしたアンヌと、彼女を献身的に支えるエリザベッタの姿があった。
アンヌは記憶を失った今、金持ちの貴族から金目のものを盗んで貧しい人々に分け与える義賊"ジャンヌ"として、この薄暗い街で半年間暮らしてた。
そこへ現れたボルマン一行。アンヌ、改めジャンヌの姿を見つけて驚き、口論の末アンヌを捕らえようとするも、またしてもムッシュ・ド・ニンジャの登場により追い払われてしまう。

ムッシュの登場に驚いたジャンヌは、ふと感じ取った匂いに反応する。

ジャンヌ「あんた、前に会ったことが……」

その言葉でカウンターの下に潜り込んだムッシュ・ド・ニンジャは、再びカウンターから顔を出すと、まるで別人の姿へと変わった。

五右衛門「天下の大泥棒、石川五右衛門様だ!」
エリザベッタ「五右衛門……!」

ムッシュ・ド・ニンジャの正体は五右衛門。
そして五右衛門は"あいつら"の動きを探っていたらここに辿り着いた、と経緯を説明する。

ジャンヌ「あいつらァ?」

そこへ現れるレジスタンスの四人。
アンヌとエリザベッタの姿を捉え、安堵の表情を見せる。
ベルナルドはここでやっと母の安否を確認することが出来て、きっと心底安心したはず。
ここでエリザベッタは、レジスタンスの姿が目に入った瞬間こそ(みんな、よかった……!)と喜びの表情を見せるけれど、すぐに(どうしよう、この子達とジャンヌが会ってしまったら……)と迷いの表情に変わる。この心情の移り変わりが個人的にとても好き。

ロザリオ「アンヌ陛下……!よかった、きっと生きていると信じていまし……」
ジャンヌ「何、何??」

アンヌに飛びつこうとしたロザリオを雑に払うジャンヌ。
困惑するロザリオに、ジャンヌはとどめを刺す。

ジャンヌ「で、アンタは誰?」

あなたはコルドニアの女王、クイーンアンヌだと説明しても、自分がそんな悪どい貴族なわけがない、と否定するジャンヌ。
そんな変わり果てたアンヌの姿に言葉を失うレジスタンス。

納得がいかない様子のロザリオに、エリザベッタは一歩踏み出し、「この人はジャンヌよ」と複雑な表情で紹介する。

すかさず、「どういうことだよ、かあさん」と母へ詰め寄るベルナルド。

エリザベッタ「ベルナルド……元気そうね」

ベルナルドの肩にそっと触れ、一瞬目を合わせたものの、気まずさからすぐに目を逸らしてしまうエリザベッタ。
ベルナルドはそんな母を見て、怒りと悔しさで肩を震わせる。この時の怒りや失望、悲しみの入り交じった複雑な表情は見ているだけで心が痛くなる。ベルナルドはこの半年間、母と陛下の行方が知れずとも、そんな不安に押し潰されることなく国のためにロザリオを支えながら駆け抜けてきたから。

ベルナルド「何言ってんだよ……生きてるなら生きてるとどうして連絡くれなかった!!おまけにアンヌ陛下をこんな所に匿って、なんのつもりだ!!」

ケッペルに窘められるも、怒りで震える肩は収まることを知らない。
ベルナルドはわかりやすいし感情がすぐ顔や態度に出るけれど、それは素直な故の自然な感情表現であって、台詞があまり多くないこともあり、こうやって自ら感情を爆発させる姿には胸を打たれる。

併合の騒動の末に母が行方不明になったと知ったとき、きっとベルナルドは人生で一番と言っていいほど大きな不安に襲われたんじゃないかと思う。時代も時代、状況も状況なので、家族を失う覚悟はきっと幼い頃から持ち合わせていたとは思うけど、それでも母は唯一無二の存在。きっと生きていると信じていた、というよりは、どうか生きていてくれと願っていたはず。そんな母と、やっとの思いで再会できた。母は生きていた。でも……

ベルナルドは母をちらりと見てから、背を向けるように少し離れた椅子に座り、俯く。

母との再会のシーンが、笑顔で抱きしめ合えるようなシーンではなく、結果的に蟠りが生まれるものになってしまった。
ベルナルドもエリザベッタも、お互いを心から心配していたはずなのに。
この、ベルナルドはロザリオを、エリザベッタはアンヌを支えてきたからこそのすれ違いが、誰も悪くないせいで余計に辛くなる。

アンヌがジャンヌであることを納得できないロザリオと、生きてさえいてくれればジャンヌはジャンヌのままでいてほしいと願うエリザベッタ。二人がぶつかり、重苦しい空気が流れる。

そんな中、空気を丸ごと入れ替えるように、大きな声で「ケッペル先生!」と叫びながら陽気に部屋に入って来たのは、デルソル島の島民達。

この時、デルソル島の島民が歌って踊り出すので、エリザベッタがロザリオ、ラウル、ベルナルドの三人に「この方たちはデルソル島の島民の方で…」って感じで軽く紹介する仕草をするんだけど、その時のベルナルドの反応が年相応というか、素直になれない様子が現れていてとても好きなところ。

エリザベッタに対してロザリオもラウルもぺこりと一礼する感じ、でもベルナルドはエリザベッタに対して納得がいかず怒っている真っ最中だから、思いっきり目を逸らしてため息をつく。それを見たラウルが(……おい、やっと会えたんだろ)って感じでベルナルドの背中というか腰あたりをポンっと叩く。
このシーン、十七歳の青年らしいちょっと子どもっぽくて意地っ張りな部分が露骨に現れていて好き。

そしてここは、物語の展開を大きく左右する新事実が発覚する場面でもある。

パライソブランカの粉塵を大量に摂取しているはずのデルソル島の島民たちが元気であることに違和感を覚えたケッペルは、同じく中毒症状の全く出ていないジャンヌやエリザベッタ、レジスタンス達の共通点を見つけ出す。
それは"ブルブルジュースを飲んでいる"ということ。
ブルブルジュース……つまりブルブルの実には、塩の中毒成分を中和する効果があることがわかった。
この事実によりボルマンとマリアの野望を止められる希望が見え、ロザリオはジャンヌに「一緒にやりましょう!」と協力を仰ぐ。しかしジャンヌは断り、このまま義賊として生きていくと宣言する。

(またまた余談。ケッペル先生がブルブルの実の効果について歌に乗せて説明している時、ロザリオ、ラウル、ベルナルドの三人が階段にちょこんと集まって座ってうんうんと話を聞いているのが、小学生の体育の授業の説明中みたいでとても可愛い)

ジャンヌの宣言に反論するラウル。
そこでエリザベッタはジャンヌを庇うように、

エリザベッタ「もういいでしょう!これ以上巻き込まないで、彼女のことを思うなら。……黙って去って」

と苦い顔で声を荒らげる。

その言葉に、ふつふつと怒りの感情を抱き、エリザベッタを睨みつけてエリザベッタよりも更に大きく、強く、声を荒らげて怒り出す。

ベルナルド「……なんだよそれ。なんだよそれ!!ロザリオはずっと頑張ってたんだ!アンヌ陛下は生きてる、きっと戻ってくる、だからそれまで自分達がコルドニアの自由を守るんだ、そう言ってレジスタンスのリーダーをやってたんだ!!それなのになんで……」
ラウル「ベルナルド!!……もういい」

先ほどよりも思いが強く、心の奥のもっと深い部分から滲み出た悔しさを全てぶつけるような怒りの声。
コルドニアを守るために努力してきたロザリオをずっと見守ってきたベルナルドにとって、アンヌ陛下をやっと見つけられた時にかけられた「これ以上巻き込まないで」「黙って去って」という言葉は、相当苦しかったと思う。
自分が苦しいというよりは、「せめてアンヌ陛下が見つかるまでは自分がこの国を守らないと……」と懸命に動いていたロザリオがこの言葉を聞いた時、きっと身が張り裂けるほど悲しい思いをするに違いない、と、ロザリオの苦しみを想像して胸が痛んだんじゃないかと。

冷静さを失ったベルナルドを止めたのはロザリオ。
肩にそっと手を置いて「もういい」とひと言。
ベルナルドは声になるかならないかというほどの声量で「えっ……」と声を漏らす。
ロザリオは笑っているけれど、その「もういい」という言葉には悲しみや悔しさ、諦めの気持ちが詰まっていることに、ベルナルドは気づいているはず。でもだからと言ってどうすることもできないのもわかってる。だからもう、何も言えなくなってしまう。

ロザリオは己の胸の中に生き続けているアンヌを思いながら、ジャンヌに謝罪と別れを告げ、作り笑いをしたまま部屋を走って出て行く。
それに続くラウルとベルナルド。

この時、ベルナルドは部屋を出る直前、扉を開いてから一瞬足を止め、母の方を複雑な表情でじっと見つめて、それから走り去る。

もしかしたら、母に会うのはこれが最後かもしれない。

この瞬間、ベルナルドの心の中には本当に色々な感情が渦巻いていて、これでいいのだろうかと振り返ってどうにか説得したいという思いと、こうなってしまった以上もうどうすることもできないという諦めの思い、そして母の言い分はわかるけれど、ロザリオを思うとどうしても許せないという思い……など、複雑に入り交じった結果の"怒り"が生まれていたはず。

でも今真っ先にやるべきことは、ブルブルの実を使って民衆を救い出し、マリアとボルマンの野望を止めること。
ここでウジウジと立ち止まる訳にはいかない。
だから、行くしかない。
母のことは、"もういい"と、胸が引き裂かれる思いで振り切ったのではないかと思う。

ロザリオの父が崩御したあの時、アンヌ陛下とエリザベッタに「ロザリオの身は、必ず守ります」と誓い城を出たベルナルド。
彼はその誓いを、あの日から変わらず守り続けている。
だからこそ、彼にとって今のアンヌとエリザベッタの姿は"裏切り"に見えても仕方がない。

ベルナルドは胸の奥に失望感を残したまま、アンヌと母と別れることになった。


二幕のここまでのシーンのベルナルドは、可愛かったり面白かったり苦しかったり、見ているこちらの感情が本当に忙しい。

薔薇とサムライ2は、それぞれの正義と正義がぶつかり合い対立する場面が多く、悪の存在しない争いほど見ていて辛いものはないので、このターンはかなりモヤモヤと心が痛くなる。

十七歳にしてこんなにも大きな決断をいくつも迫られるベルナルド。
心がぽっきりと折れてしまってもおかしくない。
でも、彼の中の「人々を救いたい」という気持ちはずっとブレることなく走り続けている。

どうかその真っ直ぐな心を忘れず、どんな結果であろうと必ず幸せに生きて欲しい。そう思わせてくれる。

物語はいよいよクライマックス。
ベルナルドは母や陛下への苦い思いを抱えたまま。でも彼は逃げずに戦い続ける。全ては愛する国のために。



──新たな海へ

ブルブルの実を集めたレジスタンス達は、パライソブランカを海に溶かしマリアとボルマンの野望を止めるため、パライソブランカが収納されているという情報を得た倉庫へと向かう。
そこへマリアとボルマンと、彼らの仲間である兵士達が現れる。ロザリオの兄、コバルもいる。
パライソブランカがこの倉庫にあるという情報は自分が流したデマであると言うボルマン。騙されたレジスタンス達を嘲笑い、ブルブルの実が積まれた船を爆破させこの世から消し去ろうとする。

ブルブルの実の解毒効果を解明したことにより、有利な状況になったかと思われたレジスタンス達が、再び絶体絶命の危機に晒される。

ボルマンはレジスタンス達に「念の為ニルヴァールにも兵を送っておいた」と告げる。アンヌやエリザベッタがいる、製塩所のあるあの街。

ここでグッとくるのが、ベルナルドがボルマンの言葉に驚いた後に険しい顔で放つ台詞。

ベルナルド「よせ!かあさん達には手を出すな……!」

言ってしまえば母とは喧嘩別れのようなもの。
怒鳴って睨みつけて、最後は何も言わずに出て行った。
母との最後の記憶はそんな苦いもので。

もしかしたらもう会えないと覚悟はしていたかもしれないけれど、いざこの状況になった時、胸がちぎれてしまうような思いになったんじゃないかと思う。
あの時の怒りは母への愛があってこそのものだったのだとここでよくわかるから、本当に泣きそうになる。

そこへ五右衛門、そして記憶を取り戻したアンヌが登場し、マリアとボルマンが悪事を働いた証拠を叩きつける。
ブルブルの実が積まれていると思われた船には実はパライソブランカが積まれており、五右衛門とアンヌの参戦によって形勢は大きく逆転した。

悪者が退治される前のお決まりの悪あがきで、マリアは兵士達に「やっておしまい!!」と攻撃を指示する。

剣を突き立てた兵士達に立ち向かうべく、鞘から剣を抜いたラウルとベルナルド。

しかしその動きは、ロザリオの声によって制止される。

ロザリオ「待って!」

ここでロザリオが歌い上げる「愛を思い出して」は、聴く度に鳥肌が立つほど感動させられる。ベルナルドの話ではなくなってしまうけど、なんたって歌声がパワフルで心の奥の奥まで訴えかけてくるような情熱が込められてる。この歌が心に響かない人なんて一人もいないんじゃないかと思うほど。

自分の声で、兵士達に投げかけるロザリオ。
ロザリオはこんな不毛な戦いを少しも望んでいない。
そして、その気持ちは兵士達も同じなのではないか。
権力者の言いなりになるまま、訳も分からず戦い続けることに、なんの意味があるのか。
かつて幸せだった日々を、どうか思い出して。

そう強く訴えるロザリオに、ラウルは剣を仕舞い、

ラウル「そうだ。志あれば、剣を置いてくれ!彼女たちは必ず受け入れてくれる、この僕が証拠だ!だから……頼む!」

と膝をつく。
それに続きベルナルドも膝をつき、「頼む……!」と懇願する。

(このラウルとベルナルドがロザリオの意見を尊重して二人で協力する図、すごく刺さるんだよね……)

すると兵士達は皆渋い顔をして、ゆっくりと剣を置いた。ロザリオの熱い思いが、彼らの心の奥にしっかりと届いたということ。

マリアとボルマンはハビルへ呼びかけ、再び兵士達に「剣を持て」と指示をするも、全員が紫色のタスキを外し、剣を持とうとしない。
ロザリオ、ラウル、ベルナルドはそんな兵士達を見て微笑む。初めてレジスタンスの努力が報われたようで、本当に感動して泣きそうになる。

そしてそれに続き、ロザリオの兄であるコバルが剣を置く。このシーン、細かいところではあるけれど、ベルナルドのロザリオへの"守りたい"という意識が強く現れていてすごく好きなところ。

コバルが剣を置く前、一度鞘から剣を勢いよく抜き出して空へ向けるので、ベルナルドは「コバルがロザリオに剣を向けるかもしれない」と思ったのか、ロザリオを守るためすぐ後ろに立ちはだかり、腰を落として剣を抜く構えをする。
しかしそれは杞憂に終わり、コバルはすぐに膝をつき父親と妹へ謝罪の言葉を漏らし、地に剣を置く。

このベルナルドの行動に対して、すぐそばに居るラウルは微動だにせず、ただその光景を見つめているだけ。
ここのラウルとベルナルドの対比が、個人的にちょっと切なく思える。

ベルナルドは誰よりロザリオを守りたいと思っている。
対してラウルはおそらく、ある意味で"ロザリオは守らなくても大丈夫"と思っているというか。彼女は剣も扱えるし、何より逞しく強い女性であって、ラウルはそんなロザリオを幼なじみとして近くで見てきたから、そういった意味で彼女を"信頼"してる。だからこそ、この場面でラウルはわざわざ動こうとしなかったんじゃないかなと。(これに関しては本当に個人的な予想と解釈なので、真意はわかりませんが)

何があろうとロザリオを守るベルナルド。
ロザリオの強さに信頼を置いているラウル。

ここにベルナルドが一生踏み込むことの出来ない幼なじみとしての強い絆が見えるようで、なんだかなんとも言えない気持ちになる。

追い詰められたマリアとボルマンの元に、ラビータが姿を現す。ラビータはエリザベッタ達が捕らえて拘束していたが、逃げられてしまったようだ。
ラビータと合流したマリアは再び逃亡する。ボルマンもそれに続き、五右衛門とアンヌは彼らを追って走って行った。
残された兵士達とレジスタンス達。
最後の戦いが幕を上げる。

ラビータが「マァァァリア様ぁぁああああ!!!!」と入ってきた後、エリザベッタが「すみません、逃げられました…!」と追ってくる場面。

ベルナルドはここで初めて、エリザベッタの安否を確認できて、その時の安堵の表情がすごくいい。
ボルマンに「ニルヴァールにも兵を送っておいた」と言われた時、多分もうかあさんは……と諦めていたと思うから、ここで母が無事だったことがわかって、ふわっと頬を綻ばせる時、本当に本当に涙が出そうになる。

最終決戦。最後の殺陣。
なんといっても胸に刺さるのは、ラウルとベルナルドの共闘。
ハビルの強靭な刃を打ち返し、斬られそうになったところをラウルに守られ、ラウルが斬られそうになったところを守る。二人で共に闘う姿に涙腺がぶっ壊れてダムと化す。

このラストの殺陣はこれまでのベルナルドを見てきた身からすると本当に涙無しには見られなくて、ラウルとベルナルドの共闘はもちらん、ロザリオが劣勢になり倒れ込んで斬られそうになった時に剣を打ち込んで守るベルナルドだとか、それ以外にも剣を上手く扱えないながらもエリザベッタを守るために戦ってみる(戦ってみる?)ケッペル先生だとか。(※後にケッペルとエリザベッタは恋仲(?)になるので)
各々がこの場を乗り切るために必死に食らいつく。
これが最後。ここさえ乗り越えれば、きっと自由と平和が待っているはず。

そんな平和を願う彼らの思いが、やっと報われる。

戦いの最後、ラウルとベルナルドはそれぞれハビルとデカールに蹴っ飛ばされて倒れ込んでしまうんだけど、その時にロザリオが気絶飴をハビルとデカールにぶち込んで、その隙にラウルとベルナルドは彼らを倍返しで蹴り飛ばし返す。
このシーンも劇中で一二を争うくらいに好き。

まず、ハビルとデカールを蹴っ飛ばす時のラウルとベルナルドの「「おらぁ゛!!!!」」が最高。めちゃくちゃドスの効いた声色で、容赦なく敵をボコボコにする。
最終決戦のちょっと前あたりからラウルとベルナルドの関係性が対になっていて、それがここでよく現れていてグッとくる。それこそこの二人の共闘なんて最初は考えられないことだったから。

でも一個だけ。最終決戦前の気合い入れでラウルが「ロザリオ!」って言って、それに対してロザリオが「ええ!」って言うところ。
名前を呼ばれなかったベルナルド、「俺も!」って剣を構えるんだけど。
ラウルさん、あの、ベルナルドくんにも……あの……ちょっとでいいから何か言ってやって……ってなる。相変わらず不憫で可愛い。
レジスタンスに仲間入りした時も「加勢するぞ!ロザリオ!」だったし……
(ベルナルドの不憫さに拍車をかけているのはラウルだな…とここで強く思った。可哀想で可愛い)

見事兵士達をボコボコにはっ倒したレジスタンス一行は、残るマリアとボルマンを倒すため倉庫を去っていく。

その後ボルマンは五右衛門が捕らえ、マリアは実の息子であるマクシミリアンに諭され、悪は完全に滅びる。
ソルバニアノッソは新たな国王マクシミリアンにより各国の併合を解消し、四国に再び平和が訪れた。
アンヌは貿易商人として海へ。その代わりにロザリオが王となり、ラウルも兄を支える宰相へ就任する。それぞれが新たな人生への舵を取り、歴史を刻んでいくことになった。

清々しいほどのハッピーエンド。
勇者ヒーローが悪を成敗し、希望ある未来へと進んでいく。

薔薇サム2は、登場人物それぞれがそのハッピーエンドに至るまでに様々な葛藤や苦悩を抱え、それを乗り越えて成長していく言わば群像劇。
彼らの成長を見届けた後に残るのは、すっきりとした爽快感と、明日も頑張ろうと思える希望と活力。

終演後、寂しさよりも「ああ、よかったな」と心から余韻に浸れる舞台で、きっと薔薇サム2を観たこの思い出は今後一生心に深く刻まれるだろうなと強く思った。

ベルナルドに焦点を当てて解釈をするのは本当に楽しくて、でも言ってしまえば彼は主役ではなく、ヒーローを支える多くの人間のうちの一人。そんなベルナルド一人を摘んだだけでも、こんなにも色々な背景や感情が見えてきて、全員が己の人生の主人公であると強く感じさせられる物語でした。ほんっっとに素敵だった。

もちろんベルナルドだけでなく他のキャラクターも魅力的な人物ばかりで、それぞれの関係性にも胸を打たれて……超がつくほどガサツだったり頭にマカロンくっ付けてたとは思えないほど落ち着いて信頼し合ってるアンヌとエリザベッタとか、育ての親として可愛がっていた一人の青年が外の世界に触れていくことを支えるアーヤとマクシミリアンとか、もう本当に全員にスポットを当てて一人ずつ長々と語りたいくらいには大好きな関係性が多すぎる。

だから、今回は一人の若い騎士に注目して色々と書き連ねてみたけれど、薔薇とサムライ2についてもっと咀嚼した文章もいつか書けたらいいな と思う。

ベルナルド。
その強い正義感と冷めない情熱、愛に溢れた優しさで、たくさんの素敵な感情を抱かせてくれて
幸せな時間を届けてくれて、ありがとう。

(いつかロザリオにカッコイイところが見せられるといいね)

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