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大人の欠点

大人の欠点は、しゃべりすぎることかもしれない。

柚木麻子の小説「本屋さんのダイアナ」。何かも正反対な2人の女の子が出会い、互いに惹かれたり反発したりしながら成長していく物語。

私が図書館で借りてきたのを中2の娘が先に読んだ。一旦読み終わった後もパラパラページをめくったりして、なにか感慨があるようだった。続いて私も読んだ。興味深いストーリーで、先が気になって数時間で読み終えてしまった。
娘の年代の女の子たちの物語ということで、娘がなにを思ったのか気になった。ただ、10代での妊娠など微妙な内容もあり、なんだかタイミングが難しかった。
その日の夕食後、リビングで私は夫に本の感想を話した。近くのソファには娘が座っていた。夫に向かって話しつつも、私の本心では娘に聞いてもらいたかった。
ひとしきり話し終えて、娘の方を振り返り、「今の、聞いてた?」と聞いたら、彼女の反応は「……へ?」。自分も読んだ本についての話題だから、聞いているかと思ったのだが、彼女は自分の世界にいたらしい。
そこで、私は、今しがた夫に言ったことを一から娘に語り直した。
「ダイアナと彩子が〈誰かに何かしてもらうのではなく、自分が誰かにしてあげたい〉と思うようになるのって、成長だと思う。最近私もそんなこと考えてる。でも、16歳で1人で出産したというダイアナの母は理想化された人物だと思う。あんなふうに真っ直ぐに生きていける大人はそうそういない」
けれど、やはり娘の反応は薄かった。不完全燃焼な敗北感を感じながら、私は寝室に引き上げた。

数日経って、今朝、掃除機をかけながら考えていた。
「なにも話さなくてよかったのかも」
同じ小説を読んで、それぞれ何か感想を抱えた。それだけで良いのでは。わざわざそれを語ろうとする必然はない。相手の感想を聞き出そうとするのは野暮。

まったく、大人はしゃべりすぎるからいけない。


タイトル画像:
先日の鴨川。梅雨の晴れ間、川面がきらめく。

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