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電車特急の先駆け。ニイロクのモデルを訪ねる(まいてつ)

e-motionノベル、まいてつLast Run!!発売記念として、兵庫の川崎重工業正門前に保存されているクハ26をあれこれ紹介します。

日本で最も往来が激しいと思われる東京・大阪間では、古くからその時代の最先端技術を用いた列車が東海道を駆けてきました。戦前では特急燕、戦後の特急へいわ号特急つばめ号、そしてビジネス特急として颯爽と登場した特急こだま号です。

今やこだま号といえば東海道・山陽新幹線でみられる各駅停車タイプのこだま号を想像する方が大半かもしれませんが、新幹線こだま号のルーツは東海道線特急です。東京大阪間の日帰り移動を可能にした特急こだま号の登場は、日本交通史に刻まれる歴史的なマイルストーンといえるでしょう。

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登場は1958年。東海道新幹線のできる6年前のことである。所要時間は6時間50分で、それまでの特急つばめによる7時間半から40分もの短縮となった。朝7時に東京を発車して、13時50分に大阪着というダイヤが組まれていた。
リニア・鉄道館展示より

そんな特急こだま号に使われた20系電車(改名後は151系電車)をモデルにしたのがまいてつに登場するレイルロオドニイロクちゃんです。名前の由来は先頭車両のクハ26によるものと思われます。

鋭い目つきがクールなニイロクちゃんは、まいてつでの初登場時には頭に包帯ぐるぐる巻きの状態で現れ、プレイヤーに衝撃を与えたキャラクターです。持ち主の赤井宮司(赤井清春)との関係といい、いろいろと深い事情がありそうなレイルロオドですが、まいてつ本編ではさほど詳しい説明はされていませんでした。

日ノ本九洲地方を舞台にしたまいてつで、ニイロクちゃんは電化試験のために粉蔵(まいてつ世界の小倉と思われる)に配置されていたそうです。現在JR九州の電化路線は筑肥線・唐津線を除いてほぼ交流電化されていますので、直流電車の20系電車は走れないということになりますが……試験用と書いてありますし、そこは置いておきましょう。

ここからはニイロクちゃんに触れつつ保存車両について見ていくことにします。

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兵庫駅から徒歩ではやや遠い位置にある川崎重工業の兵庫工場です。大きな工場群に囲まれた道を歩いていくと、いきなり0系新幹線が現れます。

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ここで0系と並んでいるのが20系電車(クハ26)です。特急こだま号のヘッドマークも誇らしげです。

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20系電車に始まったこのスタイルはこだま形ボンネット形と呼ばれています。

前部にあるボンネットの中には圧縮空気を作るためのコンプレッサーが置かれているそうです。騒音を発生する機器を客室からなるべく遠ざけるための設計上の配慮とのこと。

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車両側面にはクハ26001の文字がみられます。(敷地外より撮影)

151系シリーズを20系として展示しているのは全国でもここだけでしょう。数年前に川崎重工業関係者により細部が復元されたそうです。

余談ながら、クハ26のクハは、ク:運転台のついた、ハ:普通車を表しています。

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運転台下に輝くJNR(Japan National Railway:日本国有鉄道)マークは、ニイロクの靴下や髪飾りに見られるものです。

写真では分かりづらいですが、左上のヘッドライト脇にはウインカーランプが搭載されています。これを点滅することで駅通過時や踏切通過時に遠くからでも列車の接近を知らせるためのものだそうです。さほど効果的ではないと判断されたのか、後継の形式群には継承されていません。
非常停止時に後部から衝突されにくくするためという話もありますが、実際のところはどうなんでしょうか。

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ニイロクの帽子はこちらの屋根上ヘッドライトが近そうです。
(京都鉄道博物館展示の181系)

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前写真の181系とこの写真を比べてみると、ヘッドライトや連結器カバーの大きさに差異がみられます。このあたりが復元箇所と思われます。

特急(Tokkyu)のTを模したといわれる逆三角形の特急マークや、タイフォン部分を切り抜いた排障器の形状はニイロクちゃんのキャラクターデザインにも表現されています。

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クハ26の運転台横にはバックミラーがあります。後部確認用に設備されたものですが、破損しやすく保守が難しいことから485系に継承された後に撤去されています。(この点はキャラクターデザインには関係はありません)

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ニイロクの服装は肌色と赤色の配色で構成されていますが、この色は国鉄特急色と呼ばれ、かつては全国津々浦々、特急(急行)といえばこの色の列車でした。今でもこの塗色はファンに根強い人気があるようで、たびたび復刻塗装されています。

さて、延々とニイロクに絡む鉄分の濃い話をしてきましたが、まいてつ自体は鉄道に全く詳しくなくても読むことができるゲームです。専門用語が出てくるものの、都度分かりやすい解説が用意されているので置いてきぼりを食らう心配もないかと思います。

まいてつ続編となるまいてつ Last Run!!ではニイロクの過去編として大廃線に絡む重いストーリーが用意されているとのことです。まいてつ Last Run!!には前作のまいてつ本編もまるごと収録されていますので、気になる人は迷わずまいてつ Last Run!!を買っておきましょう。


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