創作ストーリー漫画を発表する難しさ①
どうも、野図です。毎日こつこつと漫画を描いています。サムネイルはいま描いてるオリジナルの1コマ。
さて、表題の通りなのですが。「創作ストーリー漫画を描く」ことの難しさと、それを打開するために挑戦していきたい、という話をしたいです。
①そもそも需要があるのか?
ネットや同人誌即売会でぱっと見てもらいやすいのは二次創作の本です。「僕が好きなあのキャラが見たい」というキャラ愛は普遍的なものなので当然ですね。
ではオリジナルはというと、見てもらいやすいものもあります。一つが「R18」、ふたつが「ショートギャグ」、そして「キャラもの」。
R18については説明不要で、「性欲を発散したい」という性欲は人間がベーシックに持ってる欲望ですので、それに応える創作は間違いなく需要があります。
つぎにギャグですが、これもわかりやすく面白いものならどんどんハネます。特にTwitter受けするギャグというのは最近重視されている気がします。一目見て笑う一発ネタ、よくできたコントのようなネタ、なんだかわからないけど面白いシュールネタ、色々ありますね。
そしてキャラもの。最近だと「宇崎ちゃん」とか「こぐまのケーキやさん」とかですね。最初はリアクションが少なくても続けていくうちに注目が集まり、人気が出てくうちにニコニコ静画とかで出版社と提携して連載が始まる…というパターンも増えてます。こういう傾向を指して「最近の出版社はネットでいいのを拾ってくるだけで育てる気がない」とか言う風潮もあるんですが、それは関係ないので割愛。
…で、ですよ。僕がやろうとしてるのはそのどれでもない、「ゴリゴリのストーリー漫画50p、萌えとかエロとかそういうの無いです、シリアスです」という、きわめてハードルの高いものでしてね…。
②「出版社でやりゃいいじゃん?」→「無理っス!」
そういうのはネットじゃなくて出版社のやってる新人賞に送れば?という意見もあるでしょう。というかそもそも、僕がやりたいような創作ストーリー漫画は、それこそ完成させても賞に送る以外の選択肢がなかったわけですよ、だれにとっても。
でも、「萌え」もない「エロもない」、「シリアス」の、最近の流行りの要素(最近映画ばっかりで漫画雑誌買ってないからわかんないけど)も入ってない漫画…となると、編集者さんが難色を示すのも必然です。というか示されました。5回くらい持ち込みに行って。
「キャラの動機が~」「序盤3pから予想される展開と違うから読者の反応が~」とか、もっともなストーリーや表現方法に関する指摘はありがたく聞かせてもらったのですが、
「このジャンルは流行ってないです」「10代に受ける漫画じゃないですね」
とか、内容を褒めてくれた編集さんでもそういう理由でバッサリされる、というのも頻発しまして。はい。はい…
ある編集者の友だちのTくんに言われたことなんですが、(これは苦言とかではなくそうなんだと思った、というだけなので、Tくん、君への悪口ではないからな)
「出版社はエンタメを売るのが仕事。野図君の漫画はバカには読めない。おっぱいを揉みたいとか、無双したいとか、そういう欲望をかなえてあげるのがエンタメなんだけど、君の漫画は読んだ人に考えさせる、立ち止まらせる漫画だから」
これを聞いたとき、「なにかを考えさせたり、立ち止まっていろんなことに思いをはせてほしいというのは、エンタメではないのか?」と、疑問を抱きました。
③自分が絶対に譲れないものは何か
僕は「漫画版エウレカセブン」が好きです。「TISTA」が好きです。「鉄腕アトム」が好きです。
それらの作品は、決してハッピーエンドではないです。運命に翻弄されるエウレカ。苦悩し、嘔吐しながら罪を犯し続けるティスタ。死んだ子供の代わりにこの世に作られ、勝手な理屈で暴力を振るわれ、生みの親にサーカスに売られるアトム。人間に差別され、迫害され、何度も何度も傷つけられるアトム。最後には自分からエネルギー波に飛び込んで死ぬ。
それでも、心に残るものがあります。読者の心に、傷にも似た何かを残すこと。僕は18歳くらいまでのころ、優れた作品を読み終えると、その作品のことを1週間くらいずっと考え込んでしまう癖がありました。それは作品の中に自分の心を置いてきてしまったような感覚でした。今では味わえないその体験はなにより至福の時だったと思います。
きっとその「一週間」が、僕にとって創作の原点です。授業を受けているときも、部活中も、風呂に入っているときも上の空で、僕はエウレカの最期を考えていました。ティスタの未来を考えていました。アトムの悲劇を考えていました。
僕はそれこそが、読者を楽しませるもの、虜にするものだと信じます。出版社の定義するエンタメとは違うのかもしれませんが、それでもいいんです。だから僕は今後、出版社にかかわることを漫画を描くための絶対条件にはしません。(もちろん僕の考えを理解してくれる豪気な出版社さんともし巡り合えたら、ぜひ一緒に仕事したいと思います)
④希望はある、需要はある
これから自分で発表していきたい、そう思ったきっかけの一つが、僕がかつて出版社の新人賞に出して没を食らった作品が、pixivに公開したところランキング7位をもらったことなんですね。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=65476196
この「ごめんなさい殺しますRE」が現在1940回いいねが押され、1379人がブックマークしてくれています。
また、かつて出版社のコンペで落ちたものが、ネームにもかかわらず多くの人に見てもらえて、pixivisionで特集してもらえました。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=65919557
こういった出来事から、たとえ僕が出版社から見向きもされなくても、多くの人に作品を届け、楽しんでもらうことができるかもしれない、できればそれを生業にしたいと、改めて思いました。
その実現のための試行錯誤を続けていきたいです。その工程については、長くなったので次で。
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