【SFC-LT Payers Report】 #0001 Motoya Tanaka
SFC-LT Payers Reportではメディア型奨学金SFC-LTのPayer(支援者)の方々にヒアリングを行い、なぜ支援をしてくれたのか?どこに期待をしているのか?それらを明らかにしていきます。
そんなSFC-LT Payers Reportの最初のヒアリング対象は慶應義塾大学環境情報学部1年の田中 基彌さんです。
「学生の3分間を1万円で買い取る奨学金をつくります!」と題を打ったクラウドファンディング、驚くべきことに、支援者の多くは現役の学生でした。なぜ奨学金のプロジェクトを現役の学生が支援してくれたのか?このレポートで、その答えに迫れればと思います。
※下記の内容は書き起こしではなく、私がヒアリング中にとったメモをもとに書いたものなので、微妙に抜け落ちているところや、解釈の違うところもあるかもしれないです。
Q.なぜこのプロジェクトに支援してくれたのでしょうか?
A.夢を持っている学生達を支援する環境をつくるのに共感したから
Q.最初の1万円に重要性を感じますか?
A.あったら嬉しいと思う。クラウドファンディングをはじめて1円もお金が集まらないという不安が取り除けるため。また、学生にとっての1万円は社会人にとっての1万円より価値が大きいと思う。例えば、友人のSFC生に日本を一周するプロジェクトをしている人がいるけれど、彼(彼女?)にとっては1万円というのは交通費などの随分な足しになると思う。何よりも、小さなプロジェクトを行う際に、最初の仮説検証のサイクルを回すのに、1万円という額は十分に思う。
Q.3分間のプレゼンに1万円の支援という対価は大きいと感じますか?
A.プレゼンの対価としては大きすぎると思う。そんなに貰えるなら自分も(SFC-LTに)出てみたいと思った。逆に、その1万円を目的に、適当なプレゼンをする奴が出てこないかは心配。
Q.SFC-LTでは発表すると同時にクラウドファンディングのオーナーになりますが、そこに不安などはありますか?
ある。クラウドファンディングを行ってお金が集まるということは、それだけ多くの人に支援をしてもらうということだから、その人達の期待に答えられるかが心配。
Q.先程、「クラウドファンディングをはじめて1円もお金が集まらないという不安」があると言っていましたが、それと「支援者の期待に答えられない不安」のどちらがより不安でしょうか?
A.集まった期待に答えられないことの方が怖い。
Q.このプロジェクトを知ったきかけはなんですか?
A.湘南台のサイゼでご飯を食べてるときに、たまたま代表に出くわしてプロジェクトの詳細を聞いていた。
Q.クラウドファンディングで支援するまでの経緯は?
A.事前にプロジェクトのことは知っていたから、ついに始まったかという感じだった。始まったときに後輩の自分が支援してもいいのかと思ったが、同期の友人が支援していたし、このプロジェクトへの支援は最終的に自分の後輩の挑戦に繋がれるわけだから支援してもいいかと思った。
Q.過去にクラウドファンディングをした経験はありますか?
A.過去に諸毒していた団体がやったことはあるけれど、お金が集まればいいかなくらいの気持ちだったら、とくに広報活動とかはしていなかった。
Q.このプロジェクトのどこに魅力を感じましたか?
A.GIVEされた人が次のGIVEをするところ。"Pay It Forward Challenge"というコンセプトにもあるけれど、夢を追って社会を良くしようとしている人にGIVEできて、その人がまた別の人にGIVEをしていくというのが魅力に感じた。
Q.このプロジェクトに懸念することはありますか?
A.自分も含め、Challenger(挑戦者)が将来的にPayer(支援者)になったときに、支援を継続できるくらいの経済力があるのかどうかが心配。それこそChallenger(挑戦者)がPayer(支援者)側の期待に答えられなくて、Payer(支援者)がコミュニティから離れてしまうのではないかとも思う。そこが心配。
Q.このプロジェクトを「奨学金」として打ち出すのをどう思いますか?
A.「奨学金」というのは少し違って思える。それは自分が(給付型)奨学金について、あまり良い印象を持っていないため。高校時代のGPAが高かった人が大学でも学びを深めること(研究活動など)にそれを使っているかというと別であると思うから。貸与型の奨学金に関しては、返済義務自体が人生の選択肢をすごく狭めさせているように感じている。「奨学金」の印象はそういったところなので、若干の違和感を感じる。
Q.「学生の3分間を1万円で買い取る奨学金」というキャッチコピーをどう思いますか?
A.「買い取る」という表現には違和感を感じた。3分間で自分のプロジェクトを発表するわけだが、それを1万円で買われるのかと思うと微妙なので。このキャッチコピーはプロジェクトの半分しか表現できていなくて、残りの「追加の支援をクラウドファンディングで集めていく」という要素が抜け落ちている。
Q.他に質問すべき点などアドバイスはありますか?
A.「あなただったらPayer、Forwarder、Challengerのどれかの役割を担おうと思いますか?」というのも聞いてみるといいと思った。WEEK1の活動報告の記事でも書いていたが、このプロジェクトを構成するPayer(支援者)、Forwarder(つなぐ人)、Challenger(挑戦者)の3つの役は、1人が入れ替わり立ち替わり演じるものなので、他にどの役を演じたいかは聞いておいた方がいいと思う。
Q.あなただったらPayer、Forwarder、Challengerのどれかの役割を担おうと思いますか?
A.このプロジェクトを応援したいと思っているので、無理のない範囲でPayer(支援者)でいたい。また、自分の周りには社会を良くしようと頑張っているChallenger(挑戦者)が多いので、Forwarder(つなぐ人)として、彼らをこのプロジェクトにつなぐ立ち回りができればと思う。そしたら社会がよくなると思うから。
Q.なぜ社会を良くしたいんですか?
A.当たり前だと思う。共感能力が高いからかもしれない。他人の抱えている問題は自分の問題のように感じる。また、自己実現の欲求は人にとって一番重要な欲求だと思うので、それを手助けできることはみんなの幸せにつながると思う。過去の自分の経験によるところだけれど、生きるために働く人より遊ぶために仕事してる人の方が幸せで、遊ぶために仕事してる人より仕事を遊びにできてる人の方が幸せだと思うから。もちろん人それぞれの価値観にもよるけれど、自分はそう考えているから、みんながそういう人になれることは幸せに感じる。
Q.自分の財産ってなんだと思いますか?
A.質の高い幸せの総量。「質の高い幸せ」っていうのは誰かを幸せにしつつ自分も幸せになれること。そしたら、皆が幸せになれるから。
ヒアリングを終えて
コンセプトは刺さっている
基本的にはプロジェクト開始前のヒアリングで考えていたことがクリティカルに刺さっているようにも思いました。例えば、"Pay It Forward Challenge"のコンセプトやGIVEの連鎖という部分、ここに共感してくれる人が本当にいるのかがこのプロジェクトの鍵ですが、少なくとも私以外にもそれを信じている人がいたのは嬉しいところです。
後輩が支援してくれている理由が少しづつわかってきた
ただ、次の挑戦者を支援するプロジェクトなのに次の挑戦者たりえる後輩から支援が来た理由は、本当に私の中でも謎でした。今回のヒアリングでは、それが少しづつ明らかになってきた感じがして嬉しいです。
このプロジェクトへの支援は最終的に自分の後輩の挑戦に繋がれるわけだから支援してもいいかと思った。
プロジェクトの本質を理解して、自分より更に先にいる挑戦者にペイ・フォワードしようという後輩がいることは喜ばしいですね。
プレゼンの質の懸念点について
SFC-LTの懸念点として、1万円目当てで適当なプレゼンを行う人が出てきて、プレゼンの質が担保されなくなるのではないかというものがあります。ただ、私としてはそういう挑戦者の出現は、①SFC-LTがブロードキャストされることによって抑制され、②仮に出てきたとしても挑戦を躊躇する学生のカンフル剤になると考えています。
①について、適当なプレゼンを行って1万円をもらう人がいたとしても、その学生の実名とともにプレゼン内容は公開されます。そのため、活動報告が上がってこなければ、口だけの人間だと言うことが全世界の誰でも知れる状態になります。つまりは、SFC-LTに登壇して挑戦をやめれば、それ以降、この社会はその人に余計なリソースを注ぎ込まなくて良くなるわけです。
②について、プレゼンの質の低い挑戦者の登場は、追加の支援の募集に支障をきたし、(手数料収入がなくなるので)SFC-LTのビジネスモデル自体が回らなくなる要因になりえます。ただ、それは全体的に見れば、SFC-LTでのプレゼンを躊躇している多くの学生にとって、「これでいいなら、自分でもできるかも」と思わせる切っ掛けになります。つまりは、質の低い挑戦者の登場は、応募者の増加を呼び、競争原理によってプレゼンの質の向上に繋がります。
これらを考慮しても、メディア型の奨学金は初期のキャッシュフローの不安定さ故に失敗する可能性が大いにありますが、湘南藤沢地域に挑戦者を限定すれば、年間100名程度ならプレゼンの質を保てると考えました。
「学生の3分間を1万円で買い取る奨学金」というコピーについて
やはり、まだまだ改善の余地がありそうです。「奨学金」というフレーズについては、根本的にこのプロジェクトは真に「奨学金」であると考えているので、曲げたくはないですが、「誰に届けたいのか」をもう少し意識して、キャッチコピーを変えていきたいと思います。おそらくそのためには、支援者と被支援者のペルソナをしっかりと分析していくことが重要かと思いました。
支援者のペルソナ
もとやくんの価値観について聞いていて、「誰かを幸せにしつつ自分も幸せになれること」を「質の高い幸せ」と呼んでいることに、ジョン・ラスキンの『この最後のものにも』に出てきた「最大多数の高潔にして幸福な人間」というフレーズを思い出します。これはジュレミー・ベンサムの「最大多数の最大幸福」へのあてつけで、社会にとって最大化されるべきは、個々の富(経済的な豊かさ)の総和ではなく、個々の名誉ある富(自身が幸せな上で他者の幸せにどれだけ貢献しているか)の総和であるという話です。これはまさに「質の高い幸せ」を最大化していこうという話です。もしかしたら、SFC-LTの支援者の根底にもそういう価値観があるのかもしれません。
私自身、富とは経済的な豊かさそのものではなく、自身の能力や社会関係性(他者とのつながり)も含めてたものだと定義しています。このSFC-LTを中心に、他者との関係性を大切にできる人が集まってきて、そういったコミュニティができると嬉しいですね。まだまだ、多くの問題を抱えたプロジェクトではありますが、"Pay It Forward Challenge"のコンセプトが広まり、少しづつ外輪の人を巻き込んで、社会全体の価値観を変えていければと思います。
今後もヒアリングを続けていきますので、支援者の方々はどうか、あと少しだけお力をお貸しください。もとやくん、ご支援ありがとうございました。
まさかヒアリング後に追加で支援いただけるとは……
NPO法人湘南藤沢Projects
代表 宮元 眺
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