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【ポーカー】あなたもしかして「FPS」じゃない?
みなさんは「FPS」と聞いてなにを思い浮かべますか?
DOOMやBF、最近はAPEXやVALORANTなどといったいわゆる「First-Person Shooter(一人称視点シューティングゲーム)」を思い浮かべる方が大半ではないでしょうか。
また、動画のフレームレートを表す「Frames per Second(1秒間あたりのフレーム数)」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません(上のFPSと区別するため、こちらは小文字のfpsですが)。
ほとんどの日本人が上記の2つのFPSを思い浮かべると思いますが、実はポーカーにもFPSという用語があります。
とはいっても、そこまで広く知られていない用語なのが現実だと思っています(私もつい先日知りました……勉強不足ですね)。
エムホールデムのリリースから4ヶ月、ポーカーチェイスのリリースから2ヶ月たった今日このごろ、今回はそんなポーカーのFPSについて書いていきます。
エムホやポカチェからポーカーを始めた初心者の方にはもちろん、私と同じように何年もポーカーをプレイしている方にも当てはまるかも。
ポーカーにおける「FPS」とは
ポーカーにおける「FPS」とは「Fancy Play Syndrome(ファンシー プレイ シンドローム)」の略で、プロポーカープレイヤーでありポーカー理論の先駆者であるMike Caroによる造語です。
直訳すると「思いつきプレイ症候群」でしょうか。
『フィル・ゴードンのデジタルポーカー ──HUD(統計ツール)でここまで勝てる』では、「鮮やかなプレイがしたい症候群」という訳になっており、以下のような解説が入っています。
「「鮮やかなプレイがしたい症候群」(”Fancy Play Syndrome”)とは、派手で凝ったプレイで大きなポットを取って自分の技巧を見せつけたいという気持ちから、成功の見込みの低いプレイをわざわざ選択してしまう傾向のことをいう。相手が強い手を持っているのが明らかな場面で、大きなブラフを打つプレイなどが典型例である。」
『フィル・ゴードンのデジタルポーカー ──HUD(統計ツール)でここまで勝てる』より引用
また、スマホ対応ポーカーアプリ「Pokerrrr 2」公式サイトにある「Fighting Fancy Play Syndrome」という記事では、FPSについて以下のように説明しています。
「ファンシー・プレイ・シンドローム(FPS)とは、レンジやポットオッズなどの戦略的要素に基づいて判断するのではなく、賢く見せたい、かっこよく見せたい、相手を混乱させたいという欲求に基づいてポーカーの判断をすることである。自分がいかに優れたポーカープレイヤーであるかをアピールしたいがために、常識にとらわれないプレーや、意図的に最適でないプレーをしてしまうことがあれば、それはおそらくFPSである。(筆者翻訳)」
「Fighting Fancy Play Syndrome」より引用
以上の2つの説明を見ると、Fancy Play Syndromeは「俺はこのテーブルの誰よりも上手い」「俺を華麗なプレイを見せつけてやりたい」という考えから、定石を外れたプレイを行ってしまうことであると分かります。
しかし、厳密に言ってしまうとFancy Play Syndromeの意味はそれだけではないようです。
相手の思考レベルと「FPS」
Sit and Go(SnG)を中心に解説しているサイト『Sit and Go Planet』にある「What Is ‘Fancy Play Syndrome’ And Why Is This A Bad Thing?」という記事にはこう書かれています。
「FPS(Poker 'Fancy Play Syndrome')とは、ポーカーで複雑な動きをすることを指す言葉ではなく、数回のハンドやセッションを重ねることを意味する。これは、あなたが直面している相手のレベルに対して、あまりにも複雑なポーカーの動きやプレイをすることを表している。
考えてみてほしい。もしあなたが「高度な」ポーカー戦略プレイをしたとしても、それが相手の頭上を超えていて、相手があなたをコールしてポットを獲得したとしたら、間違いを犯したのはあなた自身である。理由は簡単で、ポーカーは相手に勝つために調整するものであり、「過剰な調整」をした場合、それは単なる悪いプレーだ。(筆者翻訳)」
ポーカーをプレイする上で重要なことのひとつに「相手の思考レベルを知る」というものがあります。
プレイヤーがそれぞれどの程度の思考レベルを持っているかを分類し、常に相手の1つ上の思考レベルでプレイすることで利益を最大化するという考え方です。
例えば、相手が自分のハンドの強さだけ見てプレイする初心者であれば、こちらは相手のハンドレンジを読んでバリューに偏ったプレイをするのが効果的です。
「初心者相手にブラフはするな」とよく言われているのはこのためです。
しかし、相手がこちらのハンドレンジを想定してプレイしてくる中級者であれば、こちらは「相手はこちらのハンドレンジをどのように想定しているのか」を考え、ブラフも時には織り交ぜるプレイが効果的です。
思考レベルについてはみんな大好き「ポーカー道」でも解説されているので、まだ読んでない方はぜひ読んでみてください。
閑話休題、Fancy Play Syndromeは相手の思考レベルを読むことと密接に関係しています。
例えば、リバーでフラッシュが完成するカードが落ちた際。
自分が大きくベットしてフラッシュを主張しても、初心者である相手はトップヒットはもちろん、多分ボトムヒットでもコールしてきます。
なぜなら、その相手はこちらがなんのハンドを持っているのかを考えないし、リバーのカードがどんな影響を与えるのかもわからないからです。
そういった思考レベルの低い相手に高度なプレイをしてしまうのもFancy Play Syndromeの一例であるとされています。
同じプレイでも「FPS」の時・そうでない時がある
また、ポーカーの総合情報サイト『pokerlistings.com』にある記事「2 Symptoms of Fancy Play Syndrome in Poker」では、「フリーカードプレイ(the Free-card play)」と「スクイーズプレイ(the Squeeze Play)」の2つがFPSの具体例としてあげられています。
「フリーカードプレイ」はあまり聞き馴染みの無い言葉だと思いますが、フロップで相手のベットにレイズまたはチェックレイズすることで、相手にターンをチェックさせるプレイです。
「スクイーズプレイ」は、ギャップコンセプトを利用したプリフロップでのブラフプレイで、すでに日本でも一般化された用語です。
この2つのプレイは、フリーカードプレイはポットサイズをコントロールする際に、スクイーズプレイはトーナメントの(特に)後半に有効な戦術です。
しかし、使う場面を間違えてしまえば、これらのプレイは途端にFancy Play Syndromeになってしまいます。
フリーカードプレイは、相手がワンペアでもリバーでコールしてくるような初心者だった場合、バリューを取り逃してしまったり不要なアウツを引かれたりするため。
スクイーズプレイは、ディープなキャッシュゲームではコールされることが多く、リスクとリターンが合わないためです。
同じノーリミットホールデムでも、相手の特徴やゲームによってプレイを変えていく必要があります。
「FPS」と「エクスプロイト」
ポーカーには「エクスプロイト」と呼ばれる戦略があるのは皆さんご存知かと思います。
簡単に行ってしまえば、相手の相手のプレイを読んでその弱点を突く「搾取戦略」で、相手に搾取されない「GTO戦略」と対をなす戦略として、しばしば語られています。
エクスプロイト戦略では相手に大きなリークがあった場合は、定石を外したプレイを行うこともあります。
「定石を外す」という点においてはFancy Play Syndromeもエクスプロイト戦略も同じです。
ただし、その2つの間には「利益の最大化」という大きな違いがあります。
エクスプロイト戦略で定石を外したプレイを行うのは、簡単に言ってしまえば「相手からより多くのチップを奪うため」です。
一方Fancy Play Syndromeは、「自分の高い技術力を見せたい」「かっこいいところを見せたい」という「己の傲慢なエゴ」によって行われます。
そのため、相手プレイヤーの思考レベルや経験値などは、ほとんど関係ありません。
まさにSyndrome(症候群)といえます。
余談ですが、ポーカーと同じ不完全情報ゲームの代表格である麻雀には「うまぶり/うまぶる」という言葉があります。
こちらは「麻雀が上手くないのに、他人から上手い打ち手のように振る舞っていると思われること」を指す言葉。
麻雀はすでに日本でメジャーなゲームですので、もしかしたら麻雀をやっていない方でも耳にしたことがあるかもしれません。
Fancy Play Syndromeは、まさに「ポーカーでうまぶってる状態」と言ってもいいでしょう。
おわりに
エムホールデムのリリースから4ヶ月、ポーカーチェイスのリリースから2ヶ月経ちました。
これらのアプリからポーカーを始めた方もそろそろ、この「テキサスホールデム」というゲームに慣れてきた頃だと思います。
「いろんな定石や戦術も覚えたのになかなか勝てない……」と言う方は、一度自分のプレイを振り返ってみてはいかがでしょうか。
あなたももしかしたら「FPS」患者になっているかもしれませんよ?
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